国語「読んで考えたことを伝えよう『ごんぎつね』」 小学校・第4学年

新たな学びを支える教科等指導の工夫
5
指導事例
国語「読んで考えたことを伝えよう『ごんぎつね』
」
小学校・第4学年
【本単元の概要】
本単元は、作品「ごんぎつね」を、他者との交流を通して読み深めることをねらいとしている。
他者との交流を通して、一人で読んだときに気付かなかった叙述や解釈に触れ、自分の考えを見直す。
最終的には、課題について疑問を解決したり、新たな気付きを生み出したりして、物語の世界を読み深める。
1
単元の目標
場面の移り変わりに注意して、登場人物の性格や気持ちの変化、情景などについて、叙述を基に想像し
て読むことができる。
2
単元の評価規準
国語への
関心・意欲・態度
・叙述に着目して物語を読
み、感じたことや考えた
ことを進んで話し合おう
としている。
3
単元の指導計画(全7時間)
時
第1時
第
1
次
第4時
第5時
第6時
本時
第
3
次
学習活動(協働的な学習活動)
言語活動のポイント
○「ごんぎつね」の話を聞き、心に残ったこ
とを紹介カードにする学習であることを知る。
○ 読んだ感想を発表し合い、学習計画を立てる。
・文 章 を 読 ん で 、自 分 の 考 え を 書 き 、書 い た
文 章 を 相 手 に 話 し て 伝 え る こ と 、相 手 の 考
え を 聞 く こ と 、互 い に 話 し 合 う こ と に よ っ
て 、そ れ ま で 気 付 か な か っ た 新 た な 考 え に
気 付 き 、そ の 考 え を 生 か し て 文 章 に 書 く こ
となどを行う。
○ごんの人物描写を読み取り、ごんはどんな
きつねかを考える。
○葬列の場面でのごんの気持ちの変化を読み
取る。
協働的な学習活動のポイント
第2時
第3時
第
2
次
言語についての
知識・理解・技能
・場 面 の 移 り 変 わ り に 注 意 し な が ら 、登 場 人 ・ 言 葉 に は 、 考 え た こ と や 思 っ
たことを表す働きがあること
物 の 性 格 や 気 持 ち の 変 化 、情 景 な ど に つ い
に気付いている。
て、叙述を基に想像して読んでいる。
・文 章 を 読 ん で 考 え た こ と を 発 表 し 合 い 、互
いの考えの共通点と相違点を考え話し合う
とともに、一人一人の感じ方の違いに気付
いている。
読む能力
第7時
○兵十に共感を寄せ、つぐないをするごんの
行動や、気持ちの変化を読み取る。
○加助と兵十の会話を聞くごんの気持ちを、
ごんの行動描写から想像して読み取る。
○ごんの気持ちを読み取り、ごんは兵十に正
体を明かしたかったのかを考える。
〇ごんの気持ちを読み取り、ごんの気持ちは
兵十に伝わったかを考える。
○ 詳しく読んだ後にまとめの感想(最終感想)
を書く。
○一番心に残ったことを基に「ごんぎつね」
の紹介カードを仕上げる。
- 14 − 14 −
他者と話し合う必然性のある課題の設定
・登 場 人 物 の 気 持 ち を 二 通 り 設 定 し 、そ の う
ち の 一 つ を 選 択 す る と い う 課 題 と す る 。選
んだ理由や根拠を他者と交流する際に話
し合う観点を絞ることができる。
互いの考えを知るための工夫
・コ ン ピ ュ ー タ の「 ア ン ケ ー ト 機 能 」を 使 い
自 分 の 考 え を 選 択 し 、学 級 内 の 誰 が ど の 考
えを選択したのかを児童自身が確認でき
る よ う に す る 。あ ら か じ め 同 じ 意 見 や 違 う
意 見 の 児 童 を 確 認 し 、話したい児童を選ん
で話し合うことができる。
自己評価を生かした指導と評価の一体化
・本時の達成度を自己評価するだけではな
く 、児 童 が 次 の 学 習 の 目 標 を 立 て る こ と が
で き る よ う に 、評 価 項 目 の 内 容 に つ い て 児
童に説明する。
新たな学びを支える教科等指導の工夫
4 本時の学習(第6時)
(1) 特 に 重 点 を 置 い た 言 語 活 動 の ポ イ ン ト
・根 拠 を 明 確 に し て 課 題 に つ い て 自 分 の 考 え を 他
者に伝えるとともに、相手の考えを聞いて更に
自分の考えを広げたり深めたりし、再び自分の
