NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE Title 鷹島肥前大橋の常時微動計測による解析モデル検証と交通振動解析 Author(s) 田中, 健介; 高橋, 和雄; 中村, 聖三; 宮本, 敬太 Citation 鋼構造年次論文報告集, 17, pp.239-246; 2009 Issue Date 2009-11 URL http://hdl.handle.net/10069/33655 Right © 日本鋼構造協会 This document is downloaded at: 2014-11-14T12:20:40Z http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp 鋼構造年次論文報告集 第1 7 巻( 2 0 0 9年 1 1月) 鷹島肥前大橋の常時微動計測による解析モデル検証と交通振動解析│ 論文 │ V e r i f i c a t i o no fmodelu s i n gmicrotremormeasurementandt r a f f i ci n d u c e dv i b r a t i o na n a l y s i s i nTakashimaH i z e nB r i d g e 0田 中 健 介 * 高 橋 和 雄 * * 中 村 聖 三 * * * 宮 本 敬 太 * * 料 KensukeTANAKA KazuoTAKAHASHI S h o z oNAKA 恥1URA K e i t aMIYAMOTO ABSTRACT When t h en a t u r a lf r e q u e n c yo ft h ec a b l e s on a c a b l e s t a y e db r i d g e a p p r o a c h e st h a to ft h ee n t i r eb r i d g e ,t h eb r i d g e ' sv i b r a t i o ng e n e r a t e sl o c a lv i b r a t i o n si nt h e 宜e c tt h eb r i d g e ' ss a f e t ya n df a t i g u e, i ti s s u p p o r tc a b l e s .B e c a u s et h e s el o c a lv i b r a t i o n smaya i m p o r t a n tt ou n d e r s t a n dhowl o c a lv i b r a t i o n sa r eg e n e r a t e di nt h ec a b l e s .Thev a l i d i t yo fa n , a n a l y t i c a lm o d e l sof a n a l y t i c a lmodelwasv e r i f i e dbym i c r o t r e m o rm e a s u r e m e n t s .I na d d i t i o n v a r i o u sc a b l e sw e r ed e v e l o p e da n du s e df o rr e s p o n s ea n a l y s i so ft h es u p p o r tc a b l ea n db r i d g e u n d e rr u n n i n gv e h i c l e s. Thei n f l u e n c e so f t h ed i f f e r e n c e sb e t w e e nt h ev a r i o u sm o d e l sa r ea l s o d e s c r i b e d . Keyword:斜張橋,常時微動計測,交通振動解析 C a b l e s t a y e db r i d g e,m i c r o t r e m o rmeasurement,t r a f f i ci n d u c e dv i b r a t i o na n a l y s i s 1 . はじめに 近年,土木構造物である橋梁のコスト縮減は命 題となっている.そのため,本研究の対象とする 鷹島肥前大橋は,主桁が鋼製,主塔がコンクリー ト製の複合斜張橋の形式が採用された.