リサーチ TODAY 2017 年 1 月 20 日 2017年日本経済は明るい、追い風を活かせるか 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 みずほ総合研究所は昨年12月に2017年度の日本経済の見通しを上方修正した1。2016年11月の見通し では+1.0%としていたが、その後の経済対策進捗の本格化や「トランプ円安」の効果を勘案し12月には+ 1.2%まで引き上げた。ただし、この改訂から1カ月余りが経過した現時点の判断として、日本経済を巡る環 境がさらに改善しているように見える。今年は、1年前に2016年を展望した時と状況が大きく変わっている。 従って、2017年は現段階の数字以上に改善の期待がある。その要因は3点ある。第1は、海外環境の改善 による輸出の好転である。IT分野の改善が背景にある。下記の図表では台湾の電子部品・出荷在庫バラン スが大きく改善されたことが示され、その結果、輸出も大きく改善している。こうした状況は、昨年初からの 大きな転換だ。この恵まれた環境の背景には、新興国の雄である中国経済について減速不安が後退し、 逆に過熱気味とも言える改善が見られることが挙げられる。同時に、原油価格も含めた世界的な資源価格 の底入れも、大きな安心材料になっている。 ■図表:輸出先行指標の推移 (前年比、%) 20 実質輸出 台湾・電子部品・出荷在庫バランス(4カ月先行、右目盛) 米国・PMI新規受注(4カ月先行、右目盛) (前年比、%) 50 40 15 30 10 20 5 10 0 0 -10 -5 -20 -10 -30 -15 -40 -20 2012 (資料)財務省「貿易統計 13 14 15 16 -50 17 (年) 貿易指数表」、US Census Bureau、Ministry of Economic Affairs などより、 みずほ総合研究所が作成 第2は、製造業を中心にした生産面の改善である。2016年11月の鉱工業生産指数は前月比+1.5%と 上昇し、鉱工業生産の持ち直しが確認された。その結果、次ページの図表にあるように、出荷・在庫バラン スが大きく改善し、製造業が在庫調整の局面から脱していることが示された。 1 リサーチTODAY 2017 年 1 月 20 日 ■図表:出荷・在庫バランス推移 (前年比、%) 15 出荷前年比 在庫前年比・逆符号 10 出荷在庫バランス 5 0 -5 -10 -15 13/01 13/07 14/01 14/07 15/01 15/07 16/01 16/07 (年/月) (注)出荷在庫バランス=出荷前年比―財も前年比 (資料)経済産業省よりみずほ総合研究所作成 第3は、消費面の改善である。下記の図表は消費活動指数を示すが、雇用環境の改善の中で消費分野 も堅調な状況にある。今年の春闘は当初極めて厳しいとの見方が大勢であったが、昨年11月以降のトラン プ相場もあり、昨年並みの状況が期待される。以上の①輸出環境の改善、②生産面で在庫調整圧力から の転換、③個人消費の改善、さらには円安による企業業績の改善もあるため、日本経済のモーメンタムは 久しぶりに回復の流れにある。2017年の課題は、このような追い風にのってどこまでデフレマインドの払拭 が進むかであろう。 ■図表:消費活動指数(財別)推移 (2013Q1=100) 非耐久財 耐久財 サービス 実質消費活動指数(旅行収支調整済み) 120 115 110 105 100 95 90 13/6 13/12 14/6 14/12 15/6 15/12 16/6 16/12 (年/月) (資料)日本銀行「消費活動指数」より、みずほ総合研究所作成 1 「2016・17 年度内外経済見通し」(みずほ総合研究所 『内外経済見通し』 2016 年 12 月 8 日) 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2
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