第 3 学年 図画工作科学習指導案 1組 指導者 河合 清志 (男子 13 名、女子 10 名、計 23 名) 1 題 材 名 ある 2 ある アルミで あ・そ・ぼ 題材について ○ 児童の造形体験 1学期には、子供たちの実態をつかむとともに多種多様な造形体験をさせたいと願い、いろ いろなことに楽しく取り組んだ。家族を紹介する絵を描いた「○○している家族」、飛び出す仕 組みを利用した「飛び出す絵本」(遠足で行った大島町児童館にて)、ハサミをうまく使いなが ら 1 枚の画用紙をできるだけ長く切った「できるだけ長く切ろう」、カラフルで光沢のあるチ ラシを切ってつないで教室中に蜘蛛の巣のように張り巡らせた「チラシで遊ぼう」、題材名から 想像を膨らませ、絵の具でいろいろな線を描き、それを何かに見立てて持ち寄った材料を貼り 付けて半立体に仕上げた「ぐるぐる かくかく」、風の力で動く楽しい工作「風パワー全開」、 絵の具を練り込んだ紙粘土の特性をいかしてつくった「カラフル粘土の国へようこそ」、透明な 袋に詰め物をして立体をつくった「袋を使って」、たった1枚の画用紙を木工ボンドとハサミだ けで、高く立つものをつくった「できるだけ高く立つものをつくろう」 、水彩絵の具の混色や重 色のおもしろさを感じた「オリジナルカラーでハンドスタンプ」である。流木で何かをつくろ うと海岸で材料集めもした。 2学期には、運動会で掲示するために不織布でつくった旗「マイ・フラッグ」、ビー玉などの 球に絵の具をつけて画用紙の上を転がして描いた【転がし絵】 、垂らした絵の具をストローから 吹き出る息で吹き飛ばした【吹き絵】、洗剤と木工ボンドを混ぜた絵の具をストローの息で泡立 て描いた【あわ絵】、それらの跡を利用して濃い色の画用紙におもしろい宇宙世界をつくり上げ た「不思議なスペース・ワールド」に取り組んだ。初めての【転がし絵】【吹き絵】【あわ絵】 の表現方法にとても興味をもち、楽しみながら取り組んだ。毎週火曜日と金曜日には、造形タ イムと称した朝活動の時間を設定し、折り紙細工やクロッキーなどのミニ造形に取り組んだ。 15分間の短い時間を利用して、造形活動の日常化をねらった。学習発表会に出品するために、 1学期に拾い集めた流木を使った造形にも、今後取り組んでいく予定である。 これらの造形体験から、自分の発想の大事さ、工夫する楽しさ、色や形のおもしろさ、素材 の特性、友達のよいところをまねることのすばらしさ、表現方法の多様性、ハサミやボンド・ のりなどの用具の正しい扱い方、身の周りに造形素材がたくさんあることなどを体験し、図画 工作科の学習が大好きになってきている子供たちが目の前にいる。 ○ 教材について 本題材は、どこの家庭にもあり、手軽に手に入り、おにぎりを包むなど、子供たちの身近に あるアルミホイルを主材料とした造形活動(造形遊び)である。 アルミホイルはぴかぴかに光る面(ブライト面)とつやのない銀色の面(マット面)がある が、表裏はない。物を包み込んだり、包んでからその芯材を取り除けば型を取ったりできる。 容易に形を変えることができ、3 年生の子供たちにもたいへん扱いやすい材料であり、丸める、 ねじる、広げる、型を取る、ちぎる、つぶす、延ばす、巻くなど工夫して、アルミホイルとい う材料の可能性に挑戦できるだろう。ちょっとしたことで破れたり穴が開いたりするものでも あるが、上手に扱えば、丸めてしわしわになっても広げ直すこともできる。接着剤がなくても、 ねじったり重ねたりすれば容易につなぎ合わせることができる。 このアルミホイルを使って、広い空間のあるコモンスペースで思い切り活動できるようにし たいと考えた。大きなピアノを包んだり、一輪車を巻いてみたり、階段の上から転がしてみた り、2階から垂らしてみたり、転がし延ばして床に敷き詰めたり、ミイラのように体にぐるぐ る巻きにしてみたりするだろう。また、身に付けるベルトやネックレス、帽子やメガネなどを つくり始めたり、広げたアルミホイルにマジックで絵を描き始めたり、ガラスに貼り付けてみ たり、こだわりをもって作品つくりに取り組んだりすることが予想される。たくさん準備した アルミホイルと十分ふれ合い、友達と一緒に、体全体を使ってダイナミックに活動できるよう にしたい。 ○ 造形活動について 子供が主体になって、友達同士のかかわりや材料とのかかわりから、発想を刺激し合って造 形活動を豊かにすることが大切であると考える。