生活科における学習評価と指導の改善

-Bプロジェクト・生活科-
生活科における学習評価と指導の改善
指導主事 根本 まり子
研究協力員 山鹿市立稲田小学校 教諭 林田 美貴
研究協力校 山鹿市立山鹿小学校
本研究は,生活科の評価の観点「活動や体験についての思考・表現」に焦点を当て,思考の表れ
としての表現を見取る方法を明らかにするものである。それぞれの学習過程においてこの観点を評
価する場面を設定し,連続的な見取りができるような授業設計を行い,検証授業を行った。その結
果,児童の思考を見取ることができ,能動的な評価が有効であることが明らかになった。
思考の表れとしての表現
連続的な見取り
1 研究の目的
生活科の「思考・判断・表現」の評価の観点は,
「活
動や体験についての思考・表現」
(以下「思考・表現」
と表す)である。田村1)は,この観点について,思考
能動的な評価
3 研究の実際
(1) 学習活動の過程における評価場面の設定と評価方
法の工夫
① 「思考・表現」の評価場面の設定
と表現が一体的に表れる低学年の特徴を反映したもの
生活科の学習過程においては,繰り返し活動を行う
であり,出来映えとしての表現ではなく,思考の表れ
ことが重視される。活動を繰り返すことで気付きの質
としての表現であると言っている。
が高まることは,多くの実践的研究において明らかに
しかし,この低学年の特徴を生かした指導が行われ
されている。
ず,表現の出来映えのみを目指す学習活動が行われる
本研究では,この気付きが生まれる過程における思
傾向があることが,生活科の課題の一つに挙げられて
考に視点を当てた。児童が具体的な活動や自分の生活
いる。また,実践的研究においては,
「気付き」に焦点
について,自分なりに考えたり,工夫したり,振り返
を当てたものが数多くみられるが,
その過程である
「思
ったりするなどの思考の様相を見取っていく。そのた
考」に焦点を当てたものは少ない。
めに,学習の過程を「気付き・考える」
「考え・工夫す
そこで,本研究では,この評価の観点における学習
る」
「振り返り・表す」の3段階に設定した。それぞれ
評価の在り方について研究し,評価と指導の一体化を
の過程において,
「思考・表現」の評価場面を設定する
図る授業を設計,検証し,生活科の授業改善に資する
ことで,児童の思考を連続的に見取っていくことがで
ことを目的とする。
きると考えた。
2 研究の視点と方法
② 「能動的な評価」の工夫
(1) 学習活動の過程における評価場面の設定と評価方
児童の思考の様相は,無自覚的に児童の行動やつぶ
法の工夫
やき等に表れる。
教師はそれを問いかけや対話により,
「思考・表現」の評価を位置付けた学習過程を作成
意味付けたり価値付けたりして児童に返していくこと
し,その評価方法について明らかにする。
が大切である。また,自覚的にそれを作品やカードな
(2) 評価と指導の一体化を図る授業設計
どに表現できるようにしていくことも必要である。
①生活科の内容(7)動植物の飼育栽培における授業設
計を行い,研究協力員による検証授業を行う。
②授業における客観的資料の分析や意識調査等により
検証結果を分析する。
この問いかけや対話を嶋野2)は,
「能動的な評価」
と言っている。本研究では,この評価方法を「思考・
表現」の評価において位置付けることが,児童の思考
の見取りにおいて効果的であると考えた。
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(2) 評価と指導の一体化を図る授業設計
④ 検証授業Ⅰの実施とその結果
~2年生単元「ぐんぐんのびろ 冬やさい名人になろう大さくせん~
ア 本時の目標
① 単元の目標
これからどんな世話をしていけば野菜が喜ぶのか
身近な野菜を育て,それらが育つ場所,変化や成長
の様子に関心をもち,また,それらは生命をもってい
ることや成長していることに気付き,植物への親しみ
を考え,野菜に手紙を書く。
イ 本時の学習活動と評価場面の設定
本時では,野菜にあった世話の仕方を考えさせるた
をもち,大切にすることができるようにする。
めに,これまでの体験をもとに,どんな世話をしたら
② 評価規準の設定
よいかをカードに書き出し,グループで内容ごとに整
本単元は,
内容(7)動植物における飼育栽培の1内容
