文部科学省認可通信教育 「教育史」学習指導書 森 岡 伸 枝 大阪芸術大学短期大学部 通信教育部 「教育史」使用テキスト ●「教育思想史」 有斐閣アルマ/今井康雄 編 / 2010 年 科目の意義・目的 「 教 育 史 」と い う と 、み な さ ん は 難 し い イ メ ー ジ を も た れ る か も し れ ま せ ん が 、 子 ど も と は 何 か 、自 分 が 保 育 者 と し て ど う 生 き る の か 等 を 考 え て い く う え で 非 常 に 意 義 の あ る 科 目 で す 。な ぜ な ら ば 教 育 の 歴 史 を 学 び 、初 め て 皆 さ ん は 広 い 視 野 をもつことができるからです。 今 の 幼 稚 園・保 育 園 で の 実 践 は 、過 去 の 教 育 者 に よ っ て 積 み 重 ね ら れ た 思 想 や 理 論 に 基 づ い て い ま す 。も し 、皆 さ ん が 教 育 史 な ど の 学 問 を 学 ぶ こ と な く 、保 育 を 実 践 す る な ら ば 、そ れ は 単 な る 思 い 付 き の 保 育 に な っ て し ま い 、皆 さ ん 自 身 が 保育のありようを良くしていくことが難しくなるでしょう。 そ こ で ぜ ひ 、皆 さ ん に は 教 育 の 歴 史 を 学 び 、子 ど も あ る い は 保 育 者 の 在 り 方 を 考え、自分自身の子ども観や保育理念を築き上げて頂きたいと思います。 テキスト概要 学習の計画 以下のスケジュールでテキストの学習を進めてください。また、重 要な語句などについて示しましたので、そこを理解するつもりでテキストを読み、 時間を有効に使って学習してください。 第 1回 第 5講 コメニウス 85 ~ 96 頁 2 段 落 ま で 87 頁 「 あ ら ゆ る 人 に あ ら ゆ る も の を 」 コメニウスが注目される理由は、 「 誰 に 、何 を い か に 伝 達 す る の か 、と い う モ デ ル 」を 示 し た こ と に あ り ま す 。人 を 教 育 し よ う と し た 時 、 「 何 を い か に 」学 ん でもらうのかを保育者は常に自覚する必要があります。ここでは、コメニウス が幼児教育をどのように考えていたのかを学んでほしいです。 8 9 頁 「 ① 幼 児 期 」「 母 の 膝 」 9 0 頁「 ① の 段 階 で は 、さ ま ざ ま な 事 象 を 見 、聞 き 、触 れ 、味 わ う こ と を 通 じ 」 コメニウスは学校のプランを初めて打ち出したことで有名です。彼は学校を 年 齢 に よ っ て 分 け ま す が 、幼 児 期 と い う 初 期 の 段 階 で は 学 校 で は な く「 母 の 膝 」 が大事であると考えています。そして、幼児教育には感性・感覚の育成がふさ わしいと彼は考えています。ここに、現代の保育と通じるものを見ることがで きます。 9 1 頁 「 百 科 全 書 的 思 想 」「 知 識 の 系 統 的 分 類 と 体 系 化 」 93 頁 「 神 の 言 葉 が 記 さ れ た 聖 書 を 読 む こ と 」 また、彼は「百科全書」を考え、あらゆるものを人に教えることができると 信 じ て い ま し た 。彼 が 教 育 に 期 待 し た も の は 、人 々 が 聖 書 が 読 め る よ う に な り 、 キリスト教が広まることでした。コメニウスに限らず、ヨーロッパの人々の間 で教育が重視されていく根本には、キリスト教普及との関わりがみられます。 では、あなたは保育者として何を期待し、子どもに教育が必要であると考える のでしょうか。 