専門科目 - 北海道大学 理学部

2012年 2月 2日
平成24年度
北海道大学大学院理学院自然史科学専攻
地球惑星ダイナミクス講座,地球惑星システム科学講座,
地震学火山学講座
博士前期(修士)課程入学試験
専門科目試験問題
試験時間 13:00 〜 16:00
以下の注意事項をよく読むこと.
1. 問題冊子1冊(この冊子), 解答用紙6枚,草案紙3枚を配布する.
2. 専門科目試験の問題は, Ⅰ 数学,Ⅱ 物理学,Ⅲ 化学,Ⅳ 地球科学Ⅰ(地
球史・テクトニクス・堆積学),および Ⅴ 地球科学Ⅱ(岩石学・鉱物学・
資源地質学)の5分野から出題される.このうち,2分野を選択して解答せ
よ.
3. 各分野の出題は, 例えば Ⅱ—1, Ⅱ—2 のように, いくつかの問題からな
る. 解答の方法については, 各分野の問題紙に与えられている指示をよく読
むこと.
4. 解答は, Ⅱ—1, Ⅱ—2 などの問題ごとに別々の解答用紙(1枚)を用い, 指
定された欄に, 数学などの科目名, Ⅱ—1 のように問題番号,そして受験
番号を記入すること.氏名は記入しないこと.
5. 解答は解答用紙の裏面に及んでもよい.
6. 解答用紙, 草案紙が足りないときは, 試験監督者に申し出ること.
7. 解答用紙は選択した分野ごとに回収する.回収する解答用紙の枚数は,そ
れぞれ以下のようである:I(数学)が3枚,Ⅱ(物理学)が3枚,Ⅲ(化学)が3枚,
Ⅳ(地球科学I)が2枚,Ⅴ(地球科学Ⅱ)が2枚である.選択した2分野のすべ
ての解答用紙に受験番号を記入し提出すること.なお,3分野以上にわたっ
て提出しないこと.
8. 問題冊子と草案紙,および余った解答用紙は持ち帰ってもよい.
0
Ⅰ 数学
以下の3問(I―1,I―2,I-3)を解答せよ.解答にあたっては,結果
だけではなく導出過程も記せ.
Ⅰ-1
以下の文章を読み,問題に解答せよ.
二次元デカルト座標(x, y)において,関数 y = f(x)で描かれる曲線と x 軸が第1象
限で閉曲線をつくるとき,それによって囲まれる図形を x 軸の周りに回転させ
ることによって回転体が得られる.ここで, (b, 0)に中心をもつ半径 a (但し,b
> a > 0)の半円を x 軸の周りに回転させて球をつくり,その体積 V を求めること
を考える.この場合,xy 平面に描かれる曲線は y =
(1)
軸の周りに回転させた回転体を考えると,b –a ≦ x ≦
V=
ò
(2 )
b-a
(
(3)
) dx =
で与えられ,これを x
(2)
の範囲で,
(4)
と求まる.
問題1上の文章中の(1)~(4)に適当な式を記せ.ただし,同じ番号には同じ式が
入る.
問題2
y = x - c (ただし,c > 0)のとき, c ≦ x ≦ d (ただし,d > c)の範囲
での回転体を図示し,その体積 V を求めよ.
1
I-2
正方行列 A が
æ2 1 0ö
ç
÷
A = ç1 2 0÷
ç
÷
è0 0 5ø
で与えられるとき,以下の問題に解答せよ.
問題1 行列 A のすべての固有値を求めよ.
問題2 それぞれの固有値に対する正規化した固有ベクトルを求めよ.
問題3 正規化した固有ベクトルを列にした行列 U を用いて, AU = UL を示せ.
ただし,行列 L は対角行列で,その対角要素は問題1で求めた A の固有
値とする.
問題4 固有ベクトルがそれぞれ直交することを示せ.また,これを用いて行列
U の転置行列は行列 U の逆行列と等しいことを示せ.
2
I-3
以下の問題に解答せよ.
