*グローバル投資環境 米国FOMC速報~ No.1524 * ご参考資料 髙木証券投資情報部 1年ぶりの利上げを実施。来年の利上げ回数の見 通しも9月時点の「2回」から「3回」に引き上げ 2016年12月15日作成 米国で12月13日から14日にかけて開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利 であるFFレートの誘導目標を0.25~0.50%から0.50~0.75%に引き上げることが全会一致で 決定された。利上げは、昨年12月15日から16日開催のFOMCにおいてFFレートの誘導目標を 0~0.25%から0.25~0.50%へ引き上げて、2008年12月から続いていた実質ゼロ金利を解除 して以来、8会合ぶりである。 【新旧声明文比較】(抜粋) 景気全般の現状に関する声明 文の表現は、11月1~2日に開か れた前回FOMC声明文の「経済活 動は今年の上期にみられた控え めなペースから上向いた」から 「年央以降の経済活動は緩やか なペースで拡大を続けた」へ引 き上げられたほか、インフレに ついても、前回FOMC声明文にお ける「今年の早い時期以降いく らか上昇した(increased somewhat) 」という、表現か ら「いくらか(somewhat)」が 削除された。 景気の現状認識 労働市場 物価 11/1~2 12/13~14 9月の会合以降に入手した情報は、経済活 11月の会合以降に入手した情報は、年央以 動は今年の上期にみられた控えめなペース 降の経済活動が緩やかなペースで拡大を続 から上向いたことを示している けたことを示している 労働市場は引き続き強まった。ここ2~3ヶ月 労働市場は引き続き強まった。雇用の伸び の失業率はほとんど変わらなかったが、雇用 は堅調であり失業率は低下した。 の伸びは堅調だった。 インフレは今年の早い時期以降いくらか上昇 インフレは今年の早い時期以降上昇したが、 したが、以前のエネルギー価格の下落と非エ 以前のエネルギー価格の下落と非エネル ネルギーの輸入価格の値下がりを一部反映 ギーの輸入価格の値下がりを一部反映して して我々の長期目標を引き続き下回って推 我々の長期目標を引き続き下回って推移し 移した。市場ベースのインフレ指標は上向い た。市場ベースのインフレ指標は相当程度 たが引き続き低く、ほとんどの調査に基づく 上向いたが引き続き低く、ほとんどの調査に 長期の期待インフレは結局のところここ数ヶ 基づく長期の期待インフレは結局のところこ 月余り変わっていない。 こ数ヶ月余り変わっていない。 金融政策スタンスの緩やかな調整により、経 金融政策スタンスの緩やかな調整により、経 済活動は緩やかなペースで拡大するととも 済活動は緩やかなペースで拡大するととも に、労働市場関連の指標はいくらか強まるこ に、労働市場関連の指標はいくらか強まるこ とを見込んでいる。過去のエネルギー価格及 とを見込んでいる。過去のエネルギー価格及 び輸入価格下落の一時的効果の消失と労働 び輸入価格下落の一時的効果の消失と労働 景気と物価の先行き 市場のさらなる改善により、インフレは中期 市場のさらなる改善により、インフレは中期 的に2%に向けて上昇するだろう。経済見通 的に2%に向けて上昇するだろう。経済見通 しに対する短期的なリスクは概ねバランスし しに対する短期的なリスクは概ねバランスし た。我々は引き続きインフレの動向とグロー た。我々は引き続きインフレの動向とグロー バル経済と金融の変化を注視する。 バル経済と金融の変化を注視する。 声明文はその上で、「労働市 場情勢及びインフレの実績と予 想の観点から、我々はFF金利の 目標レンジを0.50~0.75%に引 き上げることを決定した」と述 べており、前回FOMCの声明文で は、利上げの論拠は強まったこ とを明記するとともに、待って これらを背景に、FF金利の目標レンジを0.25 いるとしていた「さらにいくつ ~0.50%で維持することを決定した。FF金利 労働市場情勢及びインフレの実績及び予想 かの証拠」が得られたことで、 決定した政策等 引き上げの論拠は引き続き強まったと判断し の観点から、我々はFF金利の目標レンジを ているが、当面は目標に向けて進展を続け 0.50~0.75%に引き上げることを決定した。 利上げに踏み切ったことが示さ ているさらにいくつかの証拠を待つことにした れているといえそうだ。 ところで、米国の10年国債利回りは、後述するような、 FRBによる早期の利上げ再開に対する懐疑的な見方を背景 に一貫して極めて低い水準で推移するとともに、為替市 場では米ドルの低迷が続いてきたが、11月8日の大統領選 挙で勝利したトランプ氏の政策が財政拡張的なものにな るとの見方を背景に、債券利回りが急上昇するとともに、 米ドル買いの流れが強まった。つまり、そのきっかけは 金融政策に対する思惑ではなかったものの、今回のFOMC における金融政策正常化の再開が市場にほぼ織り込まれ たと見られる状況で、実際に利上げが行われた場合、米 国債券市場と為替市場の先行きを考える上では、今後利 上げペースが重要だと髙木証券では考えていた。 1/2 最終頁の「ご注意いただきたいこと」を必ずお読み下さい。 髙木証券投資情報部 ご参考資料 そうした観点で声明文をみると、金融政策の先行きを読 《フォワードガイダンス》 FF金利のさらなる調整のタイミングと規模の決定においては、 み解く鍵となる「フォワードガイダンス」は、「経済情勢 雇用の最大化と2%のインフレ目標に関連する経済情勢を、 現実と予想の双方について再評価する。