著者らは, 対象橋梁の振動特性およひ勤的応答を明らかにす るために角軌庁モデ、ルを作成して,現在までに固有 振動特性,ケーブルの局部振動およびレベル l地 震動の応答を明らかにした 1 ) 本研究では,常時 微動計測を行い,複合斜張橋である対象橋梁の振 動特性の把握と解析モデルの妥当性を検証する. 加えて,従来斜張橋の解析は支持ケープソレのサグ の影響を考慮せずに行われているが,対象橋梁は, フェアリング無し一箱桁の岡iJ性が小さい構造のた め揺れやすいことが考えられたため,より正確な 解析モデルが必要であると考えられる.本研究で はケープ、ルのサグを考慮で、きるモデ、/レ(以下,ケ ーブルモデル)と従来手法のモデ、ル(以下,弦モ デノレ)の 2つのモデルを作成し,交通振動解析を行 い,応答を求めることで¥支持ケーブルのモデ、ル 化の違いが与える影響を評価する. 2 . 解析対象橋梁 本研究では,一般県道鷹島肥前線橋梁劉需工事 の一環である長崎県北松浦郡鷹島町を起点に終点 の佐賀県東松浦郡肥前町を跨ぐ現在架設中 ( 2 0 0 9.4竣工開通)の鷹島肥前大橋を対象とする. 日比水道によって分断されている長崎県北松浦郡 鷹島町と本土とを結ぶことで地域全体の産業・経 済の活性化および防災の観点から計画された.取 *修士(工)長崎大学大学院元大朝完生 ( 〒8 5 1 8 5 2 1 長崎市文教町 l番 1 4号) **工博長崎大学工学部耕受 ( 〒8 5 1・8 5 2 1 長崎市文教町 l番 1 4号) 第 2穫正会員 ***博士(工)長崎大学工学部准耕受 5ト8 5 2 1 長崎市文教町 1番 1 4号) 第 2種正会員 ( 〒8 開*工学士長崎大学大学院学生 ( 〒8 5 1・8 5 2 1 長崎市文教町 l番 1 4号) 239 J o u m a lo fCons 廿u c t i o n a lS t e e l Vo 1 . 17 (November2 0 0 9 ) り付け橋 ( 41 lm) と主橋梁部 (840m) の計 1 , 251m の橋梁である.主橋梁部は中央径間 40伽 1,側径 聞はそれぞれ 220mの橋長 840mの 5径関連続複 合斜張橋となっている(図ー1).本橋は,コスト 縮減のため,鋼およびコンクリートの各材料の長 所を最大限利用した設計がなされた.主桁は箱桁 を作る工数が少なく施工性に優れ,工期が短く、 維持管理性に優れた鋼製一箱桁が採用された.ま た,フェアリングを設置しなくても物止め板を設 置することによって耐風安定化を図れると判断さ れたため,鋼製フェアリング無し一箱桁とされた ( 図2 ) . 主塔は鋼製よりもコンクリート製の工 事費が約 l割安くなると試算された.さらに銅製 に比べて岡J I 性が高く,主桁の振れ固有振動数が高 くなり,主桁の耐風安定に対しても有利であるこ とからコンクリート製とし,景観性にも考慮し下 絞り逆 Y 字型が採用された(図ー 3 ).また,レベ ノ レ 2地震動に対して, B種の橋に対する地震によ る損傷が限定的にとどまり,橋としての機能回復 を速やかに行い得る而様性能 2の性能を確保する ことを目標に,主塔・橋脚基部に比較的容易に修 復できる損傷を許容する設計がなされた.そのた め,地震発生後速やかに復旧できるよう主塔の橋 台が大きく設計されている. 図-2 主桁の断面図(単位:mm) 3 . 解析および計測概要 3 .1 解析モデル 斜張橋の全体系の振動角草析には,土木・建築向 T D A P i l l ) 2)とケーブ け汎用 3次元動解析ソフト ( ル要素を用いることができる本研究室で開発した プログラムを用いて解析モデルを作成し計算する. 本研究では,サグを考慮して支持ケーフ、、ルを分割 し,ケーブル要素を用いた解析モデ、ル(以下,ケ ープ、ルモデ、ル)およびケーブルのサグを考慮せず 1本の弦要素を用いる角卒中斤モデル(以下,弦モデ ノレ)の 2種類の解析モデ、ルを用いる(表ー1).両 モデルにおいて,対象橋梁はほぼ左右文捌二である ため,ケーブルの番号を鷹島町側のケーブルのみ 側 径 間 側 か ら 中 央 径 聞 に 向 け て 番 号 Cl,C2, C3,. ・ ,C18を付ける.図 -4に示すように X軸 , Y軸および Z軸を定める.支承は鷹島町恨J1から l P, 2Pのように番号を 6Pまで付ける.支承条件は, lP,6Pおよび主塔は橋軸方向にパネ要素を導入し, 橋軸直角方向は拘束, 2Pおよび 5Pは,橋軸方向 および橋軸直角方向にバネ要素を導入したなお, 240 図 -3 主塔の一般図(単位:mm) 全ての橋脚において回転は全自由度フリーと したまた,境界条件は,地盤と橋脚との聞 は架設地点における橋脚地点の地盤をパネ要 素で置き換え,橋軸方向と橋軸直角方向の変 鋼構造年次論文報告集 第1 7 巻( 2 0 0 9 年1 1月) 表 -1 節点数および要素数 位と回転に対して設定したケーブルの端部はヒ。 