問題1 関数 f (x) = ln(1+ x) (ただし, x > -1 )について,以下の問いに答えよ.
問1
f (x) の一階微分を求めよ.
問2
f (x) の n 階微分を求めよ.ただし,n は正の整数である.
問3
f (x) の x = 0 のまわりでのテイラー展開を求めよ.
問4
上の結果を用いて,以下の無限級数の値を求めよ.
問題2 以下の無限級数は発散することを示せ.
1+
1 1 1 1 1
+ + + + + ...
2 3 4 5 6
3
Ⅱ 物理学
以下の 3 問 (Ⅱ-1, Ⅱ-2, Ⅱ-3)に解答せよ.解答にあたっては,結果だけ
でなく導出過程も記せ.
Ⅱ-1
以下の問題に解答せよ.ただし太陽等が及ぼす引力を計算する際には,全質量
が中心に凝集した質点として扱ってよい.また必要な定数および変数は必要に
応じて導入せよ.
問題 1 質量 m の質点が,原点を中心とする半径 r の円周上を一定の速度 v で運
動する,すなわち,等速円運動をしていると仮定する.この時,向心力
が m r w2 の大きさで働いていることを証明せよ.ただし,wは角速度で
ある.
問題 2 円軌道の場合のケプラーの第三法則,すなわち,惑星が太陽を一周する
時間Tの 2 乗と軌道の半径 r の三乗の比はすべての惑星について同じ値
を持つこと,を証明せよ.ただし,万有引力定数を G,太陽の質量を M
とする.
問題 3 赤道上の軌道を地球と同じ回転角速度で運動する人工衛星を静止衛星と
よび,その軌道を静止軌道という.静止軌道の地表からの高度を求めよ.
4
Ⅱ-2
磁束密度が B で鉛直上向きの一様磁場 B が存在
する空間に,間隔 l の平行な金属レールが水平
に置かれているとする.そのレール上に,質量
m,電気抵抗 R の導体棒 PQ が,レールに直交
して置かれている.また,レールには起電力 V
の直流電源をつなぐスイッチがついている.時
刻 t = 0 にスイッチを入れたところ,導体棒には
Q から P に向かう向きに電流が流れ,導体棒が
図の右側へ動き出した。時刻 t における電流の
大きさと導体棒の速さをそれぞれ I(t), v(t)と表
記するとき,以下の問題に解答せよ.ただし,レールの電気抵抗,導体棒に働
く空気抵抗,導体棒とレールとのあいだの摩擦はすべて無視できるものとする.
問題 1 時刻 t = 0 で導体棒に電流が流れ出した瞬間の電流の大きさ I(0)を,R と V
を用いて表せ.
問題 2 導体棒に電流 I(0)が流れたとき,導体棒に働いている右向きの力 F の大
きさを求めよ.
問題 3 導体棒が動くと誘導起電力が生じることに注意すると,導体棒の運動方
程式は
m
dv(t)
= av(t ) + b
dt
の形に書くことができる.このとき,定数 a, b を B, R, V, l を用いて表せ.
問題 4 時刻 t = 0 で v(0) = 0 である初期条件に注意して,問題 3 の運動方程式を
解いて v(t)を求めよ.
問題 5 単位時間に電源が供給するエネルギーは,導体棒の運動エネルギーの単
位時間の変化率と,単位時間に抵抗が消費するエネルギーの和に等しい
こと,すなわち,
VI (t ) =
d æ1
2ö
2
ç mv(t ) ÷ø + RI (t )
dt è 2
5
となることを示せ.
6
Ⅲ 化学
以下の5問 (Ⅲ-1, Ⅲ-2, Ⅲ-3, Ⅲ-4, Ⅲ-5) から3問を選択して解
答せよ.
Ⅲ-1(選択)
放射性核種の壊変速度は,時間 t において存在する核種の数 N に比例する.す
なわち,比例定数 λ を用いて次式で表される.
dN
= - lN
dt
(1)
以下の問題に解答せよ.
