17 遺伝子診療部 - 京都大学医学部附属病院

Kyoto University Hospital Annual Report 2005
17 遺伝子診療部
診療部の特徴
●日本人類遺伝学会及び日本遺伝カウンセリング
学会が認定する臨床遺伝医が 6 名。毎日遺伝カウ
ンセリングが可能である。
●遺伝子診療部症例検討会を隔週の水曜に行って
いる。教育学研究科所属心理カウンセラー(臨床
心理士)の出席を得て、心理面への配慮も行って
いる。
●従来の小児科・産婦人科中心の遺伝カウンセリ
ング部門とは異なり、内科、外科、泌尿器科、耳
鼻咽喉科、眼科などの診療科を中心に発展してき
た特徴をもつ。
遺伝子診療部長
藤田 潤
沿革と業務体制
遺伝子解析の進歩を臨床の場に還元するために、京
都大学医学部附属病院では遺伝子診療相談室を平成 8
年 9 月に開設したが、ニーズの急速な増大に伴い、平
成 13 年 3 月、院内措置として「遺伝子診療部」に改組
した。
実績と高度先進医療等への貢献
京都大学医学部附属病院遺伝子診療部ではゲノム
時代の新しい医療として「遺伝子診療」がいかにある
べきか模索をつづけている。
1)遺伝カウンセリング
(i) 遺伝カウンセリングの詳細な業務内容
一人一回の診療所要時間は約 1.5∼2 時間。最新情
報の検索・関係各方面への連絡・調整など含むと、平
均 6∼8 時間以上必要である。
<臨床遺伝医学専門医による遺伝カウンセリングの
内容とその特徴>
◇遺伝や遺伝子と疾患との関係をわかりやすく、時間
をかけた説明
連絡先:
075-751-3751(藤田部長室)
075-753-4647(小杉) 075-753-9490(富和)
075-753-4648(沼部) 075-753-9496(澤井)
◇遺伝子検査のメリット・デメリットを、検査を受け
る前に正確にすべて説明
◇主治医と違う第3者的な立場からの非指示的説明に
より、自発的な意思決定を促す
◇家族と共有される遺伝情報の特殊性を考慮
◇極めて厳格な遺伝情報の保護
◇臨床心理学的な対応によって、不必要な不安からの
開放を促す
◇遺伝子検査を受ける場合のインフォームドコンセン
ト
◇遺伝子検査の結果について十分に説明し、後の管理
に役立てる
(ii) 遺伝子診療部受診患者疾患内訳
◆家族性腫瘍および高発癌性遺伝病(28%):家族性大腸
ポリポーシス(FAP)、遺伝性非ポリポーシス性大腸
癌 (HNPCC) 、 von Hippel Lindau 病 (VHL) 、 von
Recklinghausen 病(NF1)、網膜芽細胞腫(Rb)、多
発 性 内 分 泌 腺 腫 症 (MEN1) 、 基 底 細 胞 母 斑 症 候 群
(NBCCS)、色素性乾皮症(XP)など
◆聴力障害(22%):先天性難聴、ミトコンドリア遺伝子
変異による難聴など
◆神経筋疾患(10%):脊髄小脳変性症、進行性筋ジスト
ロフィー、筋緊張性ジストロフィーなど
◆染色体異常(10%):ダウン症、クラインフェルター症
候群、13 トリソミーなど
◆奇形(8%):唇裂・口蓋裂、裂手、鎖骨頭蓋異形成症
など
◆ 精 神 発 育 遅 滞 (5%) 、・ 代 謝 性 疾 患 (3%) 、・ 血 友 病
(2%)、・網膜色素変性症(1%)、
◆その他(6%):生活習慣病、近親婚、精神分裂病など
◆遺伝子治療について(5%):末期癌に対する遺伝子治
療の可能性など
2 )「 い で ん ネ ッ ト 」( 臨 床 遺 伝 医 学 情 報 網 )
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/idennet
平成 9−16 年度厚生科学研究費の一部援助により藤
田部長が作製し、遺伝子診療部が管理・運営している。
臨床に役立つ遺伝相談・遺伝子検査に関する情報を、
リアルタイムに医療関係者が入手できるように整備し
たものである。アクセス件数は、平成 18 年 4 月 26 日
現在、179,685 件で、本邦における臨床遺伝学・遺伝
医療ネットワークにおいて既に中心的な位置を占める
に至っている。主な内容は、
◇遺伝子診療質問箱「いでん Q」
([email protected])として、遺伝医学に関
する質問に専門家が答えるシステム(平成 10 年 8
月)
◇遺伝相談施設情報データベース(平成 11 年 5 月)
◇ヒト germline 遺伝子・染色体検査オンラインデータ
遺伝子診療部
◇遺伝関係セミナー研修会などでの活動:遺伝医学セ
ミナー、家族性腫瘍カウンセラー養成セミナー、遺
伝カウンセリング学会研修会などの企画運営
◇マスコミ関係:NHK、毎日放送、毎日新聞、読売新聞、
朝日新聞、AERA、京都新聞連載など
◇発表論文:遺伝子解析、遺伝カウンセリング、遺伝子