ン結合としたなお,ケーブルモデルおよび、弦モ 節点数 1 7 8 -P 吋j E A U 今ム × 今ム一必且寸 ブル要素としてモデノレ化する.図 -5において L 吋/ -5に示すようにサグを考慮して 8分割し,ケー x- 今 J 由唱 11自 × 主塔 ケープツレ 「ー弦要素 │ケーブル要素 ケーブルモデ、ルで、は, 1つの支持ケープルを図 今ム -AU-A﹃ 9 4 岡京 一 一 一 一 一 “ 、 主桁 fo-O1凸 デル共に,主桁および主塔は, 3次元はり要素に 置き換える 1) i 弦要素 │ │ケーブル要素│ 部材数 9 3 主桁 はり要素 1 4 4 はり要素 剛体 78x2=156 主塔 はり要素 1 4 2 はり要素 橋脚 支承 7 6 ばね要素 7 2 弦要素 ケーブノレ ケーブ、ル要素 5 7 6 ム乱 はケーブルスパン長,J はサグである. 口則 弦モデルでは,支持ケーブノレを先に述べたよう に lつの弦モデ、ルとしてモデル化をする.なお, . 9X1 08kN/ばである. ケーブルの弾性係数は E=1 しかし,斜張橋のケーブルとして張り捜した場合, 自重によりサグが生じるため,@J線音防オとして扱 う場合に比べてケーブル張力に応じて見かけ上の 弾性係数が低下する.よって,サグのあるケーブ m s tの 式 よ り 算 出 し た 表 ノレの等価弾d性係数は E 合計 ー1に示したように,ケーブノレ要素の節点数は弦 │ 弦要素 i │ケーブル要素│ 要素の 2倍近くになり,モデノレ化およひ言十算に時 間を要する. 3 . 2 車両解析モデル 車両モデノレは図 -6に示すように l自由度モデ ルを使用する.なお,使用した車両モデ、ルの各ノ〈 ラメータは, 2伽fトラックを想定して決定した値 =20. 4 t o n ,酉有振動数f= 2 . 6 H z , を用いる(質量 m = O . 0 3 ).走行速度は,30kmlhとする.ま 減衰定 h Z 図4 FEM解析モデ、ル(弦モデ〉レ) た,車両の走行位置は,主桁中央はり音防寸上(幅 員中央)である. 3 . 3 計測概要 常時微動計測は,国一 1に示した位置で鉛直方 向,橋軸方向,橋軸直角方向およひ涙れ振動の常 時微動を計測した床版に加速度計を設置し,加 速度計の向きを変更することで各方向の加速度を 4 点同時計測した.計測には圧電型加速度計を用 い,計測時間は 6 2 9. 14 5 6秒,計測時間刻みは 0 . 2 ミリ秒とした舗装が行われていない状態で計測 を行二った. 4 . 結果 4 . 1 固有振動数解析 4 .1 .1 全体系の固有振動数 図 -5 支持ケーブルのモデ、ル化 (ケープ〉ルモデ、ル) CS ケーブ、ルモデ、ルと弦モデノレを用いて,全体系の 固有値解析を行った結果を表ー2に示す.ケーブ ノレモデ、ルでは,主桁,主塔および支持ケーブルの 振動を同時に計算できるモデルで,弦モデルはケ ーブルを lつの弦要素で、モデ、ノレ化しているためケ 図 -6 1自由度車両モデ、ル 2 4 1 Joumalo fCons 仕u c t i o n a lS t e e l Vo 1 . 17 (November2 0 0 9 ) ーブ、ルの振動モードは現れない.ここで,ケーブ ノレモデルの全体系固有振動数は主村内主塔に振動 が生じているモードをもっ振動を指す.なお,同 様の振動モード、を示すケーブルモデルの次数が, 弦モデルに比べて高い.これは,支持ケーブルの 表 -2 2つのモデルによる全体系の 固有振動数の比較 弦モプ、ル ケーブルモプ、ル 次 数 振動が卓越する振動モードがケーブノレモデルには 含まれるためである. 2 つのモデ、ノレの固有振動数は,鉛直方向,橋軸 方向,橋軸直角方向およむ糠れ振動では一致して おり,ケーブルモデルと弦モデルの差は,最大で 1%であることから,両モデルの固有振動数は鉛直 方向,橋軸方向,橋軸直角方向およ U司戻れ振動に おいても一致していると判断できる.本橋が採用 しているようなマルチファンケーブルで、はケープ子 ルの質量が小さいため,ケーブ、ルの振動の影響が 全体系に及ぼす影響が小さい.したがって,全体 系に及ぼすケーブルの局部振動の影響は小さく, 全体系振動を取り扱う場合には,弦要素を用いて も問題が無いことが確認できる.これによって, 計算コストや人力の手間を減少することができる. 4 .1 .2 支持ケーブルの固有振動数 支持ケーブルの面内 l次振動数の比較を表 -3 に示す.