理させた。次に,野菜さんから手紙が届いたという設
によって構成した。本単元の中心的な学習対象・学習
定のもと,野菜作り名人(GT)にその手紙を読んでもら
活動を冬野菜の栽培としたうえで,
「評価規準の作成の
い,自分たちが考えた世話の仕方と野菜さんの願いを
3)
ための参考資料」
を参考に,単元の評価規準と学習
比べながら,返事を書かせた。この返事を書く活動を
活動における評価規準を設定した。以下は「思考・表
評価場面とした。
現」の評価規準のみ示す。
過程
」現表・考思「
単元の
評価規準
学習活動
における
評価規準
冬野菜を育てることについて,野菜の立場に
立って考えたり,世話をしたり,かかわり振
り返ったりして,それを自分なりの方法で表
現している。
①育ててみたい野菜や育てた野菜をどうする
か選んだり決めたりしている。
②野菜の育つ場所,変化や成長について考え,
世話の仕方を工夫している。
③育ててきた野菜とのかかわりを振り返り,
自分なりの方法で表している。
③ 指導と評価の計画
「思考・表現」の評価場面をそれぞれの学習過程に
学習活動
1 これまでの活動の様子や野菜の成長の様子を振り返
導入
る。
2 本時のめあてを知る。
どんなお世話をしたら野菜さんが喜ぶのか考えよう
3 どんなお世話をしたらよいか考える。
(1) 自分なりの考えを持つ。
(2) 互いの考えを交流する。
草をとったら
野菜が喜ぶ
虫のたまごや
ふんをとる
水をやりす
ぎない
毎朝見に行く
設定し,
「能動的な評価」を評価方法に位置付けた。
間時3 うこらひ
をーィテーパ菜野冬
間時3 うよしを
話世たっあに菜野
間時6
うよてだそを菜野冬
小単
元名
過程
主な学習活動
気付き
考える
育ててみたい冬野菜
を決める。
畑の準備をし,種ま
きをする。
畑に名前をつけ,看
板を立てる。
野菜の世話をする。
活動を振り返り,交
流する。
野菜にあった世話の
仕方を考える。検証Ⅰ
野菜にあった世話を
する。
活動を振り返り,交
流する。
収穫した野菜の食べ
方を考える。 検証Ⅱ
野菜を収穫し冬野菜パ
ーティーの準備をす
る。
活動を振り返り,交
流する。
考え
工夫する
振り返り
表す
気付き
考える
考え
工夫する
振り返り
表す
気付き
考える
考え
工夫する
振り返り
表す
評価
規準
思①
思②
関
カードで思考(野菜に合った世話の仕方)を類型化
評価方法
発言
シート
展開
4 野菜さんから届いた手紙を野菜作りの名人さんから
聞き,野菜さんの願いを知る。
私たちに虫がつき,大切な葉っぱ
を食べられているのです。また,
私たち以上に草の伸びる力はす
ごく,私たちよりも先に伸びてし
まいます。
中にはなかなか大きくなれない
友達もいます・・・
行動観察
つぶやき
問
思②
気
発言
思②
シート
思②
関
思②
気
行動観察
つぶやき
思①
発言
思③
関
行動観察
つぶやき
思③
気
発言
い
か
け
・
ゲストティーチャーの活用
評価場面
5 野菜さんから来た手紙の返事を書く。
対
だいこんさんへ
虫がいるときには,か
ならずとるね。水もあ
げるからしっかりそ
だってね。
話
言語活動の設定
6 手紙の発表をする。
発言
整理 7 教師の気付きを聞く。
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ウ 指導と評価の実際
ぶられる。そして,なんと
本時の評価場面において,
「おおむね満足できる」状
か広くなる方法を考えよう
況にある児童の姿をB基準とし,以下のように想定し
とするA児の思いが手紙に
評価を行った。また,
「十分満足できる」状況にある児
表れている(図2)。
童の姿(A基準)の例もいくつか想定しておくことで
確かな見取りができると考えた。
その後,野菜作りの名人
さんから「間引き」の方法
野菜の願いに沿った世話の仕方を考え,手紙に書
こうとしている。
【思考・表現】
・これまでの活動を振り返り,野菜の願いに沿っ
た世話の仕方を考え,手紙に書いている。
・野菜の気持ちに共感し,野菜の願いに沿った世
話の仕方を考え,手紙に書いている。
返事の手紙・問いかけ・対話
を教えてもらい,次時でや
児童を見取る際には,野菜の願い(葉についている
っゃうからさびしい」とい
虫をとる,肥料をやる,間引きをする,草をとるなど)