第 2回 同上 「 図 絵 と 文 字 」『 世 界 図 絵 と い う 教 科 書 』 96 頁 ~ 1 0 4 頁 9 6 頁 「『 世 界 図 絵 』 は 、 世 界 初 の 絵 入 り 教 科 書 ・ 子 ど も 向 け の 絵 本 」 97~ 99 ペ ー ジ 1 0 0 頁 「 視 覚 的 な 図 絵 に よ っ て 事 物 を 描 写 し 、 (中 略 )書 か れ た 言 葉 の 世 界 へ と参入させる」 103 頁 コ メ ニ ウ ス は 「 近 代 教 育 学 の 『 祖 』」 104 頁 「 大 き な 時 代 の 変 化 の 中 で( 中 略 )あ な た が 考 え る も の と は 何 か ? 」 コメニウスは、キリスト教を広めるため、文字の普及が重要であると考えま し た 。そ の た め に 発 明 し た の が『 世 界 図 絵 』で す 。こ の 本 は 、98~ 99 頁 を み て わかるように、絵をみながら文字・文章を認識することができるような工夫が 凝 ら さ れ て い ま す 。こ の 本 が 世 界 初 の 絵 本 で 、大 人 用 と し て も 活 用 さ れ ま し た 。 保育現場では、絵本を用いて絵に基づき、子どもに言葉を伝えたりしますが、 それはまさにコメニウスの偉業を受け継いだものなのです。ここで皆さんは、 現代の絵本のもつ機能は何か、子どもに何を伝えるべきか、考えて頂きたいで す。 第 3回 第 6講 ロック 10 5 ~ 11 3 頁 2 段 落 ま で 109 頁 『 教 育 に 関 す る 考 察 』 11 2 ~ 11 3 頁 「家庭教育」 彼は教育の果たすべき役割は何かを考えた人物です。彼は家庭教育について 触れ、子どもに対する教育権を打ち出したことで有名です。また彼は家庭教育 を公的な役割を持つと考えていたところに特色があります。現代においても、 幼 児 教 育 の 目 的 の 一 つ は 5 領 域 の 一 つ 、「 人 間 関 係 」 の 育 成 で あ り 、 こ れ は ロ ックの思想と通じるものがあります。 第 4回 同上 「3 貧民教育」 11 3 ~ 1 2 2 頁 11 6 頁 「 白 紙 」「 タ ブ ラ ・ ラ サ 」 120 頁 「 教 育 と 遊 び を 結 び つ け よ う と す る 」 ロックは子どもを白紙にみたて、どのようなものも吸収できると考え、教育 の可能性を信じていました。このような子ども観は現代でもよく議論されてい ます。たとえば教育心理学の分野においても「学力は環境か遺伝か」というよ うな研究が積み重ねられてきています。保育者としてのあなたは、ロックの子 どものとらえ方(白紙)をどう思うのでしょうか。 第 5回 第 7講 ルソー 123~ 133 頁 1 段 落 ま で 1 2 4 頁 「〈 人 間 形 成 〉 と し て の 教 育 へ 。」 125 頁 著書『エミール』 126 頁 『 社 会 契 約 論 』 ここでは、ルソーが何を考えて、教育について語るようになったのかをみて ください。彼は、コメニウスたちのようなキリスト教のための教育ということ ではなく、人間形成を目的とする教育のありようを追求したところに特色があ ります。今回のテキストの範囲は、かなり専門的な内容が含まれますので、主 に 123~ 126 頁 を し っ か り 読 ん で い く と よ い で し ょ う 。 第 6回 同上 「 4. 人 間 の 教 育 」 1 3 3~ 1 4 2 頁 136 頁 「 自 然 人 と 子 ど も 」 137 頁 「 第 2 は (中 略 )感 覚 能 力 を 含 む 身 体 的 な 力 で あ る 」 『エミール』は大変有名な書物ですので、どのような内容なのかをテキスト から学び、余裕があれば原著を読んでみてください。当時は、育児のマニュア ル 本 と し て 普 及 し た ほ ど 、人 々 の 子 ど も 観 に 影 響 を 与 え た 書 物 な の で す 。ま た 、 ここで子どもを無垢なものと考えたところに、彼の思想の特色です。テキスト から、彼が子どもの教育を年齢ごとにどのようにとらえていたのかを学んでく ださい。 