第3学年 1 2 単元名 心のふれあいを伝えよう 国語科学習指導案 ―「サーカスのライオン」― 単元が目指す「語る子供」 ○ 作品の星座図を作成しながら,進んで自分の読みを友達に伝えたり友達と自分の読みとを比 べたりして,作品を正確に豊かに捉えることができる。 ○ 物語から読み取った心のふれあいと,友達との毎日の生活の中での温かい心のふれあいとを 照らし合わせながら,その思いをお家の人に音読,ポスターで伝えようとすることができる。 3 単元について (1) 本単元のねらいは,物語の中心となる人物の気持ちを叙述に沿って読み取り,一番強く心 に残った場面を自分の言葉で表現することである。友達との関係が深まる3年生のこの時期 に,温かい心のふれあいを描いた物語を読んだり,自分の経験や物語の感動を自分の言葉で 家の人に伝えることは,児童にとって大変興味深いことと考えられる。 教材文「サーカスのライオン」では,中心人物であるライオンのじんざが男の子との出会い によって大きく気持ちが変化していく様子を読み取らせる。じんざの気持ちを叙述に沿って 丁寧に読み取り,じんざの行動に表れた男の子への思いを深く理解することで,共感をもっ て読むことができると思われる。短い文で淡々とテンポよく進んでいく書きぶりや,細かな 情景描写がじんざの気持ちを的確に表現しており,児童は深い感動とともにこの物語に浸り 学習を進めることができるだろう。 このことは,学習指導要領の内容「ウ・エ心のふれあいを伝える」という 「場面の移り変わ りや情景を,叙述を基に想像しながら読むこと」 であり,「読み取った内容について自分の 考えをまとめ,一人一人の感じ方について違いのあることに気付く」 ことにつながると考え る。 (2) 公開Ⅰ 本学級の児童は,物語文を読むのが好きである。読み聞かせを楽しみにしている児童も多 い。 1学期には,「ゆうすげ村の小さな旅館」で,物語を大きく四つの場面に分けあらすじを 書く学習をしてきている。しかし,場面分けをする力や,物語全体を捉える力がまだ十分に ついているとは言えない。ただ,地域の方と触れ合うことを通して,自分の日常生活と物語 の世界を重ねて捉える事ができ,貴重な経験となっている。 公開Ⅱ 児童は,今までに3つの物語作品の星座図を書いた経験がある。しかし,友達と話し合っ たり教師の話を聞いたりしながらの作成であり,まだまだ自力読みには至っていない。自分 の力で作品の星座図がかけると答えた児童は,31名中わずか7名であった。そのせいか, 物語文に対して苦手意識を感じているようだ。しかし,読書は大好きで,ほとんどの児童が 1ヶ月の間に5冊以上の本を読んでいる。 (3)① 友達との心のふれあいを家の人に伝える工夫 ―研究仮説1より― この時期の児童にとって大切なものの一つに「友達」があげられるだろう。友達と一緒だ から楽しい,友達がいるから頑張れる,友達に会えるから…,と友達の存在はとても大きい。 ライオンのじんざにとっても,男の子の存在はかけがえのない大切なものだったに違いない。 じんざにとっての男の子,児童にとっての友達,ともに心の底での温かいふれあいを結び付 けることができるのではないかと考えた。毎日の出来事や思ったことなどを「ふれあいポケ ット」の中に書きためていくことで,時々立ち止まって自分にとっての心のふれあいについ て,じんざの男の子に対する思いと重ね合わせながら学習を進めていきたい。 ② 場面を比べ読む観点を転移・活用させるための作品の星座図 ―研究仮説2より― 「サーカスのライオン」は,物語の典型的構造,即ち「導入」 「展開」 「クライマックス」 「終 結」の4場面を有しており,話の流れが捉えやすい作品である。本単元では,導入場面を基軸 として,その後の場面で人物がどのように変化していくかを捉えることが,物語を読み取る上 で有効であることを意識化させる。 作品の星座図 終結場面 クライマックス場面 展開場面 導入場面 比べ読み このような場面を意識した読みは,第1場面【サーカスの初めの日】2場面【・・・・・】 と分けた読みの学習においても行われる。しかし,物語によって場面数はまちまちであるため, その転移・活用は難しい。