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<書評と紹介>北海道・東北史研究会編『海峡をつな
ぐ日本史』
中野渡, 一耕
弘前大学國史研究. 96, 1994, p76-80
1994-03-30
http://hdl.handle.net/10129/3120
Rights
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publisher
http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/
﹃
海 峡 を つな ぐ 日本 史﹄
北 海 道 ・東 北 史 研 究 会 編
T
エ
中 野渡
一 耕
近年 、 北方史 の研究 の進 展 ぶりは著 し いも のがあ る。 そ の中 で研究 の
核 とし て寄与 し てきた のは北海道 ・東 北史 研究会 の力 であ る。同会 は 一
九 八六年 の函館 シ ンポ ジ ウ ム以来 一貫 し て 「
中 央 から の視点 では見 え て
来 な い地域史 像 を構築 」す る ことを目的 に、研究 の旗 を振 ってきた。 そ
のシ ンポジ ウ ム の成 果 は ﹃
北 から の日本史 ﹄ と題 し、既 に二巻 が発行 さ
れ て いる。昨年、 再び本 シリ ーズ の第 三弾 に当 た る本 が刊行 された。 そ
れが本書 ﹃
海峡 を つなぐ日本史 ﹄ であ る。
本 シリ ーズ は シンポジ ウ ム の開 催 に合 わ せ て刊行 さ れ てきた。 すな わ
ち、 一巻 は前 述 の函館 大 会 、 二巻 は 一九 八 八年 の弘前 大会 の成 果 であ る。
本書 も同様 に 1九 九〇年 に北海道 上 ノ国町 で行 われた 「
上 ノ国 シ ンポジ
ウ ム」 の講演 および研究 発表 を中 心 にま とめたも のであ る。
基本的 スタイ ルも踏 襲 され て いるが、 シンポジ ウ ム の内容同様深化 が
みられる。例 えば 、後述 す るが歴史 考古 の成果 が取 り入れられた ことや、
前巻 ま でと様相 を異 にす る のはタイ ト ルが 「
海峡 を つなぐ 日本史 」 に改
めら れた こと であ る。 こ のことは単 に中央 の視 点 に対 す る地方 から の視
点 の主張 と い った段階 から 一歩進 ん で' 人的 ・物的交流 な どを通 じた、
北海道 、東北 と いう同 じ北方 地域 とし て の均質性 、独自 性 を解 明 し、 一
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の姿 を改 め て構築 しよう とす る姿勢 の
化 の原因 な ど に質問 が集中 した。この報 告を踏 まえ て、菊池俊 彦氏 が 「ア
」
」
菊池徹 夫氏 の報 告 の背景 を理解 す る手助 け とな る。
二番 目 の 「
勝山館 ・発掘調査十年 の成 果 と課題
本州 側 で の中 世城郭、根 城南 部氏 の本拠 地 であ った根城 に ついて、最近
三番 目 の佐 々木 浩 一 「
根城 ・発掘 調査 の成 果」 は前 発表 と対象 的 に、
山館 の性格 を明ら か にす る のが課題 と いう。
穂 氏 の報 告。交 易 の拠点 とし て' また蝦夷地 と和 人 と の接点 とし ての勝
て、蛎崎 氏 の当初 の本拠地 であ った勝山館 の発掘 に携 わ ってきた松崎 水
は上 ノ国町 で 一貫 し
文化 のアイ ヌ文化 に対 す る影響 を めぐ る論争史 を手際 よ- まとめ ており、
つの自立 した地域 とし て の 「
北
の位置 づ け的論稿 は ひとまず当初 の目的 を果 たした のか、
イ ヌ文化 の起 源 と系統 を めぐ って」 と いう コメ ンーを寄 せ、 オ ホー ツク
」
現 れ であ ると言 えよう かO ただ し、 そ の 一方 で 7巻' 二巻 に特徴的 だ っ
た 「アイ ヌ史
本書 ではあ まり見 られな い。 以下、借越 なが ら順 に本書 の内 容 を紹介 し
て行 - こと にし よう。
l
I
本書 も前 回同様 三部構 成 をとり、 1部 は シ ンポジ ウ ム におけ る講演 、
二部 は同 じ-研究報 告、 三部 は シ ンポジ ウ ムを踏 まえた書 き下 ろしと い
