あもんノート http://amonphys.web.fc2.com/ ユークリッド幾何学、ニュートン力学から、相対論、宇宙論、量子力学、場の量子論、 素粒子論、そしてくりこみ理論まで、理論物理学を簡潔にかつ幅広く網羅したノート です。TOP へは上の URL をクリックして行けます。 目次 1 2 経路積分 1.1 自由度 1 の量子力学 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2 1.2 経路積分 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3 1.3 グリーン関数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4 1.4 場の量子論への拡張と生成汎関数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6 1.5 自由項演算子と伝播関数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7 1.6 伝播関数展開表式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8 1.7 グリーン関数の摂動展開 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9 1.8 漸近場と LSZ 簡約公式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11 1.9 グラスマン数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14 1.10 フェルミオンの量子力学 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16 1.11 ディラック場の経路積分 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18 1 1 経路積分 相互作用のある場の量子論を考える場合、特に散乱問題については、相互作用 表示を用いて摂動論を行うのが簡単で便利なのですが、一般的な問題ではハイゼ ンベルグ表示にとどまる必要性が出てきます。それは抽象的で少し難解なのです が、表示を変更しないためエレガントであるとも考えられます。この場合、経路 積分と呼ばれる手法が計算の要になります。ここでは経路積分による場の量子論 を基本的な範囲に限って紹介することにします。 1.1 自由度 1 の量子力学 まず簡単なモデルとして自由度 1 の力学系を復習しましょう。力学変数を q = q(t) とし、作用汎関数を、 S[q] = dt L(q, q), ˙ L(q, q) ˙ = m 2 q˙ − V (q) 2 とします。ドットは時間 t による微分、m は粒子の質量、V (q) は外部ポテンシャ ルを意味します。正準共役変数とハミルトニアンは、 p= ∂L = mq, ˙ ∂ q˙ H(q, p) = pq˙ − L(q, q) ˙ = 1 2 p + V (q) 2m となります (解析力学の章参照)。 量子論を得るには、正準変数 q(t), p(t) をエルミート代数とし、正準交換関係 : [ q(t), p(t) ] = i, [ q(t), q(t) ] = [ p(t), p(t) ] = 0 (∀t) を課します。q(t) の固有値 x の固有ベクトルを |x, t > とすると、 q(t)|x, t >= x|x, t >, < x, t|x , t >= δ(x−x ). 同様に p(t) の固有値 k の固有ベクトルを |k, t > とすると、 p(t)|k, t >= k|k, t >, < k, t|k , t >= δ(k−k ) です。これらは完全系を成します : dx |x, t >< x, t| = 1, dk |k, t >< k, t| = 1. 2 ここで 1 は恒等演算子を意味します。また、 1 < x, t|k, t >= √ eikx 2π を示すことができます (量子論の基礎の章参照)。 1.2 経路積分 さて、異なる時刻 tF , tI における力学変数の固有ベクトルの内積 : < xF , tF |xI , tI > (tF > tI ) がどのように書けるか考えてみましょう。2 つの時刻の間を、 tF −tI N のように ∆t 間隔で N 等分すれば、各時刻における完全系の式を挿入し、 tF = tN > tN −1 > · · · > t1 > t0 = tI , ti+1 − ti = ∆t = < xF , tF |xI , tI > = dxN −1 · · · dx1 < xF , tF |xN −1 , tN −1 >< xN −1 , tN −1 | · · · · · · |x2 , t2 >< x2 , t2 |x1 , t1 >< x1 , t1 |xI , tI > N −1 = dx1 · · · < xi+1 , ti+1 |xi , ti > dxN −1 xN = xF x0 = xI i=0 のように展開されますが、分割数 N が十分大きく、∆t が十分小さいとすると、 < xi+1 , ti+1 |xi , ti > = < xi+1 , ti | e−i∆tH(q,p) |xi , ti > = dk < xi+1 , ti | e−i∆t(p = dk e−i∆t(k = e−i∆tV (xi ) 2 /2m) 2 /2m) |k, ti >< k, ti | e−i∆tV (q) |xi , ti > 1 1 √ eikxi+1 e−i∆tV (xi ) √ e−ikxi 2π 2π dk −i∆t(k2 /2m)+ik(xi+1 −xi ) e . 