問題 1 式(1)の微分方程式を解いて,N を時間 t の関数として示せ.また,放射
壊変の半減期 T1/2 を,比例定数 λ を用いて示せ.ただし,時刻 t=0 におけ
る N を N0 とする.
問題 2 放射性同位体である 14C と 137Cs のそれぞれについて,存在量が初めの
1/10 及び 1/100 になるのに要する時間を求めよ.ただし,14C と 137Cs の
半減期は,それぞれ 5570 年と 30 年とし,ln(0.1)= –2.3, ln(2)=0.69 とする.
問題 3 ある放射性核種に関して,時刻 t=0 における存在量を P0,時刻 t におけ
る存在量を P とすると,その放射壊変に伴う娘核種の生成量 D*は,D* =
P0– P で与えられる.時刻 t=0 における娘核種の存在量を D0 として,時
刻 t における娘核種の存在量 D を,D0 と P を用いて t の関数として示せ.
問題 4 実際の放射年代測定法では,対象とする親核種の存在量 P や,娘核種の
存在量 D 以外に,娘核種の安定同位体を同時に定量することが多く,そ
の存在量を DS とすると, D/DS 比や P/DS 比から年代を求める.その理由
を 50 字程度で述べよ.
7
Ⅲ-2(選択)
以下の問題に解答せよ.
問題 1
硫酸銅 5 水和物(CuSO4・5H2O)について,以下の問いに答えよ.ただ
し,Cu と S の原子量は,それぞれ 63.6 と 32.1 とする.また,小数点第
1 位まで求めよ.
問1
硫酸銅 5 水和物 3 mol の重量(g)を求めよ.
問2
Cu2+濃度 0.5 mol l-1 の水溶液を 250 ml つくるとき,硫酸銅 5 水和物は何 g
必要か,答えよ.
Cu2+濃度 10 ppm の水溶液を 500 ml つくるとき,硫酸銅 5 水和物は何 mg
問3
必要か,答えよ.
問題 2
大気中で進行する,酸素分子(O2)からオゾンが生成する光化学反応に
ついて,以下の問いに答えよ.
問1
この反応の反応式を示せ.
問2
128 g の酸素分子が反応することで生成するオゾンの重量(g)を求めよ.
問3
オゾンの外殻電子構造を例にならって示せ.必要であれば,共鳴構造も示
せ.
例) H
Br
問 4 オゾン層によって 320 nm 以下の波長の紫外線が大気中で遮断されるメカ
ニズムを,オゾン層中で進行する3つの化学反応の反応式を示しながら
説明せよ.なお,最初に進行する反応は, O2 + 紫外線 (λ ≦ 242 nm) → 2O
であり,他の2つの反応の反応式はこれにならって記すこと.
Ⅲ-3(選択)
8
小さな沼地の底泥から気泡が発生して水の中を上昇し,最後は大気中に放出さ
れる様子が観察された.これに関して,以下の問題に解答せよ.ただし,気体
はすべて理想気体として取り扱い,気体定数は 8.3 J K–1 mol–1 とせよ.また数値
は有効数字 2 桁で答えよ.計算過程も示すこと.
問題 1
発生する気泡を捕集し,共存する水蒸気を完全に除去した上で組成を測
定したところ,体積比で 90 %がメタン(CH4)であり,残りは窒素(N2)
であった.この試料に関して,以下の問いに答えよ.
問 1
試料中のメタン濃度を定量するにはどのようにすれば良いか.40 字程度
で説明せよ.
試料を内容積 0.1 m3 の真空ライン中に分取したところ,300 K で 104 N m-2
問2
を示した.次に酸化銅を用いて完全燃焼させたところ,水の生成がみとめ
られた.生成した水の総重量(g)を求めよ.
問3
ここで観察されたような沼地の底泥から気泡が発生する現象は,夏季に観
察されることが多いが,これはなぜか.理由を 100 字程度で述べよ.
