Page 1 Page 2 研究会報告 Abstract 決定論的なオー トマ トン (CA) を用

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渋滞の研究 : 超離散的アプローチ(基研研究会「統計物理
の展望」,研究会報告)
西成, 活裕
物性研究 (1999), 71(4): 564-572
1999-01-20
http://hdl.handle.net/2433/96553
Right
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Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
研究会報告
渋滞の研究 :超離散的アプローチ
山形大学工学部
西成
活裕
Abs
t
r
ac
t
決定論的なオー トマ トン (CA)を用いた交通流の解析は、ウルフラムのルール 1
84CAを用いたものが有名である。本研究では、バーガース方程式のCAを超離散
化の手法で研究し、得られたCAはルール 184の多値拡張版になっていることを明
らかにした。さらにそれを多近傍に拡張することにより、より現実の交通流の渋滞 ・
非渋滞相転移に近いCAを得ることができることを示した。
1 は じめに
交通流や粉体、生物の群などの運動は#散粒子多体系として捉えることができるが、それ
らはこれまでの物理学の理論では最も扱いにくい対象の一つであるといえる。物理的に見
てもある時は固体、またあるときは流体のように振る舞い、その基礎方程式は通常、現象
に応 じた個別的なものにな らざるを得ない。また解析手法の観点か らも、連続体の式を用
いれば解析は しやす くなるが、それではもとの系が持つ杜敵性をきちんと捉えることは
難 しい。逆に叔散的な式か ら出発すると、我々の手持ちの理論解析手法はほとんど役立た
ず、数値計算 に頼 らざるを得ない。 しか し逆に離散粒子多休系にはいくつかの共通の現象
が起こることは良く知 られている。渋滞相転移、パターン形成、密度揺 らぎのスペク トル
l
]
。 ここでは、物理系として交通流を取
などはユニバーサルな現象として知 られている l
り上げ、この離散粒子多体系を扱 う一つの新 しい方法とその渋滞相転移について考えてゆ
きたい。
交通流の渋滞解析は古くか ら様々な研究がなされており、それは直接的に社会的意義
も大きいものである。 ここではその総合的な レビューはせずに、社散モデル、特にセル
CA)を用いた解析についての話に限定 して してゆく。なお、全体的な解
オー トマ トン (
説記事としては湯川の記事を参照されたい 【
2
】
。
CAは近年様々な分野で活発に研究手法 として用いられているものである。それは従
来の微分方程式系に比べて数値計算が容易であ り、また、単純なルールを設定 してもその
時間発展は極めて複雑な様相を示す。従って、微分方程式による扱 いが困難な複雑な物理
系に対 して非常に有力な解析手法であるが、大きな問題点がある。それは 「
CAの単純な
ルールをどのように設定すればよりよく物理系を記述できるか」 という点である。 この
ルールの設定は通常、力学的なイメージでセルの整数値を動かすというものであ り、その
検証はとにかく計算機で動か して出来るパターンを見ておこな う、というものである。理
論的にこの検証を行うことは、連続 と杜散の間を正確に行き来 しなければな らず、一般に
非常に困灘が伴 う。これに関連 して、ウルフラムが論文に書いている CAにおける 20の
問題のうちの 9番 目に、 CAと連続系の対応は ?というものがある 【
3
]
。実はソリトン方
程式に関 してはこれが可能になる、「
超離散」という手法が近年発見された 【
4
]
。それによ
りこれまで様々なソリトン方程式が対応する CAに厳密に変換 された。その際に、ソリト