う「すなおな表現」で,振
に答えているかを視点に評価を行った。B基準に達し
り返りカードに表している
ていない児童には,以下の手順で指導を行った。
(図3)。教師は,このカー
① 野菜さんの手紙をもう一度読み聞かせる。
② 問いかけ
(例)「野菜さんは,どんなことに困っていたかな。
」
③ 繰り返し,明確化
(例)「場所がせまくてこまっているのだね。
」
④ 指示
ドに「さびしい気持ちでま
B基準
A基準
の例
評価方法
(例)「そのことを手紙にかいてごらん。
」
結果,すべての児童において,野菜の願いに沿った世
話の仕方を書こうとする姿を見取ることができた。
エ 評価結果(手紙の記述分析)
授業後,手紙の自由記述分析を実施した(分析ソフ
トウエア TRUSTIA)
。名詞句の頻度は「草「虫」
「水」
が高く,係り受け関係においても「やる」
「とる」とい
った動詞句の頻度が高かった。しかし,
「場所が狭くな
って困っている」という野菜の願いに応えている記述
は少なかった。また,どうしたらよいか悩んでいる児
童も見られた。そこで次時は,ゲストティーチャーへ
の質問コーナーを設け,野菜にあった育て方を確認す
る時間を確保するという授業改善につなげていった。
オ 小単元を通してA基準と見取った児童の姿の例
A児は,これまでの野菜
栽培の活動を振り返り,雑
草を抜くことや水かけ,虫
やその糞をとってあげると
野菜が喜ぶと考えた(図1)。
ところが,野菜からの手
紙で,自分が育てている水 図1 A児が書いたカード
菜が,場所が狭くなって困っていると知り,心を揺さ
図2 A児が書いた手紙
ってみるA児の姿が見られ
た。その時の思いを,涙ぐ
図2 A児が書いた手紙
んでいる自分の絵と,場所
は広くなるが「友だちをと
びきしたのですね。
」と共
感の思いを朱入れした。
このように,本時の手紙
図3 次時の活動後A児が
かいた学習カード
には,具体的に世話の仕方を書き表すことはできなか
ったが,小単元を通して野菜の気持ちに共感し,野菜
の成長について考え,世話の仕方を工夫するA児の姿
は,十分満足できる状況にあると言える。
⑤ 検証授業Ⅱの実施とその結果
ア 本時の目標
収穫した野菜を「冬野菜パーティー」で,どんな料
理にして食べるかグループで話し合い,決めることが
できる。
イ 本時の学習活動と評価場面の設定
本時は,
収穫した野菜をどんな料理にして食べるか,
家庭等で調べてきた学習シートをもとに,料理名を付
箋に書き出させた。次に,ベン図を用いて「自分たち
でできそう」
「手伝いがあればできそう」
「難しい」の
3つの視点からグループで思考を整理させた。そのベ
ン図をもとに,冬野菜パーティーで作る料理をグルー
プで話し合い,
決定させた。
このグループで話し合い,
料理を決める活動を評価場面とした。
B基準
A基準
の例
評価方法
収穫した野菜を使って,どんな料理にして食べたい
か考え,発言している。
【思考・表現】
友だちの意見を聞き,折り合いをつけながら,自分
たちでできそうな料理を考え,発言している。
発言・問いかけ・対話
-Bプロジェクト・生活科-
表1 教師の問いかけや対話の授業記録
過程
学習活動
導入
1 これまでの活動の様子や野菜の成長の様子を振り
返る。
2 本時のめあてを知る。
収穫した冬野菜でどんな料理をするか決めよう
3 どんな料理にするか決める。
(1) 自分で調べた料理を付箋に書き出す。
だいこんのパリ
ポリサラダ
ほうれんそうの
ごまあえ
にんじんホット
ケーキ
聞き取りカードを活用
して付箋に整理
展開
評価場面
(2) グループで出し合い,自分たちでできそう
な料理を決める。 ベン図
自分たち
でできそ
う
手伝いが
あればで
きそう
難しい
ベン図で3つの視点から思考を整理
(3) 決まった料理を全体に発表する。
4 招待状を作る。
冬やさいパーティーを
します。ぜひきてくださ
い。わたしたちがいっし
ょうけんめい考えてき
めたおりょうりです。
図画工作科との関連
整理 5 教師の気付きを聞く。
ウ 指導と評価の実際
本時では,グループの話合いの様子を見取り,話合
C1 ぼくは,
・・・
(沈黙)
T
どれがいいかな?よ~く(ベン図)見てごらん。
C1 ぼくは,水菜ともやしと豚肉の蒸し焼きがいいと思い
ます。
T
どうしてそう思ったの?