2π ここで xi+1 −xi = x˙ i ∆t とおくと、x˙ i は速度変数とみなせます。上式の指数部を k について平方完成し、ガウス積分を実行すれば、 2 < xi+1 , ti+1 |xi , ti > ∝ e−i∆tV (xi ) ei∆t(m/2)x˙ i = ei∆tL(xi ,x˙ i ) となるので、結果、 N −1 < xF , tF |xI , tI > ∝ dx1 · · · dxN −1 exp i∆t L(xi , x˙ i ) i=0 3 xN = xF x0 = xI という離散近似式を得ます。N → ∞ の極限をとれば、 tF < xF , tF |xI , tI > ∝ x(tF ) = xF x(tI ) = xI Dx exp i dt L(x, x) ˙ tI となります。ここで Dx は t dx(t) の意味で、この連続無限重の積分は、境界条 件 x(tF ) = xF , x(tI ) = xI を満たす時空上の全ての経路に関する連続的な総和を 意味し、経路積分と呼ばれます (図 1)。 図 1: 経路積分 1.3 グリーン関数 系の基底状態を |0 > と書きます。作用汎関数に定数を加える自由度を利用して、 基底状態のエネルギーが 0 になるようにします : H|0 >= 0. このとき |0 > は時 間に依存しません。 t1 > t2 のとき、 < 0| q(t1 )q(t2 ) |0 > = dx+ dx1 dx2 dx− < 0|x+ , +∞ > × < x+ , +∞| q(t1 ) |x1 , t1 >< x1 , t1 | q(t2 ) |x2 , t2 > × < x2 , t2 |x− , −∞ >< x− , −∞|0 > ∝ dx− φ∗0 (x+ )φ0 (x− ) dx+ × dx1 dx2 x1 x2 4 x(+∞) = x+ , x(t1 ) = x1 x(t2 ) = x2 , x(−∞) = x− Dx eiS[x] . ここで φ0 (x) =< x, t|0 > は基底状態の固有関数です。因子 x1 x2 を経路積分の中 に入れれば x(t1 )x(t2 ) と書けますが、そうして x1 , x2 積分を実行すれば、 < 0| q(t1 )q(t2 ) |0 >∝ dx+ dx− φ∗0 (x+ )φ0 (x− ) x(+∞) = x+ x(−∞) = x− Dx x(t1 )x(t2 ) eiS[x] を得ます。このように時間遠方で基底状態の固有関数の重みを与え和をとる経路 積分を、境界条件なしに単に Dx と書くことにすれば、 Dx x(t1 )x(t2 ) eiS[x] < 0| q(t1 )q(t2 ) |0 > ∝ です (∗) 。t2 > t1 のときは、< 0| q(t2 )q(t1 ) |0 > が同じ結果を与えるので、時間順 序積を T · · · として、 < 0| T q(t1 )q(t2 ) |0 > = N0 Dx x(t1 )x(t2 ) eiS[x] . ここで N0 は比例定数ですが、1 =< 0|0 >= N0 < 0| T q(t1 )q(t2 ) |0 > = Dx eiS[x] に注意すると定まって、 Dx eiS[x] Dx x(t1 )x(t2 ) eiS[x] となります。 一般化すると、 G(t1 , · · · , tn ) = < 0| T q(t1 ) · · · q(tn ) |0 > で定義される n 点グリーン関数に対し、その経路積分表式が、 G(t1 , · · · , tn ) = Dx x(t1 ) · · · x(tn ) eiS[x] Dx eiS[x] となるはずです。また、力学変数が複数あり、qi (t) (i = 1, 2, · · · ) と書かれる場合、 n 点グリーン関数は、 Gi1 ···in (t1 , · · · , tn ) = < 0| T qi1 (t1 ) · · · qin (tn ) |0 > = Dx xi1 (t1 ) · · · xin (tn ) eiS[x] のように書かれることになります。ここで Dx は i,t dxi (t) Dx eiS[x] の意味です。 量子系における全ての観測量はこれら n 点グリーン関数から得られるため、n 点 グリーン関数を計算し知ることは量子系を解くことに相当します。n 点グリーン 関数の全てを解析的かつ厳密に計算できる量子系を可解系といいます。 (*注) 実は経路積分に何らかの正則化を施し well-defined とした場合、境界条件のない経路積 分は自ずと境界に基底状態の固有関数を重みとして与えたそれに一致することが知られています。 5 1.4 場の量子論への拡張と生成汎関数 次に、4 次元時空 xµ = (t, r)µ 上に一般に複数の場 ϕi (x) (i = 1, 2, · · · ) があると き、その量子論を考えましょう。