ケーブノレモデ、ノレは全体系における固有振 動解析結果より求めた.弦モデ、ノレにおいて,支持 ケーブルの固有振動数は算出できないため,支持 ケーブルをそれぞ、れ l本ずつ取り出し,両端ピン としてサグを考慮して求めた結果である.なお, 2 つのモデノレ共に計算のなかで、サグの影響を考慮、で .9x きるため,支持ケーブノレの弾性係数は E=1 2 を用いて算出した.これより ,2つの解 1 08kN /m 法によって得られた支持ケーブノレの固有振動数は 最大で 2 .2%の差が生じるものの,両者の差は小さ い.ケーブノレが振動するときに生じる主塔や主桁 の定着点の変位の影響は小さく,ケープノレ定着点、 をピンとしてモデル化して固有振動数が算出でき ることを示している. 4 .1 .3 他の橋梁との比較 対象橋梁は,先に述べたように主桁は鋼,主塔 はコンクリート製の複合斜張橋である.また,交 通量が少ない 2車線の離島架橋で、あるためスパン 長と幅員の比が大きい細長い橋梁である.本橋の 固有振動特性を把握するために,同程度のスパン 長を持つ鍋斜張橋と PC斜張橋について比較を行 4 ) , 5 ) 固有振動数の鞘教をまとめると次のよ った 3), うな結果が得られる. 242 2 3 4 5 3 8 4 3 6 4 6 5 7 4 ①固有 振動数 (也) 0 . 21 4 0 . 3 2 1 0 . 35 3 0 . 4 3 4 0 . 5 2 9 0 . 6 3 9 0 . 6 6 5 0 . 7 5 2 0 . 7 7 7 0 . 8 0 0 次 数 ②固有 振動数 但z ) 0. 21 3 2 0 . 3 1 9 3 0 . 3 5 3 4 0. 4 3 4 5 0. 5 3 1 . 6 3 2 6 0 7 0 . 6 6 6 8 0 . 7 3 9 9 0 . 7 7 0 1 0 0 . 7 9 2 宣言%) ( C D ②1 ) / 1 ① X100 0 . 4 7 0 . 6 2 O O 0. 38 1 . 10 0. 15 1 .7 3 0 . 9 0 1 .0 0 表 -3 支持ケーブルの固有振動数 固有振動数仔Iz) 意%) ケーブル ( C D ②I ) i ① ①ケーブル ②分離 番号 X100 モデル モデル C1 0 . 5 8 6 0 . 5 9 7 1 .8 8 情 1 . 7 6 C2 0 . 6 2 6 0 . 6 3 7 2 . 0 1 C3 0 . 6 9 5 0 . 7 0 9 C4 0 . 7 9 2 0 . 8 0 5 1 . 6 4 0 . 9 4 0 C5 0 . 9 2 9 ー 1 . 18 1 .0 6 1 C6 1 .0 4 9 1 . 14 C7 1 . 2 0 2 1 . 18 8 1 . 18 1 . 4 1 5 C8 1 . 4 0 0 1 .0 7 0 . 8 4 1 . 6 5 9 1 . 6 7 3 C9 0 . 9 1 1 .5 4 3 1 . 5 5 7 Cl O 1 . 30 8 Cl 1 1 . 2 9 3 1 . 16 1 . 11 3 1. 4 6 C12 1 . 0 9 7 0 . 8 3 C13 0 . 9 6 3 0 . 9 7 1 自 1 . 18 C14 0 . 8 4 7 0 . 8 5 7 0 . 7 5 2 2. 17 C15 0 . 7 3 6 2 . 0 6 C16 0 . 6 7 9 0 . 6 9 3 国 1 . 9 2 C17 0 . 6 2 5 0 . 6 3 7 C18 0 . 5 8 1 0 . 5 8 4 ー 0 . 35 帽 胸 -本橋の l次振動は,橋軸直角方向(面外)振動 である.通常の場合は,主塔の橋軸方向の振動が 卓越するタワーモードが得られるが,鷹島肥前大 橋の幅員が 9万 m と狭く,かつ,フェアリングが 設置されておらず,橋軸直角方向の岡J I 性が小さい ためで、ある. -本橋のタワーモードは 3次振動で現れる.コン クリート製であるため 主塔の橋軸方向の剛性が 高いことによる. ・主桁や床版が鋼材であるため,これを支えるケ ープルの張力は鋼橋と同じである.このため,ケ ープ〉レの固有振動数は鋼橋の場合と同程度である. 鋼構造年次論文報告集 第1 7 巻 図ー 7 ,8および 9は複合斜張橋である鷹島肥前 大橋,鋼斜張橋である大島大橋,コンクリート斜 張橋で、ある呼子大橋について鉛直 l次から 5次固 有張動数と摂れ 1次固有振動数およびケーブルの 「 ← 一 一 一 一 」 主不安定領個 i j l J不 安 定 領 域 1 ' 1 ' (固有振動数の半分),副不安定領域(固有振動数) および主不安定領域(固有振動数の 2倍)が発生 する可能性がある振動数を表示している.