ジェンダーと文明 4 2013年度 南山大学 総合政策学部 浜名優美 17,18世紀フランスの女性観 プーラン・ド・ラ・バールの対極にいる人々 フェヌロン『娘の教育』1687 17世紀 神父 プーラン・ド・ラ・バールと同時代だが、影響 力はフェヌロンの方が大きい 「何よりも懸念すべきことは、滑稽な女学者 をつくることだ。一般に女性は男性よりもひ 弱だが、好奇心が旺盛だ。したがって女性 が夢中になりそうな学問研究に参加させる ことは言語道断である。 フェヌロン(続き) 「女性は国家を統治することにも戦争を行な うことにも献身的な役職に就くことにも向か ない。 「ほとんどの工芸にも不向きだ。女性は温和 な実務に向いている。その反対に自然は女 性に分け前として、家の中で静かに暮らす ために清潔さと管理の能力を与えた。 →女性=家庭 ジャン・トマ(1625-95) 「女性であるというだけの理由により、種々 の契約と資格に関して、法的無能力者であ る。」 モリエール(喜劇作家、1622-7 3) 1659「才女気取り」 1662「女房学校」 1672「女学者」 「タルチュフ」「人間嫌い」「守銭奴」「町 人貴族」など ←数学など知的な遊びに熱中する女 性を揶揄 モリエールと女性 プレシオジテ(言葉や表現における気取り) 17世紀のサロン(言葉の純化など)、 18世紀のサロン(政治、宗教、学問) 身分違いの結婚 学問に熱中する女性を批判 絶対主義の時代:三位一体、神と精霊と子 女性は排除される 18世紀 フランス サロンの時代 大貴族の女性、サロン、政治権力 タンサン夫人 デュ・デファン夫人 ポンパドゥール夫人(ルイ15世の愛人) デュ・バリ夫人 ジョフラン夫人(百科全書派の保護者) マリー=アントワネット(ルイ16世の王妃) 中産階級 女性労働者、家庭と工場(資本制工場) 女性の5分の4は文盲 18世紀 フランス 18世紀フランスの風俗、貴族における男と 女の関係―――自由 性の解放であると同時に堕落 ラクロ『危険な関係』(書簡体小説) 風俗の退廃 女性解放が背景にある 拙論「母性本能の起源と解体」(現代思想) 私生児、捨て子、乳母、死亡率、など モンテスキュー(1689-1755) 『法の精神』 男性上位の我々の帝国は、正真正銘の暴 虐国家である。女性はわれわれ男性よりも 柔軟なので、その結果、ずっと人間的で理 性的であるためわれわれに暴虐を許してい るに過ぎない。 もしわれわれ男性に分別があったら、これら の長所のおかげで女性は男性より優位な地 位を与えられたかもしれない。 モンテスキュー(続き) 『ペルシャ人の手紙」(1721) 「我々が女性に対して行なっている支配は、 正真正銘の圧制である。・・・我々はあらゆ る手段を用いて、女性の勇気をくじいている のだ。もし教育が同等に行なわれるならば、 力も同等になるであろう。」 「女性」---『百科全書』1766 女性を男性のできそこないとしてある種の方 法で眺めるのは解剖学者だけではない。プ ラトン主義者も非常によく似た考え方を示し ている。 子宮は男性にはなく、女性にだけある器官 だ。しかしギリシアの解剖医ガリエンは男性 に子宮が欠けているとは考えなかった。彼 は子宮がひっくり返って陰嚢を形成し、外側 に見える睾丸を包含していると考えた。 「女性」(続き) 自然は男性に支配権を授けたようだ。 ディドロ(1713-84)の女性論 百科全書派 「女性」-「女性の証言は軽率で変わりやす い」と見なされるがゆえに、男性の証言より も軽視される。 妻の姦通は刑罰の対象-19世紀ナポレオ ン民法典まで ディドロ(続き) 文明民族においては、いささかなりとも女性を虐待 する男性は必ず罰せられるべきである。 →女性 に対する理解ある態度を示す 女性の教育-「若い娘たちを予備知識のある人間、 危険を識別する能力を持ち、母親および市民とし ての義務をわきまえ、科学と育児学の広範な知識 を備えた人間に育てるべきである。」 ヴォルテールの女性観 シャトレ侯爵夫人との恋愛関係においては、男女 の教育の平等を推進 「女性は、われわれ男性のなしていることすべて をなしうる能力がある。女性と我々の間にある唯 一の相違点、それは女性のほうがより優しいという ことである。」 未婚の母を擁護(「未婚の母がひそかに出産でき るような施設を作るべきだ。」) 寛容 バダンテール『ふたりのエミリー』 学問に生きたシャトレ侯爵夫人(1706-4 9) ヴォルテールの恋人、ニュートンの翻訳者 子供の教育に熱心なエミリー(デピネー夫 人)、ルソーの影響 コンドルセ 本物のフェミニスト 男女平等の教育 私生児 私生児、避妊、羊の腸、交接中断 医学知識はなし。 妊娠届け書(アンリ2世による王令以後)、 未婚の母 医学、生理学のまなざし 子どもの価値 愛情、平等、自由 家族 農業重視の政策、人口増加、人手、非常事態の場 合には兵力 死亡率を低下させる予防医学、牛乳による栄養 参考文献 フィリップ・アリエス『子どもの誕生』(19 60) 藤田苑子『フランソワとマルグリット』同文館 里子が多かったことから母性愛の欠如を言うバダ ンテールの議論は粗雑との藤田苑子による批判、 なるほどその通り。 以下、ルソーによる近代家族像の創出 18世紀フランス ルソーの『エミール』 近代的女性像の確立 『エミール』の付録における女性の理想像 (ソフィー)は18世紀後半から200年にわた る近代的家族のモデルとなるが、現代の フェミニズムから見れば、悪の根源 フロイトに引き継がれる女性像 ジャン=ジャック・ルソー(1712- 78) アンチ・フェミニスト 近代的家族像を提示、男は外、女は内 『エミール』の妻になるソフィー フランス革命後の女性観に強い影響 ルソー、ヘーゲル、フロイトの系譜(男性中 心主義) ルソー (続き) 科学、語学,神学、歴史は彼女にとって無用 なだけではなく、有害である。 彼女が知るべきことは家事の技術と針仕事 だけである。 彼女には話し手を喜ばせる才気だけが必要 だ。 男性は外、女性は内、これこそ自然の法則 である。
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