第 7回 第 9講 ペスタロッチとフレーベル 164~ 172 頁 1 6 6 頁 「 貧 民 の 救 済 を 生 涯 の 課 題 と 定 め 」『 隠 者 の 夕 暮 』『 リ ー ン ハ ル ト と ゲ ル ト ル ー ト 』『 白 鳥 の 歌 』「 シ ュ タ ン ツ 孤 児 院 」 169 頁 「 直 観 」 1 7 0 頁 「 最 初 の 教 授 者 は 母 親 で あ る 。」 171 頁 「 生 活 が 陶 冶 す る 」 ペスタロッチは、直観教授を打ち出したことで有名です。彼は幼児に言葉で 説明することよりも、目などの感覚に訴えることが有効であると考えていまし た。これは、現代の保育現場でも共感されることでしょう。また、彼は経験を 重視し、シュタンツに孤児院をつくり、子どもたちと共に田畑を耕しながら労 働の重要性を伝えようとしていました。このような考え方は彼の言う「生活が 陶冶する」に象徴されます。なお、陶冶(とうやと読む)とは、教育の類義語 です。 第 8回 同上 「2 フレーベルの幼稚園教育学とその影響」 1 7 3~ 1 7 7 頁 1 7 4 頁 『 人 間 の 教 育 』『 母 の 歌 と 愛 撫 の 歌 』 1 7 6 頁 「 乳 児 期 は 」「 自 己 の 内 面 を 表 現 す る 」 フレーベルは幼稚園の父と呼ばれるように、世界で初めて幼稚園を発明した 人物です。彼の著作は有名なので、キストに書かれている範囲で、書物のおお まかな内容を知っておいてください。 第 9回 同上 「 恩 物 教 育 学 」 1 77 ~ 18 2 頁 1 7 7 頁 「 恩 物 教 育 学 」「 神 か ら の 子 ど も へ の 贈 り 物 」 181 頁 「 東 京 女 子 師 範 学 校 附 属 幼 稚 園 」 フレーベルは幼稚園で遊びを重視し、 「 恩 物 」と い う 積 み 木 の よ う な も の を 発 明しました。保育現場ではどのような遊具がふさわしいか、常に課題となりま すが、フレーベルの恩物をみてみると大変興味深いことがあります。それは、 恩物が素材や形、数、形など変化をつけながら子どもが遊ぶように配慮されて いることです。また、恩物が非常にシンプルであることも特徴です。現代の子 どもの遊具を見ていても、素朴なおもちゃを好む幼児も尐なくありません。子 どもにとってよいおもちゃはどのようなものか、みなさんも考えてみてくださ い。 第 10 回 第 10 講 「 3『 新 教 育 』 と そ の 思 想 」 1 95 ~ 2 0 3 頁 195 頁 「 変 化 の 時 代 は 改 革 の 時 代 」 1 9 6 頁 「『 新 教 育 』 の 定 義 と 範 囲 」 1 9 7 頁 「『 子 ど も か ら 』 思 想 」 エレン・ケイ『子供の世紀』 1 9 8 頁 「 学 校 改 革 の 多 様 化 」「 ケ イ 」「 シ ュ タ イ ナ ー 」 新教育とは、近代の抱える多様な問題を解決する手立てとして取り組まれた 一 連 の 試 み で す 。ま た 、時 代 は 18 9 0 年 代 か ら 1 9 2 0 年 代 ま で を 指 し ま す 。端 的 に言えば、新教育とは、ルソーが目指してきた子ども中心主義の流れを引き継 ぎ、その考え方を発展させたものといえます。たとえばエレン・ケイは『子供 の 世 紀 』を 記 し 、2 0 世 紀 は 子 供 の 世 紀 と な る だ ろ う と 述 べ ま す 。こ の こ と が 世 界 に イ ン パ ク ト を 与 え た と い わ れ ま す 。彼 女 は 徹 底 し て 子 ど も の 権 利 を 主 張 し 、 親を選ぶ権利があるとまで述べているのです。また、シュタイナーは学校を設 立し、児童中心教育を実践した人物として知られています。保育を行うとき、 子どもの自主性を尊重することは多くの保育者たちの願いです。そのことを考 えながら、本章を読んでみてください。 