前述の ように鋼橋に比べてコンクリート橋の支持ケープ ルの固有張動数が高いため,呼子大橋の支持ケー ブノレの匝有振動数は全体系の低次の固有張動数は 銅橋に比べて離れている.これに対して本橋は, 支持ケーブノレの固有振動数および全体系の固有振 動数の関係は大島大橋に良く似ていることがわか る.また,低次の全体系の酉有振動数と支持ケー ブルの固有振動数が接近しているため,全体系の 振動によって,ケーブルに局部振動発生の可能性 が高いといえる. 以上より,本橋は主桁が鋼である大島大橋と固 有振動特性が似ていることがわかる. 4 . 2 計測結果 S u b s p a c e同定法と恥1E M により推定した鉛直振 動の固有振動数を図ー 1 0,1 1に示す.図ー 1 0より 4つの固有振動数が推定されている.図 11より パワースベクトルの卓越する振動数が, S u b s p a c e 同定法により推定された振動数と一致している. S u b s p a c eによる推定結果は妥当と判断される. S u b s p a c e同定法により推定した各国有振動数に おける減衰定数を図ー 1 2に示す.減衰定数は固有 振動数によって,大きさが異なることが分かる. 図ー 1 3に S u b s p a c e同定法により推定した橋軸 方向振動の固有振動数を示す.図 14には MEM により計算したパワースペクトルを示す. S u b s p a c e同定法および MEMともに推定された固 有振動数は 0 . 8 8 1 H zおよび 1 . 0 7 9 Hzである.図1 5は S u b s p a c e同定法により推定した減衰定数を 示している.減衰定数は 2つの固有振動数とも 0 . 0 2程度ある.鉛直方向振動の減衰定数に比べて 大きい値を示している.これは,主塔および橋脚 の聞に設置されているゴム支承の影響と考えられ る.振れ振動についても同じデータ角特庁が実施さ れた 舗装が行われていない状態で常時微動計測を行 ったため,舗装の質量を除外した修正角特庁モデ、ル :-瓦言の固有振動数 支持ケーブルの 1 次振動数 支持ケーブルの 1 次 振 動 数 のz 倍 ぬ 支持ケーブルの 1 次 振 動 数 の0 . 5倍 、 1次振動をプロットしたものである.なお,ケー ブノレについては,局部振動が現れる分数調波共振 ( 2 0 0 9 年1 1月) 分数読波共振 全体系の 固有援勤数 トー「ー「ー守一一「 0 . 0 0 . 5 1 . 0 1 . 5 2 . 0 2 . 5 3 . 0 3 . 5 娠 勤 数 (Hz) 図7 鷹島肥前大捕の全体系と 支持ケーブルの固有振動数の関係 主不安定領帽 - 全体系の国有娠動数 ひ 支持ケーブルの 1 次援動数 守 支持ケーブルの 1 次 振 動 数 の2 倍 ふ 支持ケーブルの 1 次振動数の 0 . 5倍 皮共 分散調j u u u U U M U 振 動 数(Hz) 図 -8 大島大橋の全体系と 支持ケープ、ルの固有振動数の関係 主不安定領個 ・ M A 鳴か一一一一ータ一民一都ト-'1(ー〕精一一弓栄一一一子 全体高の固有揖動量長 支持ケーブルの 1次撞動融 │ 主持ケーブルの 1次揖勤数の 2箔 主持ケーブルの?次握勤勉の 0 . 5 倍│ _ . 1 割 " 1 幽 冨) 1 不安定領域 分数詞波共振 全体系の 固有振動数 娠 勤 数 (Hz) 図 -9 呼子大橋の全体系と 支持ケープノレの固有振動数の関係 による固有振動解析を行った.表 -4に固有振動 解析による固有振動数と S u b s 伊c e同定法による 計測結果から推定した固有振動数およひ減衰定数 を示す.固有振動形は計測した 4点の加速度と位 十目から推定した.固有振動数の差は,全体系振動 の 5次振動(橋軸直角方向逆対柏振動)と 1 0次振 動(鉛直方向対象振動)において 15.6%,1 2. 4 % と 解析値と計測値との差が認められる.しかし,そ れら以外の 6個の固有振動数は 6% 程度以内で一 致している.なお, 3次振動, 1 1次振動および 1 3 次振動を同定することができていない.これは, 今回の計測では主桁のみに加速度計を設置したた 243 J o u m a lo fCons 廿u c t i o n a lS t e e l 1 . 17 ( November2 0 0 9 ) Vo 0 . 3 6 9 0 . 7 6 20 . 8 9 210 7 2 0 . 8 8 11 . 0 7 9 C a s e . 