問題 2
沼地の水面に対して水平に, 2 m s-1 で一定ベクトルの風が吹いている
とする.沼地から風上側と風下側にそれぞれ少しずつ離れた二地点で,
同時に大気中のメタン濃度を定量したところ,風上側では常に 1.8 ppm
(ただしここでは ppm は体積比百万分率)だったのに対して,風下側で
は平均 2.8 ppm であった.大気圧は 105 N m-2 、気温は 300 K で,いずれ
も常に一定であったものとして,以下の問いに答えよ.ただし,沼地以
外の発生源と,大気中における分解や生成は無視できるものとする.
問1
風下側で濃度を観測した点を通り,かつ風向に対して垂直となる平面を考
える.この平面の中で,観測点を含めた一辺が 10 m 四方の正方形の範囲
の内側のメタン濃度はすべて風下側と同じであり,この範囲の外側のメタ
ン濃度はすべて風上側と同じであったとする.単位時間(秒)あたりにこ
の沼地から放出されるメタンの重量(g)を求めよ.
9
問2
沼地から放出されるメタンと窒素の体積比は,問題 1 の気泡と等しいもの
とする.前問で求めた単位時間あたりのメタンの放出量をもとに,単位時
間あたりに放出される窒素の重量(g)を求めよ.
10
Ⅲ-4(選択)
大気中の酸素分子(O2)の濃度は,体積比で 21 %であり,場所によらず一定で
あるとする.これに関して,以下の問題に答えよ.ただし気体はすべて理想気
体とする.
問題1 大気中に含まれている酸素分子の総重量を,有効数字 2 桁で求めよ.必
要であれば,以下の数字を用いよ.
地表面における平均大気圧: 105 (N m-2)
地表面における重力加速度:10 (m s-2)
地球の表面積:5×108 (km2)
地球大気の平均分子量:29
問題 2 海水中の溶存酸素分子は,大気中の酸素分子と,15 °C で海表面を通して
溶解平衡に達しているものとする.海水中の溶存酸素分子の総重量を,
有効数字 2 桁で求めよ.必要であれば,以下の数字を用いよ.ただし,
ここで示した溶解度は,分圧が 105 N m-2,温度が 15 °C の条件下で,海
水 1 cm3 に溶解する量を,標準状態における体積に換算したものである.
海表面における平均大気圧:105 (N m-2)
海洋の表面積:3.6×108 (km2)
海洋の体積:1.3×109 (km3)
酸素分子の海水に対する溶解度:0.03 (cm3)
標準状態における理想気体の体積:2.24×104 (cm3)
11
Ⅲ-5(選択)
以下の問題に解答せよ.
問題 1
酸触媒存在下で,18O で標識したブタノールと,化合物 A(CH3COOH)
を反応させて,化合物 B(CH3COOCH2CH2CH2CH3)を得た.以下の問い
に答えよ.
問1
化合物 A と化合物 B の IUPAC 名をそれぞれ答えよ.
問2
この反応の反応式を示せ.
問 3
上記の反応とは逆方向の反応,すなわち,化合物 B が,ブタノールと化
合物 A に分解する反応は一般に何と呼ばれるか,答えよ.また,その反応
を進行させるために必要な試薬を1つ挙げよ.
問 4 上記の反応で生じた化合物 B を質量分析したところ,質量数 118 の分子イ
オンのピークが顕著に検出された.ここから,この反応の反応メカニズム
に関してどのようなことがいえるか.50 字程度で述べよ.
問題 2
有機化合物 X に対して元素分析と質量分析を行い,それぞれより i)およ
び ii)の結果を得た.
i) C, H, O の各原子から構成され,それぞれの重量比は,C= 60 %,H =
13.3 %,O = 26.7 %であった.
ii) 質量数 15,29,31,45,60 のピークが顕著に検出された.
有機化合物 X に関して,以下の問いに答えよ.なお,有機化合物 X の
水に対する溶解度を調べたところ,ほとんど溶けなかった.
問1
元素分析の結果である i)をもとに,有機化合物 X を構成する各原子の原子
数の比を求めよ.
