資料のダウンロード - 秋田県総合教育センター

第29回 秋田県教育研究発表会資料
【5日I会場①】
誇りと自信をもって学び合い高め合う生徒の育成
- 日々の実践に「学び合い」を -
研
究
の
エ
キ
ス
秋田市立秋田東中学校
教諭
伊
藤
香
1.「友愛を深め ルールを守り ファイトを燃やそう」のもとに(学校紹介)
「秋田駅・千秋公園~太平山」という広く自然豊かな学区をもつ。近隣に
秋田大学と5つの高等学校。地域・保護者ともに教育に熱心な文教地域。
50年前に生徒会を中心に制定された「生徒三信条」が本校の財産。「友愛
を深め・ルールを守り・ファイトを燃やそう」の言葉は,生徒自らが日々の歩
みを見つめ直すきっかけとなっており,本校の自主性に満ちた校風に大き
く影響か。もう一つの財産が,手形山と仁別にある二つの学校林。たくさん
の方々の思いと汗によって育まれてきた学校林は,地域と学校のつながり
の深さの象徴。そこで育つ木々のように生徒が健やかに育っていくことを願い,「東の友よ 三信条の誇り
を胸に 自ら信じる道を歩め」の学校教育目標のもと,日々の活動に取り組んでいる。
2.「学び合い」を研究の中心に据えて(研究の概要)
生徒自らが,本校生徒であることを誇りに思い,自分自身への信頼を深め,豊かな相互作用の中,日々の
自己変革を繰り返していくことを願い,以下の「研究主題・求める生徒像・四つの視点・研究方針」を設定。
研究主題 誇りと自信をもって学び合い高め合う生徒の育成
求める生徒像
①認め合い,支え合う学習集団の中で,人間としてのよい生き方を追い求めていく生徒
②獲得した「学び方(言語活動・表現活動を含む)」を次の「学び」に生かす生徒
③目標をもって精一杯努力し,学びを通して,自分や集団のよさを実感する生徒
求める生徒像に向かう四つの視点
①礼儀・礼節の具体的な指導はどうあればよいか?
②「誇りと自信を深める学び合いの授業づくり(学習重点目標)」はどうあればよいか?
③夢や希望,志をはぐくむ,キャリア教育・ふるさと教育・道徳教育はどうあればよいか?
④教師集団による学び合いはどうあればよいか?
研 究 の エ キ ス
研究方針 日々の実践に「学び合い」を
3.礼儀・礼節の具体的な指導はどうあればよいか?(視点①の実践)
(1)生徒の自主的な姿を大切にする活動の充実
① あいさつ運動:生徒会活動として生活委員会の計画で実施。全校生徒が参加。
② 3分前着席:生活委員が呼びかけ。生徒提案で「2分前」から「3分前」に。
③ 部活動集会:部活動所属生徒が一同に会す。職員の経験談等から礼儀・礼節について考える。
(2)生徒・教師間の信頼関係を深める
① ふれあいノート:学級生徒と学級担任の交流ノート。
② 心の扉:いじめに関するアンケート。定期的に実施。
③ 二者面談および三者面談。
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4.「誇りと自信を深める学び合いの授業づくり」はどうあればよいか?(視点②の実践)
以下の授業仮説で実践を進めてきた。
重点① よさを発見する自己評価・相互評価を取り入れる。
重点② 教科・領域の特性を生かした表現活動・言語活動を積極的に取り入れる。
① と ② を行うことによって,求める授業像に接近できるであろう。
求める授業像
・自分の考えをもち,伝え合い,深め合う授業
・学びを次の学びに生かす授業
・自分のよさや集団のよさに気づく授業
そして,内容や目的に応じた様々な学習形態を取り入れた「学び合いの授業」を実践した。
国語科
「物語の世界」~ ずーっとずっと大好きだよ・海のいのち・浦島太郎・そして,竹取物語 ~
物語が語り継がれる意味について考える授業。様々な学習形態や思考
ツールを取り入れながら,「竹取物語」と「浦島太郎」を比較しつつ,物語の
意味についての考えを深めていった。
①個人で思考ツール(フィッシュボーン)を使用して考える。
②3~4人のグループで考えを出し合い。(自分の考えに自信をもつ)
③教室全体を二重の輪状の座席配置にしてリレーの指名で話し合う。
④向上的な変容の自覚を促す観点によるシートで学びを振り返る。
生徒からは・・・「仲間がいると,自分だけではわからなかったことが沢山発見できるなと思った。」「語り合
いは,仲間と語り合うことで,自分の意見が変わり,そしてその意見がより深まっていくので,とてもよいも
