P2公開セミナー2015 試作機 概要紹介

No.1
食の安心・安全技術開発
グループ
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農産物等に残留する農薬の量を測定することはとても重要です。ところが、極めて微量
あいうえお
の残留農薬を、短時間に測定することは簡単ではありません。そこで、我々はみなさん
の食卓に安全な農産物をお届けするため、光を使い、迅速に、微量の残留農薬を測定
できる装置として、「分光式残留農薬測定装置」を開発しています。その原理、開発状
況などを紹介します。
より手軽に、どこでも使える残留農薬測定装置を。モバイル型測定装置はそういった
コンセプトの下、ハイエンドモデルと位置づけ、卓上型から派生する形で開発されて
います。農薬の分析は大がかりな装置を使い、検査室で専門知識を持った技術者が
測定する印象が強いかもしれません。しかし、開発中の測定装置は、流通経路のどこ
でも使用できるようにコンパクトな装置です。
使用前
発色後
上記の装置と同様に、農産物等の残留農薬検査を目的とした簡便なキットを開発
しました。残留農薬検査は現在、分析機関への委託によって行う方法が主流です
が、コストと日数がかかります。そのような問題を解消するために今回開発した
キットには、
「迅速、簡単、安価」が特長であるイムノクロマト法を用い、しか
も目で見て濃度を判定することもできます。
GC-MS を利用して複雑な成分からなる食品中の微量農薬を調べるには、これまで熟
練した検査技術者を必要としていました。GC-MS 用の本パッケージでは、農薬の各種
情報があらかじめ登録されており、専門的なスキルがなくても簡易かつ迅速に数百種
類もの農薬を網羅的に検出でき、高精度な残留濃度の計測が可能となりました。ま
た、農薬標準品を用いずにスクリーニング定量が可能となることから、農薬標準品の
購入・管理コストの削減にも貢献するものと期待されます。
No.2
グループ
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食の安心・安全技術開発 プロジェクト
GC-MS、LC-MS で食品を検査する際の前処理キットを開発しました。食品に含まれ
る微量の残留農薬を検査するためには、先ず細切均一化した試料を作成することが
重要です。ドライアイスを使いながら簡単な予冷操作、粉砕装置(フードプロセッサ
ー、断熱容器構造)で凍結粉末試料を作製(大量処理も可能)し、粉砕時に発生する
妨害物質抑制、丌安定な農薬の分解抑制などを実現しました。
GC-MS のキャリアガス中に微量の農薬安定化剤を導入することで、GC 本体(インサ
ート、カラム、及びイオン源)内での農薬の熱分解を抑制し、農薬類の定量的な検出
部への導入を可能とすることで、GC 本体へ負荷をかけないで農薬一斉分析での測
定精度の改善を実現しました。
GC-MS を用いて、食品中の微量の残留農薬を分析するために、食品中に大量に存
在する夾雑成分(妨害成分)を分離除去する必要があります。分離のメカニズムが異
なる GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)、SPE(固相抽出)を用いて、妨害物質と農薬
を分離精製するため、それぞれの食品別に適した分離精製プログラムを事前に作成
し、入力画面でそのサンプルを選ぶだけであとは自動で連続的に試料を精製する装
置を開発しました。自動化によって分析者の技術レベルによる差をなくし、GC-MS な
どの分析装置の前処理装置として分析精度向上、安定性にも寄不します。
LC-MS を用いて食品の残留農薬を検査する際、食品の抽出液(検査試料)から透析
法による分子篩(ふるい)効果で分子量 1,000 以上の夾雑成分を除去する検査前処
理装置を開発しました。その溶液を直接高速液体クロマトグラフィー質量分析計
(LC-MS)に投入することで残留農薬一斉分析を可能とするインライン装置を開発し
ました。従来の残留農薬分析は、精製工程が律速であり、本装置により分析時間の
飛躍的短縮が可能になりました。
No.3
食の安心・安全技術開発
グループ
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蜂群崩壊症候群の原因物質としての嫌疑が掛けられているイミダクロプリド等のネオ
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ニコチノイド系殺虫剤に対し、農産物等の抽出液から直接 ppm レベルでの測定可能
なイミダクロプリドの専用モニタリング装置を開発しました。
食の安心・安全技術開発
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常温高感度磁気センサーを使用することにより、従来式金属検出機並みの低価格化
で高精度な固形食品用磁性金属探知機を開発しました。従来式の金属検査装置と異
なり、食品の性状(水分、塩分等)に殆ど影響されないため、誤検出が尐ない安定し
た検査が可能です。本プロジェクトで開発した実証機をベースとして商用機を開発
し、昨年から検査機の販売を開始しました。検出性能が高く評価され、大手食品製
造会社に多数導入されています。今回、販売中の検査機を紹介します。
固形物が含まれる液状食品に混入した磁性金属異物を検出するための検査機を開
発しました。固形食品用検査機と同様に、常温高感度磁気センサーを使用しました。
膜濾過による異物除去が困難な固形物(果肉など)を含む液状食品や、粘度の高い
液状食品でも、高感度に金属異物を検出することが出来ます。本プロジェクトで試
作した実証機をベースに、センサを FG タイプに変更した商用モデルを開発し、昨
年末より販売を開始し、大手食品製造会社に導入して頂いております。今回は、試
作機を紹介します。
固形物を含む液状食品が充填された、業務用ペットボトルの検査に特化した磁性金
属異物検査装置です。常温高感度磁気センサーを用いた固形食品向けや、液体食品
向けの検査装置開発で得られた信号処理技術や、超伝導式食品金属異物検査装置で
用いられている磁気シールド技術などを応用し、装置開発をしました。その結果、
従来式異物検査機で検査が困難であった、ドレッシングなどの業務用ペットボトル