問2
質量分析で得られた質量数 15,29,31,45,60 の各フラグメントイオン
の構造式をそれぞれ答えよ.
問3
有機化合物 X の構造式を示せ.
12
Ⅱ-3
1気圧下での湖と海の結氷に関する,以下の問題に解答せよ.
問題 1
真水は 4.0°C で最大密度となるのに対して,海水は結氷温度である
-1.8°C まで温度が下がるほど密度は大きくなる.湖と海とが,表面から
ゆっくり冷却されて凍り始める時点での,湖と海それぞれの水温の図を,
縦軸を深さ,横軸を水温として描け.ただし,水平方向に水温は一様で
あるとし,湖水は真水であり,海水の塩分は一様であるとする.
問題 2
100 m の水深の海において,初期の水温が一様に 10°C であり,その後
ゆっくり冷却されて 10 m の厚さの海水が凍って海氷となったとする.面
積 1 m2 当たりどれだけの熱量が海から取り去られたかを答えよ.ただし,
海水の比熱は 4.0×103 J K-1 kg-1,1 kg あたりの氷の融解熱は 3.3×105 J
kg-1, 海水の密度は 1,000 kg m-3 で,海氷の温度は海水の結氷温度である
とする.
問題 3
問題 2 の状態変化に関する以下の問いに答えよ.ただし,初期水温を
TA, 結氷温度を TB,海水の比熱を C,氷の融解熱を L,海水の密度をrと
する.なお,C, L, rは定数とする.
問1
海水温が,初期水温から結氷温度になるまでの,面積 1 m2 当たりのエン
トロピー変化を求めよ.
問2
海水が結氷を開始する瞬間から,氷が成長して厚さ h になるまでの,面
積 1 m2 当たりのエントロピー変化を求めよ.
13
IV 地球科学 I
以下の 3 問(IV-1,IV-2,IV-3)より 2 問を選択して解答せよ.
IV-1(選択)以下の文章を読み,問題に答えよ.
地球上の生物は,過去の地質時代におけるさまざまな地球環境の変化や事変
に伴って絶滅と進化を繰り返し現在に至っている.新生代は,陸上では我々人
類を含む多くの哺乳類が繁栄し被子植物が進化した時代であり,海洋において
もさまざまな生物が多様化した.下の図は,新生代の3つの異なる時代につい
て1地点あたりの大型底生有孔虫の属数を示したものである.
(ア)中期
42-39Ma
(イ)前期
23-16Ma
Renema, et al., Science 321, 654 (2008)を改変
14
問題 1 (ア)と(イ)はそれぞれどの地質時代を示すか.「世」で答えよ.
問題 2
図中の(ア)の時代に1地点あたりの大型底生有孔虫の属数が多い地点
が集中している海域は何と呼ばれているか,答えよ.また,
(ア)と(イ)
の時代では,多様性の中心域が移動していることがわかる.この理由
を当時の地球環境と大陸の移動を考慮して100字程度で説明せよ.
問題 3
地層から発見されるある種のプランクトンの化石は,その地層の年代を
特定するのに有効である.そのために必要な条件を30字程度で答え
よ.また,そのような化石を一般に何というか答えよ.
問題 4
生物によって形成された炭酸塩殻の酸素同位体比から,その生物の生息
していた当時の水温を推定する方法が広く知られている.第四紀の氷
期と間氷期において,底生有孔虫殻の酸素同位体比はそれぞれ大きく
なるか小さくなるか,答えよ。また,その時に酸素同位体比が変化す
る理由を答えよ.
問題 5
炭酸塩岩は地球の炭素のリザーバー(貯蓄)としては最大規模であり,
その形成が炭素循環に重要な役割を果たしている.リザーバーとして
の炭酸塩鉱物のうち代表的なものの鉱物名と化学式を2つ答えよ.
問題 6 海洋生物の石灰質の殻の放射性炭素同位体比を用いて年代を測定する
手法があるが,これにより得られる年代は実際よりも古くなることが
ある.これは一般にリザーバー効果と呼ばれているが,その主な理由
を生物が石灰化する際に利用する炭素源を考慮して70字程度で説明
せよ.
