KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title Author(s) Citation Issue Date URL 多自由度保存系カオスでの動的構造(基研長期研究会「複 雑系2」∼物理から生物・進化・ゲームへ∼,研究会報告) 小西, 哲郎; 金子, 邦彦 物性研究 (1994), 61(5): 473-476 1994-02-20 http://hdl.handle.net/2433/95235 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 「 複雑系 2 一 物理か ら生物 ・進化 ・ゲームぺ -」 多自由度保存系カオスでの動的構造・ 小西哲郎 ( 名古屋大 ・理) 、金子邦彦 ( 東大 ・教養) 自然界で我々が目にする様々な空間構造は、大別 して 2つのタイプが ある。一つは結晶や線型な波、孤立波等、定常的で規則的な物である。こ れらは特徴化が簡単で解析が容易であ り、伝統的な物理概念の主役を担っ てきた。もう一つは、乱流、液体、微粒子、等であ り、秩序構造の存在は 認められるものの、非定常で不規則であるがために特徴化が難 しく、平 均化 された量を計算する事以外には解析が容易ではなかった。そのため に、これらの秩序が存在する事すら時 として忘れられがちである。カオ スが再発見されてから30年位になるが、カオスに対する一つの期待は、 不規則な秩序構造を記述 しさらには理解する鍵を与えて くれるのではな いか、という事である。 oupl e dma p 今回我々は、前回の続きとして、大域結合を持つ保存系の c 再生、その相空間構造 との関 l a t t i c eに見 られる秩序構造の生成と消滅 と係を議論する。今回は、前回の多粒子系でのクラス ター構造の他、斥力 di s pe r s e d・ . or de r ) 」に付いても述べる。 粒子系での 丁ばらばらな秩序構造 ( 相空間構造の他、拡散係数の時系列上での分布、秩序度の揺 らぎなどに ょりこゐ構造に迫ってみようと思 う. モデル 1次元 Ⅳ粒子系の c oupl e dma pで大域結合 をもち s ympl e c t i ?であるも ( - 1, 2, ・ -, N)の寧標 x. ・と 運動量 piの時間発展が次 のとして、粒子 i 式で定義されるものを考える。 p: ・ -pi+ K 7 , 2 N ご ∑, s i n2 7 ,( xj- X i ) modュ ,I: ・ -xi+p: ・mO dl ・ -1, tl ∬ >Oでは引力の、〟 <0では斥力の長距離相互作用 を持つ。この 系は、 l KJ が小さい時には初期条件により、粒子間の相関がほキんど無い 棉 ( 無秩序相)あるいは非常に強い相 ' ( 秩序相)の 2 ∵ 通 りの運動形態を 引力)の場合 には秩序相では粒子が 1つの大 きなクラス 持つ。∬ > 0( ターを作 って運動する 【 1 ] 。 di s pe r s e do r de rについて 〟 <o ( 斥力)の場合には、秩序相は、図 1に示す ように、各粒子がほ ほ均等に分布する状態である.無秩序相 と比べ、粒子の集まり具合 Z ≡ 去JE, y =1e Xp( 2m' x j ) 1 2の値がほぼ Oになることではっきりと区別 される. - 47 3 - 研究会報告 N=32, K=0. 1 ( Z=0. 1 7) この相 を、ば ら ばらと散 らばった秩 序相 とい う意味で 、 ` di s pe r s e dor de r 'と 2,3 1( 名付 ける。【 ばらばらであるとい う状態で秩序 を作 っ てい る。 )これ は Ki r kwoodAl de r転 o t 256 移で粒子系が格子上 に配列するの と類似 図1 :di s pe r s e ds t a t e.〟 -3 2, ∬ ニー0 . 1 しているが、カオス であるために、この秩序は永遠 には続かず に、時間がたつ と無秩序相へ と移行する' . 異 なる C ha o t i cs e aの共存 秩序相 ・無秩序神 ともにカオスであるために、系 は秩序相 と無秩序相 の間を時間的に行 き来する事 になる。秩序相 ・無秩序相の違いは結局 は 相空間の中に 2種類の異 なる. 性質の C haot i cs e aが共存 している事か ら来 る。秩序相側 はハ ミル トン系の自己相似 的な相空間構造 を反映 した もの であ り、 もう一方はほとん どホワイトノイズ的な ものである。