円安でも原油安でゼロ近傍に物価下落の可能性も

リサーチ TODAY
2015 年 1 月 20 日
円安でも原油安でゼロ近傍に物価下落の可能性も
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
円安進行を背景に食料品価格の値上げが相次ぐ一方、原油安に伴いガソリン価格の下落が続いている。
また、電気代・ガス代への影響も今後本格化する可能性が高く、値上げ品目と値下げ品目が拮抗する状況
である。みずほ総合研究所は、円安と原油安の及ぼす影響に関するリポートを発表している1。さらに、一段
の原油価格下落が続き、デフレマインドの転換が遅延すれば、コアCPIの前年比マイナスも生じうる。
下記の図表は、みずほ総合研究所のマクロモデル乗数を用いて、約15%の円安と約40%の原油安がコ
アCPIの前年比に及ぼす影響を試算したものである。これらの変化率は、2014年夏場までの水準(1月~7
月平均)と、足元(12月平均)の変化率をとったものである。
■図表:足元の円安と原油安がコアCPIに与える影響
(前年比、%ポイント)
0.8
円安要因
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
原油安要因
-0.8
1
2
3
4
5
6
7
8
(四半期目)
(注)15%円安と 40%原油安による影響。
円安要因と原油安要因はみずほ総合研究所マクロモデル乗数による試算。
(資料)みずほ総合研究所作成
この試算の結果からは、1年目(4四半期後まで)は原油安による押し下げ効果が勝り、▲0.1%ポイント
弱の物価押し下げ効果となる一方、2年目(5四半期目以降)は、円安・原油安の効果はともにほぼ一巡す
るが、円安による押し上げ効果がわずかに残ることが分かる。
先の試算で、為替は119円程度と今日の水準に近いが、原油は約61ドルを想定しており、足元の46ドル
の水準(1月16日)とは乖離がある。そのため、次に原油価格が一段と下に振れた場合のコアCPIをシナリオ
1
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別にシミュレーションすることにする。ここでは、みずほ総合研究所の2015年1月時点の見通しをベースライ
ンにし、そこから原油価格が40ドル(ベースライン比約▲34%ポイント)まで下落した場合のコアCPI上昇率
を試算した。ベースラインシナリオでは、今年4月以降に0.2%までコアCPIの前年比上昇幅が縮小する。一
方、原油価格が40ドルまで低下した場合、コアCPIは同0%近くまで縮小し、そのボトム時期が7~9月期ま
で伸びることになる。
■図表:コアCPIのシミュレーション結果
(前年比%)
ベースライン
1.6
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
ドバイ原油40ドルで一定
(予測)
2013
14
15
16
(年/四半期)
(注)ベースラインは当社予測値(2015 年 1 月 13 日時点)。シミュレーションはドバイ原油の価格が 2015 年 1~3 月期
に 40 ドル下落した後、2016 年 1~3 月期まで変わらないという前提。原油価格下落によるコア CPI への影響はみ
ずほ総合研究所マクロモデル乗数による。
(資料)みずほ総合研究所作成
日銀が追加緩和を決定した2014年10月31日の金融政策決定会合の声明文で示したように、原油安の
影響は「やや長い目で見れば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する」が、短期的
には物価にマイナスに寄与する。さらに、問題は同じ声明文に示された「デフレマインドの転換が遅延する
リスク」にあり、日銀が実際に昨年追加緩和を行った際に最も重視したのはこの要因であった。それだけに、
2015年前半において原油価格の下落がもたらす物価下落がデフレマインドを生じさせると日銀が懸念する
場合には、更なる追加緩和措置をとることも日銀は視野にいれると展望される。欧州においてスイス中央銀
行はマイナス金利を拡大する金融緩和に踏みだし、欧州中央銀行も一段の緩和に向かうと展望される。年
前半の企業の賃金設定や経営計画が大きなインフレ率に影響を及ぼすだけに、これから年前半における
物価を巡る環境とそれに対処した日銀の対応には注目が必要だ。
1
「円安と原油安の消費者物価への影響」(みずほ総合研究所 『みずほインサイト』 2015 年 1 月 7 日)
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