15
Ⅳ-2(選択)
問題1
以下の問題に答えよ.
媒質中を小さな粒子が自由沈降する際の法則を数式で表すと以下のよ
うになる.
Vt =
4 g Dp ρp − ρf
3 ρf CR
CR =
24
Rep
Rep =
Vt Dp ρf
μ
Vt : 終末速度(m/s),g : 重力加速度(m/s2),Dp : 粒子直径(m),ρp : 粒子密度(kg/m3)
,
ρf : 媒質(流体)密度(kg/m3),μ : 媒質粘性係数(Pa・s),CR : 抵抗係数,Rep : レイ
ノルズ数.
問1
これらを Vt(終末速度)について解き,その式を導出の過程とともに示
せ.
問2
直径 0.1 mm の砂粒子が水中を自由沈降する際の終末速度 Vt(m/s)を
求め,有効数字2桁で答えよ.ただし,重力加速度=10 m/s2,水の粘性
係数=1.0 x 10-3 Pa・s,水の密度=1000 kg/m3,粒子密度=2500 kg/m3,
の値を用いよ.
問3
この粒子自由沈降の法則は何と呼ばれているか,答えよ.また,問1で
導かれた式から,沈降する粒子の終末速度と上記各種パラメータとの関
係を 60 字程度で答えよ.
問題2
以下 の文 章を読 み,(A) ~( D )に適 切な語 を入 れよ. 加え て,
『(
(
A
C
)流』を英語で書け.
B
)は,海底の(
A
よって堆積した地層である.
(
A
シーケンスが有名である.(
察されるものであるが,(
C
C
)などから発生した(
)流に
)の内部構造のモデルとして,ブーマ・
)は地質時代の海成層の中には頻繁に観
)流が実際に観察される機会はほとんどな
い.1929 年には,北アメリカ東岸で発生した地震によって(
と破断した事例があり,深海で実際に(
的に示すものとして有名である.
16
C
D
)が次々
)流が起きていることを間接
問題3
ブーマ・シーケンスの下部(Ta ディビジョン)は,比較的粒度が粗く,
下から上に向かって粒度がしだいに減少していく構造が見られる.こ
の構造を何と呼ぶか,答えよ.また,この構造が形成されるメカニズ
ムを 60 字程度で答えよ.
問題4
A
問題2の(
)からなる地層の
中には,右のような層序が認識されるこ
とがある.このような層序は,『上方粗
粒・厚層化シーケンス』と呼ばれる.こ
こで,
(
A
)砂岩の粒度と厚さを,
それをもたらした流れの流速と運搬量
を示すものと仮定すると,この地層シー
ケンスはどのようにして形成されたと
考えられるか,堆積学の基本法則の一つ
『ワルターの法則』をヒントにし,100
字程度で答えよ.
17
IV-3(選択)
問題 1
以下の問題に答えよ.
今,2 次元で(紙面に垂直な方向の歪はない)一様,かつ体積変化の
ない変形を考える.そのような変形には,図 1-1 に示す 2 通りの代表
的な変形経路(履歴)がある.ここで,破線は変形前の形状,実線は
変形後の形状を示し,矢印は変形前の正方形の上底・下底および左右
の側線に作用した変位ベクトルを示す.以下の問いに答えよ.
問1
図 1-1 に示された変形経路(A)および(B)は何と呼ばれているか答えよ.
また,歪の主軸の定義を答え,2 つの変形経路では,歪の主軸は変形の
前後で回転するかしないかをそれぞれ答えよ.
問 2
今,変形前に太線で示される流動しにくい地層(コンピーテント層)
が,周囲の流動しやすい地層(インコンピーテント層,白色部)に挟
まれているとする.変形が図 1-1 に実線で示される大変形まで至る時,
変形の増加とともにコンピーテント層に形成される構造を,変形経路
(A)および(B)ごとに図を用いて模式的に示せ.さらに,最終的に形成さ
れる構造名を変形経路ごとに答えよ.ただし,変形経路(A)では,コン
ピーテント層(変形前に左上方から右下方に延長される対角線)は,
図 1-1 に実線で示されるように変形後に 90 度回転したとする.