う体 裁を取 って いる。
の発掘結 果 を基 にまとめたも の。
この二人 の報 告 のよう に今 回初 め て歴史考古 学 な成 果が発表 に取 り入
は網 野善彦 氏 の講演 を まと め
たも の。 網 野氏 は近年 の日本海 海 上交 通 の研究 を踏 まえ、 「
海 」のも たら
ら れた。 も っとも、 両報 告相 互 にとりた てて関連 はな-、特 に後者 にお
」
す人 々 の交 易 や交 通 の広 がりや、支 配者 側 の海 上交易 の支配 の重要性 を
いて'本大会 のテー マであ る 「
海峡 を挟 む地域像 」 の中 でどう位 置づ け
第 1部 「
日本海 の海 上交 通 と海 の領主
示し、 国家論 的 なも のでな-、地域 の社会史 的 な研究 のアプ ローチが 必
るか' と いう視点 もほし か った気 が す る。 また'前者 に ついては城郭 の
発掘報 告 にし ては部内 の遺 構配置 図等 が 一切添付 され ておらず 、読者 の
要 と説 -0
第 二部 は八人 の報 告及び コメ ン- でまと められ て いる。
世 に ついては文献 のみで過去 を語 る のは限界 があ る のは自 明 の理 であり、
理解 を妨げ て いる のが惜 し い。 ともあ れ、当 地域 に ついては'古 代 ・中
な り、 シ ンポ で の発表 への質問 に回答 す る形 を取 って いる。菊池氏 は ア
第 二巻 の民俗 二言語学的 アプ ローチ に続 いて、 いわ ゆる 「
歴史時代 」 に
1番 目 は菊池徹夫 「
土 器文化 から アイ ヌ文化 へ 」は他 の報 告 と形 が異
イ ヌ文化 の成 立 に関 す る 「オ ホー ツク文化 」 の影響 の強 さを 一貫 し て主
お いても今後 このよう な発表 が重要視 され る であ ろう。
四番 目 は長 谷川成 一「
本州北端 におけ る近世城下町 の成 立 」
。津軽藩 を
張 し て いるが、本報 告 ではさら にそ の要 因 とし て、鎌倉 期 以降 の蝦夷也
が衰 退 し て、
事例 に、近世統 一領主権 力 の成 立 を、領内 城郭 の破却 '在地勢力 の取 り
」
そ の代 わり に、 より狩 猟 ・漁労的 な 「オホー ツク文化 」 の影響 が強 ま っ
込 み、領内寺社 の集中、検地 と家臣 への知行宛行状 の発給 、城下 町商人 ・
の本州 への海 産物交 易 の増大 に伴 い、農耕的 な 「
擦 文文化
た のでな いかと論 じ て いる。 これ に対 し て' 具体 的 な影響 の内 容 や、変
7
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職人 の招聴 、 の諸点 から歴史地 理学的 に地図上 にプ ロットし、分析 す る。
義 に ついても、蝦夷 の饗応 に用 いられた のみでな-、在地 での使 用 の可
認 められな いと いう荒木陽 1郎氏 の論 に反論 し て いる。 またそ の史的意
二番目 は故山 田秀 三 「
北海道 のモイ ワと秋 田 ・
青森 のモヤ」
。 両者 が景
また、本文 では軽 -触 れら れ て いるだけだが、他 の戦国大名 と異 なり、
注目 され て いい。 これを受 け て、玉井哲雄氏 が 「
近世城下町成 立過程 に
観的 に非常 に共通性があ る (いず れも周囲 から際立 つ独立丘) ことから
能性があ ったことを指摘 し て いる。
おける本州北端 に ついて」 と題 し て コメ ントし、近世領主権力 の成 立が
アイヌ語語源 とし て見 たとき、 「モ ・イワ -小 さ い ・神山」 でな いかと推
領内統 1過程 にお いて異 民族 (
アイヌ) と の戦 いが含 まれ て いたことは
統 一政権 と いう上 から の要請もあ った ことを強調。 また、それを踏 まえ
処」
測 する。 「
イワ」 は単 なる 「
山」 でな- 「カムイ ・イ ワキ -神 ・住 む ・
三番目 は浪川健治 「
北奥 の鉄需要 と地域関係」 は小論 ではあ るが、生
て、弘前 が他 の城下町 と の共通性も さることなが ら、固有性、特殊性 に
五番目 の田中秀和 「
幕藩権力 の解体 と北海道 」 は、蝦夷地 (
奥州 を含
