PowerPoint プレゼンテーション

2011 行動分析学特論(6)
問題行動への対処(2)
QOL拡大(金科玉条)最優先
1
強度行動障害を持つ青年期の個人への対応
-選択機会の拡大を含めたプロアクティブ(前進
型)な対処の検討-
望月昭・渡部匡隆・野崎和子・小野宏・織田智志
安田生命社会事業団研究助成論文集、1998,34,
71-79.
2
A
「行動障害の停止」という負の強化のもとに行われる
対処・・・Reactive な対処
B
「正の強化で維持される行動が拡大していくための
対処」・・・Proactiveな対処
3
実践を開始するに至る過程
●職員のリアクティブな対応を強化する(A)
ではなく、
プロアクティブな対応(B)が強化されるようにする
→「問題行動が減じること」を目標にしない。
問題行動停止が職員の行動を維持する仕組みとしない
→対象者の「個人的問題」で完結しない。完結するとそれ
以上の発展はない
→「職員の行動」(A/B)のうち、Bを特に分化強化
する方針
4
職員のA(reactive)行動が強化されてきた背景
(1)行動障害は、本人の属性(重い障害のある
個人が持つ個人的特徴)であるという認識
(2)強度行動障害のある個人への対応として
特定の職員をマンツウマンで配置する
(3)対応する方針は「受容」である
(4)強度行動障害のある個人に対応している
という事実→施設の「存在価値」としてアピール
(5)新たな環境設定を必要とする積極的意見や活動
は強化されない
(6)ノーマリゼーションあるいはQOLの拡大は「重い
障害」のある個人ではできない(あるいは、まず問題
行動をなくしてから)という認識
5
1)行動は「本人の属性」である
「問題行動は、自閉という障害性や発達年齢から
きている」
→行動は全て現在環境との関係として成立・維持してい
る行動問題である。問題行動も現状のシステムとして存
在する(個人属性ではない)。
→問題行動は、現状環境によって維持されている
その多くは「物理的(施錠個室)な制約)から
きている可能性があること(このケースでは)
6
2)マンツウマンでの対応
・「専従」配置は、その担当個人において、
“一時的な問題行動の停止”を実現する行動を
強化してしまう。(罰の使用を促進してしまう)
・「破衣」など社会的にインパクトのある行動に対しては、
個人的対応では落ち着いた対応が不可能
「問題行動」が生じる可能性の少ない現状から踏み出せ
ない。(社会的影響の少ない個室管理をしやすくなってし
まう)
→複数(グループ)による対応へ
→委員会組織をつくる
7
3)「受容」か「罰」かではない
・「個室管理」を含め、現状の環境設定の中での行動を
単に追認することが「受容」である。
・「罰による行動統制」がだめなら「受容」という放任状
態」にするしかない。
→新たな環境設定を前提とした(一定の教授のもとで
の)正の強化で維持される行動の形成
→新たな環境設定(選択機会)の設定をすること
本来の「受容」である。
8
4)強度行動障害のアピール
強度行動障害:施設人員の加配という強化あり
「見学者」に施設の存在価値を示す
(コロニー全体が、重度障害のある個人への対応、
医療的対応も可能である、という位置づけあり)
→ 重い障害のある個人に対しても、個別の療育的
プログラムが要請されている
→「個室管理」の実態はプログラムとして認められないこ
と
→「情報公開」による社会的随伴性
9
5)新たな環境設定への抵抗
基本的に「公務員的」ルーティーン(昨年度と同様の内
容)が強化される傾向あり
→委員会組織、施設外部の人間を含めた実践組織
→実践内容の「情報公開」を行う
10
6)ノーマリゼーション(QOLの拡大)は
「重い障害」のある個人ではできない
・重い障害のある個人に対しては、地域化を含めた
ノーマリゼーションは非現実的である
・重い障害のある個人においては「生活の質」(QOL)
以前に、身辺自立的(ADL的)な目標が必要である
・問題行動がなくならなければ、ノーマリゼーション(地
域生活)もQOL(より個人的な好みの反映など)の拡大
もむずかしい
11
6)
→ノーマリゼーションは単に住む場所の問題ではない。
→QOLの拡大は、地域居住といった「マクロ」な環境設
定(場)の問題に代わり、より個別の個人を対象とした
生活改善の概念である。
→ノーマリゼーションは「先送りすることなく、今、障害
のあるままに(社会が受け入れる)ということである。
→問題行動の低減を優先すれば「先送り」である
→「今、受け入れる」ことの具体的な内容とは
なんだろう?
12
行動的QOLという考え方
★行動的QOL(の拡大)
「正の強化で維持される行動の選択肢の拡大」(=受
け入れる、という具体的な意味)
→環境も、心理的満足も含まれる(であろう)
大きなメリット:
●定量化(客観的評価)可能
●どんな遅れた環境からでもスタートできる
●どんなに重い障害をもっていてもスタートでき
る。
13
Reactiveな対応からPro-activeな対応へ
(ミッションの確認)
1)問題行動は「行動問題」
2)優先課題は、行動的QOLの拡大である
(=正の強化で維持される行動選択肢の拡大)
3)実践は報告を含むものである
(情報公開の行為であると共に、Pro-activeな実践行
為を施設外部から強化しやすくする)
14
具体的実践内容(日常的な選択肢拡大に向けて)
0.対応のための委員会による責任体制
1.個別指導(散歩~選択反応機会まで)
2.個室開放
3.個室の外での活動(コーヒータイム)
4.職員全体の「選択箱」による選択機会の設定
不定期な実践
1.模擬店開設(重度の障害があっても選択可能)
2.「音楽療法」(ボランティア)の実行
15
職員全体の処遇行動の変化
16
職員全体による、呈示された「選択内容」更新
17
問題行動推移(排尿)
18
破衣の累積数(コーヒータイム)
19
施設職員と研究所の間のコミュニケーション
20
成果として
・施錠を解いた状況では、最初は破衣行動などがみら
れたが、次第になくなる。
・外出時においても同様
・プロアクティブな活動の維持は、グループとして存続
・学会での報告は、最近まで10年以上続いた
課題
さらなるプロアクティブな実践の拡大
21