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有機化学III
後半第一回目講義
宮地 弘幸
有機化学III後半
授業計画
1: 6/16
アリル系
2: 6/23
共役ジエン
3: 6/30
ベンゼン類の構造
4: 7/7
芳香族化合物の反応I
5: 7/14
芳香族化合物の反応II
6: 7/21
芳香族化合物の反応III
7: 7/28
これまでの学習内容
8: 8/4
総括考査
有機化学III後半の学習の流れ
有機化学II: アルケン
(炭素2個が二重結合で連結)
有機化学II: アリル系 (炭素3個で二重結合1個だとどうなる?)
共役ジエン (炭素4個で二重結合2個だとどうなる? )
ベンゼン類(芳香族化合物の構造と反応の特徴)
有機化学III
非局在化したπ電子系(アリル系)の化学
Delocalized Pi Systems
非局在化したπ電子系(アリル系)の化学
復習!
水素付加反応
臭素付加反応
2-プロペニル系(アリル系)の電子非局在化
炭素原子の隣に二重結合がある場合,
この炭素原子の反応性にどう影響するか?
2-プロペニル系(アリル系)の電子非局在化
プロペンの第一級C-H結合は比較的弱く,結合解離エネルギーは
87 kcal/mol 低度である。
アルカンのC-H結合の結合解離エネルギーは第三級炭素ですら96.5 kcal/mol
でそれよりも弱い。
→ 何らかの安定化効果が関与している。
2-プロペニル系(アリル系)の電子非局在化
3-クロロプロペンはSN1反応を起こしやすく,カルボカチオン中間
体を経て一分子置換反応を起こす。
第一級ハロゲン化アルキルはSN2反応を起こす。SN1反応は起こさない( SN1 反
応は第三級ハロゲン化アルキル)。
→ 何らかの理由でアリルカチオンは安定のようである。
2-プロペニル系(アリル系)の電子非局在化
プロペンのCH3のpKa(酸性度)約40である。
プロパンのpKa(酸性度)は約50であり,はるかにプロペンは酸性度が高い。
→ 強塩基を用いた脱プロトン化によるプロペニルアニオンは生じやすい。
2-プロペニル系(アリル系)の電子非局在化
先の三つの実験事実は,アリル系がプロピル系に比べ,はるかに安定な構造で
あることを示唆する。
→ 何故アリル系は安定なのか?
2-プロペニル系(アリル系)の電子非局在化
アリル共鳴
電子の非局在化に
より,アリルラジカ
ル,アリルアニオン,
アリルカチオン何れ
も等しく寄与する一
対の共鳴構造を取
り得る。
アリル系の安定化理由の量子化学的説明(アドバンス)
不安定
中立
安定
アリル位のラジカル的ハロゲン化
アルケンへの臭素付加反応:イオン反応
Brd+Brd-
三員環カチオン中間体
緩いSN2
遷移状態
アルキル基の超共役によ
る押し出しにより、こちら
のカチオンがより安定化
アンチ付加体
より安定なカルボ
カチオン中間体
アリル位のラジカル的ハロゲン化
不飽和分子の反応で,共鳴安定化されたアリル型中間体が反応する場合がある。
ラジカル開始剤を添加(または光照射)するとともに,ハロゲンを低濃度で加えると
イオン反応(付加)からラジカル反応に経路が変化し、アリル位炭素がハロゲン化。
アリル位のラジカル的ハロゲン化
非対称なアルケンを原料に用いると,複数のラジカルハロゲン化生成物が生じる。
アリル型ハロゲン化物はSN1反応もSN2反応も起こす
アリル型ハロゲン化物はカルボカチオンを生じやすく,SN1反応を起こす。
異なった原料から,同一の生成物を与える。
アリル型ハロゲン化物はSN1反応もSN2反応も起こす
アリル型ハロゲン化物は反応性の高い求核剤とでは,SN2反応を起こす。そ
の反応速度は対応するハロアルカンよりも早い!
隣接SP2炭素が
存在し,より求
電子的。
Delocalization stabilizes 2-propenyl (allyl) intermediates.
In each of the preceding three unusual observations, a reactive center (a
radical, a carbocation or a carbanion, respectively) was formed adjacent to
a double bond.
This arrangement imparts special stability to the reactive center in question
through delocalization of the reactive center:
N-bromobutanimide (N-bromosuccinimide) suspended in
chloroform is often used in allylic brominations. It is nearly
insoluble and reacts with trace amounts of HBr to generate
very small amounts of bromine.
The reaction mechanism is through a radical chain mechanism,
initiated by light or traces of radical initiators.
The resonance-stabilized radical can react at either end of the allylic
system to produce an allylic bromide and another bromine radical.