材料と十分かかわって、自分だけで楽しく活 動する。友達とかかわって、協力して一緒に活動したり、逆に友達と違う活動を考えたり、今 までしたことのない活動を考えたりする。一人ではつくれないものをつくったり、友達と一緒 につくる楽しさを味わったり、友達の活動を見て楽しんだりする。 活動場所は、造形活動の楽しさを決める大きなポイントの一つとなるだろう。今回使用する コモンスペースは、吹き抜けの空間があり、自然光がたくさん入り込み、かなり広い場所であ るので、造形活動にはもってこいの場所であると考える。また、材料の量も、造形活動の楽し さを決める大きなポイントになるだろう。今回は、市販されているアルミホイルを大量に準備 した。家庭では、お金を出して買ったものであり、古新聞などのようにもういらなくなって自 由に使えるものとは違い、初めのうちはもったいなさを感じながら恐る恐る活動を始めること も予想される。しかし、銀色の金属的な輝きや冷たさ、簡単に形を変えられる不思議さ、長さ を利用する楽しさなどを十分に味わってくれるだろう。 3 題材の目標 ・ アルミホイルの特性を感じながら、包んだり巻いたり組み合わせたりして、全身を使っての 造形活動を楽しむことができる。 ・ コモンスペースをうまく利用し、友達の表現を感じながら、多様な表現活動を展開すること ができる。 ・ (造形への関心・意欲・態度) (発想や構想の能力) アルミホイルの特性をいかした自分の表現方法を工夫することができる。 (創造的な技能) ・ 自分や友達の表現のよさやおもしろさに気づき、それを楽しみながら見ることができる。 (鑑賞の能力) 4 研究主題との関連 (1) 仮説1から 題材や単元構成を工夫して、ものとのかかわりがより深まるようにすることで、自分の 思いを大切にしながら造形活動に取り組むことができる。 アルミホイルという材料は、どこの家庭にも身近にある。銀色にきらきら輝いて美しく、 金属としての硬さや冷たさも感じさせる。また造形材料としては可能性に富んだものである と考える。 これまで子供たちは、遊びに使った経験はほとんどない。おにぎりを食べた後に丸めて、 投げ合った程度である。今回そのような子供たちに、大量のアルミホイルを準備し、思い切 り造形活動に取り組むことができるようにした。 アルミホイルを用いた造形活動に期待をもち、胸を高鳴らせて活動に入り込めるように、 題材との出会いを大切にしたい。初めに、楽しい活動を予感できる空間に出会わせる。そし て題材名の提示を工夫したい。 そこで、四方小学校ならではの広く吹き抜けた空間をもつコモンスペースを利用して、活 動する。頭上の空間を使って、上から下へ、また下から上へ、常設してあるピアノや一輪車 をも利用し、広い場所で思い切り、光や風や音との融合を感じながら楽しむことができるだ ろう。 一般的に造形活動は、一定の時間続けて学習することが多い。しかし、今回は第一次の活 動の後、さらに活動意欲や新たな可能性を高めて第二次に入るようにし、造形活動の学習過 程の可能性をも探りたい。そうすることで、自分の思いを大切にしながら、ダイナミックな 活動が展開できるであろうと考える。 (2) 仮説2から 人とかかわり合う場を大切にした学習過程を工夫することにより、子供は自らの表現の よさを発揮し、想像力を働かせながら、自分の表現の可能性を追究することができる。 『人とのかかわり』を、≪自分の感性や感覚に必要な情報を、友達や教師に積極的に求め る姿≫ととらえたい。そして、かかわりがより深まるように、活動の振り返りを大切にする とともに教師の支援を受けて、さらに活動意欲が高まるように活動を展開していくようにす る。 子供が、友達の様子を静かに観察し、自分の活動との比較をし、そして取り入れたり試し たりまねたりする。そこに会話がなくても、その姿を積極的なかかわりとしてとらえたい。 もちろん、会話する姿や協力する姿や一緒に遊ぶ姿も積極的なかかわりとしてとらえていく。 一人遊びが二人遊びへ、そしてグループ遊びへ、さらにはクラス全体での遊びとして発展 していくことを期待したい。遊びであるがゆえに、 刻々と活動が変化していくであろうから、 タイムリーに子供の思いを捉えられる教師でありたいと思う。