C1 きのう作ってみて,おいしかったからです。
C2 1回食べたものじゃなくて,もっと違うのがいいんじ
ゃない?
T
どうして?1回食べておいしかったら,もう一回食べ
たいと思わない?
C2 違うものが食べたい。
C1 もう一回食べたい。
C3 ぼくは,水菜と豚肉のレモン鍋がいいです。そのわけ
は,食べてみたいからです。
T
食べてみたいんだね。
C2 お母さんが昔作っていたから,私もそれがいいです。
T
C1君どうしようか。
C1 (水菜ともやしと豚肉の蒸し焼きを指さす)
C2,C3
えーっ(不満の声)
C1 うつむき,表情が暗くなる。
T
わかる,わかる。C1君の気持ち先生よく分かるよ。
おいしかったらもう一回食べたいもんね。
C2 二つとも作ったら・・・
(つぶやき)
T
おっ。C1君に聞こえるように言ってごらん。
C2 ぼくは,どちらとも作ったらいいと思います。わけは,
レモン鍋は簡単そうだし,時間も2時間あるからです。
T
どう?C1君。
C1 (にっこり笑顔になって)いいと思います。
オ 小単元を通してB基準と見取った児童の姿の例
C1児は,次時の野菜を収穫する活動を終えた後,
振り返りカードに,水菜の収穫量を「せんめんきをは
みだすほど」と表し,
「やさいをそだてたことをじゅう
分たのしめてよかった。
」と満足感を表した。
また,冬野菜パーティーの振り返りカードには,
「ぼ
くのりょうり」
を保護者や GT と作った自分が絵や文に
表れており,教師は「C1君が調べてきた料理ができ
いに参加できない児童に対しては,教師も一緒に参加
てうれしかったことでしょう。
」と朱入れをしている。
し,その児童に問いかけたり対話をしたりしながら,
⑥ 常時活動での問いかけの例
その児童の思考を引出し,発言できるようにした。表
図4は,常時活動で野菜の世話ができたら野菜に色
1は,B基準に達していない児童を見取った教師が,
をぬるという自己評価カードである。教師は毎日色を
その児童の思いに共感しながら,話合いを支援してい
ぬっているかだけではなく,野菜に色をぬっていない
る場面の授業記録である。
児童に対して,
「どうして今日は色をぬっていないの?」
エ 評価結果
と問いかけを行っている。
「朝,野菜さんを見に行った
教師は,表 1 のC2児のように友達の考えと折り合
ら,昨日の雨でまだ水はい
いをつけている児童や,分からない料理はシートを使
らないようだったから,今
って調べ,できるかどうか考えている児童,材料や道
日は色をぬらなかったよ。
」
具,時間内に作れそうなものなど様々な視点から思考
という「すなおな表現」か
している児童の姿を見取ることができた。結果,すべ
ら,教師は,
「野菜にあっ
てのグループが料理を決めることができた。
た世話をしている」児童の
図4「やさい名人へのみち」
自己評価カード
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姿を見取っている。生活科の評価は,児童理解と深く
「共生」を視点に話をされたことから,思考の方向が
かかわっていることも,これらのことから分かった。
変わったものと思われる。GT の有効な活用で児童の思
⑦ 検証授業前と授業後の意識と自由記述の考察
考が広がったり深まったりすることも明らかになった。
ア 意識の変容
授業前と授業後で以下の2つの質問項目(4件法)に
ついて平均値の差の検定
(t検定)
を実施した(N=14)。
4とても好き
3好き
2あまり好きではない
1きらい
質問内容
野菜を育てることは好きか
事前
3.14
事後
3.14
有意確率
1.00
絵や文で表すことは好きか
2.79
3.36
0.01
※
<.05
野菜を育てることの意識に対して有意差はみられな
かったが,授業前に「あまり好きではない」と答えた
