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学習者の内省を支援する
デジタルポートフォリオの開発
著者:後藤康志 生田孝至
発表者:千葉佑介
本論文の研究理由(1)



学習成果だけでなく、学習過程をも評価できる。
現場教師がある時点での収集物だけで評価す
る傾向がある事への対策となり得る。
学習者の内省を支援する事ができる。
ポートフォリオによる自己評価の利点
本論文の研究理由(2)
ポートフォリオを用いた学習過程の振り返りや、
自己評価の基準作りをどのように行っていくかに
ついては様々な提案や研究がなされている。



分散Webポートフォリオシステム【岡田・正司(2002)】
共同ポートフォリオ【寺西(2001)】
スタディノート【余田(2001)】
本論文の研究理由(3)
しかし!!
子ども自身にどのような内省をさせるのか
 相互評価をどのように取り入れると子ども自身に
どのような評価基準を身に付けさせられるのか
 その為にデジタルポートフォリオが備えるべき能力

このような研究は十分に蓄積されていない
本論文の目的(1)
1. 学習過程の振り返りの為に随時記述した
「振り返りカード」を抽出・時系列表示する事により、
学習者の学習過程を見直し、改善する事を
支援する事ができたか。
2. 相互評価コメントの配布によって、学習者に
よる作品の自己評価の為の評価基準作りを
支援する事ができたか。
本論文の目的(2)
3. 相互評価コメントの回収によって、学習者が
評価者の視点からの自分の書いたコメントを
見直し、評価基準をより明確に意識できたか。
以上3点を明らかにする事
研究の実施方法(1)

対象者
–

対象単元
–
–

新津市K小学校5年生26名
5年生総合的学習「新潟はどうして米どころ?」
4年生社会科「新津郷の開発」
開発環境
–
論文参照(重要ではないので特には明記しない)
研究の実施方法(2)

インターネット
システム利用環境
×1
LAN
Win2000 server
×1
レーザープリンタ
×3
Win2000 professional
×5
Win95
研究の実施方法(3)

実施単元の構成
「新潟はどうして米どころ?」について課題別の
グループで調べる
 文化祭で発表
 学習のまとめとして「ディスプレイポートフォリオ」を
作成し、デジタルポートフォリオに取り込む
 振り返りカードを参考に、学習過程を振り返る

研究の実施方法(4)

実施単元の構成
「いいとこさがし・アドバイスカード」を記入し、
相互評価を行い、それを手がかりに自己評価を行う
 評価者の視点からの、作品の評価基準の明確化を
行う(昨年度の相互評価コメントと最新の相互評価
コメントを比較し、振り返る)

ディスプレイポートフォリオとは(1)
ディスプレイポートフォリオとは(2)
このように、学習の成果を一枚の紙にまとめ、
一目で分かるようにしたもの。
(詳細は調べられなかったが、本論文中では
概ねこの解釈で合っていると思う)
本研究における学習者の内省とは
本研究では、学習者の内省を以下の3点に
分けてとらえている。
 学習過程の振り返り
 作品の自己評価の基準作り
 自己評価の基準の明確化
デジタルポートフォリオの概要(1)
デジタルポートフォリオは以下の4つで構成される。
 学習資料
 振り返りカード
 相互評価コメントを蓄積したデータベース
 上記3つから情報を抽出・表示するインターフェイス
デジタルポートフォリオの概要(2)
デジタルポートフォリオ
学習資料・学習計画
・スキャン画像など
振り返りカード
・めあて、分かった事、
こまった事など
相互評価コメント
・他者からの評価コメ
ント
・他者への評価コメント
データベース
学習者
情報の抽出
学習過程に関わる
「振り返りカード」を抽
出・表示
学習過程の振り返りを支
援する機能
(概念マップ機能)
他者からの相互評価
コメントの抽出・表示
自己評価の基準作りを支援
する情報
(相互評価データ配布機能)
他者からの相互評価
コメントの抽出・表示
評価者の観点からの評価基
準の明確化を支援する情報
(相互評価データ回収機能)
インターフェース
概念マップ機能とは
ポートフォリオに収納されているデータ
(学習資料のスキャン画像・リンク情報・分かった事・
感想・疑問点など)を以下の2種類の方法で
表示できる機能である。
 ツリー表示(論文中 図2参照)
 時系列表示(論文中 図3参照)
相互評価データ配布・回収機能とは(1)
相互評価データ配布機能
Web掲示板の記述を被評価者の名前で検索する
事により、「自分の作品に対して他人からどのような
評価がなされたのか」を一括表示できる機能
 相互評価データ回収機能
同様に評価者の氏名で検索する事により、
「自分が他者にどのような評価をしたのか」を
一括表示できる機能