ン方程式の持つ解構造を うまく利用 してそれを保つよ うな超放散化を行 うのが特徴であ
る。ソリトン方程式に関してはうまくいくこの手法であるが、では解構造の十分分か らな
い方程式に対 してこの手法が使えるのであろうか。これは現時点では大変難 しいと言わざ
るを得ない。ソリトン系でない非線形方程式のうち、対応するセルオー トマ トンが超離散
法で得 られた例 として以下の章でバーガース方程式をとりあげる。これは変数変換により
-
56
4
-
「
統計物理の展望」
繰形化出来る方程式であ り、その解構造を利用 して超杜散化 したものである 囲。さらに
そこで得 られた CAは美はウルフラムのルール 184CAの多値拡張版になっていること
が示される。通常、CAを 0、 1以外の整数に拡張することは大変な困#を伴 う。しかし
超搬散法ではこれが 自然に行えることが特徴である。
6
】
。
ルール 184CAとは、交通流の決定論的 CAモデルとして良く用いられている 【
g
e
lらのモデルが有名であるが 【
7
]
、解
交通流の CAモデルは確率を入れたものとして Na
析を厳密に進めていく上で、確率無 しの決定論的モデルについて今回は考えたい。この
決定論的ルール 184CAモデルの欠点は、その渋滞 ・非渋滞相転移が単純すぎることで
ある。渋滞 ・非渋滞相転移を見るには通常、交通工学では基本図といわれる関係図を調べ
る。これは横軸に車の密度、縦軸に交通流率を取ったものとして定義される。現実の交通
8
】
。図 1(
a
)が現実の交通流の
流とルール 184CAモデルの基本図を見比べてみよう [
実測データであり、図 1(
b)がルール 184CAのものである。現実のものは基本的に揺
らぎが入っているが、平均化 して考えると、「
人型」のような図形になっていることに気
付 く。つまり、右上が りの非渋滞相か ら右下が りの渋滞相への移行はそう単純ではな く、
現実には非渋滞相のオーバーシュー トが存在すると考えられる。これは物理的に考えても
明らかであ り、ある程度車間を蕃めて高速で走る一団が道に存在すれば、オーバーシュー
ト部を作ることができる。 したがって現実の交通流の特性を表すにはこれ らの様子を表
現できるCAが望ましく、何 らかの更なる工夫が必要である。今回、バーガース方程式の
オー トマ トンをさらに多近傍に拡張することにより、初めてそのような CAを得ることが
出来た。そ して、その CAモデルを通 して基本図の人型や渋滞 ・非渋滞相転移を理解 しよ
うというのが本論文の目標である。
2 バーガースセルオートマトン(BCA)
2.
1 BCAの導出と基本図・
まず、超搬散の手法の紹介を兼ねてバーガース方程式を対応するオー トマ トンに変換 して
みよう 【
5
】
。バーガース方程式は
3
:
+・
urr
ut-2
uu
である。これをコウル-ホップ変換
f
r
u= 7
(
=
(
2)
によって線形化すると、次の熱伝導方程式
fl- fxC
(
3
)
になることは良く知 られている。(
1
)を CAに直すためにはまず、第一ステップとしてそ
の空間 ・時間変数を差分化する必要がある。そこで、差分方程式でもこの線形化可能とい
う構造を不変に保つために、まず熱伝導方程式から差分 してゆく。
f
,
叶1-f
r-6
(
I
,
n
.
1-2f
,
?+f
,
?
_
1
)
(
4)
ただ し、6-△
L
/
ユ J・
2である。そして、(
2)の搬散版として
(
5
)
u,, =
-
C告
56 5
-
研究会報告
というものを考える。ただし C は定数であ L
J、(
5)から C を引いて C -1
/
△xとおくと極
限で (
2)に一致することはすぐ分かる。次に(
5)を用いて (
4)を uのみで表すと
uJ
n+1-
き
(
1-2
6
)
u
,
?+6
(
1+か ,
?
.1
u
,
?
)
三(
1-2
6
)
隼1
+6(
1+きu,
'
_l
u,
?