このとき n 点グリーン関数は、 Gi1 ···in (x1 , · · · , xn ) =< 0| T ϕi1 (x1 ) · · · ϕin (xn ) |0 > で与えられます。|0 > は場の量子系の基底状態で、真空を意味します (∗) 。また、 ここでの ϕi (x) は正準量子化された代数の場です。 経路積分表式は、作用汎関数を S[ϕ] として、 Gi1 ···in (x1 , · · · , xn ) = Dϕ ϕi1 (x1 ) · · · ϕin (xn ) eiS[ϕ] Dϕ eiS[ϕ] となるでしょう。Dϕ は i,x dϕi (x) の意味です。経路積分表式における ϕi (x) は もはや代数ではなく、普通の数 (実数もしくは複素数) であることに注意してくだ さい。 グリーン関数の生成汎関数 (母関数) Z[J] を、 Z[J] = < 0| T eJ·ϕ |0 >, d4 x Ji (x)ϕi (x) J ·ϕ = i で定義しましょう。仮にこれが求まれば、n 点グリーン関数は、 Gi1 ···in (x1 , · · · , xn ) = δ δ ··· Z[J] δJi1 (x1 ) δJin (xn ) J=0 といった汎関数微分により簡単に生成されることに注意してください。Ji (x) は場 ϕi (x) のソースと呼ばれます。生成汎関数の経路積分表式は、 Z[J] = Dϕ eiS[ϕ]+J·ϕ Dϕ eiS[ϕ] となるでしょう。一般に場の量子論の問題は、与えられた作用汎関数 S[ϕ] に対 して、このような経路積分をいかに計算するかという問題に焼直されたわけです。 離散化してコンピューターで数値計算するのも 1 つの方法ですが、ここでは解析 的に何がいえるかを考えていきます。 (*注) 自由場の量子論や相互作用表示における場の量子論では、真空は全ての消滅演算子に対 して消える状態として簡単に定義できますが、ハイゼンベルグ表示においては一般に生成消滅演 算子など存在しないので、このような定義はもちろんできません。この場合、真空は系の基底状 態として定義されます。特に真空のエネルギーが 0 になるように調整し、H|0 >= 0 とします。相 互作用表示の真空とハイゼンベルグ表示の真空は一般に別物です。相互作用表示では、ハミルト ニアンの自由部分を H0 として、(H0 − V0 )|0 >= 0. ここで V0 は真空のエネルギーです。純粋な ハイゼンベルグ表示と簡便な相互作用表示をごっちゃにしないよう注意してください。 6 1.5 自由項演算子と伝播関数 作用汎関数を、 i ϕ·K ·ϕ + SI [ϕ] 2 と表します。ここで SI [ϕ] は場の 3 次以上から成る相互作用部分で、また、 S[ϕ] = d4 xd4 y ϕi (x)Kij (x, y)ϕj (y) ϕ·K ·ϕ = ij です。この略記のこころは明らかでしょう。Kij (x, y) をここでは自由項演算子と 呼ぶことにします。自由項演算子の逆、すなわち、 d4 y Kij (x, y)∆jk (y, z) = δik δ 4 (x−z) j を満たす ∆jk (y, z) を、一般に伝播関数といいます。 例えば複数のスカラー場がある理論の場合、作用汎関数は、 S[ϕ] = 1 2 d4 x ∂µ ϕi (x)∂ µ ϕi (x) − m2i ϕi (x)2 + SI [ϕ] i 1 =− 2 = i 2 d4 x ϕi (x) x + m2i ϕi (x) + SI [ϕ] i d4 xd4 y ϕi (x) i( x + m2i )δij δ 4 (x−y) ϕj (y) + SI [ϕ] ij です。よって自由項演算子は、 Kij (x, y) = i( x + m2i )δij δ 4 (x−y) ということになります。そうすると伝播関数に関する方程式は、 i( x + m2i )∆ij (x, y) = δij δ 4 (x−y) となり、解は、 ∆ij (x, y) = d4 k iδij e−ik·(x−y) 2 4 2 (2π) k − mi と形式的に書くことができます。ここで k 2 = k·k. この積分は k 2 = m2i のところ に特異性を持ちます。 しかしよく考えてみると、作用汎関数は実数ですから、eiS[ϕ] の経路積分自体が 形式的なもので、収束しません。収束性を良くするためには、e− ϕ·ϕ ( → +0) の ような正則化因子が必要です。これは各スカラー場 ϕi (x) の質量 mi について、 7 m2i → m2i − i と変更することと等価です。経路積分に関するこの正則化の処方を -i ε処方といいます。−i 処方により、伝播関数は、 ∆ij (x, y) = d4 k iδij e−ik·(x−y) 2 4 2 (2π) k − mi + i ( → +0) となり、特異性が回避されるわけです。 1.6 伝播関数展開表式 生成汎関数 Z[J] の経路積分表式を変形し、解析的に計算可能な形にしましょう。 Z[J] ∝ Dϕ e−(1/2)ϕ·K·ϕ+iSI [ϕ]+J·ϕ = exp iSI δ δJ Dϕ e−(1/2)ϕ·K·ϕ+J·ϕ = exp iSI δ δJ Dϕ e−(1/2)(ϕ−∆·J)·K·(ϕ−∆·J)+(1/2)J·∆·J ∝ exp iSI δ δJ e(1/2)J·∆·J . 経路積分はガウス積分として実行しました。さらに次のように変形します。 