Fundamental Chemistry 1 原子の構造 Ⅰ、原子を構成する粒子 (1)陽子(proton) 原子核内に存在する正の電荷を持つ粒子。 質量:1.673×10-24(g) 電荷:+1.602×10-19(C) (2)中性子(neutron) 原子核内に存在する電荷を持たない粒子。 質量:1.675×10-24(g) 電荷:0(C) (3)電子(electron) 原子核を取り巻く電子殻上に存在する負の電荷を持つ粒子。 質量:9.110×10-28(g) 電荷:-1.602×10-19(C) これらの粒子は上記のように固有の質量を持っているが、陽子と中性子の質量に比べて電子の質量はあ まりにも小さい(約 1840 分の 1)。このため、相対的に粒子の質量を考えるときは、陽子と中性子の質 量は非常に近い値のためこの2つの粒子の質量は 1 とし、電子は 0 とする(質量数の概念)。 同様に、相対的に電荷を考えるときは、陽子が+1、中性子が 0、電子が-1 とする。 質量(g) 比 電荷(C) 比 陽子 1.673×10-24 1 +1.602×10-19 +1 中性子 1.675×10-24 1 0 0 電子 9.110×10-28 0 -1.602×10-19 -1 Ⅱ、原子の構造 (1)立体構造 M 殻(電子殻) L 殻(電子殻) K 殻(電子殻) K 殻の外側に広がる殻。 最大収容個数 8 個。 L 殻のさらに外側に広がる殻。 最大収容個数 18 個。 電子の存在する 1 番内側の殻。 最大収容個数 2 個。 原子核 陽子と中性子が入っている。 図のように、原子は非常にすきまの多い同心球状の層状構造となっている。また、M 殻の外側には N 殻、さらにその外側には O 殻、P 殻、Q 殻と呼ばれる電子殻が順次存在している。 それぞれの電子殻に収容できる電子の最大個数は決まっており、次式で表される。 最大電子収容個数 = 2n2 (K、L、M…の順に n = 1、2、3…) (2)元素記号を用いた表記法 N Z A N … 質量数(陽子数+中性子数) Z … 原子番号(陽子数) 原子の構成を元素記号を用いて表記するときには、上のような表記法を用いる。中性子数は質量数から 原子番号を引けば求まる。また、中性原子では陽子数と電子数は等しい。 Ⅲ、電子配置と閉殻構造 (1)クーロンの法則(Coulomb's law) 荷電粒子間に働く力をクーロン力(静電気力)とよび、その大きさ F は次式で与えられる。 q2(C) q1(C) F = k× r(m) q1q2 r2 荷電粒子の電荷(q1、q2)が同符号であれば F が反発力(斥力)、異符号であれば引力として作用する。 (2)基底状態の電子配置 電子は電子殻に無秩序に配置されるのではなく、原則として内側の電子殻(エネルギーの低い電子殻) から順に規則的に配置されていく。この規則に従って配置された電子配置を基底状態と呼ぶ。 原子の基底状態の電子配置を原子番号の順に見ていくと、ある周期でよく似た電子配置(最外殻電子の 個数が同じである電子配置)をとる原子が出現することになる。最外殻電子数が同じである原子は化学 的性質が似ており、このことを表に示したものが周期表で、典型元素(1、2、12~18 族)は同族に属 する元素で互いに化学的性質がよく似ており、遷移元素(3~11 族)は同族に属する元素はもちろんの こと、両隣の元素とも化学的性質がよく似ている。 (3)価電子 最外殻の電子は化学結合に関与するため、原子の化学的性質を大きく支配する。このため、最外殻電子 のことを特に価電子(原子価殻電子)と呼ぶ。典型元素の価電子数は族番号の 1 の位の数字と等しく、 遷移元素は族番号にかかわらず価電子数は 2(まれに 1)である。また、希ガス元素は化学結合を形成 しないため、希ガス元素の価電子数は 0 とする約束になっている。 (4)閉殻構造 最外電子殻に電子が 8 個(ただし K 殻だけは 2 個)充填されたとき原子は安定化(反応性が著しく低 下)する。この状態を閉殻構造と呼び、希ガス元素はすべてこの状態になっている。 閉殻構造とは最外電子殻に最大収容個数の電子が充填された状態ではない。例えば、Ar 原子は K 殻に 2 個、L 殻に 8 個、M 殻に 8 個の電子が収容されているが、M 殻の最大収容個数は 18 個なので M 殻 にはまだ 10 個も電子が入る。しかし Ar 原子は非常に安定で化学結合を形成しないことから、最外殻 の収容電子数に余裕があるにもかかわらず、この状態で閉殻構造であることがわかる。 