キリンHDがブラジル子会社を売却

NEWS RELEASE
2017年2月14日
キリンHDがブラジル子会社を売却―引き続き収益力の動向を注視
キリンホールディングス(HD)(証券コード:2503、発行体格付=A+/ネガティブ)は 13 日、ブラジ
ルの子会社 Brasil Kirin Holdings S.A.の全株式を蘭 Heineken International B.V.の子会社 Bavaria S.A.
へ譲渡することで合意したと発表した。譲渡価格は 22 億レアル(約 770 億円)、ブラジルの経済擁護行
政委員会(CADE)の承認後、株式を譲渡する予定だ。R&I は、これまで Brasil Kirin の黒字化への道の
りは険しいと考えていた。このため、不採算事業からの撤退は一定の評価ができる。株式譲渡収入を債
務返済に充てることで、資本負債構成の改善が進む可能性も高い。ただ、格付の方向性を安定的に戻す
には、収益力・キャッシュフロー創出力のもう一段の回復が欠かせない。
2011 年に 3000 億円強で買収した Brasil Kirin は、ブラジル経済の冷え込みと現地通貨レアル安によ
るコスト増で 2015 年 12 月期にのれん等償却前営業損益が 117 億円の赤字、償却後で 185 億円の赤字と
急速に業績が悪化。同期に 1100 億円の減損損失の計上を余儀なくされた。減損損失の計上でのれんの償
却が無くなったにもかかわらず、同社の 2016 年 12 月期営業損益はブランド償却後で引き続き 90 億円の
赤字だった。中期経営計画で掲げた 2019 年の営業黒字化を 1 年前倒しで達成するため、工場売却を含め
た組織・事業の効率化など一定の成果を上げていたが、キリン HD は同社単独で高収益事業へ転換するこ
とは難しいと判断した。
同日発表した 2016 年 12 月決算は、営業利益は 2015 年 12 月期比 13.7%増の 1419 億円だった。会社
計画では、2017 年 12 月期も営業利益 1430 億円を見込む。もっとも営業利益の底堅さに比べ、EBITDA(利
子・税金支払い前、償却前利益)は減少が続いている。のれんの償却負担や会計方針の変更による減価
償却費の減少など、現金支出を伴わない費用減が営業利益を下支えしているためだ。好調な清涼飲料事
業に対し、主力のビール事業は営業増益を確保したとはいえ、販売減による限界利益の減少を原材料安
や減価償却方法の変更による費用減で補っている面もある。ビール類の販売数量が減少した点も気掛か
りだ。
キリン HD の発行体格付 A+に対する下押し圧力は、Brasil Kirin の株式譲渡で以前と比べ弱まったも
のの、収益力・キャッシュフロー創出力は方向性を安定的に戻すまでの力強さはまだない。清涼飲料事
業の好調を維持しつつ、ビール事業の収益基盤の強化で収益力・キャッシュフロー創出力を回復させる
ことが重要だ。有利子負債の削減がこのまま順調に進み、利益の蓄積による自己資本の充実で資本負債
構成の修復が着実に進展するめどがつけば、格付の方向性を安定的に戻す。引き続き収益力・キャッシ
ュフロー創出力の動向に注視していく。
主任格付アナリスト:安田
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