Z[J] ∝ exp iSI δ δJ 1 δ δ ·∆· eJ·ϕ 2 δϕ δϕ exp = exp δ 1 δ δ exp iSI ·∆· 2 δϕ δϕ δJ = exp 1 δ δ ·∆· eiSI [ϕ]+J·ϕ 2 δϕ δϕ ここで、 ··· 0 = exp 1 δ δ ·∆· 2 δϕ δϕ eJ·ϕ ϕ=0 ϕ=0 ϕ=0. ··· ϕ=0 という記号を導入すれば、 Z[J] ∝ eiSI [ϕ]+J·ϕ 0 となります。生成汎関数の定義から Z[0] = 1 なので、これにより比例定数が定ま り、結果、 Z[J] = eiSI [ϕ]+J·ϕ eiSI [ϕ] 0 8 0 を得ます。これをここでは生成汎関数の伝播関数展開表式と呼ぶことにします。 記号、 ∞ ··· 0 = n=0 1 n! n 1 δ δ ·∆· 2 δϕ δϕ ··· ϕ=0 の働きを調べておきましょう。∆ij (x, y) = ∆ji (y, x) に注意して、 1 0 = 1, ϕi (x) ϕi (x)ϕj (y)ϕk (z) 0 0 = 0, ϕi (x)ϕj (y) 0 = ∆ij (x, y), = 0, ϕi (x)ϕj (y)ϕk (z)ϕl (w) 0 = ∆ij (x, y)∆kl (z, w) + ∆ik (x, z)∆jl (y, w) + ∆il (x, w)∆jk (y, z) といった具合になるでしょう。すなわち < · · · >0 は、· · · に含まれる場の個数が 奇数のときは 0 で、偶数のときは、場の対がそれぞれ対応した伝播関数に置き換 わり、対の選び方に関する総和になるわけです。各項の係数が上手い具合に必ず 1 になることを確認してください。 1.7 グリーン関数の摂動展開 伝播関数展開表式を用いると、n 点グリーン関数は、 δ δ Gi1 ···in (x1 , · · · , xn ) = ··· Z[J] J=0 δJi1 (x1 ) δJin (xn ) δ δ ··· eiSI [ϕ]+J·ϕ = δJi1 (x1 ) δJin (xn ) = ϕi1 (x1 ) · · · ϕin (xn ) eiSI [ϕ] ∞ = k=0 0 eiSI [ϕ] 0 J=0 eiSI [ϕ] 1 ϕi1 (x1 ) · · · ϕin (xn ) (iSI [ϕ])k k! 0 0 0 eiSI [ϕ] と表されます。相互作用部分のラグランジアン密度を LI とし、SI [ϕ] = とすれば、 0 d4 x LI (x) ∞ (k) Gi1 ···in (x1 , · · · , xn ) = gi1 ···in (x1 , · · · , xn ) k=0 eiSI [ϕ] 0 ここで、 (0) gi1 ···in (x1 , · · · , xn ) = ϕi1 (x1 ) · · · ϕin (xn ) 0 , (k) gi1 ···in (x1 , · · · , xn ) = 1 k! d4 y1 · · · d4 yk ϕi1 (x1 ) · · · ϕin (xn ) iLI (y1 ) · · · iLI (yk ) (k ≥ 1) 9 0 です。これはグリーン関数の摂動展開を意味しています。 簡単なスカラー 4 乗模型 : S[φ] = 1 2 d4 x ∂µ φ(x)∂ µ φ(x) − m2 φ(x)2 − λ 4! d4 x φ(x)4 で具体的に見てみましょう (相対論的場の量子論の章参照)。このとき伝播関数は、 d4 k i e−ik·(x−y) 4 2 2 (2π) k − m + i ∆(x, y) = となり、また、相互作用のラグランジアン密度は、LI (x) = −λ φ(x)4 です。 4! そうすると、例えば 2 点グリーン関数は、 ∞ g (k) (x1 , x2 ) G(x1 , x2 ) = eiSI [φ] k=0 0 であり、摂動の 0 次は、 g (0) (x1 , x2 ) = φ(x1 )φ(x2 ) 0 = ∆(x1 , x2 ). 摂動の 1 次は、 g (1) (x1 , x2 ) = −iλ 4! d4 y φ(x1 )φ(x2 )φ(y)4 −iλ 4! −iλ +3× 4! = 12 × 0 d4 y ∆(x1 , y)∆(x2 , y)∆(y, y) d4 y ∆(x1 , x2 )∆(y, y)2 と計算されるでしょう。これら 2 項は図 2 (a), (b) のファインマングラフにそれぞ れ相当しています。係数 12 および 3 は統計因子です。 摂動の 2 次 : (2) g (x1 , x2 ) = −iλ 4! 2 1 2! d4 y1 d4 y2 φ(x1 )φ(x2 )φ(y1 )4 φ(y2 )4 0 を真面目に展開するのは大変ですが、図 2 (c)∼(i) のグラフに相当する項を生じ るはずで、例えば (c) は、統計因子が 42 × 3! = 96 となることに注意して、 96 × −iλ 4! 2 d4 y1 d4 y2 ∆(x1 , y1 )∆(x2 , y2 )∆(y1 , y2 )3 となります。 2 点グリーン関数 G(x1 , x2 ) はこうして得られる無限個のグラフの総和 eiSI [φ] 0 ですが、 eiSI [φ] 0 を展開すれば真空泡グラフの総和になるので、この割り算は真 10 図 2: 摂動論 空泡を含むグラフを取り除く効果を生みます。すなわちスカラー 4 乗模型におけ る 2 点グリーン関数は、摂動の 2 次までの補正で、 G(x1 , x2 ) = ∆(x1 , x2 ) + (a) + (c) + (d) + (e) となるわけです。