2人の児童はともに「好き」と答えており,野菜の変
化や成長の様子が実感できていることがうかがえた。
興味・関心が下がっている児童の記述からは,野菜栽
培の苦労が実感を伴った気付きとして表れていたこと
から,
「毎日お世話を頑張った自分」に気付かせる必要
があった。絵や文で表すことの関心に対しては,5%
水準の有意差が見られた。振り返りカードには,
「ハー
トみたいなめ」
「だいこんさんがさむいから,土をかけ
た」
「とるのがかわいそうだった」など思考の表れとし
ての「すなおな表現」が多く見られた。
野菜の育て方の自由記述分析を行った結果は以下の
とおりである(N=14)。
野菜を育てる時にどんなことに気を付けてお世話をしますか
1文書あたりの語句数
1文書あたりの文字数
(1) 学習活動の過程における評価場面の設定と評価方
法の工夫
本研究においては,
それぞれの学習過程において
「思
考・表現」の評価場面を設定し,児童の思考を見取っ
ていった。その結果,検証授業で述べた児童の例のよ
うに,児童の思考を連続的に見取ることができ,表現
の出来映えではなく,これまで一連の過程においての
児童の思考がどのように表れているかを見取るという
教師の評価の在り方を明らかにすることができた。
(2) 評価と指導の一体化を図る授業設計
授業設計においては,目標を明確にし,評価基準を
設定した。また,A基準の例をいくつか想定したり,
B基準に達していない児童への手立てを考えたりして
おくことで,検証授業結果の考察から,確かな見取り
ができることが明らかになった。また評価場面におい
て,児童の学習カードや発言の内容に対して,
「能動的
な評価」を行うことにより,そこには表れなかった児
イ 自由記述の分析
事前
平均 17 語
平均 27 文字
4 研究の成果
事後
平均 34 語
平均 51 文字
語句数や文字数が約2倍に増えており,世話の仕方の
工夫に広がりや深まりが見られた。動詞句においては
童の思考を見取ることができたことも成果である。
5 今後の課題とまとめ
右の写真は,研究協力校に
おいて公開した授業の様子で
ある。町探検でインタビュー
する項目を整理している児童
の姿が見られる。本研究にお
付箋を使って情報を
整理している児童の姿
「とる」
「する」
「やる」など自ら関わる語句の頻度が
いては,思考を整理する手段(思考ツール)としてカ
大きく増加していた。また,係受け関係においては,
ードやベン図,ウエビングマップを活用したが,児童
授業前には見られなかった「まびき/せまい」
「やさい
/せまい」が授業後には見られ,野菜が大きくなるに
つれて育つ場所が狭くなってくるために世話の仕方を
考える児童の思考が見られた。また,ここで注目する
のが「虫の駆除」に関する記述であった。記述内容が,
授業前の「虫に食べられないようにする」ために,な
んとか虫を退治したいという思考から,授業後の「虫
がはっぱについていたときには,はっぱをちぎってと
おくににがす」
「虫がきたらはっぱをちょっとあげる」
,
へと変容が見られた。これは,野菜作りの名人さんが
の思考の表れを見取り,それを指導に生かすために,
どのような学習方法や教師の言葉かけが効果的である
か,今後も継続した研究を進めていく必要がある。
〈引用・参考文献〉
1)田村学(2010)『生活科における指導要録改善のポイント』
初等教育資料6月号
2)嶋野道弘・寺尾慎一(2003)『生活科の授業方法 新しい
評価を生かす構想と展開』ぎょうせい
3)国立教育政策研究所(2010)『評価規準の作成のための参
考資料(小学校)
』
・文部科学省(2008)『小学校学習指導要領解説生活編』
・国立教育政策研究所(2010)『評価方法等工夫改善のための
参考資料(小学校)
』