2 300 300 250 250 百﹄ 100 4 150 内 』 U 内 ~ 。 D ﹄ ω O 200 』 150 0 . 0 0 . 3 0 . 6 0 . 9 1 .2 1 .5 振動数(Hz) 振動数 (Hz) 図ー 1 3 S u b s p a 民間定法による 固有振動数の推定(橋軸方向) 図 -10 S u b s p a c e同定法による 固有振動数の推定(鉛直方向) @ h q F ~"-,,,?ヲ: 0 . 1 0 . 6 0 . 9 1 .2 振動数 (Hz) 1 .5 0 . 0 5 田 -V 0 . 0 4 v h 出出出一' 窃 A 箇 一 一 V 10001 自国会 c- 開 的V 路 弘対・ 総 泌 ' az 稔 . -AU 間町僑 寝 必需 e 移- -T v UT VA v v 命事 v mHV w v WV 0 . 0 2 令 ・ 話 i 策 附 。 ••• 03 弓Jh 誠艇耐震 RJva4qu 内 nunununu unυnu n U 図 -11 1 ¥ 伍M による固有張動数(鉛直方向) 振動融制。 図14 1 ¥ 伍M による固有振動数(橋軸方向) 噂 e 0 . 0 1 V 0 . 0 1 回 圃 0 . 0 0 1 0 0 150 200 止と亙ふ 250 0 . 0 0 300 100 Order 150 200 250 300 Order 図-12 S u b s p a c e同定法による 減衰定数の推定(鉛直方向) 図ー 1 5 S u b s p a c e同定法による 減衰定数の推定(橋軸方向) め,主塔の振動が卓越するタワーモードを計測し ていないためである.また, 1 5次振動と 1 6次振 動は鉛直 6次 , 7次振動であるが,今回の計測で は石信志されなかった 囲有振動数の解析値と計測値はほぼ一致してお り,鷹島肥前大橋の振動解析モデ、ルは妥当と判断 される. これまで建設された鋼斜張橋である橿石島橋 7) 大島大橋 3) 多々羅大橋 8)および女神大橋 5) PC 橋である唄げんか大橋 9 )における振動実験や常時 微動計測により得られた減衰定数は 0 . 0 0 1" ' 0 . 0 4 3 である.本橋の減衰定数は他の斜張橋と同程度で ある. 表4より計測から得られた減衰定数は, 1次振 動 , 2次振動および 1 0次振動の減衰定数は 0 . 0 0 2 " ' 0 . 0 0 4 と小さな値, 5次振動, 1 2次振動および 1 4次振動の減衰定数は 0 . 0 2 2 " ' 0 . 0 4 3と大きな値を 2次 示し, 2つのグ、ルーフ。があることが分かる. 1 および 1 4次は橋軸方向振動のため,支承部に導入 244 表4 計調肋も推定した固有振動数と 解析より得られた固有振動数の比較 次 数 2 3 4 5 1 0 1 1 1 2 1 3 1 4 1 5 1 6 1 8 明科庁値 但z ) 0. 2 3 4 0 . 3 4 8 0. 37 9 0 . 4 7 2 0 . 5 8 4 0 . 8 7 1 0 . 8 8 7 0 . 9 3 0 0 . 9 7 2 1 .0 3 3 1 . 11 4 1 . 2 2 4 l . 37 1 計調u 値 ②振動数 加z ) 減衰 定数 差(%) (②①1 ) / 1 ① 0. 2 4 2 0 . 36 9 0 . 0 0 4 0 . 0 0 4 0 . 4 4 9 0 . 6 7 5 0 . 7 6 2 0 . 0 4 3 0 . 0 0 2 1 5 . 6 1 2. 4 0 . 8 9 2 0 . 0 2 4 4 . 2 1 . 0 7 2 0 . 0 2 2 4 . 3 l . 31 8 3 . 4 6 . 3 4. 9 2 . 8 ー - 鋼構造年次論文報告集 第1 7 巻 されたゴム支承の影響と考えられる.女神大橋の 橋軸方向振動の減衰定数は 0 . 0 0 7および 0 . 0 0 9,大 島大橋は 0 . 0 0 9と計測より得られた減衰定数の中 でも大きい値を取る.これらの橋梁にも橋軸方向 ( 2 0 0 9 年1 1月) CO ¥S 言 。 " " z o∞1 ' 1 l ' i ! ! t t .0010 ~~g 2 o B I ' l 富山口容 . 容 . Q e a.0005十 ~ 0 ? C . . 2 0 u 。μ , . モ デ 花 ヌ開 H ; ; : ..(J 01S棚 t==:一一」一一一←一一ム一一一一~一一一一一 _260 品 。 剖 にゴム支承が導入されているためと考えられる. 4 . 3 交通振動解析結果 訓 ' " 橋路方向座積 ' m ) (吋水平方向変位 古川 主ニ点 ih tE {ι l:I去五去古 ,ふみぬ, , ︽ . 