結合定数 λ が十分小さい場合、くりこみ処方を経て、これは良 い近似とみなせることになります。 1.8 漸近場と LSZ 簡約公式 次に散乱問題を考えてみましょう。記号の簡単化のため、1 つのスカラー場につ いてのみ考えます。 粒子の散乱が起こるような特定の系では、無限過去と無限未来に系が何らかの 自由場の理論に漸近すると考えられます。すなわちハイゼンベルグ表示における くりこまれたスカラー場 φ(x) に対して、形式的に、 φ(x) → φout (x) (x0 → +∞) φin (x) 11 (x0 → −∞) です。out と in をまとめて as と書くことにしましょう ( asymptotic の略) 。つま り as = out, in です。φas (x) は漸近場と呼ばれ、これは自由場であると考えます : φas (x) = d3 k aas (k) e−ik·x + a∗as (k) eik·x , 3 0 (2π) 2k k0 = |k|2 +m2 . m は漸近的に現れる粒子のくりこまれた質量を意味することになります。この式 を逆フーリエ変換し、消滅演算子 aas (k) について解けば、 aas (k) = i ← → d3 r eik·x ∂0 φas (x) ← → となり、ここで f (x) ∂0 g(x) = f (x)∂0 g(x) − ∂0 f (x)·g(x) です。∂0 はもちろん時 間微分。 そうすると、T (x1 · · · xn ) = T φ(x1 ) · · · φ(xn ) という略記を用いて、 aout (k)T (x1 · · · xn ) − T (x1 · · · xn )ain (k) ← → d3 r eik·x ∂0 φout (x) T (x1 · · · xn ) =i ← → d3 r eik·x ∂0 φin (x) − T (x1 · · · xn ) i = i d 3 ← → r eik·x ∂0 T (xx1 · · · xn ) x0 =+∞ x0 =−∞ =i ← → d4 x ∂0 eik·x ∂0 T (xx1 · · · xn ) =i d4 x eik·x ∂02 T (xx1 · · · xn ) − ∂02 eik·x ·T (xx1 · · · xn ) ですが、∂02 eik·x = −(k 0 )2 eik·x = −(|k|2 +m2 )eik·x = −(− +m2 )eik·x なのでこれ を代入し、ラプラシアン について部分積分を行うと、 aout (k)T (x1 · · · xn ) − T (x1 · · · xn )ain (k) =i d4 x eik·x ( +m2 ) T (xx1 · · · xn ) という公式を得ます。同様にして、 T (x1 · · · xn )a∗in (k) − a∗out (k) T (x1 · · · xn ) =i d4 x e−ik·x ( +m2 ) T (xx1 · · · xn ) が得られるでしょう。 12 漸近場における n 粒子状態を、 |k1 , · · · , kn ; as >= a∗as (k1 ) · · · a∗as (kn )|0 > のように表すと、一般的な散乱の S 行列要素は、上の公式を複数回用いて、 < k1 , · · · , kn ; out|p1 , · · · , pm ; in > =< k2 , · · · , kn ; out| aout (k1 ) |p1 , · · · , pm ; in > = d4 x1 eik1 ·x1 i( 2 x1 +m ) < k2 , · · · , kn ; out| φ(x1 ) |p1 , · · · , pm ; in > = d4 x1 eik1 ·x1 i( 2 x1 +m ) < k3 , · · · , kn ; out| aout (k2 )φ(x1 ) |p1 , · · · , pm ; in > = d4 x1 eik1 ·x1 i( 2 x1 +m ) d4 x2 eik2 ·x2 i( 2 x2 +m ) < k3 , · · · , kn ; out| T φ(x1 )φ(x2 ) |p1 , · · · , pm ; in > = ······ n d4 xi eiki ·xi i( = 2 xi +m ) < 0| T φ(x1 ) · · · φ(xn ) |p1 , · · · , pm ; in > i=1 と変形されるでしょう。散乱を考えているので、out 側の運動量 k1 , · · · , kn はい ずれも in 側の運動量 p1 , · · · , pm のどれとも等しくないことを仮定しています。さ らに in 側についても同様の変形を行えば、 < k1 , · · · , kn ; out|p1 , · · · , pm ; in > n m 4 = d xi e i=1 iki ·xi i( 2 xi +m d4 yj e−ipj ·yj i( ) 2 yj +m ) j=1 < 0| T φ(x1 ) · · · φ(xn )φ(y1 ) · · · φ(ym )|0 > という公式を得ます。これを LSZ 簡約公式 (レーマン・シマンツィック・ツィン マーマンの簡約公式、LSZ reduction formula ) といいます。 