その様千 は次の表 にまとめ られる去 2種類のカオス領域 c l us t e r e d, di s pe r s e d c l us t e r e d( ofdi s pF r S e d) 実空間の c l e s 構造 s t a t eo fpa i KAM トーラス」 相空間の構造 アイランドの残骸 べ き減衰 ( 特徴的な 滞在時間 nonor de r e d none rt 時間スケールはない) al mos t ・ nOne ・ 指 数減衰 分布 棉 上では、相空間を大 きく2つに大別 して説明 したが、実は秩序相側 は様 々 2 1 な状態が まるで玉ね ぎの ように重 なっている事がわか った。【 初期条件 を運動量空間での原点か ら徐々に変えて行 くと、あるいはまた、 秩序 を持 った状態が時間発展する事で、系は次第に秩序 を失 って行 く。こ の過程で、系の Ko l mog o l o v Si naie nt r opy (ここでは正の リヤプ ノフ数の 和 で代用する)は単調増加ではな く、ち ょうど秩序側 と無秩序側の間の - 474 - 「 複雑系 2 - 物理か ら生物 ・進化 ・ゲーム- -」 N = 8 ,K = 0 . 2 8. O 7 O .6 0 .5 4 . 0 0 ^ d o JuaSと l 3 O .C l O 1 2 3 A 5 ( degr eeGfcl u; t er i ng) Z 図 2:クラスターの崩壊 と KSエントロピー:1つの点は 1つの初期条件 p l -0. 25はクラスターの崩壊が起きるあた り を表す.J ところで最大 となる。また、秩序状態の滞在時問は、初期条件での各粒 p iI' l㌫ 霊 言冒認 言霊i h D . 喜 禁 忌 芸蒜 還 ic o , n ; 演 芸 2 】を参照 されたい。 他、辞 しくは文献 【 構造遷移における c ol l e c t i vi t yについて 系がある状態から別の状態-遷移する際に、それが熱的な揺 らぎが重なっ て起 きるのかそうではないのかを考えてみたい。 もしも熱揺 らぎが主な 要因であれば、高次元の配位空間にポテンシャル関数を考えてそのバ リ アを超える確率をボルツマシウェイトで評価する事が出来 よう。一方、系 の内部で相関が強い場合 にはその様な方法が採れない事が予想 される0 ここでは構造遷移の際の協同性 を見る手法をテス トしてみた。〟 >Oの 場合にクラス ターが崩壊する過程での、各粒子ごとの リヤプノフベクト ルを見てみる。これは、系の不安定性が増大する方向を調べている事 に なるので、揺 らぎが協同的なものかそ うではないものかを判断する事が 出来ると考えられる。結果は非協同的であった。これは、クラス ター乱雑 とい う、秩序-無秩序の遷移であるため と考えられる。 水や微粒子 の様 に、複数の秩序相 を顕著に持つ系でその秩序相たちの間の遷移過程 - 4 75 - 研究会報告 N =8,K=0. 2 3 . 5 3 2 u Pl 6 o ・。 ( sJ.20 0 ^^ O u n O d e ^ 1 0 -1 3 n P O J d J o u u ! ) SSau a^! t Oa" 00 2 . 5 1 2 8 4 8 6 Z ( degr eeofc一 ust er i ng) :クラスター準態の崩壊における揺 らぎの協同度 :" 口 'は I p I -0 ・ 0 5 図3 (クラスター状態)、" +"は I p 1 -0. 2 5( 崩壊途中) を調べてみると良いか も知れない。 相空間の解剖 について 例えば この研琴で用いた手法では、どれか 1つの特性量の 1つの値 ( 平均値)で系を判断すると言 うよりは、その量の相空間内での分布の様 子を調べる事を重視 したo( 例えば図 芦や、文献 【 2 ]竿の図 11、 12。 ) いわば、相空間を解剖 してダイナミクスとの関連を調べるとい うや り方 i mi t i veではあるが強力である。 は、pr 参考文献 【 1 ]" Cl us t e r e dmot i oni ns ympl e c t i cc o upl e dmaps ys t e ms " ,T.Ko ni s hi andK・Ka ne k o, J・Phys ・A25( . 1 992 )6 2 8 3I6 2 96 [ 2 1" Pe e l i ngt heOni ono fOr de ra ndCha osi naHi ghdi me ns i ona lHa mi l K.Ka ne k oa ndT.Ko ni s hi ,NagoyaUni v. l Pr e Pr i nt t oni anSys t e m", DPNU93 23( t oa ppe a ri nPh ys i c aD. ) [ 3 】余談であるが、この状撃 を di s pe r s e dor de rと名付けるにあた りいろ んな名前 を考えてみたのだが、なかなかぴった り来るのがなかった0 これまでの ` o r de r 'の概念 とは違 うものを見ている、とい う事なのか も知れない。 - 47 6-
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