白 M ‘ V o ケーフJ 向日 ~,刷昆 附 , ..モデル 4 ~似,、。切V刷櫨 ' " “ 橋軸方向座標(m) (b)鉛直方向変位 図16 支持ケーブルと支持ケーブル 定着点J 芯答変位 。 ' " 官 ' " 02 '" 0白 望 。 ∞ ~ 0. 0 5 富 山G 心 " 0 . 2 0 300 500 じない.これは,支持ケーブ?ルに大きな局部振動 . 2 0 ' ." 図1 7 主桁の鉛直方向応答変位 が生じないためである. P主塔の橋軸方向の変位 図-19に鷹島町側の 3 を示す.主塔が側径間側方向に比べて中央径間方 、;、 図1 7,1 8に走行車両荷重を受けた主桁の鉛直 方向変位と軸力応答を示す.図から明らかなよう に,ケーブノレモデ、ノレと弦モデルの応答には差が生 、 晶 が大きい局部振動が見受けられないことが石信忍で きる. 必 ロットしている.これより,支持ケーブ、ルに変位 A . : . 色; ι 四 p 叩 主桁の鷹島町から中央径聞の中点までの橋軸方向 の座標を示す.なお,支持ケーブルの応答は,ケ ーブルに現れる最大応答で,ケープ、ノレ定着点にブ {主創出mehn掴ま 最大応答変位を示した横軸は,図ー 1に示した }L ﹁f t L 叩 位刷∞例 m w 白 川 W M mwmmwaoan 4 4 4 4 G G 心 圏一 1 6に走行車両による支持ケ}ブルと支持 ケープ?ル定着点の主桁の橋軸方向と鉛直方向の 500 z 4 { V 向に大きく変位している.これは,車両の走行に より側径聞に比べて中刻圭聞の桁が大きな鉛直変 R 議 問 位を起こすためである.図 20に軸力分布を示す. 図1 8 主桁の軸力 なお,主塔高さが 6 . 5 mから 71mまでの値が小さ くなっている.これは,本橋の主塔形式が逆 Y 宇 であり, 2本に分岐した片方の部材の軸力を出力 したためである. ケープツレモデ、ノレと弦モデノレの応 答には差が無いため,弦モデノレを用いることが可 能であるといえる. < " 橋馳方向度額 ' m ) 150 120 E 長 90 豊田 E 30 王 宮 5 . 弦要素とケーブル要素の適用について 0 . 0 2 図 -19 橋軸方向応答変位 形性や係数励振振動を取り扱うことが可能である ので,ケーブノレの振動が大きくなるガスト応答 11) レベノレ 2地震動,周期的加振を受ける場合の支持 120 E 長 90 製 ' 0 60 員 30 2 E 30 1 0 0 0 -) 固有振動角勃庁が必要である. ケーブル要素法で、は,ケーブルの幾何学的非線 150 日 。 ⋮ j H﹄ の重量は小さく,ケーブル振動が全体系に及ぼす 影響は今回の解析のように一般に小さい.ケーブ ル本数が少なく,重量が大きいケーブルの場合は, ケーブル振動の影響が効し、てくることが考えられ る 10) このような場合はケーブル要素法を用いた 一 立 日本の斜張橋では,マルチステイケーブルが一 般的である.マルチステイケーブノレの一本当たり 500 1000 図 -20 主塔軸力 245 J o u m a lo fC o n s t r u c t i o n a lS t e e l 1 . 17 ( N o v e m b e r2009) Vo ケーブルの応答やケーブルの応答が主材持主塔に 及ぼす影響の評価にはケーブル要素法を用いる必 要がある. 1 9 9 9 . 3 )長崎県,長崎県道路公社:大島大橋工事誌, pp. 369399,2000. 3 . 開 マルチステイケーブルをもっ斜張橋の固有振動 4 )高橋和雄,呉慶雄,中村聖三,久保田展隆,伊 解ネ斤やケープ、ル振動が小さい交通振動応答では弦 田義隆:斜張橋の支持ケーブルの局部振動の解 要素で十分である. . 1 46A,p p . 5 0 1 5 1 0,2000. 3 析,構造工学論文集, Vo 5 )Q . W, uK . Tak油 田h i ,T .O k a b a y a s h i ,and S . 