LSZ 簡約公式により、散乱問題に関する S 行列要素がグリーン関数から導かれ ることがわかります。すでに述べたグリーン関数の摂動展開をここに適用すると、 相対論的場の量子論の章で紹介したファインマン規則と同じ規則が得られること が確かめられるでしょう。このとき d4 x e−ik·x i( + m2 ) という演算子は、グリー ン関数の端の内線 (伝播関数) を外線 (波動関数) に置き換える役割を果たします。 相互作用表示に比べてかなり導出が煩わしいですが、ハイゼンベルグ表示のま までも散乱問題を扱えることがわかったわけです。 13 1.9 グラスマン数 反可換な数 (代数) を一般にグラスマン数といいます。すなわち ξ, η をグラスマ ン数とすると、 ξη = −ηξ, ξ 2 = 0, η 2 = 0 です。グラスマン数偶数個の積でできた数をグラスマン偶、奇数個の積でできた 数をグラスマン奇といいます。実数や複素数はグラスマン偶、グラスマン数自体 はグラスマン奇です。また、グラスマン奇とグラスマン奇は反可換、グラスマン 偶とグラスマン奇は可換、グラスマン偶とグラスマン偶も可換になります。 グラスマン数 ξ の関数 f (ξ) を展開すると、ξ 2 = 0 に注意して、 f (ξ) = f0 + f1 ξ です。すなわちグラスマン数の関数は高々1 次関数です。よって一般に、 ∂2 f (ξ) = 0 ∂ξ 2 がいえます。これはグラスマン数による微分演算子がグラスマン奇であるからと して理解することもできます。グラスマン数の微分演算子は次のライプニッツ則 を持つものとします : ∂ ∂A ∂B (AB) = B+ A A ∂ξ ∂ξ ∂ξ. ここで A は、A がグラスマン偶のとき +1, グラスマン奇のとき −1 を与える 符号因子です。この微分を特に左微分といいます。一方、 ¯ ¯ ∂¯ ∂B ∂A AB = A + B B ∂ξ ∂ξ ∂ξ でライプニッツ則を定義することもでき、この場合の微分を右微分といいます。 グラスマン数による積分は、部分積分可能性 : dξ ∂ f (ξ) = 0 ∂ξ が成り立つように、微分と同義である とします : dξ = ∂ ∂ξ. そうすると、N 個のグラスマン数 ξ1 , ξ2 , · · · , ξN による重積分は、 dN ξ = dξ1 · · · dξN = 14 ∂ ∂ ··· ∂ξ1 ∂ξN ですが、線形変換: ξi → ξi を考えると、∂/∂ξi が互いに反可換であることに注意 して、 dN ξ = = ∂ξ ∂ξ ∂ ∂ ∂ ∂ ··· = i1 · · · iN ··· ∂ξ1 ∂ξN ∂ξ1 ∂ξN ∂ξi1 ∂ξiN ∂ξi1 ∂ξ · · · iN ∂ξ1 ∂ξN = det ∂ξ ∂ξ i1 ···iN ∂ ∂ ··· ∂ξ1 ∂ξN dN ξ . ヤコビアン det(∂ξ /∂ξ) の出方が実数の場合と逆であることに注意してください。 グラスマン数のデルタ関数は、極めて単純に、 δ(ξ) = ξ で定義されます。実際このとき、グラスマン数 ξ, η, グラスマン偶に値をとる関数 f (ξ) に対して、 ∂ ∂ (f0 + f1 ξ)(ξ − η) = (f0 ξ − f0 η − f1 ξη) ∂ξ ∂ξ = f0 + f1 η = f (η). dξ f (ξ)δ(ξ − η) = f (ξ) がグラスマン偶であることから、f0 はグラスマン偶、f1 はグラスマン奇で あることに注意してください。次の積分表示があります : dη eηξ . δ(ξ) = これは eηξ = 1 + ηξ に注意すれば簡単に確かめられるでしょう。また、次の公式 は特異系の量子論で重要になります : dN ξ dN η eηi Aij ξj = det A. ただし Aij はグラスマン偶で、dN ξ dN η = dξ1 dη1 · · · dξN dηN です。 [証明] ξi = Aij ξj で変数変換すると、左辺 = det(∂ξ /∂ξ) が、det(∂ξ /∂ξ) = det A. また、続く積分部が、 dξ1 dη1 · · · dξN dηN eη1 ξ1 · · · eηN ξN = = となるので与題が得られます。[証明終] 15 dξ1 dη1 eη1 ξ1 · · · dξ1 δ(ξ1 ) · · · dN ξ dN η eηi ξi です dξN dηN eηN ξN dξN δ(ξN ) = 1 1.10 フェルミオンの量子力学 1 つの複素グラスマン数 Ψ = Ψ(t) を力学変数とする簡単な力学系、 S[Ψ, Ψ∗ ] = ˙ − V Ψ∗ Ψ L = iΨ∗ Ψ dt L, を考えてみましょう。ここで V は実数です。グラスマン数の積の複素共役が、 (ξη)∗ = η ∗ ξ ∗ で定義されることに注意すると、−V Ψ∗ Ψ は実の (複素共役不変な) グラスマン偶 ˙ は実ではありません。しかし、 の数ですが、iΨ∗ Ψ ˙ = iΨ∗ Ψ i ˙ −Ψ ˙ ∗ Ψ + i d Ψ∗ Ψ Ψ∗ Ψ 2 2 dt に注意すると、その時間積分は実であることがわかります。よって作用汎関数は 実のグラスマン偶の数と考えられます。 ¯ Ψ) ˙ L = iΨ∗ となることに注意する 正準共役変数は右微分により定義され、(∂/∂ と、正準反交換関係は、 {Ψ(t), Ψ∗ (t)} = 1, {Ψ(t), Ψ(t)} = 0 (∀t) で与えられます。