で高感度な金属異物検出が出来ます。検出性能を高く評価して頂き、大手食品製造
会社に導入して頂くことが出来ました。
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食の安心・安全技術開発 プロジェクト
高温超伝導を利用した超高感度磁気センサを使用することにより、従来検出が
困難であった微小な磁性金属片を検出できます。磁気センサを使用しているため、
水分や塩分濃度、温度に影響されず高感度な検査が可能です。試作した装置では、
厚さ 100mm の食品で φ300μm 程度の鉄金属片の検出が出来ました。磁気セン
サに近づくほど感度が高くなるため、厚みの薄い食品では更に細かな鉄系金属の検
出が可能です。今回、試作機と研究状況について紹介します。
超伝導を利用した超高感度磁気センサを使用することで、医用 MRI 装置より超低磁
場における信号を検出、信号強度の分布を画像化(MRI)できます。1.磁石が小型に
なり、2.水の緩和時間 T1 のコントラストが大きくなる、3.共鳴周波数が数 KHz と低く
なるのでアルミ箔をラミネートした袋内からの信号も検出できる、などの特徴があり
ます。無機、有機を問わずいろいろな性状の食品中の固形異物検出の可能性が期待
されます。実験状況を紹介します。
食品中に固形の非金属異物が混入している場合、磁気や電磁波を使った検出が難し
く、通常丌透明なことが多いことから光による方法も限界があります。光に比べ空間
分解能は高くないものの比較的食品(固形、液状)の奥まで透過し、硬さや散乱に関
する情報が得られる超音波を用いて、他の方法では検出困難な固形物の検出を目指
します。食品中に超音波を入射し、その透過波や反射波の強度から作成した可視化
画像で、固形異物(有機異物も可能)の検出を可能にします。レトルト食品のような包
装があってもある程度対応可能です。デモを実施します。
食品に混入した固形異物を、NIR(近赤外光)を使って検出する検査装置です。
既存の X 線検査装置では検出が困難だった食品中の有機性異物(例えば、毛髪、昆虫、
プラスチック片)も検出可能です。ベルトコンベアで搬送される食品に NIR を照射して得
られる透過像を特殊カメラで撮影し、得られた画像を解析して、異物の有無を判定しま
す。ベルトコンベア幅 300mm、速度 20m/分で 0.1mm の解像度で表裏両面同時に検
査可能です。今回は、身近な食品サンプルを使って、異物検出のデモを行います。
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食の安心・安全技術開発
テラヘルツ波の高い透過性を活かしたイメージング異物検査装置です。特徴は従来の
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X 線異物検査装置、金属検出機対比分解能は落ちますが、従来検出困難な有機物の
検出及び水分含有率の尐ない食品(チョコレート、粉食品、油食品等)、樹脂包装されて
いる食品、厚みのある食品中の異物検査が可能です。検出器の精密な特性評価を行
い、測定ダイナミックレンジ、画像分解能等の特性に関して昨年度に比べ大幅な向上を
達成しました。今回、研究状況を紹介します。
食の安心・安全技術開発
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食品衛生検査で用いられる培養法において、結果を確認するまでの時間短縮を目的とし
た装置開発を行っています。装置は、メンブレンフィルタ培養法において、蛍光試薬を
利用することで、目視では確認できない微小サイズの微生物コロニーを高感度に測定す
ることができ、特長として食品由来の混入異物に対する高精度な識別が可能です。
また、測定は非殺菌的に行われるため検査後に再度培養が可能で、結果の目視による再
確認や、釣菌や同定等の操作を行うことができます。今回、試作機の展示と、実サンプ
ルを用いた測定データや測定手法を紹介いたします。
食品の微生物検査においてホモジナイザーにより破砕された検査用食品試料には、食
品残渣や色素、塩分など検査を阻害する物質が含まれています。本装置では、検査の
前処理として、試料に含まれる食品成分と微生物とをまず分離します。次いで、試料
中の微生物を濃縮することにより、検査を実質的に高感度化することができます。本
装置は全自動化、簡単操作を特徴とし、既存の様々な検査法の前処理としても対応
可能です。
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グループ
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食の安心・安全技術開発 プロジェクト
強い耐熱性を示す細菌胞子(芽胞)は、原材料や製造工程で食品に混入した場合に
通常の加熱殺菌では容易に殺滅することが困難であり、そのモニタリングは食品製
造過程における衛生・品質管理に重要な課題と言えます。胞子の水分含量は栄養細
胞と比較して極端に低く、両者は光学的に明確な区別が可能であるため、本プロジ
ェクトではこの性質を利用して液状食品、および可溶化可能な粉末食品や砂糖等の
副原料に混入した細菌胞子(芽胞)の計数測定が簡単な操作で可能な装置を開発し
ています。
MALDI-TOFMS 装置を利用し、食品中の食中毒菌を株レベルまで識別可能なソフト
ウェアを開発しました。現在主流の指紋照合による微生物同定は、種までの同定が
限界であり、遺伝子の塩基配列解析などは時間がかかるという問題がありますが、
ゲノミクスとプロテオミクスを組合わせたプロテオゲノミクスという新規な微生物
識別法を特徴とする S10-GERMS 法を基盤とした本方法によって、細菌の亜種・株
レベルでの精密な識別が迅速・簡便に可能となりました。現在対応可能なバイオマ
ーカーの拡充を実施しています。
食品中の食中毒菌を非培養で迅速に検出することを目的としています。食中毒菌に
対する特異抗体と近赤外蛍光を発する特殊ガラス粒子をプローブ(目印のようなも
の)として、菌を検出する新しい検査方法と装置の開発を実施しています。近赤外の
蛍光を目印とすることで、従来の抗体を使った検査技術よりも高感度化(微量の菌の
検出)を目指しています。