評価に際しては、労 が極めて緩やかな(only gradual)FF金利の引き上げに 働環境に関する指標やインフレ圧力とインフレ期待、金融情 限って正当化される形で改善され、FF金利はしばらくの間、 勢と国際情勢の変化を含む幅広い情報に注意を払う。現在の 長期的に有効とされる水準を下回って推移するだろう。し インフレが2%の目標を満たしていない観点から、我々は、現 かしながら、FF金利の実際の道筋は今後のデータによる経 実と期待のインフレ目標に向けた進展を注意深くモニターす る。経済情勢が極めて緩やかなFF金利の引き上げに限って 済見通しに依存する」というその根幹部分を含めて従来ま 正当化される形で改善され、FF金利はしばらくの間、長期的 に有効とされる水準を下回って推移するだろう。しかしながら、 でと変らない。 FF金利の実際の道筋は今後のデータによる経済見通しに依 一方、今後の利上げの道筋を占うもう一つのヒントであ 存する。 る「ドットチャート」は、9月のFOMC時点では年内1回の利 FOMC参加者の金利見通し(9/21発表) 上げ及び、2017年末のFF金利見通しの「中央値」である 「1.125%」は来年25ベーシス×2回の利上げを示唆してい 2017年末 たが、今回の声明文と同時に示された「ドットチャート」 「中央値」 では、2017年末の金利見通しの「中央値」が来年に25ベー 2016年末 1.125% 「中央値」 シス×3回の利上げがFOMC参加者のメインシナリオである 0.625% ことを示す「1.375%」に引き上げられた。今回FOMCの声 明文や「ドットチャート」とともに公表された「経済見通 し」における、2017年の成長率とインフレの予想が、今年 の予想を上回っていることを考えれば、来年の利上げ回数 の見込みが、今年の「1回」を上回っていることは当然だ といえるが、髙木証券では「年2回」の利上げ見通しが維 FOMC参加者の金利見通し(12/14発表) 持されると考えていたため、「年3回」の利上げ見通しは サプライズであり、基調としての米国債券利回りの上昇と、 2017年末 それに伴う米ドル高の継続を担保するものだといえよう。 「中央値」 1375% ところで、昨年12月のFOMCで初回の利上げが実施された 際の「ドットチャート」が示した2016年末のFF金利見通し の中央値は「1.375%」であり、年内25ベーシス×4回の利 上げを示唆していたが、市場は当初からそれを信じておら ず、実際にも3月のFOMCで「中央値」は早くも年内2回の利 上げを意味する「0.875%」に下方修正された。さらに、 一度も利上げが行われないまま、9月のFOMC時に 《FOMCメンバーの米経済見通し》 「0.625%」に引き下げられた「中央値」が示唆した「1 予想中央値 回」の利上げが、今回のFOMCで辛うじて実行されたわけだ 2016 2017 2018 2019 長期 が、利上げの回数や時期に対する市場の期待が先行して後 今回予想 1.9 2.1 2.0 1.9 1.8 退し、FOMCの決定がこれを後追いするというこれまでの流 GDP 9月予想 1.8 2.0 2.0 1.8 1.8 れに終止符が打たれた意義は大きいと思われる。しかし、 今回予想 4.7 4.5 4.5 4.5 4.6 失業率 9月予想 4.8 4.6 4.5 4.6 4.8 「ドットチャート」が示すのはあくまでも利上げの「予 今回予想 1.5 1.9 2.0 2.0 2.0 定」であって、「FF金利の実際の道筋は今度のデータ次 PCEインフレ 9月予想 1.3 1.9 2.0 2.0 2.0 第」であることは、声明文にも記されているほか、今年が 今回予想 1.7 1.8 2.0 2.0 そうであったことはいうまでもなく、今後の市場の関心は、Core CPE 9月予想 1.7 1.8 2.0 2.0 「年3回」の利上げの実現可能性と、その第一歩となる次 (文責:勇崎 聡) の利上げがいつ行われるのかに移っていこう。 (出所:FRB、Bloombergのデータより髙木証券作成) 2/2 《ご注意いただきたいこと》当資料は投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資の最終決定はご自身でなさるようお願い いたします。当資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、その正確性・完全性を保証するものではありませ ん。株式、債券、投資信託等は、価格の変動や発行者の信用状況の悪化等により投資元本を割り込むおそれがあります。また、当資料の いかなる部分も一切の権利は髙木証券に帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転 送等を行わないようお願いいたします。 当社で取り扱う商品等へのご投資には、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、お客様向け資料等をよく お読みください。 商号等:髙木証券株式会社 金融商品取引業者 近畿財務局長(金商)第20号 【広告審査済】 加入協会:日本証券業協会 髙木証券インターネットホームページ:http://www.takagi-sec.co.jp/
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