ここで {A, B} = AB + BA は反交換子です。Ψ の正準共役とし て Ψ∗ が現れたので、Ψ∗ の正準共役についてはもはや問わないことにします。こ のような量子化は簡便量子化と呼ばれます。 ハミルトニアンは、 ˙ − L = V Ψ∗ Ψ H = iΨ∗ Ψ となるので、ベクトル |0 > を、 Ψ(t)|0 >= 0, < 0|0 >= 1 で定義すると、H|0 >= 0 ですから、|0 > は時間に依存しません (∗) 。一方、力学 変数 Ψ(t) の複素グラスマン固有値 ψ の固有ベクトルを |ψ, t > とすると、 Ψ(t)|ψ, t >= ψ|ψ, t > ですが、その解は、 |ψ, t >= (1 − ψΨ∗ (t)) |0 > と書けます。実際、このベクトルに Ψ(t) を乗じても ψ を乗じても、どちらも ψ|0 > となることがわかるでしょう。 16 固有ベクトルの内積は、 < ψ, t|ψ , t > =< 0|(1 − Ψ(t)ψ ∗ )(1 − ψ Ψ∗ (t))|0 > =< 0|0 > +ψ ∗ ψ < 0|Ψ(t)Ψ∗ (t)|0 > = 1 + ψ ∗ ψ = eψ ∗ ψ となるので、これに対応して、完全性の式は、 ∗ dψ ∗ dψ |ψ, t > eψψ < ψ, t| = 1 となります。実際このとき、 左辺 × |ψ , t >= =− ∗ dψ ∗ dψ |ψ, t > eψψ eψ ∗ ψ dψ |ψ, t > δ(ψ −ψ) = dψdψ ∗ |ψ, t > eψ =− ∗ (ψ −ψ) dψ |ψ, t > δ(ψ−ψ ) = |ψ , t > です。 そうすると、異なる時刻 tF , tI における力学変数の固有ベクトルの内積は、こ れら時刻の間の時間を N 等分し、各時刻における完全系の式を挟んで、 ∗ dψ1∗ dψ1 · · · dψN −1 dψN −1 < ψF , tF |ψI , tI > = N −1 −ψF ψF∗ ∗ eψi+1 ψi+1 < ψi+1 , ti+1 |ψi , ti > e i=0 と書けますが、ここで、 ∗ ∗ eψi+1 ψi+1 < ψi+1 , ti+1 |ψi , ti >= eψi+1 ψi+1 < ψi+1 , ti | e−i∆tH |ψi , ti > ∗ = eψi+1 ψi+1 < ψi+1 , ti | e−i∆tV Ψ ∗ ∗ ∗ (t)Ψ(t) ∗ |ψi , ti > ∗ ∗ = e−ψi+1 ψi+1 e−i∆tV ψi+1 ψi eψi+1 ψi = e−ψi+1 (ψi+1 −ψi )−i∆tV ψi+1 ψi ∗ ˙ ∗ = ei∆t( iψi+1 ψi −V ψi+1 ψi ) であり、ψ˙ i = (ψi+1 − ψi )/∆t が N → ∞ で速度変数とみなせることに注意すると、 < ψF , tF |ψI , tI >= e −ψF ψF∗ ∗ ψ(tF ) = ψF ψ(tI ) = ψI tF Dψ Dψ exp i dt L tI となります。これを用いてグリーン関数の経路積分表式は、 < 0| T Ψ(∗) (t1 ) · · · Ψ(∗) (tn )|0 > = ∗ ∗ dψ− dψ− eψ− ψ− Dψ ∗ Dψ ψ (∗) (t1 ) · · · ψ (∗) (tn ) eiS[ψ,ψ ψ(−∞)=ψ− 17 ∗ ] ∗ のように書けるでしょう。< 0|ψ, t >= 1 に注意。無限過去において eψψ の重み を付けて積分する経路積分を単に Dψ ∗ Dψ と書けば、 < 0| T Ψ(∗) (t1 ) · · · Ψ(∗) (tn )|0 >= Dψ ∗ Dψ ψ (∗) (t1 ) · · · ψ (∗) (tn ) eiS[ψ,ψ ∗ ] となります。 (*注) V > 0 のとき、|0 > は系の基底状態となり、一方、励起状態は |1 >= Ψ∗ |0 > で、そのエ ネルギー固有値は V です。エネルギーの固有ベクトルはこれだけで、よってこの量子力学系の状 態空間は 2 次元ということになります。状態空間が有限次元になるのはこのようなフェルミオンの 系に限られます。 1.11 ディラック場の経路積分 一般に複数のディラック場 ψa (x) を含む場の理論を考え、作用汎関数を、 i ¯ D ·ψ + SI [ ϕ, ψ, ψ¯ ] S[ ϕ, ψ, ψ¯ ] = ϕ·K ·ϕ + iψ·K 2 としましょう。ここで KD はディラック場の自由項演算子で、 ab KD (x, y) = −i(i/∂x −ma )δba δ 4 (x−y) です。/ ∂ = γ µ ∂µ という略記を用いています。その逆である伝播関数は、 ∆ab D (x, y) = d4 k iδba e−ik(x−y) = 4 (2π) /k − ma d4 k iδba (/k + ma ) −ik(x−y) e (2π)4 k 2 − m2a ¯ ( → +0) がある となるでしょう。ここで作用汎関数に正則化のための項 : i ψ·ψ と考えれば、それは ma → ma −i ∴ m2a → m2a −i ( = 2ma → +0) という修正 を生み、伝播関数の特異性が消えるのはボゾンの場合と同様です。すなわち、 ∆ab D (x, y) = d4 k iδba (/k + ma ) −ik(x−y) e . (2π)4 k 2 − m2a + i この場の理論を量子化し、グリーン関数の生成汎関数を、 ¯ Z[J, η¯, η] = < 0| T eJ·ϕ+¯η·ψ+ψ·η |0 > で定義します。