また基底状態では、最外殻が電子を 8 個以上収容できる電子殻(M 殻以降の電子殻)であっても、そ の電子殻が最外殻である時点では電子は最大で 8 個までしか入ることができない。ひとつの電子殻に 9 個以上の電子が入るようになるのは、その電子殻が最外殻ではなくなってからである。 Fundamental Chemistry 2 周期律 Ⅰ、周期律(periodic law) (1)周期律 元素を原子番号順に並べたとき、元素の化学的性質が周期的に変化する現象を周期律と呼ぶ。また、周 期的に変化する化学的性質は周期律をもつ(周期律を示す)と表現する。周期律をもつ性質にはいくつ か例があるが、特に重要なものは以下の4つである。 ①(第 1)イオン化エネルギー(Ionization Energy) 気体状態の中性原子から最外殻電子を 1 つ取り去って 1 価の陽イオンを作るのに必要なエネルギー。 大きければ大きいほど陽イオンになりにくい。有効核電荷が大きいほど、最外殻が原子核に近いほど大 きくなるので、同周期では右、同族では上へ行くほど大きくなる傾向を示す。最大値は He が取る (2371kJ/mol) 。 第1イオン化エネルギー(Ionization Energy) 2500 He Ne 2000 F Ar kJ/mol 1500 N Kr O H Cl C 1000 Br P S Be B Zn Ca Al Li 500 Co Ni Mn Fe Si Mg As Sc Ti V Cr Se Ge Cu Ga Na K 0 ②(第 1)電子親和力(Electron Affinity) 気体状態の中性原子の最外殻に電子を 1 つ取り込ませて 1 価の陰イオンを作る際に放出されるエネル ギー。大きければ大きいほど陰イオンになりやすい。ざっくりと見るのであれば、同周期では右、同族 では上へ行くほど大きくなる傾向を示してはいるが、実際はそれほど明瞭な周期性は示さない。最大値 は Cl が取る(349kJ/mol)。 第1電子親和力(Electron Affinity) 400 Cl 350 F Br 300 kJ/mol 250 200 S 150 O Se Si C Ni Cu Ge 100 H As P Li 50 Na V K Ga Sc Fe Ti He Be Co Al B 0 Cr N Ne Mg Ar Ca Mn Zn Kr ③電気陰性度(Electronegativity) 中性原子が最外殻電子を引きつける強さを数値化したもの。 原子が共有結合を形成したときに共有電子対を引きつける強さを相対値で表現したものをポーリング (Pauling)の定義と呼び、イオン化エネルギーと電子親和力の平均値を用いたものをマリケン (Mulliken)の定義と呼ぶ。特に断りがない限り、単に電気陰性度と言った場合は、ポーリングの定 義による値を指す。希ガス原子は共有結合を形成しないため、ポーリングの定義では希ガス原子には値 が定義できない。 有効核電荷が大きいほど、最外殻が原子核に近いほど大きくなるので、同周期では右、同族では上へ行 くほど大きくなる傾向を示す。最大値は F が取る(4.0) 。 電気陰性度(Electronegativity) 4.5 4.0 F 3.5 O 3.0 Cl N Br 2.5 2.0 S C H Se P B Fe Co Si Ti Al Be 1.5 Sc Mg 1.0 Li Na V Cr Ni Cu Zn As Ge Ga Mn Ca K 0.5 0.0 ④原子半径 原子の半径を表現する値には共有結合半径とファンデルワールス半径があり、どちらで考えるかによっ て値が変わる。基本的に同周期では左、同族では下が大きい。 入試ではイオン半径の比較の形で出題されることが多く、同じ電子配置を取っているイオンは原子核中 の陽子数が多いほど半径が小さい。 (例)Ne と同じ電子配置のイオン半径 O2- > F- > Na+ > Mg2+ > Al3+ また、同じ原子では M-> M > M+となり、同族原子のイオンは下のものほど大きい。 Ⅱ、周期表(periodic table) メンデレーエフ(Mendelejev、露)が提唱した(1869 年)もので、元素を原子番号の順に最外殻を周 期として縦軸に、電子配置を族として横軸に並べたものを周期表と呼ぶ(ただし、彼が最初に発表した 周期表は原子番号の順ではなく、原子量の順に元素を並べていた)。 化学を理解する上で周期表の見方がわかっていることは非常に重要。 