診療システム、遺伝子情報システム、遺伝子検査シ
ステム、遺伝子治療、遺伝子解析倫理など
◇遺伝関連学会での発表:年間 20 回以上
◇出版:「一般外来で遺伝の相談を受けたとき」(医学
書院)「みんな知りたい遺伝のはなし」(京都新聞出
版センター)
部門統計等
遺伝子診療部受診患者数
96
97
年
98
年
99
年
00
年
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02
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03
年
04
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9
1
1
1
1
1
1
1
1
1
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12
月
12
12
12
156
305
340
332
270
125
-
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-
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北海道、島根県、鹿児島県などからも相談者が受診。
*院内措置での遺伝子診療部への改組(平成 13 年 3 月)
以降、週 8-10 人程度の受診がある。
受診案内(遺伝子診療部受診を希望の患者さんへ)
<<遺伝の問題を私達といっしょに考えましょう>>
予約制です。前日までに電話で予約してください。予
約専用電話 075-751-4350(平日午後1時∼午後 5 時)
◆電話での遺伝相談には応じられません。
◆紹介状は必要ありませんが、患者さんの詳しい情報
があれば、より正確な相談を行うことが可能です。
できれば、詳しい資料をご持参ください。
◆簡単な家系図を書いてきてください。
◆診療費の例:5,760 円 (私費診療初診で、検査な
どの他の診療を伴わない場合)
診療内容・個人や家族の秘密は厳重に守られます。
月
12
月
57
12
月
18
月
9
12
月
12
月
12
月
17
月
月
12
年
年
ベース(平成 15 年 10 月):全国の研究機関及び臨
床検査会社で行われている遺伝子検査で、外部から
も受入可能性があるものの最新情報を提供してお
り、患者の診断や家族の保因者診断・発症前診断に
必要な遺伝子検査を実際にスムースにおこなうこ
とを可能とした。常に、検査の内容を検査登録者が
自らオンラインで更新することにより、情報の最新
性を保っている。
◇関連学会研究会セミナー情報:毎月更新している便
利な遺伝医学情報最新情報サイト
3)遺伝子解析倫理支援
◆「家族性腫瘍の遺伝子診断の高度先進医療としての
実施」の医の倫理委員会提出(検査部と)(平成 12
年 1 月)
◆教育学部臨床心理学教室・人間環境学部スタッフと
の精神的・心理的側面についてのスタッフミーティ
ングの開始(平成 12 年 4 月より)
◆京都大学大学院医学研究科(臨床系)
・京都大学医学
部附属病院で行われる「ヒト遺伝子解析」における
遵守事項の作成(平成 12 年 9 月より運用)
◆上記の遵守事項にそって、多施設共同研究としての
家族性大腸腺腫症の遺伝子診断、遺伝性非ポリポー
シス性大腸癌、遺伝情報開示後の心理的影響に関す
る研究)への参加について研究計画書の提出(平成
12 年 9 月)、同承認(平成 13 年 2 月)
◆上記遵守事項を、京都大学大学院医学研究科で行わ
れる「ヒト遺伝子解析」における遵守事項と改定(平
成 13 年 5 月)
4)遺伝子診断
◆家族性腫瘍の遺伝子診断の高度先進医療としての実
施
◆家族性大腸腺腫症の遺伝子診断に関する多施設共同
研究及び遺伝性非ポリポーシス性大腸癌の遺伝子
診断に関する多施設共同研究
◆網膜色素変性の遺伝カウンセリングと遺伝子診断の
実施
◆奇形症候群の遺伝子診断の実施
5)遺伝子治療研究
レトロウイルスベクターの開発、ヨードトランスポ
ータの導入など。
6)遺伝子診療セミナー
年 1−2 回、学内外の講師によって開催、最新の遺
伝子診療に関するテーマの講演会である。11 回開催。
7)遺伝子診療部症例検討会
隔週の水曜日午後 4 時 30 分より、遺伝子診療部の
ある総合診療部外来で行っている。また社会健康医学
系専攻の講義演習を含めて、第 2・4 金曜日に遺伝医療
合同カンファレンスも実施している。
8)外部活動
◇厚生(労働)省班会議等での活動:平成 9 年度大倉青
木班、平成 10-16 年度古山班
◇遺伝関係学会役員:日本人類遺伝学会、日本遺伝カ
ウンセリング学会、日本遺伝子診療学会、家族性腫
瘍学会