ψa (x) のソースを η¯a (x), ψ¯a (x) のソースを ηa (x) としました。こ れらソースはグラスマン数とします。生成汎関数の経路積分表式が、 Z[J, η¯, η] = ¯ ¯ DϕDψ ∗ Dψ eiS[ϕ,ψ,ψ]+J·ϕ+¯η·ψ+ψ·η 18 ¯ DϕDψ ∗ Dψ eiS[ϕ,ψ,ψ] となることはフェルミオンの量子力学における経路積分表式から類推できるかと 思います。これに作用汎関数の式を代入し、相互作用部分を汎関数微分演算子と して前に出せば、 δ δ −δ δJ, δ η¯, δη Z[J, η¯, η] ∝ exp iSI Dϕ e−(1/2)ϕ·K·ϕ+J·ϕ ¯ ¯ Dψ ∗ Dψ e−ψ·KD ·ψ+¯η·ψ+ψ·η となりますが、ボゾン場の経路積分が ∝ e(1/2)J·∆·J となるのは前と同様で、一方、 ディラック場の経路積分は、 ¯ D ·ψ + η¯·ψ + ψ·η ¯ = −(ψ¯ − η¯∆D )·KD ·(ψ − ∆D η) + η¯·∆D ·η −ψ·K に注意して ∝ eη¯·∆D ·η となることがわかります。よって、 δ δ −δ δJ, δ η¯, δη Z[J, η¯, η] ∝ exp iSI e(1/2)J·∆·J+¯η·∆D ·η を得ますが、この式の右辺は、 exp iSI δ δ −δ δJ, δ η¯, δη = exp exp 1 δ δ δ δ ·∆· − ·∆D · 2 δϕ δϕ δψ δ ψ¯ 1 δ δ δ δ ·∆· − ·∆D · 2 δϕ δϕ δψ δ ψ¯ ¯ eJ·ϕ+¯η·ψ+ψ·η ¯ ¯ ϕ=ψ=ψ=0 ¯ eiSI [ϕ,ψ,ψ]+J·ϕ+¯η·ψ+ψ·η ¯ ϕ=ψ=ψ=0 と変形されるので、Z[0, 0, 0] = 1 に注意して、結局、 ¯ ¯ Z[J, η¯, η] = eiSI [ϕ,ψ,ψ]+J·ϕ+¯η·ψ+ψ·η ¯ 0 eiSI [ϕ,ψ,ψ] 0 という伝播関数展開表式を得ます。ここで、 ··· 0 = exp δ δ δ 1 δ ·∆· − ·∆D · 2 δϕ δϕ δψ δ ψ¯ ··· ¯ ϕ=ψ=ψ=0 です。 この伝播関数展開表式により、ディラック場 (フェルミオンの場) が含まれてい る理論においても、グリーン関数の摂動論を行うことができます。また、かなり 面倒なことになりますが、LSZ 簡約公式もディラック場が含まれている場合に拡 張することができ、散乱問題を、相互作用表示に頼らずともハイゼンベルグ表示 のまま摂動計算できることになるわけです。 19 索引 あ LSZ 簡約公式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13 か 可解系 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5 簡便量子化 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16 グラスマン奇 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14 グラスマン偶 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14 グラスマン数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14 グリーン関数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5 経路積分 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4 さ 自由項演算子 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7 真空 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6 生成汎関数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6 漸近場 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12 ソース . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6 た 伝播関数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7 伝播関数展開表式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9 は 左微分 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14 ま -i ε処方 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8 右微分 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14 20
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