)
UJ
T-1
(
6
)
となる。これが時間 ・空間の差分化されたバーガース方程式である。次にこれを CAに変
換する。そのために従属変数を離散化する操作が必要あり、これが超離散と言われる手法
である。まず、
車 e
x
p
(
誓)
(
7
)
とおいて、あたらしく小さい変数Eを導入する。さらに
1-2
∂
「㌃
- exp(一芸 )
l-Xp(一書)
c2
e
(
8
)
とおいて、6
,
Cの代わりに L,
M を導入する。そして捷取e.
a+8を考える。すると、公式
e
h
i
To
el
o
g
(
e
x
p
(
書)+e
x
p
(
苦)
)---(
A,
B)
J
(
9)
U3
'1-ULl 十 ma
x(
0,
U
,
7
-M,U,
f+U,
L1- L
)
一 ma
x
(
0
,
牲 1-M,
牲 1+U,
L L)
(
1
0)
より、(
6)は
となる。これがバーガース方程式の CA (BCA)である。後のためにこの式を mi
nで
表すと、
Url-U,
f
+m
i n(
M,
U,
L1
,
L-U
3
)
-m
in(
M,
U,
!
,
L-U,
Ll)・
(
l
l
)
を得る。この BCAはもしM >0,
L>0であり、かつ全ての jr
こ対して 0≦U3≦Lなら
'1≦Lが成り立つことが示せる。よって (
l
l
)は (
0,
1
,
-,
L)
ば、全ての jに対して 0≦U3
の他をとるCAと見なすことができる。ここで重要なのは L- M -1とすれば (
l
l
)は
ルール 184CA
U
,
p
-lU
,
WJ
T
+1 0
0
00
0101
0 01
11
0
01
011
1
01
1
1
UJ
r
+1
0 'o'o ' 1' 1'1'o'1
に一致するということである。したがって BCAはルール 184CAを特別な場合として
含む事が分かる。
ルール 184CAは交通流の基本的なモデルとして使われているので、この BCAち
自然に交通流モデルとして (
l
l
)より次のように解釈できる。
r
-つのサイ トに最大 L台の車が入るとして、現在の時刻から次の時刻でサイ トjの
空きにサイ トj- 1からの車を古められるだけ古め、前のサイ トj+1の空きにサイ トj
の車を若められるだけ嵩める。ただし、一度に動ける車のの上限は 〟台である。」
l
l
)の基本図を書いてみよう。まず、道路は周期的、つまりサーキットと
次に、この (
し、そのサイ ト数を ガとする。すると平均密度は
(
1
2
)
-5
6
6-
「
統計物理の展望」
とな り、交通流率は
q
t≡ 去 差 -i
n(
M,
UJt
,
l
J瑚
1
,
・
(
1
3)
で定義される。図 2が この BCAの基本図である。これは適当な初期条件を沢山選んで
各々定常状態になるまで計算 し、それ らを q-pグラフ上に重ねてプロットしたものであ
a)は L <2
Mの場合であ t
J.図 2(
b)は L >2M の場合である。図 2(
a)は、図
る。図 2(
l(
b)のルール 184CAのそれと全く同じ形を示 していて、p<1
/
2の時 q-p、p>1
/
2
の時 q-1-p
上に定常状態があ り、p-1
/
2が渋滞 ・非渋滞相転移密度である。相転移は
示すが単純であり、前節の競輪から残念なが らこの多価拡張版の CAはまだ交通流モデル
としては不十分である。 しか し、図 2(
b)では、「
台形」状の形になる。これはフローを
制限する 肘が効いている結果であ り、湯川 らのルール 184CAに確率的にボ トルネッ
クを入れた結果の図と一致 している 【
9
1
。 BCAでは、自然にこのボ トルネ ックの表現が
可能であることが興味深い。
2.
2
BCAにおける縮退
L<2
Mの時の BCAの基本図とルール 184CAの基本図は同じ形をしているが、果た
して本当に両者は同じものなのだろうか ?実は、 BCAの方はその多価性のために同じ
q,
pの価をとる異なった状態が存在する。これを 「
縮退」 と呼ぶことにする。この縮退の
様子を詳 しく見てみよう。以下、簡単のため、L<2
M かつ L=2として考えよう。真理
l
l
)より、まず U,
r∈(
0
,
1
)の時、
値表は (
T
T
,
n
_
1
U
,
W,P+1 0
0
00
0
101
001
11
0
01
0
11
1
01
1
1
U.