産財 とし ての鉄 の供給体制 に ついて、南部藩 と津軽藩 を比較 したも の0
の省略 であ ると いう。実 証的論稿 であ る。
む) に対 しての、幕末維新期 の松前藩、明治新 政府 それぞれ の 「
認識 」
廻船 の造船 ・補修 の基地 とし て田名部産鉄を統制下 にお いた前者 に対 し、
も検討 を加 える必要 があ るとする。
のあり方 を探 って いる。蝦夷地唯 1の藩 とし て自己 の存在 をアピー ルし
最後 に研究余禄、 エッセイ的小論 が三編 あ る。青山忠正 「
館 城祉」 は
一七世紀後半 にお いても、領主的 な需要 すら領外 から の移 入 で賄 なわざ
対 し木村直也氏 は 「
幕末維新期 における北方地域 の編成 をめぐ って」 と
明治維新後短期間松前氏 の居城 とな った館城 に ついて、藩庁 を移 した目
ようとする松前藩 に対 し、新政府 は天皇制 イデ オ ロギ ーを貫徹 する場所
いう コメ ント で、松前藩 に対 し ては第 一次幕領化 から のスパ ンで見 る べ
的 や、場所選定 の理由 に ついて探 る。維新後 の藩政史 を藩庁移転 と いう
るを得 な か った後者。 それぞれ の地域的関係 を見 て いる。
き、 また新政府 に対 しては、奥州 を 「
未開」 とし てみる のは戊辰戦争 の
視点 で見 た研究 は少 な-好例。渡部孝 之 「
勝山館跡 のあ る町 に住 ん で」
とし て 「
皇 化」 「
王化」の対象 とし て蝦夷地 を捉 らえた、 と いう。 これ に
敗戦 だけが理由 か、 また和人 とアイヌでは認識 の質 が違 う のでな いかと
は上 ノ国町住人 とし てシンポジ ウム にあた って、地域史研究 の意義 に つ
と説 いて いる。
から述 べて いる。民族的多数者 であ る (日本人) の相対的対象化も必要
ウムの結果を ふまえ て近代史研究 の意義 を 「
多民族国家論」 と いう視点
いて述 べたも の。河西英通 「
近代史 から の接点」 はこれま でのシ ンポジ
いう注目 す べき問題提起 をし て いる。
第 三部 は新規書 き下 ろし の論稿 で構成 され て いる。第 二部 と比較 し て
割合個別事象 に視点 が おかれ て いる.
最初 は小 口雅史 「「
夫」字箆 (
墨)書 に ついて」
。主 に九∼ 一一世紀 に
発掘 された土器 のう ち 「
夫 」字 をも つ物 に ついて、 「
夷」の略字体 とし て
認 めるかどう か に ついて。 最近多 -発掘 されたこれら の土器をも と に、
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I
今 回 はやや個 別事象 の研究 が中 心 とな って いるため、 一巻 、 二巻 から の
方史 の視点 から 「
異域 ・異国 と の接点 」 を大会 テー マに取 り上げ 、当 也
巻 、第 二巻 は共通 の装 丁 であ るが'第 三巻 であ る本書 は装 丁 を変 えた0
な お、本 文 の内 容 と直接関係 な いが、本書 の装 丁 に ついて 一言。第 一
通読を お勧 めす る。
方 の研究者 により多 - の発表 があ った。 また、 国際先住 民年 であ った こ
統 一性 と いう ことを考 えれば 共通 とした方 がよ か った気 がするが、今 回
以上、概 略 ながら述 べてきた。昨年(
九 三年 )は地方史 研究協議会 も北
と から、北海 道 ・東北 の先住 民 であ るアイ ヌ民族 に スポ ットがあ た った
定価 二九 五〇 円)
はタイ ト ルも変 わ った こと であ るし、新 たな意気 込 みを現すも のとし て、
三〇七貢
結 果'北 方史 は 1見ブー ム の観 があ る。 も っとも、 これを単 に 1適性 の
四六判
(
な か のわたり ・かず やす 青森 県立 郷土館 研究 員)
1九九 三年
次 回以降 に注 目 した い。
(
三省堂
も のとし て捉 え る のでな-、 さら に再構築 を重 ね る ことが必要 であ る。
これは研究 者 のみならず、 読者 た る我 々 に ついても常 に問題意識 を問 い
かけ て いかなけ れば な るま い。 これは歴史 の素材 を単 に研究 の対象 とし