のだと僕は思いました。」「いろんな人の発言を聞き,自分の分かっていた物語の意味が違うものになって
いき,作者が伝えようとしていたこともわかってきました。」参観者からは・・・「リレー形式の話し合いで前の
人の発言を聞き,それに対する感想を述べてから発表している点がすばらしい。」「二重の輪は,たいへん話
しやすい雰囲気があった。」「生徒たちが楽しく互いを認め合って話してい
ることが伝わってきた。」「自分勝手な想像ではなく,本文を根拠に自分の
考えをつなげて発表している。」「思考ツールを用いて自分の考えと比べ
ていた。」「自分たちで共通点や違いに深い・浅いの重み付けをしてい
る。」等の意見をいただいた。
数学科
平行と合同
星形五角形の頂角の和の求め方を考える授業。個別に考える場面で教師がチェックを行い,そこで選ば
れた異なる考えをもつ生徒が大きな用紙に自らの考えをまとめる。他の生徒は自由にそれらの生徒の説明
を聞いて回り,質問や意見もぶつける。何度も説明することで自分自身の考えに対する自信を深め,最後の
場面では,生き生きと全体に説明する生徒の姿を見ることができた。
音楽科
学校林に思いをよせて
1年生宿泊研修中の学校林での体験を土台とした創作活動。アルトリコーダーによるふしづくりをベース
に,学校林の映像を見てイメージを広げ,グループで創作活動を行った。言葉だけでなく演奏そのものによ
る学び合いも活発に行われた。最後はPTAで演奏を披露して好評を得ることで,さらに自信を深めた。
英語科
Multi +2 「町紹介」
教室全体に一体感のあるウォーミングアップの後,グループごとに課題に取り組む。そこで学び合い・高
め合った内容を次は全体の前で発表する。常に相手を意識しての活動の中で,生徒は自信をもって自分自
身を表現することができた。目的に応じた学習形態を組み合わせることにより,一人一人の学習活動の時
間的・空間的な場を確保するのみならず,情意面でも大きな効果をもたらした。
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5.夢や希望,志をはぐくむ○○教育はどうあればよいか?(視点③の実践)
(1)総合的な学習の時間=ふるさと教育
「ふるさと」「つながり」「生き方」をキーワードに,以下の計画で実践を行った。
学年
テーマ
1年
ふるさとを知り
生き方を考えよう
ふるさと秋田での調査活動
目標 や体験活動を通して「人・社会・
自然」のよさを再発見し,自分
の生き方について考える。
「働くことと生き方Ⅰ」
・職業調べ
社会
・職場体験学習
体験学習 ・職業講話
・自分の夢
「学校林を学ぶ」
自然
・まんたらめ宿泊学習
体験学習 ・本校の伝統
・自然のすばらしさ
2年
3年
ふるさとを考え
ふるさととかかわり
生き方を見つめよう
生き方を設計しよう
首都圏と秋田を比較する学習 社会や身の回りにおける問題
や先輩の生き方を学ぶ活動を通 の解決に自ら取り組み,学習の成
して自分の生き方を見つめ直す。 果を生かして,自分の生き方をデ
ザインする。
「働くことと生き方Ⅱ」
「地域内実践学習」
・首都圏での訪問学習
・課題の設定
~体験,見学,インタビュー等~
・追究の計画
「志を立てる」
・追究活動
・上級学校調べ
・まとめと発表
・ホームカミングデー(先輩に学ぶ)
↓
「学校林に学ぶ」
↓
・現地での活動
「3年間の振り返り」
・自然と人間のつながり
・自分の成長の確認
・自然と自分自身の生き方
・これからの生き方の設計
とのつながり
・下級生へのメッセージ
1年生は,職場体験で学んだことをポスターセッションの形式で学年内で
発表した。2日間に渡った発表会であったが,1日目の発表を踏まえ,2日目
には発表にさらに工夫が見られた。発表を見合うことが学び合いとなり,
発表の洗練につながった。
3年生は,2年生を参観者に,地域内で実施したボランティア活動につい
てのプレゼンテーションを発表。学年を超えた学び合いとなった。
(2)学校林(ひむがしの森)を学びの場に
①学校林との出会い(1年生)
1年生の春,秋田市太平山自然学習センター(まんたらめ)宿泊研修で,
仁別の学校林見学を行った。学校林の歩みを含む本校歴史の映像資料を
見たり,学校林で校歌を歌ったりする活動から学んだことを新聞とレポー