]
?
+1
0'0'0'0'1'171'1
とな り、U,
?
+1
も集合 (
0,
1
)内に属 していて、この集合内で閉じた時間発展になっている。
そ してこの規則はウルフラムの分類でルール 240であり、任意のパターンが右に平行移
動する規則になっている。次に U,
?∈(
0,
2)の時、
U
I
L
_
1
U
,
T
t
'
U
I
L
+1
U
J
T
+
1
0
0
00
0
20
2
00
2
22
0
02
0
22
2
02
2
2
'o'o'2
2'2'0つ2
o
I
とな り、同様に Ur l
も集合 (
0
,
2†内に属 していて、この規則はウルフラムの分類でルー
r∈i
l
,
2)の時、
ル 184である。次に U,
1
21
2
11
2
221
121
22
2
12
2
2
UJ
n
1
UJ
WJ
n
+1=1
1
11
UJ
T
+
1
172717271)27172
とな り、同様に U,
n
+l
も集合 (
1
,
2)内に属 し、この規則はルール 170である。 これは任
意のパターンが左に平行移動する規則になっている。以上により、この拡張されたオー ト
マ トンは、ルール 170、 240とルール 184を含むものであることが分かった。そし
て、この 3状態は図 2 (
a)における基本図でそれぞれ A-B.0-人 0-A-Bで表さ
れることが分かる。つまり、0-Aはルール 240と 184、A一月はルール 170と 1
84とが縮退 していると見なせる。これが BCAの多値性か ら来る特徴であ り、次の節で
多近傍に拡張 したときに重要な意味を持つ。
-
5
67
-
研究会報告
3 拡張 BCA について
BCAは隣接 3近傍のモデルであり、別の表現をすれば最高速度が 1とみなす事ができる。
では次にこの BCA を最高速度 2のモデルに拡張 してみよう。つまり、前が空いていれば
U
,
単位時間で 2サイ ト動けるとするのである。その数は a
5
・≡ mi
n(i
,
L-U
3
.
1
,
L-U,
i
.・
2
)
として与えられる。ここで・ムーU,
!
十1や L-U3
+
2
は、それぞれサイ トj+1とサイ トj+2
の空きを表す。そして・単位時間に動きうる車の最大台数を b
;
I
≡mi
n(
U,
i
,
L-U
,
i
+
1
)で定
義する。つまり、サイ hJ
'
+1の 「
隙間」の分だけ動けるとするのである。この条件の下
では、 1サイ トだけ動く車の数は mi
n(
b ,T
J-Uj
+1-a
;
・
_
1
)で与えられる。 したがっ
こ出入 りする車の台数を勘定 して、発展則 は
て、サイ トjT
i
・
-
ai
l
り+I - U
,
+
+a
i
.
_
21a
i
・
+mi
n(
b
i
・
-1-a
3
・
_1
,
L-U,
!-a
3
・
_
2
ト mi
n(
b ,L-U,
!
.1-a
喜
一1
)
-L
J
3
+m
in(
b
i
.
_1十a
i
・
_2
,
L-U
,
!+a
i
_1
)-m
in(
b
i
・
+a
i
・
_
1
,
L-U,
!
