5 化学平衡

20.6
温度依存性
○ 化学反応の速度 温度の影響を受ける
→ 速度定数を示すときには反応温度が問題
・ 多くの場合 25℃ (一般的な標準温度)
または 37℃ (平常時の人間の体温)
○ 温度
熱力学変数
これをもとに熱力学と速度論の関係を考察
○ 温度と速度定数の関係
1889年にArrhenius (アレニウス)が提案した式
アレニウス式
ファントホッフの式から,平衡定数の温度依存性は
(5章 P154 式(5.19))
ΔrxnH: 反応のエンタルピー変化,R: 気体定数
Arrheniusは反応物の分子と,それより高いエネルギーをもつより不安定な
中間体の間の平衡を想定し,ファントホッフの式と類似した関係を提案
エネルギー変化 → 反応の活性化エネルギー(activation energy) EA
平衡定数 → 反応の速度定数 k
変形すると
両辺を積分
両辺の指数をとって対数をはずす
右辺第二項は定数 → A とおく
アレニウス式 (Arrhenius equation)
定数A: 前指数項(pre-exponential factor)(頻度因子)
○ 異なる温度での速度定数の実験値 → EA
○ EAが既知 → 別の温度での速度定数を予測可能
○ 式(20.50)の自然対数 → アレニウス式を直線の方程式の形
→ E A, A
において、温度T1, T2における速度定数が
それぞれk1, k2であるとき、
→ EA
課題 1
P. 788
課題 2
P. 788
課題 3
P. 789
20.7 反応機構と素反応
○ 分子レベルでみたとき,実際の反応はこの式の通りに進んでいない
・全反応の化学量論を表しているのみ
・分子レベルでは,水素と酸素の分子はまったく別のふるまい
○ 化学反応の各段階
→ 素反応(elementary process)
○ 素反応を組み合わせて,最終生成物ができる様子
→ 反応機構(reaction mechanism)
○ 反応の化学量論の決定 → 比較的簡単
反応機構を明らかにすること → 容易ではない
↑
速い素反応、不安定な中間体を含むことがあるため
○ 反応物分子が最終生成物に変化する様子を逐一追跡 → 不可能
したがって反応機構が正しいことを証明するのは,きわめて困難
○ 推定した反応機構
・ 支持する実験結果を示す
・ 別の反応機構が正しくないことを示す
(例) ・溶液中の反応に対するストップトフロー法
・気相反応に対する超高速レーザー分光法
ここではこのような手法で解析される素反応について考察し,
手法そのものについては触れない
(例1)
○ 最初の素反応
気相中で二つの分子が衝突し,結合の組替えが起こって
・OHができる反応(水酸化物イオンでないことに注意)
○ 素反応の生成物 (・OH)について
・OHは水素原子と酸素原子が一つずつ結合したもの
中性の二原子分子
合計の電子数は奇数 (典型元素の化合物のなかではめずらしい)
このような奇数電子の化合物は反応性が高くて寿命が短い
ラジカル(radical)またはフリ-ラジカル(free radical)と呼ばれる
・OH
価電子の数についての規則に違反
安定化合物ではないので問題ない
素反応を考えるうえでの指針
① 化学種は三次元空間内で相互作用するので,素反応としては一つ
または二つの分子が出会う,すなわち衝突すると考え,三つの分子
が出会うことはほとんどない
・時には反応性のない物質や容器の壁との衝突が素反応とされる
(衝突した分子の過剰なエネルギーを吸収するため)
・ほとんどの素反応は一つまたは二つ(非常にまれに三つ)の
原料物質を含んだものである.
② すべての素反応を足し合わせると全体の反応式になる
・当然のことだが,全反応機構を考えるときに忘れがち
③ 推定された反応機構が実験的に求められた全反応の速度式と
矛盾しない
・重要であると同時に有用な指針
・速度式の濃度項の指数,すなわちそれぞれの反応物についての
次数は,化学反応式の化学量論係数に一致する必要がない
・素反応における速度式は,その過程の化学量論で決められる
・素反応では,次数の代わりに反応分子数(molecularity)を使用
素反応として他に可能性のある反応
などなど
・どの化学種も電荷をもたない中性の分子
・中間体の多くはラジカル
すべての分子について,これらすべての素反応を足し合わせると
(例2)
○ 考えられる素反応
○ 素反応に含まれる化学種
・生成物の一部はラジカル,残りは最終生成物
素反応の速度
・ それぞれの素反応が速度をもつ
・ それが集まって全体の反応速度になる
超高速レーザー測定
→ それぞれの素反応の速度が測定可能
・ 素反応の速度を知ること
→ 全体の速度を理解するうえできわめて有用
○ 素反応の速度と全体の反応速度
・ 全体の反応速度 ≦ 最も遅い素反応の速度
(最も遅い素反応が全体の反応を支配する)
・ 全体の反応を支配する素反応
律速段階 (rate-determining step)
律速段階と全体の反応速度
の律速段階がはじめの素反応
である場合、この素反応の反応速度
が、全体の反応速度となる
○ 反応速度
どの段階の速度を指すのか(素反応か全体か)を明確にする必要
・ 素反応 化学量論式のみによって決定
・ 全体
化学量論式だけをみてもわからない
律速段階さえわかれば決定可能
課題 4
P. 789
20.8 定常状態近似
○ 素反応の速度式からただちに全体の反応速度式が得られるわけで
はない
○ 通常の速度式
測定可能な量を使う
(例)
・ 速度式を立てるのにはH2とO2の量を使う
・ [・OH] のような物質の量を使うのは好ましくない
(中間体で寿命がたいへんに短い
各反応時刻での濃度を測定することはきわめて困難)
↓
速度式は,簡単に測定できる反応物(ときには生成物)の量を
使って示さざるをえない
○ 律速段階が中間体の反応のばあいどうなるか?
○ 次のような二段階の反応を仮定
B: 定量困難な中間体、 A, C: 通常の化学種 (定量可能)
二番目の素反応が遅い(律速段階)
→ 最初の素反応がどんなに速く進んでも,反応はそこで詰まる
○ 通常の反応
平衡反応
最初の素反応の平衡 → AとBの量比は一定、変化がない
この反応のモデル
反応機構の定常状態近似 (steady-state approximation)
定常状態近似を用いた速度解析
○ 定常状態近似
・ 律速段階から得られる速度式を,実験的に求められる速度式に
関係づけることが可能
・ 推定する速度式 → 律速段階の化学量論式のみ使用
・ 律速段階の前の段階が平衡にあれば,測定可能な出発原料
(反応物)の量を使って速度式を導出可能
○ 速度式の二つの導出方法
① 平衡定数を用いる方法
② 中間体濃度を仮定する方法
平衡定数を用いる方法
○ 最初の段階が平衡
→ 平衡定数
○ 二段階目が律速段階
→
○ 上の式より
k, Kはいずれも定数
→ k K = k’ とおくと、
中間体の濃度を仮定する方法
○ 正反応の速度式
逆反応の速度式
○ 中間体Bの濃度 → 一定
(定常状態の仮定)
○ 中間体Bの生成速度
○ 中間体Bの濃度
○ 二段階目が律速段階
定数部分をまとめて k とおくと、