6 . まとめ 本研究で得られた知見を以下に示す. (1)固有振動解析を行い,従来の支持ケーブルのサ グの影響を考慮、できるケーブルモデルと評価でき v i b r a t i o n si ns t a yc a b l e sonane x i s t i n gc a b l e s t a y e d ,JoumalofSoundandVib r ョ t i o , n Vo. 1 2 6 1, b r i d g e pp. 4 0 3 4 2 0 , 2 0 0 3 . ない弦モデルを比較したところ,両モデ、ルの差は 6 )Q .WU,Y .K i t a h a r 九K.TakahashiandB .C h e n : 小さく,また,支持ケーブノレの固有振動数も一致 D戸larniC C h a r a c t e r i s t i c s ofMegami C a b l e s t a y e d した. B r i d g e - A Comparison of E x p e r i m e n t a l and ( 2 ) 使用材料とスパン長の異なる同様な形式の斜 An a l y t i c a 1R e s u l t s,I n t e m a t i o n a l Joumal o fS t e e l 張橋の固有振動数を比較し,スパン長が長くなる S t r u c 旬r e s , Vo . 18 , No , l .p p .ト9,2 0 0 8 . と固有振動数は小さくなり,コンクリート橋は鋼 7 )岡内功,宮田利雄,辰巳正明,佐々木伸幸:大 橋に比べて高い振動数を示す傾向を有しているこ 振幅加振による長大斜張橋の実橋振動実験,土 とがわかった.また,複合斜張橋である本橋は銅 4 5 5/ 1 2 1,pp万四 84, 1 9 9 2. 10 . 木学会論文集, No. 橋である大島大橋と近い特性を有していることか ら鋼橋の特徴を有している. ( 3 )常時微動計測結果より, S u b s p a c e同定法および 恥1E M を用いて鷹島肥前大橋の振動特性を推定す ることが出来た.解析値と計測により得られた固 有振動数はほぼ一致した.これより作成した解析 モデルの妥当性を検証できた.加えて,本橋の減 衰定数は,他の実橋梁で得られた減衰定数と同程 度である. ( 4 ) 走行車両による応答は,支持ケーブルに振幅の 大きな局部振動は発生せず,これによりケーブル モデ、/レと弦モデ、ノレの差は生じず,走行車両角手析に おいて従来手法である支持ケーブルを畠線部材と してモデ、ノレ化する弦要素を用いて解キ斤を行うこと ができる. 謝辞 鷹島肥前大橋の設計資料の提供や振動計測で長 崎県道路建設課のお世話になったことを付記する. 【参考文献】 1 )K .Tanak , aK .T a k a h a s h ia n dS .Nakamura:A n a 1 y s i s ofL o c a lV i b r a t i o n si nt h eS t a yC a b l e s oft h e H i z e n T:北部h nna B r i d g e ,S t e e lS t r u c t u r e s ,拘1.8, pp. 2 7 7 2 8 4 , 2 0 0 8 . 1 2 . 2 ) ( 株)アーク↑開システム : TDAP皿機能説明書, 246 ぽ a : Response c h a r a c t e r i s t i c s of l o c a 1 Nakam 8 )真辺保仁,佐々木伸幸,山口和範:多々羅大橋 の実橋振動実験,橋梁と基礎, (株)建設図書, Vo . 1 3 3,No.5,pp . 2 7 3 0, 1 9 9 9 . 9 )建設省九州地方建設局佐伯工事事務所:唄げん 21ト234, 1 9 9 3 . か大橋工事誌, pp. 1 0 )A . M. Abdel -G ha : f f a r and M . A. K h a l i f a : I m p o r t a n c e of C a b l e V i b r a t i o n Dynamics of , Joumal of Engineering C a b l e s t a y e d B r i d g e s ASCE , Vo 1 . 11 7 , pp. 2 5 7 1 2 5 8 9 , 1 9 91 . M e c h a n i c s, 1 1 )Q .WU ,K .TakahashiandB .C h e n :加 a l y s i sof L o c a lV i b r a t i o n si nS t a yC a b l e s ofan E x i s t i n g C a b l e s t a y e dB r i d g e ,S t r u c t u r a lE n g i n e e 出1 9& M e c h a n i c s , Vo 1 . 30, No.5, p p . 5 1 3 5 3 4 ラ2 0 0 8 .
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