The Periodic Table 1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 H He 水素 ヘリウム 1.008 2 3 4 5 6 7 18 4.003 凡例 H Li Be リチウム ベリリウム 水素 6.941 9.012 1.008 Na B …元素記号(斜体は常温で気体、下線付は液体) …元素名 …原子量 C N O F Ne ホウ素 炭素 窒素 酸素 フッ素 ネオン 10.81 12.01 14.01 16.00 19.00 20.18 Mg Al Si P S Cl Ar ナトリウム マグネシウム アルミニウム ケイ素 リン 硫黄 塩素 アルゴン 22.99 24.31 26.98 28.09 30.97 32.07 35.45 39.95 K Ca Sc Zn Ga Ge As Se Br Kr Ti V Cr Mn Fe Co Ni Cu カリウム カルシウム スカンジウム チタン バナジウム クロム マンガン 鉄 コバルト ニッケル 銅 亜鉛 ガリウム ゲルマニウム ヒ素 セレン 臭素 クリプトン 39.10 40.08 44.96 47.88 50.94 52.00 54.94 55.85 58.93 58.69 63.55 65.39 69.72 72.61 74.92 78.96 79.90 83.80 Rb Sr Y Zr Nb Mo Tc Ru Rh Pd Ag Cd In Sn Sb Te I Xe ルビジウム ストロンチウム イットリウム ジルコニウム ニオブ モリブデン テクネチウム ルテニウム ロジウム パラジウム 銀 カドミウム インジウム スズ アンチモン テルル ヨウ素 キセノン 85.47 87.62 88.91 91.22 92.91 95.94 [99] 101.1 102.9 106.4 107.9 112.4 114.8 118.7 121.8 127.6 126.9 131.3 Cs Ba ランタノイド Hf Ta W Re Os Ir Pt Au Hg Tl Pb Bi Po At Rn セシウム バリウム ハフニウム タンタル タングステン レニウム オスミウム イリジウム 白金 金 水銀 タリウム 鉛 ビスマス ポロニウム アスタチン ラドン 132.9 137.3 178.5 180.9 183.9 186.2 190.2 192.2 195.1 197.0 200.6 204.4 207.2 209.0 [209] [210] [222] Fr Ra Rf Db Sg Bh Hs Mt Ds Rg Cn Uut Fl Uup Lv Uus Uuo フランシウム ラジウム ラザホージウム ドブニウム シーボーギウム ボーリウム ハッシウム マイトネリウム ダームスタチウム レントゲニウム コペルニシウム ウンウントリウム フレロビウム ウンウンペンチウム リバモリウム ウンウンセプチウムウンウンオクチウム [223] [226] [261] [268] [271] [270] [269] [278] [281] [281] [285] [286] [289] [289] [293] [294] La Ce Pr Nd Pm Sm Eu Gd Tb Dy Ho Er Tm Yb Lu ランタン セリウム プラセオジウム ネオジム プロメチウム サマリウム ユウロピウム ガドリニウム テルビウム ジスプロシウム ホルミウム エルビウム ツリウム イッテルビウム ルテチウム 138.9 140.1 140.9 144.2 [147] 150.4 152.0 157.3 158.9 162.5 164.9 167.3 168.9 173.0 175.0 Ac Th Pa U Np Pu Am Cm Bk Cf Es Fm Md No Lr アクチニウム トリウム プロトアクチニウム ウラン ネプツニウム プルトニウム アメリシウム キュリウム バークリウム フェルミウム メンデレビウム ノーベリウム ローレンシウム [227] 232.0 231.0 238.0 [237] [244] [243] [247] [247] [257] [258] [259] [260] ランタノイド アクチノイド アクチノイド カリホルニウム アインスタイニウム [251] [252] [294]
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