運動時換気応答による心不全治療効果の評価 安達 仁 群馬県立心臓血管センター 循環器内科 Use of cardiopulmonary exercise testing in evaluating the effect of Heart Failure treatment Hitoshi Adachi, M.D. Gunma Prefectural Cardiovascular Center [はじめに]心肺運動負荷試験(CPX)は運動中に 全体としては VE-VCO2 slope に影響をおよぼさ 呼気ガスを分析することによって運動中の心機 なかったが、基礎値が正常値以上の例では有意 能・骨格筋機能・血管拡張反応・自律神経活性 に改善した。TV-RR slope には、PGE1 は影響を などを推測することができる検査である。心不 及ぼさなかった。CRT の影響については、心拍 全は「息切れ」を主訴のひとつとし、「息切れ」 出量が 16%増加し、VE-VCO2 slope も 15%改善 は運動時の換気応答を観察することで評価でき した。TV-RR slope は不変であった。運動療法を る。運動時換気応答は VE-VCO2 slope が代表的 行うと、VE-VCO2 slope は 32.8 から 22.5 へ改善 な指標として知られている。また、Ramp 負荷試 した。TV-RR slope も 45.3 から 67.8 と有意に改 験中の換気量(TV)と呼吸数(RR)の関係(TV-RR 善した。 slope)は rapid and shallow breathing pattern を評価 [結語]心拍出量を増加させる治療、あるいは肺血 する指標として有用である。今回、心不全患者 流量を増加させる治療は VE-VCO2 slope を改善 に対するさまざまなインターベンションが VE- させるが、換気様式には影響を及ぼさない一方、 VCO2 slope および TV-RR slope におよぼす影響 運動療法は VE-VCO2 slope とともに換気様式を について報告する。 も改善させることが示された。 [方法] NYHA II-IV の慢性心不全患者 79 人(peak VO2 16.8 mL/min/kg)と健常人あるいは NYHA I の心不全患者 50 人(peak VO2 21.0 mL/min/kg) について検討した。ミナト医科学社性呼気ガス 分析装置を用い、定法により CPX を施行して VE-VCO2 slope と、AT 以下での TV-RR 関係の 傾き(TV-RR slope)を評価。VE-VCO2 slope は Ramp 負荷開始時から RC ポイントまでで評価し、 TV-RR slope は呼吸数に対する VE の傾きを AT までの部分で評価した。心不全に対するインタ ーベンションとして一部の患者にプロスタグラ ンディン E1(PGE1)投与、両心室ペーシング療法 (CRT)、あるいは AT レベルの運動療法を一回 30 分間、毎日、2 週間行った。 [結果]慢性心不全患者では健常例に比して VEVCO2 slope が高値(35.7 vs. 30.4(対象群))で TVRR slope は緩徐すなわち浅く速い呼吸になるこ とが示された。肺血管を拡張させる PGE1 は、
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