て見 るだ け でな-、例 えば アイ ヌ問題 一つ取 っても現在 に つなが る問題
であ る。 そ の背景 であ る 「アイ ヌ、或 いは和 人 にと って の過去 から現荏
に通 じ る北方社会 」 を理解 しな け れば本 質 は見 え て来 るま い。
そ の意味 で 一貫 し て、第 一巻 、第 二巻 と北方史 、北方交 流史 を探求 し
てきた北海 道 ・東 北史研究会 の成 果 は評価 されな け れば な らな い。各自
の研究 テー マと違 っても、考古、古代∼近 現代 と学際的 に地域 を総合 的
に考 える ことが でき、 ひと つの地域 像 を明 ら か にし よう とす る姿勢 には
自 分 も教 えられる点 が多 か った。昨年 はまた琉球音楽ブー ムにみら れ る
よう に'地域 的独自性 の主 張 が南 北 で見 られた年 であ ったが、 そ のこと
は日本 の中 で自 ら の相対的位 置 を確 認 す る事 でもあ る。 そし て相対的位
置 を知 ると いう ことは、 一方 で日本 の他 の地域 、例 えば 西南 地域 と比較
対象 す る こと により、 日本史 を広 い視 野 で見 る力 を養 う のではな いだ ろ
う か。 そ の意味 で、 でき れば研究 者 以外 の読者 にも読 ん で いただ きた い
本 であ る。 な お、 アイ ヌ史 ・北 方史 の全体像 、時代像 を知 るう え では、
嚢
報 -
加賀 一向
◎弘前大学国史研究会例会 は、左記 の通り弘前大学人文学部 にお いて開
催された。
第 五 一回 長谷川成 一氏 「
北 の元和値武」
平成五年十 二月十 二日
」
第五 二回 斎藤尚智氏 「一向 一操 の基本的性格 に ついて一漢 と三河 1向 7操 の比較を通し て平成 六年 二月 二十 日
◎本年度 の本研究会大会 は、七月三日を予定 し ておりますが、大会 の詳
細 は改めてご案内致します。
振替 口座
〇 二三〇〇- 一-六三四
◎本会 の郵便振替 口座 が、五月 一日より次 のよう に変更 になります。
新
弘前大学国史研究会
ただし、当分 の間、同封 の振替用紙 は使用 できます ので、会費 の振込
みにお使 い下さ い。
(
H)
日本近世の法と民衆
黒瀧十 二郎著 近世 の司法制度 を津軽藩 の事例 を素材 に
詳細 に考究 した著者積年 の労作。武士のみならず、農 民 ・
町人 ・僧 侶 ・神官 ・遊女ま でも対象とし具体的に論ずる.
併 せ て黒石藩領 にも触れる。
A5判 ・四八〇責 九五〇〇 円
古代国家と東国社会
千葉歴史学会編 執筆=岡本東 三 ・森 田喜久男 ・長谷川
暁 ・伊藤循 ・仁藤敦史・河名勉 ・宮 原武夫 ・佐 々木度 一・
武贋亮平 ・川尻秋生 古代房総関係文献目録 (
斎藤融編)
千葉史学叢霊 A5判 ・三九〇責 八〇〇〇円
日本中世の法と権威
田中修貴著 中世 日本 の法体制 と権威 の実相 を備前 ・備
中 ・美作 の事例を中心 に克明に追究す る。内容= 明法勘
文 /置文/禁制 ・捉書 ・国界/荘園 ・法現象 / 国郡と祭
紀/受領名官途 /室 町時代 の国司'外。
七〇〇〇円
日本中世社会成立史の研究
究
泉 谷康夫著 平安後期から鎌倉初期 の政 治 ・社会 の動向
を 明した十 二篤を収 める。内容=税目別専 当制 に つい
て/寄 人と庄園整理 /任用国司 に ついて/守護 ・地頭制
度 の成立 に関して'外。
六〇〇〇円
城下町富山の町民とくらし
田中喜男著 加賀前 田藩 の支藩富 山藩 の城下 町である富
山 の町民 のくらし の実態 を'町名 ・行政 ・商業活動 ・芝
居 ・興行 ・町人 の負担 ・売薬 ・祭礼 ・町並 ・街道などか
ら多角的 に考察 した待望 の書。
三〇〇〇円
8
高科書店
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税
別
)
4
7
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価格は
〒l
1
2東京都文京区水道 2
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8星合ビル2
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