積極的に声をかける、黙って 見守る、相づちを打つ、微笑む、一緒にやってみる、他を見させる、やってみせる、褒める など、状況に応じた適切な支援でかかわっていきたい。 表現のよさを広める方法としては、その時その時にダイナミックな表現をしている子供や かかわり方のよさが感じられる子供たちを取り上げたり、VTRで造形的なかかわりをして いる姿を紹介したりすることを考えている。そうすることで、さらに意欲をもたせることに なったり、小さな工作に没頭する子供を大きな表現ができる場に引き戻したりする契機とし たい。プラスの軌道修正になると考える。 (3) 仮説3から 一人一人の表現のよさを認め合う場を工夫することにより、子供は自分のあゆみを振り 返り、つくり出す喜びを味わうことができる。 今までは、友達の作品のよさに目を向けさせる方法として、メッセージカード(付箋紙) を利用した。すぐに「○○さんは上手で、△△さんは上手じゃない。」というように、上手か そうでないかの極端な評価しかしていない子供たちが多く見られた。そこで、どこがどうな っているから上手だと感じた、もっとここをこうしたらいい感じになる、自分と違うところ はここ、形や色や組み合わせがおもしろいなど、より具体的な観点で作品を見ることができ るように指導してきた。 今回の造形活動は、作品という形として残らず、時間とともに興味が動き活動が変わる。 そこで、活動後の振り返りをするための学習カードを大切に使いたい。誰とどんなことをし たのか、その時どんなことがどのように楽しかったのか、うまくいったのか、アルミホイル のことで発見したことはなかったかなど、活動を振り返るとともに、次の活動への意欲付け を図りたい。 また、場の様子や変化をしばらく鑑賞することは、表現のよさを認め合い、活動意欲をも つことのできる大事な時間であると考える。 第二次の始めには、VTRを活用し、前時を振り返るところから始める。遊びとして夢中 になるあまり、自分の楽しさを追い求めて、あまり友達の様子に目が向いていない子供にと っても、自分の活動を振り返り、友達の表現のよさに気づくために有効な手段であろう。 5 全体計画(全2時間・・・1時間は60分扱い) 時 間 主な学習内容と予想される子供の意識の流れ 教 師 の 指 導 ・ 支 援 第一次 60分 ○ アルミホイルで構成された造形空間と出 ・ この場所で何をするのだろうと、 会う。 期待に胸を膨らませられるような環 素材と ・ きらきらしてきれいだな。 境に整えたコモンスペースに、子供 の出会 ・ 何をするのかな。 たちを連れて来る。 い ・ 早くやりたい。 ・「 ある 題材と ○ 題材名を知り、造形活動の活動内容を知 の出会 る。 い ・ アルミホイルで、何ができるかな。 ・ 飾る、ぶら下げる、巻く、ちぎる、つ から連想させ、楽しい活動をたくさ ん想起させたい。 ・ 丸めてみたいなあ。 をつくるのではなくダイナミックに ・ 長く延ばすとおもしろそう。 活動するよう勧める。 アルミホイルを使っての造形活動を楽し ・ む。 第一次なので、危険なことがない 限り、子供たちの活動全てを認め、 ・ 転がしてのばしてみよう。 ・ どんどん引き出して握ると、蛇のよう ・ 支援していくようにする。 ・ 上から落とすと銀のカーテンみたい。 ・ ちぎってガラスに貼るのもきれい。 ・ マジックで描くと、光ってきれいに見 の活動のよさを大きな声で称賛し、 自然に広まるようにする。 ・ 大きなピアノを巻いてみようかな。 ・ だんだん銀のジャングルみたいになっ 小さなものをつくることにのめり 込もうとしている子供には、大きな えるよ。 ・ ダイナミックに楽しんでいる子供 や、うまくかかわっている子供たち 芯がコーンと鳴るよ。 活動をしている友達にかかわれるよ うに助言する。 ・ てきた。 いつまでも一人遊びから抜け出せ ない子供には、声をかけながら、友 ・ 体に巻いて、シルバーマンに変身。 達の活動に目が向けられるように助 ・ 銀のボールに銀のバットで野球ができ 言する。 るよ。 ・ ・ 丸めて固めてつぶすと、とても硬くな ○ 自分の表現方法を楽しんでいる子 供、自分から友達にかかわっている るよ。 り たくさんのアルミホイルが自由に 使え、場所も広いので、小さいもの に長くなるよ。 振り返 あ・そ・ ・ ○ 動 アルミで ぼ」という題材名の「あ・そ・ぼ」 くる、延ばす、身に着ける…。 