例えば,「『サーカスのライオン』は,第1場面【サーカスの初め の日】と第7場面【終わりの日】を比べて読めばよい」よりも「物語は,【導入場面】と【終 結場面】を比べて読めばよい」という気付きの方が,読みの力をより今後に生かしやすい。星 座図を作るメリットの一つは,多くの物語に見られる基本4場面を捉え,それらに他の物語に も適用できる名称を付けている点である。 作品の星座図 終結場面 クライマックス場面 展開場面 導入場面 捉え直し また本時では,終結場面からさかのぼってクライマックス場面を捉え直す学習を行う。終結 場面からもう一度物語を振り返ることが,より深い読みにつながることを学ばせたい。 ③ 心のふれあいを自分が選んだ方法で表現 ―研究仮説3より― 読み取った後の感動や自分たちの生活体験を表現するものとして,ポスター作りと音読発表 を設定する。ともに既習しており抵抗なく活動を進められると考えたからである。個にあった 方法を選択できることで,自分の思いをより効果的に表現できると思われる。どの表現方法を 選んでも,「どの場面を選ぶか,その理由は何か」という自分の感動を深く見つめ,その根拠を つかむことを大切に考えさせたい。そのために,「ふれあいポケット」での記録を大切にし,そ のときの温かい心の揺さぶりを忘れないようにさせたい。また,ポスターならタイトルや一口 感想,音読なら声の大きさや抑揚など選んだ表現方法の特徴と児童の感性とがぴったり合うよ う支援をしていきたい。 4 単元の評価規準 関心・意欲・態度 読む 物語 に描 かれ た 心 のふ れ 導 入 場 面 と , 展 開 ・ ク ラ イ マ ッ ク ス 合 いを , 進 ん で 自 分 自 信 の ・ 終 結 場 面 を 対 比 す る こ と を 通 し て , 経 験と 重 ね な が ら お 家 の 人 じ ん ざ の 様 子 の 変 化 を 読 み 取 り , 前 の に表現しようとしている。 場 面 と比べな がら人物の 気持ちを想像 することができる。 言語事項 お家の人に自分が読 み取ったことがよく伝 わるよう,声量や速さ に 気 を 付 け て 発 表 をす ることができる。 5 学習指導計画(総時数15時間) 文章に向かって 時 学 1 教材文「サーカスのライオン」」を読 み聞かせ,友達との心のふ れあいを自分の選んだ表現 方法で家の人に伝える計画 を立てる。 2 3 4 5 6 7 8 9 公 開 Ⅰ 10 11 三 次 動 道 徳 次 次 活 ふ れ あ いポ ケ ッ ト を 作 り , 日 常 の生 活 の 中 で 心 に 残 っ た こと を 書 き 留 め ていくことを計画する。 一 二 習 12 公 開 Ⅱ 13 14 物 語の 設定と小場面を 捉 え , 場 面タ イ ト ル を 個 人で付ける。 小 場面 をもとに,物語 を 大 き く 4つ の 場 面 に 分 け,クライマックス以外の5つの 点を明確にする。 導 入場 面のじんざの境 遇や気持ちを読み取る。 展開場面の前半の男の 子 と 出 会 った と き の じ ん ざの気持ちを読み取る。 展開場面のじんざの様 子 や 気 持 ちを , 導 入 場 面 と対比しながら読み取る。 クライマックス場面のじんざの 様 子 や 気 持ち を 導 入 場 面 と対比しながら読み取る。 終 結場面のお客さんの 気 持 ち を 読み 取 り , あ ら すじを書く。 炎となるじんざの気持 ちを想像し,音読の仕方 を考え直す。 明確になっていなかった1 点,クライマックスについ て話し合い決定する。 他者に向かって 読み取 組み立 読み取 組み立 る力 てる力 る力 てる力 ○ 教 材 文 や 他 の 物語 に興 味を も ち , 家 の 人 に 友 達と の温 かい 心 の ふ れ あ い を 伝 えよ うと して い る。 (関) 時を表す言葉を見つけ出し,小場 面に分けている。 (読) 自分なりにタイトルを付けてい る。 (読) ○ ○ ○ ○ 5つの点の意味と小場面の内容 と を 結 び つ け て ,物 語を より 大 きな視点で捉えようとしている。 (読) サーカスの中のじんざの境遇や気 持ちについて読み取っている。