問3
変形経路(A)および(B)の両方において,コンピーテント層はある段階
から切れて,互いに隔離していく.この時,切れた地層間の隙間には
周囲のインコンピーテント層が注入してくるが,場合によっては他の
物質が注入する.この物質とは何か,また,この物質の注入は野外の
どの様な産状から推定出来るのか答えよ.
問4
問題 1 の場合,岩石は全体として流動変形している.流動変形は地殻内
でどのような条件で,どのぐらいの深さで起こっているか,また,さ
らに浅い部分では変形様式はどのように変化するか,その理由も含め
て合計 200 字程度で述べよ.
18
図 1-1.
2 次元変形における 2 つの異なる変形経路.
問題 2
地球の表層は海と陸から成るが,この地表面の高度の違いは大陸が相
対的に重いマントルの上に浮いているというアイソスタシー(岩石荷
重圧のつり合い)によって説明されている.今,海,大陸地殻,海洋
地殻およびマントルが図 2-1 に示されるような層構造と厚さを持ち,
それぞれの密度が,1000 kg/m3, 2850 kg/m3, 3000 kg/m3 および 3300 kg/m3
である時,アイソスタシーを用いて海の深さを計算せよ.途中の式も
示せ.ただし,図 2-1 に示すように,海水面の高度は大陸部分の地表
面の高度と等しいとする.なお,有効数字は3桁とせよ.
図 2-1.
地球表層部の層構造と各層の厚さ.
19
問題 3
日本列島に分布する広域変成帯は,現在と同じような海洋プレートの
大陸プレート下への沈み込み帯で形成されたと考えられている.海洋
プレートの最上部は(1)遠洋性堆積物と下位の玄武岩から構成されるが,
それらの一部は沈み込みの際にはぎ取られて陸源の砕屑岩とともに陸
側に付加する(付加体).しかし,これらの岩石の一部は浅い部分で付
加体とはならず,沈み込む海洋プレートとともにさらに地下深部にも
たらされ,そこで広域変成作用を被り,その後上昇して変成帯として
地表に露出する.
地質学者は地表に露出した変成岩を採取し,岩石中の変成鉱物の組
み合わせや化学組成を解析して,岩石が経験した温度圧力条件を見積
もる.図 3-1 に示すACF三角図は,玄武岩質岩石に形成される変成
鉱物の共生・化学組成を示すために良く使用される.今,玄武岩質岩
石中に,石英と斜長石を除いて図に示す3つの変成鉱物が形成され,
安定であったとする.この内鉱物①は緑れん石(エピドート)である.
以下の問いに答えよ.
問1
下線部(1)を起源とする2つの岩石の名称を答えよ.
問2
図 3-1 のACF図において,頂点Fの化学組成は MgO+FeO である.
頂点AとCの化学組成をそれぞれ答えよ.
問3
図 3-1 の鉱物②は角閃石族に属し,また鉱物③は約 10%という大量の
水を結晶構造中に含む鉱物である.鉱物②および③の名称をそれぞれ
答えよ.
問4
玄武岩質岩石中で安定であった3つの変成鉱物から,その岩石が被った
変成作用のおよその温度圧力条件が推定される.この温度圧力条件に
相当する変成相名を答え,その温度圧力条件の組み合わせとして適切
なものを以下の3つから選択し,記号で答えよ.
ア.
温度=300-500℃, 圧力<8 kb
イ.
温度=200-400℃, 7 kb<圧力<14 kb
ウ.
温度=500-700℃, 圧力<12 kb
20
図 3-1.
ACF三角図と鉱物①~③の化学組成.
21
Ⅴ
地球科学Ⅱ
以下の2問(Ⅴ-1,Ⅴ-2)を解答せよ.
V-1
以下の問題 1~3のすべてに解答せよ.