.1
+a
3
・
)
(
1
4)
3
・
-
;I
となる。 これが多近傍に拡張された BCA (
EBCA)である。そ してこの EBCA は I
,=
〟 - 1とした時、福井 ・石橋 らのルール 184CAの多近傍拡張の結果 【
6
】を含んでいる
事が示せる。
それではこの拡張モデルでの基本図を見てみよう。条件は BCAの時と同じであるが、
交通流率はこの甥合
q
i
=去
真m
in(
b
;
・
1Ia
i
l
2
,
L-U
,
i
・a
i
・
1
,
(
1
5
)
で定義される。以下、簡単のために L- 2の場合を詳 しく調べる。図 3が全てのパター
ンの初期値をふ って描いた基本図である。これか ら、基本図は人型を示 していることが
分かる。これはより現実の交通流に近いモデルであることを意味する。そ して、密度が
1
/
3≦ 〟≦1
/
2の範囲内で基本図が多価性を示 している。
では、新 しい分岐について BCAと比較 しながら詳 しく調べてみよう。まず BCAにお
ける基本図で、三角形の各辺は状態が縮退 していたが、それが EBCAではどうなったかを
考える。例えば図 2(
a)で、A点では・
・
・
1
1
11
1
11
11・
・
・
と・
・
・
2
02
0
20
20
20- とが縮退 してい
て、それぞれ、ルール 240、 184の状態である。速度増加により- 111111111- はそ
のまま全ての 1が速度 2になるので、密度はp- 1
/
2のままで速度 V-2よL
J、q-pv-1
になる。しか し、- 20202
0202
0- は空きのないサイ ト2が一つおきにあり、EBCA にお
2のままである。 したがって速度増加で、縮退の分
いても速度を上げられず、結局 q-1/
社がおきて、それぞれ図 3の Dと Aになる事が分かる。同様に考えてゆくと、図 2(
a)で
0-Aは EBCA において 0-D にな り、0-A-Bは図 3の 0-C-Bにな り、A-B
は不変になっていることが分かる。従 って、1/
3≦ β≦1
/
2の範囲で BCAの縮退が分社
し、基本図における多価性を出現させたといえる。
次に、基本図の新 しいオーバーシュー トしている枝について、その安定性を調べてみ
よう。例えば、βでは-・
1
111
11
11
1
1- という状態があるが、これに対 して 「
摂動」状態
- 11
11
2011
11-・
を考える。これは一様に走っている車のうち、一台の車が減速 した状態
と考えることが出来る。 この後の時間発展は図 5に示 した通 りで、図 3の A に近づくこ
とが分かる。そ して、1
)
近傍の状態は全てこのような摂動に対 して不安定であ L
)C-Aラ
インに移行することが分かる。これは高密度で高速のフローは不安定で、少 しの壊乱で渋
,
BCAの振る舞いは現
滞化する、という物理的な事実とよくあっている。この意味でも、F
実の交通流を良く反映 した CAモデルであるといえる。最後に C
に近い C一刀上の点に
-5
6
8-
「
統計物理の展望」
ついては、上音
己の摂動で C-A上に移るが、逆に C
に近い C-A上の点も摂動で C一刀
上に移ることが示せる。例えば 1
1
01
1
01
1
1
1
1
0は C一刀上の定常状態であ り、これに摂動
1
01
1
01
2
01
1
0はそのまま C-A上の定常状態にな り、図 4の時のように 2が広
を加えた 1
に近い C一刀上は逆に安定であることが結論出来る。
がってゆかない。つまり、C
4 基本図の 「
人型」 について
以上か ら、現実の交通基本図に現れる人型に対 して次のような解釈が可能である。前節の
結果より、オーバーシュー トしている技は確かに物理的な根拠があ り、まず、非渋滞相か
ら少 し高密度高速の安定フローが伸び、次に十分高密度で高速の不安定フローが伸びて
ゆくことになる。少 しだけ高密度高速の安定フローはなぜ生 じるのかというと、渋滞領域
(
この場合 2のサイ ト)が他の交通の流れを邪魔せず、その他の非渋滞領域である程度高
密度高速を保てれば、全体として安定なオーバーシュー ト部の状態になるからである。そ
して密度がある程度高くなると、渋滞領域が少 しでも形成 されるとその影響が全体に伝
わってゆき、全体が渋滞相に変わって しまいうので不安定状態となるのである。そして、
オーバーシュー ト部のこの解釈は他の良く研究されている O
Vモデル [
1
0
】と一致するこ
とも示すことができる [
1
1
]
。
それでは、現実にこのようなオーバーシュー ト部はきれいに観測されるかという事に