トにまとめた。そこには森のすばらしさ,自然環境の大切さ,学校林への人
々の思い,学校に対する誇り等の記述が多く見られた。
②植樹活動と調査活動(2年生)
2年生は,仁別の学校林でブナの植樹活動と学校林の成長の様子を把握する調査活動を行った。10年前
から植樹されてきたブナの位置や大きさを記録して,今後の森の成長を把
握していく活動である。地域後援会の方々による事前の下刈り作業や職
員による学校林基本図の作成等の作業もあり,豊かな自然を体験するだ
けではなく,人々との絆を実感する活動となった。
③講話会「森の魅力を考える~ヒトと森のつながりから~」(全学年)
多摩森林科学園大石康彦先生をお招きして,ヒトと森のつながりを考え
る全校講話会を実施した。
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6.教師集団による学び合いはどうあればよいか?(視点④の実践)
(1)一人一研究授業の実施
「負担少なめで,確実に授業を磨く」という原則で,「一人一研究授業」を実施した。普段見ることのない
他教科・他学年の授業は,大きな刺激となった。各自の実践の参考となるだけでなく,職員相互の密なコミ
ュニケーションのきっかけともなった。
(2)校内研修会の充実
「学び合い」をキーワードに,年間を通して校内研修会を実施してきた。
授業実践の支えとなる考えとしての「教えて考えさせる授業」や,学び合
う学級集団作りの手がかりとしての「QーUの活用」等の座学に加え,「学
び合いの授業」に生かせる学習形態の実技研修も行った。「男女互い違い
のチェッカー状」の座席や,「四人グループ」での話し合い,そして「思考ツール」の使用。さらに,「二重の輪
による語り合い」等の体験を通して,それらの手だてのもつ情意的な意味を共有できたように思われる。
7.「学び合い」の向こうにあるものを(成果と課題)
(1)学び合いが成立する集団づくりをめざすこと
礼儀・礼節の土台となるお互いを尊重する姿勢は,他から学ぼうとする
「学び合いの精神」そのものである。「学び合いの授業」は,緻密な教材研
究や学習形態の工夫のみで成立するものではない。「QーU」で言うとこ
ろのリレーションとルールが充実した親和的ムードの学級でこそ,いきいき
とした「学び合い」が生まれる。そのような集団づくりをめざしていきたい。
(2)学習形態を目的に応じて組み合わせること
今年度の「学び合いの授業」に共通していたのは,目的に応じて学習形態を組み合わせた点である。グル
ープによる活動の後,そこでの内容を全体で共有し,さらに深化させてい
く実践が多く見られた。少人数での交流を通して自信を高めたことが,そ
の後のいきいきした姿を支えていたと考えられる。学習形態の組み合わせ
が生徒の活動の場を保証するだけでなく,情意面でも大きな力を発揮した
と考えられる。
(3)教育活動全般を「学び合い」の視点で見直すこと
「求める生徒像に向かう四つの視点」の設定は,「学び合い」の視点で教育活動全般を見直すきっかけと
なった。総合的な学習の時間では,学年内や異学年間で発表を交流する活動が積極的に行われた。今後の
一層豊かな活動が期待される。新しく何かを始めるのではなく,今まで行ってきたことを「学び合い」の視
点から見直すことが,日々の実践のスリム化と重点化にもつながっていると考えられる。
(4)教師集団が「学び合う集団」であること
一人一研究授業に加え,校内研修会で職員が生徒と同じように和気藹々と楽しげに何かを共有する研修
会のひとときを経験して,職員相互のコミュニケーションが深まったことが実感される。職員がお互いに,そ
して生徒と共に学び合う存在であり続けることが,本校の求める「学び合い」の鍵を握っていると考える。
(5)未来を信じて
今年度の実践を通して,授業が大きな力をもっていることや,生徒だけではなく我々もまた可能性をもっ
た存在であることを実感することができた。学校改革の中核にあるのは,地道な授業改善の連続ではない
だろうか。教師自らが,生徒とともにじっくりと「学び合い」に浸りきることができるように環境を整え,日々
の授業を充実させていくことが,今後の大きな課題ではないかと考える。
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