考えを見直すよう指導する。
(2) 特 に 重 点 を 置 い た 協 働 的 な 学 習 活 動 の ポ イ ン ト
□
他者と話し合う必然性のある課題の設定
ごんの気持ちを「A 本当のことは知らせな
く て よ い 」、「 B 本 当 の こ と を 知 ら せ た い 」
という二つの考えから選択させることで、選
んだ理由や根拠を明確にして話し合わせる。
(3) ね ら い
ごんの気持ちを想像し、なぜそう考えたのかについて叙述を基に理由をはっきりさせて話し合い、考え
を深める。
(4) 本 時 の 展 開
学習過程
課題をつかむ
指導のポイント
学習活動
1
本時の課題を確認する。
ごんは兵十に栗を届けていたのが自分であることを伝えたかったのかどうかを
考えよう
2
自分の考えを
もつ
協働的な
学習活動
グループ
↓
全 体
自分の考えを
見直す
自己の変容な
どを振り返る
課題に対する自分の考えを選択肢から選び、 ◆ 理 由 を 書 き 出 せ な い 児 童 に 対 し て
理由を書く。
は 、正 体 を 明 か し た ら 、そ の 後 ご ん
○二つの選択肢から選ぶ。
は ど う な る と 思 う か 、「 引 き 合 わ な
A:本当のことは知らせなくてよい。
い 」と い う 言 葉 は 、ど ん な 言 葉 と 言
B:本当のことを知らせたい。
い換えられるかなどについて考え
○そう思った理由を書く。
させる。
3 そう考えた理由について話し合う。
◆個人の読み取りで理由がはっきり
○ A を 選 ん だ か 、B を 選 ん だ か 、一 覧 表 を 全 員
し な か っ た 児 童 は 、他 者 か ら ヒ ン ト
で 確 認 し 、同 じ 考 え の 人 と 違 う 考 え の 人 を 見
を得られるようにする。
付ける。
① 選 択 し た も の が 同 じ で 、そ う 考 え た 理 由 も 同
じ人
② 選 択 し た も の が 同 じ で 、そ う 考 え た 理 由 は 違
う人
③選択したものが違う人
4
話 合 い を し た 上 で 、再 度 課 題 に つ い て A か B ◆ 他 者 と 話 合 い を し た 上 で も う 一 度
を選択し、理由を書く。
自分の考えを見直させる。
5 全体で考えを発表し合う。
6 話合いについて自己評価を行い、振り返る。 ◆ 理 由 に つ い て 深 ま っ た 児 童 や 選 択
7 話合いをして、分かったことを発表する。
そ の も の が 変 わ っ た 児 童 に 、誰 の 考
えを受けて自分の考えが変わった
のかを発表させる。
検証の成果と課題
◆成果◆
・協働的な学習活動は、自分の考えを言葉で表現できない児童に適した活動である。一人で読むより理
解が深まった。
・他の児童の考えを参考にし、自分の考えを見直せたことが学習後の感想から読み取れる。
・協 働 的 な 学 習 活 動 を 行 う こ と に よ っ て 、多 く の 児 童 と 話 を 共 有 し た り 話 を 聞 い た り す る こ と が で き た 。
【一単位時間の児童の学習感想】
他の人の意 見を聞いて「いわしのおわ び」であるという考えに驚 きました。そこまで読んで いるのだ
なと思いました。○○さんの意見に納得したので、私もそんな考えが書けたらいいなと思いました。
【単元後の児童の学習感想】
相手とどこが同じでどこが違うのか話し合えてよかったです。達人(自己評価5)までいけてうれ
しいです。今まで気付かなかったことに気付くことができました。
◆課題◆
・自 己 評 価 で は 児 童 が 客 観 的 に 自 己 を 振 り 返 る こ と が で き ず 、教 師 の 評 価 に 直 接 反 映 す る こ と は 難 し い 。
参考程度とした上で、児童に自己評価を理解させ、慣れさせる必要がある。
【 本 単 元 で の 検 証 結 果 】児 童 の 自 己 評 価 が 段 階 に 応 じ て 上 が っ た 児 童 の 割 合・・・87%
教 師 の 評 価 が 単 元 前 よ り 上 が っ た 児童の割合 ・ ・ ・ ・ ・ ・48%
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