(読) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ どんな発表会にするか話 し合い,書きためてきたふ れあいポケットのカードを 見て計画を立てる。 最も 感動した場面を選ぶ。 選んだ場面を基に,ふれ あいポケットの中から最も ふさわしいカードを選び, 友達に選んだわけを説明す る。 選んだカードを基に, ポスターをかいたり音読 の練習をしたりする。 発表会を開く。 本時の評価規準 ○ じ ん ざ の 気 持 ちの 変化 を, 物 語 全 体 か ら 考 え ,ク ライ マッ ク スを決定している。 (読) ○ 家 の 人 に 自 分 の思 いを 伝え る 方 法 を 選 び , 発 表会 の計 画を 立 てている。 (関) ○ ○ ○ 男の子がじんざと同じ一人ぼ っ ち で , 励 ま し 合え る関 係で あ ることに気付いている。 (読) 男の子が毎日訪ねてくるように な っ た と き の じ んざ の気 持ち を 読み取っている。 (読) 導 入 ・ 展 開 場 面と 関連 づけ な が ら , 火 に 飛 び こむ 気持 ちを 吹 き出しに書いている。 (読) 大切な内容を落とさずに,全 体 の バ ラ ン ス が とれ たあ らす じ を書いている。 (読) 音読の仕方を決め,その理由を 自 分 な り の 根 拠 をも って 書い て いる。 (読) ○ 選んだ場面と自分の体験とを つないで,カードを選び思いを 話している。 (読) ポ ス タ ー や 音 読の 中に ,自 分 の 経 験 と て ら し て心 に残 った 場 面を表している。 (関)(読) 心 を 込 め て , ポス ター や音 読 の発表をしている。 (関) 6 本時の学習指導 (1)目標 終結場面のお客さんの気持ちやクライマックス場面のじんざの気持ちをもとに,炎となるじんざの音読の仕方を自分なりに考えることができる。 (2)学習指導過程 ○ 語る子供を育成するために 学 習 活 動 児 童 の 意 識 の 流 れ 支 援 活 動 ・言葉のもつイメージ(ぴかぴか= (前々時)クライマックス場面 「ぴかぴかにかがやくじんざだった。・・・」は, マークで読もう。 に着目して音読させる。 を読み,音読の仕方を考える。 (前時)終結場面のお客の気持 ちを想像し,音読の仕方を考え る。 1 本時の学習課題をつかむ。 ・「じんざありがとう。じんざのおかげで,男の子が助かったよ。」 ・「じんざが死んでしまって,悲しいよ。」 マークで音読しよう。 じんざが死んでしまった事が分かる言葉を,クライマックス場面から見つけよう。 ・「ほのおは, みるみるライオンの形になって,空高くかけ上がった。 」 ・「ぴかぴかにかがやくじんざだった。」 終結場面の音読 2 炎となるじんざの気持ちを 想像し,音読の仕方をもう一 度考え直す。 =じんざの死= ?クライマックス場面の音読 じんざが炎となって輝く(クライマックス)場面の音読の仕方をもう一度考え直そう。 炎となって輝くじんざの気持ちを想像してみよう。 私は,嬉しい気持ちで読もう。 じんざが死んでしまって悲しいけれ ど,じんざの気持ちを考えると導入場面 より,ずっと幸せそうだよ。だからやっ ぱり,悲しい気持ちで読むよりも,嬉し い気持ちで読みたいな。 3 音読の練習をし,聞き合 う。 4 アイテム手帳に,本時に学 んだことを書き加える。 ぼくは,悲しい気持ちで読もう。 ・ぴかぴかに輝くじんざは,死んでしま ったことを表している。じんざがどんな なに満足していても,ぼくは悲しいよ。 だから言葉のイメージとは逆に,悲しい 気持ちで読みたいな。 どちらの読み方もいいね。人物の気持ちや様子を考えて,自分がどう感じるかによ って,読み方を工夫するといいのだな。 星座図の,終結場面をもとに,もう一度クライマックス場面を読み直すと,物語が より深く読み取れるな。他の物語でも,この事を生かせるようアイテムにしよう。 ) ・じんざが死んでしまって悲しいお客の 気持ちから, マークで音読するこ とを確認しておく。 ・クライマックス場面の マークと, 終結場面の マークを対比させ,矛 盾に気付かせる。 ・自分の立場を明確にできるよう,名前 プレートを,黒板の どちらか のマークに貼らせる。 ・導入場面のじんざと比べながら想像す るよう助言する。 ○転校していった友達との別れと照ら して考えられうよう,手紙を読む。 ○なぜそのマークを選んだのか,叙述を 元に理由を書かせ,2人組で話し合う 時間を設ける。 ・両方の気持ちを合わせて読みたいな ど,これ以外の読み方をしたいという 児童がいれば,認め称賛する。 (評) 気持ちのマークを選び,その理由をノ ートに書くことができる。 ・星座図の中の言葉を使ってアイテムを 作るよう助言する。 6 本時の学習指導(公開2) (1 )目 標 教 材 文 の 中 か ら 選 ん だ 心 に 残 っ た 場 面 と つ な が る 体 験 を 「ふ れ あ い ポ ケ ッ ト 」の 中 か ら 選 び 、 そ こ を 選 ん だ わ け や 自 分 の 思 いについて友達と発表し合うことができる。 (2 )学 習 指 導 過 程 学 習 活 ○ 語る子供を育成するために 動 児 童 の 意 識 の 流 れ 支 援 活 動 最 も 自 分 の 気 持 ち に 沿 っ た 場 面 を 選 び 、表 現 す る 方 法 を 決 定 す る 。 ・ 心 に 残 っ た 場 面 の 感 想 を カ ー ド に 書 き 星 座図の中に貼り付け、いつでも振り返る ポスターで表現しよう 音読で表現しよう ことができるようにする。 ・表現方法を選ばせておく。 1 2 学習課題を確認 する。 カードを選び、 書くことを決める ( 1) ふ れ あ い ポ ス ト の中からカードを 選ぶ。 ( 2) な ぜ そ の カ ー ド を選んだのか、友 達と説明し合う。 ○○の本の△△の場面がとっても心に残ったよ。ふれあいポ ストの中からお家の人に伝えたいカードを選ぼう。 ライオンのじんざが 金色になって暗闇の 中に消えたところを 選んだよ。 男の子がチョコレート を持ってきてくれたと ころを選んだよ。 最後の、お客さんが 一生懸命手をたたい ているところを選ん だよ。 欠席してつらかった ときに、友達が手紙 を持ってきてくれ て、とてもうれしか った。 勉強が分からなかった とき、友達が何度も何 度も必死で教えてくれ たよ。うれしくて、答 えが分かったときは涙 が出たよ。 ○○さんのおかげ で、苦手だったリコ ーダーが得意になっ たよ。自分を変える ことができたよ。 カードを選んだ理由を友達に聞いてもらおう。 ・場面は同じだけれど、体験や感じたことは違うね。 ・同じ体験とつないでいるけれど、そのときの気持ちはみんな同じ じゃないんだね。 3 話し合ったこと を基に、表現の内 容を決定する。 ・物語の選んだ場面とその理由をもう一度 見直し、家の人に伝えたい事柄を確認さ せる。 ・物語の出来事と自分の経験を重ね合わせ るのではなく、そのときの気持ちを重ね 合わせることができるよう助言する。 ・選べない児童には、個々に体験とそのと きの気持ちを詳しく聞き、教師と共に、 星座図に書き込んだカードや教科書の叙 述に戻ることで選べるよう支援する。 (評 )家 の 人 に 伝 え た い カ ー ド を 物 語 の 登 場 人物の気持ちと照らし合わせて選ぼう としている。 ・早く選べた児童には、そのカードを選ん だ理由をワークシートに書くよう助言す る。 ・他のグループの発表を聞き、同じ場面を 選んでいても見方や感じ方が違うことに 気付かせるような板書を工夫する。 中心にしたい気持ちをどんな言葉で表現するか決まったよ。 タイトルに自分の気持ちが表れ るようにしよう 気持ちが伝わるように、○○の ところをこう読みたいな。 物語の場面とぴったり合うカードが選べたよ。 次は、いよいよ文章に表したり音読の練習をしたりしよう。 ・ポスターグループは気持ちを一言で表せ る言葉を、音読グループはどんな気持ち を込めて読みたいかをワークシートに書 かせ、自分の気持ちを整理させる。 (評 )タ イ ト ル や 読 み 方 を ワ ー ク シ ー ト に 記 入できたか。
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