相互評価データ配布・回収機能とは(2)
さらに!
検索条件に単元名を加える事により、前年度との
比較も可能。
本システムの評価について(1)
以下の3つの観点から評価を行った。
1. デジタルポートフォリオの抽出・時系列表示を
手がかりとした振り返りによって、学習者の学習過程
の改善を支援する事ができたかどうか。
「振り返りカード」の記述内容・抽出児童の観察
記録・教師と児童の発話記録から評価する。
本システムの評価について(2)
2. デジタルポートフォリオの相互評価コメントの
配布によって、作品の自己評価の為の基準作りを
支援できたかどうか。
「いいとこさがし・アドバイスカード」・「振り返りカード」
の記述内容・抽出児童の観察記録・教師と児童の
発話記録から評価する。
本システムの評価について(3)
3. デジタルポートフォリオの相互評価コメントの
回収と年間レベルでの比較によって、(児童が)
評価基準をより明確に意識する事ができたかどうか。
「いいとこさがし・アドバイスカード」・「振り返りカード」
の記述内容から評価する。
結果と考察
~学習過程の振り返りの支援~(1)

適したメディアの選択の必要性に気づいた例
T児は、何を調べるのでも「まずインターネットで」と
いう児童であり、「新潟の米に関する民話調査」を行った
際も「インターネットで調べて見つからない」と記述。
 振り返り後には、「昔話がたくさんみつかった」と記述。
 「どうして?」と聞いたところ、「本で調べたらたくさん
みつかった」と答えている。

情報収集のために適切なメディアを選ぶ必要がある事に
気づいた。
結果と考察
~学習過程の振り返りの支援~(2)

情報収集の過程を見直し、改善点を見出した例
K児は学習に意欲的すぎて、頑張りすぎ、調べる範囲を
無計画にひろげすぎてしまう傾向にあった。
 「調べる量を少なくすれば1つの事をもっとたくさん
調べられる」と学習を振り返っている。
 「(デジタルポートフォリオの)どこを見て、そう振り返った
の?」と聞くと、「発表会の反省」と答えた。

学習過程の振り返りを通して、情報収集方法の問題点を
見つけ出し、次回への改善点とする事ができた。
結果と考察
~作品の自己評価の基準作り~(1)

相互評価コメントの全体的傾向から言える事
具体的な内容のものが示されるようになった
– 昨年はなかった評価観点(「テーマと内容の整合
性」・
「記号の使い方」など)が現れてきている
– 深く考えないと分からない観点についても指摘が
見られるようになってきた
–
自己評価の基準が成長している
結果と考察
~作品の自己評価の基準作り~(2)

相互評価を参考にした自己評価の例
T児は論文中 表9のような評価を受け、振り返りを
行っている
 相互評価の際には見られなかった観点から、
自己評価を行うようになった

自己評価の観点が多様化している
結果と考察
~評価者の視点からの評価基準の明確化~

詳細に渡ってコメントできるようになった
4年生では「いろいろ工夫している」という記述
– 5年生時は「クイズで教えていてどんな人でも簡単に
分かるようになっていて良い」と明確化
–

新しい評価基準に気が付いた
4年生の時には無かった観点から評価している
生徒が何人か現れた
–
研究の今後について(1)

概念マップ機能の改善
学習資料と振り返りカードの関係が本人以外には
よく分からない状態になっていた
– ツリー表示のどこに書き込むかを視覚的に生徒が
決められない仕様であった
–
研究の今後について(2)
イメージマップのようにマップ状に表示できれば・・・
 書き込みが容易になる
 関係する学習資料との関連が明らかになる
 マップに基づく、「学習過程の相互評価」が
可能となる
感想・疑問点(1)
デジタルポートフォリオの特徴をいいトコ取り
したようなシステムであると思った。パソコンや
LANが整備されている学校で、総合的な学習など
考える力をつける事を目的とした授業の一環として
使うのであれば、十分実用に耐えるものだと思う。
 実際のシステムが公開されていなかったので、
実際のシステム像を思い描くのが難しかった。

感想・疑問点(2)
「デジタルポートフォリオを用いた事による成果」
とされている事柄(相互評価コメントの成長など)が
他の教科や単元によるものではなく、本研究の
成果である根拠が示されていない部分がある。
 生徒が総合的な学習に意欲的に取り組もうと
しない場合の対策は考慮に入れているのか
(もともとある程度以上意欲のある生徒を対象に
したのか否か)。

感想・疑問点(3)
児童が自分で書き込み・閲覧できるように
しないと、加藤・安藤(1999)のいうような、
データや情報を収集する力は付かないのではないか。
 本研究の実践報告(※参考文献1)では、
内省による学習意欲・能力の向上が成果として
挙げられていないのは何故か。

参考文献
1. インターネット教育利用の地域的実践研究
第6編 ア・ラ・カルト方式による学社協働「こめのくに」
(http://www.cec.or.jp/books/H13/E-square/02/2_06_kome/06_09.html、
参照日:2003/11/24)
2. 総合的な学習の時間の新設
(http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/11/04/990406g.htm、
参照日:2003/11/24)