造形活 ある 様子などをVTRで撮影する。 振り返りカード(あるあるカード)を書 く。 ・ ・ 楽しかったから、続きをやりたい。 ・ くしゃくしゃにしても広げられるし、 すぐ破れるけどおもしろい。 自分のした活動を振り返ることが できる内容のカードを準備する。 第二次 60分 鑑 ○ 賞 自分たちが活動した後のアルミホイル造 ・ 形空間を、再確認する。 っくり観察し、おもしろそうなもの ・ わあ、これ誰がした?やってみたい。 を見つけられるようにする。 ・ きらきら光っているし、風が当たると ・ シャラシャラと音がしていい感じ。 意欲付 第一次から引き続き、自然光だけ では天候に左右されるので、スポッ ・ 銀色の世界みたいで、かっこいい。 トライトを照らして光を意識させ、 ・ これ、どうやったらできるのかな。 扇風機を回して風を起こす。 ○ け コモンスペースの様子を改めてじ VTRを見ながら前時を振り返り、気づ ・ 表現方法が変わるきっかけとなる いたことややってみたいことを発表する。 造形的なかかわり方をしている様子 ・ があれば、VTRで紹介する。 ○○君は、おもしろいことをしていた んだね。やってみたい。 ・ ・ 自分がやっていたことは、すごく楽し やみんなに広めたい活動をVTRで かったから、みんなもしてみたらどう? ○ 教師の例示活動を見て、意欲をもつ。 独自性のあるダイナミックな活動 紹介する。 ・ 子供たちが第一次であまり目を向 ・ それ、ぼくもやってみたい。 けなかったダイナミックな表現をや ・ 先生の遊び、おもしろそう。 ってみせることで、体全体を使った 表現を楽しむことに引き戻したい。 造形活 ○ 動 アルミホイルを使っての造形活動を、第 ・ 一次よりパワーアップして楽しむ。 めようと提案することで、新しい発 ・ 想が生まれ、新しい活動に目を向け 体に巻きつけるときは、友達に巻いて もらうのがいいよ。 ・ て試してみることができるようにす 長くのばして吊り下げたいから、端を 持ってほしい。 ・ る。 ・ アルミホイルの芯をたくさん集めて、 大きな木をつくって、そこにいろんな生 ・ おもしろそうだね。一緒にやろうよ。 ・ まだ誰もやっていないぼくだけの遊び ・ り ○ 活動の様子を見守り、必要に応じ て声をかけるようにする。 ・ 教師も一緒になって活動の中に入 り込み、造形活動の楽しさを共有す 方を見つけたよ。 ・ 自分の姿が見られるように、姿見 を置いておく。 き物を付けよう。 振り返 第一次でやらなかった活動から始 る。 危ないから脚立を持ってあげるよ。 振り返りカード(あるあるカード)を書 く。 ・ 誰とどのように活動したのか、ア ルミホイルについての発見などをし ・ もっともっとやりたい。 ・ 今度は、教室をアルミホイルで飾ろう よ。 っかり書くように助言する。 6 評価の観点と評価規準 学習のねらい 第一次 60分 アルミホイ 造形への関心意欲態度 発想や構想の能力 創造的な技能 鑑賞の能力 アルミホイルで いろいろ試しな 自分の表現を楽 友達の表現のよ どんなことができ がら、自分の表現 しむために、アル さを、認めること るのか、いろいろ を広げることがで ミホイルの特性を ができる。 やってみる。 きる。 いかすことができ ルの特性を感 る。 じながら、表 現活動を楽し (活動の様子・ むことができ 表情・つぶや る。 き・発言) つぶやき) (活動の様子) 言・カード) アルミホイルの 周りの様子や友 自分の表現をさ 友達の表現のよ 特性に気づき、よ 達の表現から刺激 らに高めるため、 さを認め、その表 りダイナミックに を受けて、自分の アルミホイルの特 現のおもしろさを アルミホイ 体全体で表現活動 表現を広げ高める 性をいかして造形 味わうことができ ルの特性をい を楽しむことがで ことができる。 を楽しむことがで る。 かし、友達と きる。 第二次 60分 (活動の様子・ (つぶやき・発 きる。 かかわりなが ら、多様な表 (活動の様子・ 現を楽しむこ 表情・つぶや とができる。 き・発言) (活動の様子・ つぶやき) (つぶやき・発 (活動の様子) 言・カード)
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