Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
・嫌われはじめた金利上昇
・そろそろ「つぶやき介入」
2016年12月15日(木)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【欧米経済指標他】
・12月FOMCでは予想どおり25bpの利上げが決定され、新たなFFレート上限は0.75%に設定された。全
会一致の決定だった。詳細は後述。
・11月米小売売上高は前月比+0.1%と市場予想(+0.3%)を下回ったうえ、10月分も0.6%へと0.2%pt下
方修正された。ガソリン(+0.3%)が3ヶ月連続で増加した一方、自動車(▲0.5%)が6ヶ月ぶりに減
少。それらを除いたベースでは+0.2%と4ヶ月連続で増加した。最重要項目のコア小売売上高は前月比+
0.1%と緩慢な伸びに留まり、市場予想(+0.3%)を下回った。百貨店(▲0.2%)、スポーツ用品(▲
1.0%)など裁量的支出項目の一部に弱さがみられ、やや物足りない印象。もっとも、3ヶ月前比年率で計
測したモメンタムが+3.0%と加速基調にあることに加え、足元で消費者マインドが著しい改善基調にある
ことを踏まえれば、消費が減速していく姿は描きにくい。
・11月米鉱工業生産は前月比▲0.4%と市場予想(▲0.3%)を下回った。鉱業(+1.1%)が堅調に推移した
反面、公益(▲4.4%)が3ヶ月連続で大幅な減産となり全体を下押し。製造業も▲0.1%と小幅ながら減
産となり、鉱工業生産は直近12ヶ月で7回目の減産。設備稼働率は75.0%、製造業に限定したそれは
74.8%とそれぞれ低下傾向にある。
(3ヶ月前比年率、%)
12
コア小売売上高
115
10
米鉱工業生産
鉱工業
110
8
105
6
4
100
2
95
製造業
0
90
-2
85
-4
10
11
12
13
14
15
05 06 07 08 09 10 11
(備考)Thomson Reutersにより作成
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(備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均
12
13
14
15
16
17
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株はNYダウが8日ぶりに反落。米金利上昇・USD高が逆風となり、幅広い銘柄に売りが波及。
WTI原油は51.04㌦(▲1.94㌦)で引け。
・前日のG10 通貨はUSDがあらゆる通貨に対して大幅高。ドットチャートの利上げパス上方修正が材料視さ
れUSDに買いが集中。最も下落率の小さいGBPですら0.74%と大きめの下落率となり、最弱のNOKは1.76%、
JPYは1.58%の下落を記録。USD/JPYは117半ばへと上伸し、EUR/USDは1.05割れとなった。新興国通貨も急
落、JPMエマージング通貨インデックスは原油減産合意後の上昇の過半を失った。ドルインデックスは14年
ぶりの高水準となった。
・前日の米10年金利は2.571%(+9.9bp)で引け。ドットチャートの利上げパス上方修正が材料視され、5
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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年ゾーン中心に金利上昇。欧州債市場(10年)は総じて堅調。ドイツ(0.301%、▲5.9bp)、イタリア
(1.795%、▲7.9bp)、スペイン(1.402%、▲2.9bp)が揃って金利低下。他方、ポルトガル(3.775%、
+1.5bp)は僅かに金利上昇。周縁3ヶ国加重平均の対独スプレッドはワイドニング。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は、USD/JPY上昇が好感され米株安の流れを断ち切り、大幅高で寄り付いた(9:30)。
<#ドットチャート #米銀行株下落
#つぶやき介入>
・12月FOMCではGDP成長率、インフレ率、失業率の見通しが微修正に留まったにも拘らず、ドットチ
ャート上では2017年の利上げ計画が上方修正された。筆者が当レポートで指摘してきたようにドットチャ
ートの中央値で示される利上げパスは、メンバーの数人が予想を僅かに変更しただけで簡単に動いてしま
うため、必ずしも中枢部のコンセンサスに忠実とは限らないが、それでも市場参加者の想定よりFEDが
タカ派傾斜していることを印象付けるものであった。市場はUSD全面高・米金利上昇・米株安で反応。
・本邦金融市場への影響を考えてみたい。FEDのメッセージに対する初期反応でUSD/JPYは117半ばへと上
伸し、日米金利差拡大に沿う形となった。しかしながら、JPYが「経常黒字+マイナス金利」という逃避通
貨の条件を満たしていることを踏まえると、14日米国市場のような「米金利上昇・米株下落」はUSD/JPYの
上昇持続に疑問を投げかける。大統領選直後の「米金利上昇・米株高」という構図であれば素直にUSD/JPY
上昇に追随すべきだろうが、足もとの米金利上昇はもはや米株下落要因になりつつあるため、ここからの
米金利上昇はリスクオフを通じたUSD/JPY下落に繋がり易いと考えられる。実際、12月2日付の当レポート
で指摘したような相場反転のシグナルが点灯しつつある点は要注意。筆者は相場反転の先行指標として米
銀行株の動向に注目してきたが、昨日の米国株市場では、金利上昇が銀行株高に結び付かなかった。市場
参加者が銀行収益改善よりも米国経済の引き締め効果やイールドスプレッド縮小(配当利回り-長期金利)
を強く意識し始めている可能性がある。市場参加者が米金利上昇を嫌い始めたと換言でき、そうした下で
はリスクオフのUSD/JPY下落が予想される。日本株にも逆風となるだろう。
・また、ドルインデックスが14年ぶりの高水準に到達したことも注目。そうしたUSD高を象徴する類の情報は
トランプ次期大統領の懸念事項である可能性が高く、同氏の「つぶやき介入」を招く可能性が高まる。そ
れがFEDに対する批判になるのか、ECBや日銀が過度な通貨安政策を採用しているという批判になる
のかは分からないにせよ、SNSを通じた為替市場への牽制球には注意が必要だろう。
2016年12月FOMC
5
4.5
中央値
4
中央値
中央値
3.5
3
2.5
中央値
2
1.5
1
0.5
0
2017
2018
2019
Longer
Run
(備考)FRBより筆者作成
Longer run以外は全ての数値に0.125を足すことで上限となるよう調整した。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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