第 11 回 第 14 講 デュ-イと新教育 26 5 ~ 2 7 1 頁 1 段 落 ま で 2 6 5 頁 「 シ カ ゴ 大 学 附 属 小 学 校 」「 進 歩 主 義 教 育 」 2 6 7 頁 「 学 校 と 社 会 」「 デ モ ク ラ シ ー と 教 育 」 269 頁 「 子 ど も の 依 存 性 は ( 中 略 ) 人 間 存 在 の 基 本 状 態 で あ っ た 」 「学ぶことを学ぶこと」 270 頁 「 ど ん な に た く さ ん の 経 験 を し て も 、 そ の 経 験 か ら 何 ら か の 指 針 ( 中 略)理知的なものにならないからである」 エレン・ケイ、シュタイナーのほかに新教育の思想家として有名なのがデュ ーイです。彼は、アメリカで起こっていた貧困や差別などを克服する手段とし て教育に着目します。彼は、教育方法をどのようにすれば、子どもが学ぶこと が で き る の か を 理 論 的 に 追 求 し た 人 物 で す 。 た と え ば 、「 学 ぶ こ と を 学 ぶ こ と 」 というように、彼はまず学びの習慣の形成が子どもの学習には必要であると考 えます。また、彼は指針のない経験主義は何も身につかないと考えています。 たとえば、保育では子どもの活動を重視しますが、そこに目標がなければ、単 なる思い付きの保育になります。 『 保 育 所 保 育 指 針 』に 基 づ い た「 ね ら い 」を も とに、こどもの発達に沿って、経験をさせることが大事なのです。デューイは まさにその「ねらい」の大切さを示した人物なのです。そのことを意識しなが ら本章を読んでください。 第 12 回 同 上 「 3 子 ど も と カ リ キ ュ ラ ム 」 271~ 276 頁 272 頁 「 子 ど も と 教 師 の 相 互 生 活 」 「教師の役割」を保育者の役割に置き換えて理解してください。自分の理想 の保育者像とかかわってくる部分があると思います。 第 13 回 同 上 「 デ モ ク ラ シ ー と は 何 か 」 27 6 ~ 2 8 1 頁 1 8 0 頁 「 進 歩 主 義 教 育 は 、 自 由 と 協 同 の 統 合 さ れ た デ モ ク ラ シ ー 社 会 (中 略 ) メ リ オ リ ズ ム で あ る 。」 彼の思想は進歩主義教育と呼ばれます。これは、人間の精神や文明・歴史な どが時を追って、より完全な状態に進歩するとする立場の思想です。このこと を理解することを念頭にテキストを読んでみてください。 第 14 回 第 15 講 新教育以後の教育思想 2 8 2~ 2 9 0 頁 「 教 育 基 本 法 」 ま で 2 8 4 頁 「 1 8 7 2 年 の 『 学 制 』」「 大 正 新 教 育 」「 沢 柳 政 太 郎 」「 成 城 小 学 校 」 2 8 5 頁 「 手 塚 岸 衛 」「 自 由 教 育 」「 明 石 女 子 師 範 学 校 附 属 小 学 校 」「 及 川 平 治 」 「 分 団 式 」「 木 下 竹 次 」「 合 科 学 習 」 2 8 9 頁 「 占 領 期 ( 19 4 5 - 52 年 ) に は 、 デ ュ ー イ 経 由 ( 中 略 )『 社 会 科 』 で あ った」 290 頁 コ ラ ム の 「 教 育 基 本 法 」 日本においても、新教育は実践されており、それは世界の試みに影響を受け ながらすすめられました。その流れを意識しながら、上記の語句に注意しなが ら読み進めてください。 日 本 の 学 校 制 度 が で き た の は 1972 年 の 「 学 制 」 に よ り ま す 。 こ こ で は 子 供 の興味・関心には全く注意が払われず、就学率は 5 割もなく、低い問題があり ま し た 。し か し 、子 ど も の 生 活 に 合 う よ う に カ リ キ ュ ラ ム 変 更 が 何 度 も な さ れ 、 就 学 率 が 9 割 を 超 え た の が 明 治 末 年 の こ と で す 。