ついて触れてみたい。確かに図 1(
a
)では僅かにオーバーシュー トしているが、EBCAほ
ど伸びていない。この原因はまず、オーバーシュー ト部を与える状態数がその他の三角形
部を与える状態数よりも極めて少ない、ということがあげられる。連の長さを十分長く取
ればこの比は極めて小さくなってゆくことが分かる。つまり、現実にこのような状態に出
会 う確率が低い、ということである。もう一つはオーバーシュー ト部の高密度付近は極め
て不安定であ り、長時間の平均でみると、ほとんど見ることが出来なくなるという事実で
ある。さらに今までの研究は周期系においてなされていたが、開放系で考えると、ある区
間を考えるのでさらに密度揺 らぎがあ り、そのためにますます観測 しにくくなる。実際、
EBCAを開放系において計算 したのが図 5である。ある区間を考え、ランダムに車が入
手 し、自由に出ていくモデルを考える。初期状態はランダムに与え、その時間発展を基本
図上にプロットする。図 5より、時間が経てばオーバーシュー ト部が短くなってゆくのが
分かる。
5
まとめと課題
新 しく得 られた EJ
j
CAは交通渋滞相転移の様子を非常に良<表 したモデルであることが
明らかにな った。今後はこの EBCAをさらに詳 しく解析 し、現実の交通流を扱 うための
ソフ トウエア化も考えてゆきたい。以下に EBCAの解析について 2つの補足をしておく。
(
1)-般の L,
M について
EBCAにおいて Lが 3以上のときの基本図を図 6に示す。このように沢山の小枝が
出現 していることが分かる。これは EBCAの多値性か ら来る階層構造の反映である
【
1
1
]
。
(
2)逆超離散について
-5
69-
研究会報告
逆超離散 とは、 CAか ら逆に対応する差分方程式を導 く方法である。 これは 2節の
手法 を逆 にたどればよい。その際に、(
9)を逆 に用 いて、
-a
x(
A,
B)- Cl
og(
e
xp(
享)+e
xp(
掌)
)
(16 )
という置き換えをするのが特徴である。 しか し注意 しなければな らな いのは、どん
なオー トマ トンの式で もこの置き換えをすれ ばよいという訳ではな いことである。
(
9)以外 にも極限で ma
・
x(
A,
β)に収束する公式はいくらで も存在する。従 って解構
造がある程度知 られていないと (
1
6)は意味がな い。今回の E
J
BCAは BCAよ L
J作 っ
1
4)中の min
たものであ り、 BCAの特徴をそのまま持 っているものである。実際、(
の中を詳 しく調べると、(
l
l
)の時の項は全てそのまま存在 し、いくつかの新 しい項
1
6)は正当
が付け加わ ったものであることが分かる。 これか ら EBCA に関 しては (
化 されると考え られ、その結果、EBCA を逆超牡散 し、差分方程式
ui
・
・
1- 塘
(
1
7)
・
を得 る。ただ し、
,
I
T
t
J
I
l
L
,
1
r
m
m
q
;
・ - m2十ml
u;
・十ml
u3
・
_1十 丁 .一十 二
了一 十
1
'
'
'
H I'
'
Y
'
V
7-⊥ Iui_I I,
uS
・
_2 I・
u3
1
_1
可 _2十 l
・墓
i
+l
2
t
L
S
・
_1
,
u
3
・
+l
2
(
r
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けるバ ーガース ヒエラルキーに属 していることが分かる [
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1
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。つま り、 BCAの多
近傍化 によ り EBCA を得たわけであるが、多近傍化とは微分階数をあげることであ
り、そのためにバーガース ヒエラルキーが得 られた ということになる。
今回は超放散の方法 によ り BCAと EBCAが得 られたが、これを超離散 を経 由せずに導
くのはまず困難であろう。その意味で超稚散の方法は今回の解析に十分威力を発揮 したと
言える。 しか し、この手法 を解構造の分か らない他の非線形散逸系に応用するのはまだ遠
い道の りである。そのためには非線形散逸系を特徴づけるもう一つの指導原理が必要であ
り、この新 しい原理と超せ散 との結びつきこそが最 も期待される超稚散の新展開であると
考え られる。
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