問題1
問1
以下の問いに答えよ.
マントルから玄武岩質マグマが上昇する場合,上昇と停滞を繰りかえし
ながら,噴火前には地殻浅部で最終的に停滞することが多い.マントル
から地殻浅部までの上昇過程について,マグマの変化を含めて 150字程
度で説明せよ.
問2
噴火時には地殻浅部の停滞していた場所から,地表まで再び上昇する.
その上昇メカニズムを 100字程度で述べよ.
問3
地殻浅部からマグマが再び上昇し噴火する場合に,(A)爆発的噴火をす
る場合と(B)非爆発的噴火をする場合がある.
(1)
(A)および(B)の代表的な噴火様式を1つずつ述べよ.
(2)
上記の 2つの噴火様式の差を生じさせる要因について,マグマ中の揮発
性成分の挙動に注目して 100字程度で述べよ.
問題2
下記の図は火砕物からなる火山噴出物の堆積状況(模様で示した部分)
を概念的に示したものである.以下の問いに答えよ.
22
問1(a)~(c)のそれぞれについて,堆積物名(modeofemplacementを含め
た)を書け.
問2(a)と(b
)について堆積物を露頭で観察した場合の相違点を,100字程度
でまとめよ.
問3(c)のような堆積物を生じる噴火のタイプを述べよ.
問題3
以下から 2つの語句をえらび,それぞれ 100字程度で説明せよ.
(1)
Mushy magma chamber
(2)
Solid solution
(3)
Calc-alkaline andesite
(4)
Valles type caldera
(5)
Hazard map
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V-2 次の問題1と問題2の両方に解答せよ.
問題1
問1
以下の問いに解答せよ.
ある温度で鉱物結晶 M のすべてが溶融し, M と同じ組成の融液になる
ことを何というか答えよ.
問2
ある温度で鉱物結晶 M の一部が融解して,M とは異なった組成の鉱物結
晶 N と融液とになることを何というか答えよ.
問3
ある圧力における相関係が右図のような
2 成分系 A-B を考える.
(1)
融液 L を平衡に保ったまま冷却したとき,
最初に晶出する結晶は何か答えよ.
(2)
成分 A と成分 B の粉末を 2:1 のモル比で
混合し,平衡に保ったまま加熱したとき,
温度 T1 で共存する相と,それらの化学組
成を図から読み取り答えよ.
(3)
ギブスの自由度([自由度]= [成分数]+2 -[
相の数])の観点から,温度
T1 が不変点となることを 100 字以内で説明せよ.
24
問題2
以下の文章を読み,問いに答えよ.
一般に,鉱物とは[
①
]に産出する[
②
]の結晶のことを
いう.結晶内部では原子やイオンが3次元の[
③
]をしているので,
結晶内にある点(格子点)を考えると,これと同じ性質をもつ格子点が3次元的に
[
③
]をしている.ここから繰り返しの単位となる構造を「8つの頂
点に格子点をもつ平行六面体」として切り出すことができ,これを[
と呼ぶ.[
④
④
]
]は(a)内部に格子点を含まないようにするのが基本である
が,格子の対称性を結晶の対称性と一致させるため(b)複合格子を採用する場合も
ある.この様にすると全部で[
問1
]種の[
⑥
]が得られる.
空欄①~⑥に入る最適な言葉を、以下の語群から選べ.
空間群,
人工的,
積層,
問2
⑤
14,
32,
有機物,
単位格子,
230,
金属,
7,
酸化物,
周期配列,
複合格子,
無機化合物,
ランダム配列,
ブラべー格子,
格子定数
天然,
指数
結晶点群
結晶が必ず持っている対称要素を次のなかからひとつ選べ.
対称面,対称心,格子並進,2回回転軸
問3
下線部(a)の性質を持つ格子の名称を答えよ.
問4
下線部(b)の複合格子の名称をひとつ記し,図示せよ.
問5
複合格子であることはどの様な実験結果から知ることが出来るか,
50 字以内で記せ.
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