こ う し て 学 校 教 育 が 広 ま る 中 で 、大 正 期 に 入 り 、 「 新 教 育 」と い う 子 ど も 中 心 の 教 育 が 注 目 さ れ ま す 。そ の 後 、 日本は戦争を迎えていくなかで軍国主義教育がなされ、戦争に向けた合理的な 教 育 が す す め ら れ て い き ま し た 。 そ し て 敗 戦 を 迎 え 、 教 育 基 本 法 が 1 94 7 年 に 定められ、日本で初めての民主主義の教育制度が誕生していったのです。 第 15 回 同上「3 近 代 批 判 の 教 育 論 」 29 0 ~ 2 9 6 頁 292 頁 イ リ イ チ 『 脱 学 校 の 社 会 』 2 9 4 頁 ア リ エ ス 「〈 子 供 〉 の 誕 生 」 近代以降は学校が普及し、子どもの教育に関心が向けられてきましたが、 1 9 7 0 年 代 に 入 る と 、こ れ ま で の 教 育 を 批 判 す る 動 き が 出 て き ま す 。そ れ が 、イ リイチです。彼は、学校の機能に着目し、その画一性、合理主義を徹底的に批 判していきます。彼の思想は世界にインパクトを与え、教育、学校とは何かを 人々に改めて考えさせることになりました。折しも日本では、高度経済成長を 迎え、学歴主義、お受験のブームなどが繰り広げられ、様々な教育のゆがみが 指摘されており、日本でもイリイチの思想は注目されていました。 そ し て 、ア リ エ ス は 『〈 子 供 〉の 誕 生 』を 著 し 、 近 代 教 育 の 原 点 を 解 明 し 、 子 ど も が 発 明 さ れ て い く 歴 史 を 描 き ま し た 。そ こ で 、現 代 の 多 く の 人 が 感 じ る「 子 どもが愛らしい」という感性は、当然のことではなかった、歴史的につくられ てきたことを明らかにしました。この本により、子どもとは何か、教育とは何 かを人々に考えさせられることになったのです。 テキストの補足・解説 補足 以下の人物・事柄は保育者にとっては必須の知識であるため、しっかり覚えて おいてください。 モンテッソリー もと医師であり、知的障害児への感覚教育を行い、教育効果を証明したことで 有名です。彼女が感覚教育を重視したのは、知的発達よりも感覚の獲得が先行す ると考えたからです。また、モンテッソリー教育とは、子どもの遊びを通して、 人として必要な基本的生活習慣を獲得させながら、知的発達、身体の諸機能の発 達を促そうというものです。 また、彼の貧困層の子どもを対象とした「子どもの家」での実践は、全世界へ 影響を与え、今でも各地でモンテッソリーの手法に基づく幼児教育が展開されて います。なお、彼女のユニークな幼児教育方法(感覚教育)は、現在の障害児教 育にも受け継がれています。 倉 橋 忽 三 (18 8 2 - 1 9 55 ) 彼の「生活を生活で生活へ」という言葉に代表されるように、彼の打ち出し た保育観は、幼児の立場に立つもので、当時の保育士中心の保育のありようを 戒めるものでした。彼は「誘導保育」を主張し、子どもの自主性を引き出し、 遊びを発展させることこそが保育士の使命であると考えていました。このよう な考え方は保育士中心であった当時の保育界では革命的であり、現在の五領域 でいうところの「環境」と非常に似ています。そして、保育士が指示するので はなく、子どもに促すという立場をとることを倉橋は重視していたのです。そ の意味で、彼の思想は現代の保育理論の源流であるといえます。著作は『幼稚 園 雑 草 』『 育 て の 心 』 な ど が あ り ま す 。 東京女子師範学校附属幼稚園 明 治 9 年 に 設立 され た 日 本初 の 官立 幼稚 園 で 、現在 の お茶の 水 女 子大 学 付属 幼 稚 園 の 源 流 で す 。関 信 三 を 監 事 と し 、ド イ ツ 人 の 松 野 ク ラ ラ を 首 席 保 母 と し 、 豊田芙雄らを保母としてフレーベルの幼稚園を模範とする幼稚園保育を開始し ました。開園当初の付属幼稚園では、園児は上流階級の子女が大部分を占めて いました。ただ、当時の保育方法は海外の翻訳の本や遊びを取り入れたため、 子どもの生活にはなじみにくいものでした。また、恩物については児童の遊ぶ ままに任せるのではなく、保育士が幼児を教え導くという立場をとっていまし た。後にこれを改め、児童の興味や関心といった発達の観点から保育を改革し たのが、倉橋忽三です。 リポート・試験の書き方 Ⅰ リポートについて 以下のことを遵守してください。 1. リ ポ ー ト 課 題 の タ イ ト ル は 必 ず 明 記 し て く だ さ い 。 2. 課 題 に 対 す る 答 え を 書 い て く だ さ い 。 3. 各 リ ポ ー ト は 1200 字 程 度 で 書 い て く だ さ い 。 4. 一 文 の 長 さ は 50 字 程 度 が 目 安 で す 。 そ れ 以 上 長 く な る と 、 主 語 と 述 語 が わ かりにくくなりますので注意してください。 5. 段 落 分 け は 必 ず 行 っ て く だ さ い 。 6. 下 書 き 7. 序 論 あらかじめ箇条書きの下書きをしてから書いてください。 本論 結論の構成にしてください。 序論・・・何について書くのかを示す 本論・・・具体的中身を展開する 結論・・・全体をまとめあげる 8 . リ ポ ー ト 作 成 に 関 す る 情 報 を ネ ッ ト で 探 し な が ら 、し っ か り し た 構 成 の リ ポ ー ト に し て く だ さ い 。た と え ば 大 学 生 の リ ポ ー ト に つ い て は 以 下 の よ う な サ イトがあります。 h ttp ://www.r e p o r t.gu s o ku .n e t/kih o n /rep o rtyo u s i .h tml h ttp ://www.r e p o r t.gu s o ku .n e t/kih o n /ko use i .h tml こ の ほ か 余 裕 が あ れ ば 、鹿 島 茂『 勝 つ た め の 論 文 の 書 き 方 』 (文 春 新 書 ) [ 新 書 ] 、 2003 年 も 参 照 し て く だ さ い 。こ の タ イ プ の 本 は た く さ ん 出 版 さ れ て い ま す の で 、 いろいろと読んでおけば、実習記録の作成時にも役に立つと思います。 Ⅱ 試験の解答 1. 字数 各 設 問 ご と に 6 0 0 ~ 80 0 字 で 書 い て く だ さ い 。 短 す ぎ る 回 答 は 点 数 が低くなります。 2. 注意! 課題にきちんと答えてください。 リポートあるいは試験の採点について ①字数数制限を守ってください・・・字数が尐なすぎる、多すぎる場合は採点 できません ②課題に正確に答えている・・・課題に対してしっかり答えてください ③論旨が明確である・・・序論本論結論という流れで書いてください ④教育学的(学問的)根拠に基づく。・・・自身の体験、テレビなどの内容を 中心に書かないこと。あくまでも教育学の知識で書くこと。 この観点に沿った、採点基準は以下の通りです。 優 ・・・課題にしっかり答え、非常に読みやすい 良 ・・・課題にはまずまず答えているが、わかりにくい言葉がある 可 ・・・読みにくい文章ではあるが、課題の答えがある 不可・・・課題の答えがない。説明不足が目立つ 参考文献の紹介 テ キ ス ト の 305 頁 以 降 に は 、 参 考 文 献 が 記 載 さ れ て い ま す 。 そ れ を 参 照 に し て く だ さ い 。 特 に 、 上 笙 一 郎 ・ 山 崎 朋 子 『 日 本 の 幼 稚 園 』( 筑 摩 書 房 、 1 99 4 年 ) は 名 著 で す の で お 勧 め し ま す 。
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