Market Flash 4回シナリオの復活劇も 2017年3月9日(木) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【海外経済指標他】 ・2月ADP雇用統計によると民間雇用者数は+29.8万人と目覚しい増加を記録。市場予想(18.7万人)を 遥かに上回ったうえ、1月分も上方修正(+24.6万人→+26.1万人)されるという完璧な仕上がり。暖冬 の影響が押し上げに寄与した可能性が濃厚だが、それを割り引いたとしても強い数字であることに変わり はない。この指標は速報段階において必ずしもBLS雇用統計の優れた先行指標とはいえないが、最近の 新規失業保険の著しい減少と併せて考えると、労働市場の量的回復はここへ来て再加速している可能性が 濃厚。 (千人) 350 ADP・ BLS雇用統計 300 (前年比、%) 雇用者数・新規失業保険申請件数 6 4 ADP BLS 250 2 200 0 150 -2 100 -4 (前年比、%) -50 失業保険(右) -30 -10 NFP 10 30 50 11 12 13 14 15 (備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均 50 70 -6 16 80 85 90 95 00 05 10 (備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均の前年比 17 90 15 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場他】 ・前日の米国株は続落。ADP雇用統計を受けて米景気回復期待が高まった反面、原油価格下落、米金利上 昇が重荷となり、利益確定売り優勢。個別では建機大手の不正会計報道が嫌気された。WTI原油は50.28 ㌦(▲2.86㌦)で引け。原油在庫の急増が需給懸念を誘発。 ・前日のG10 通貨はUSDが全面高。ADP雇用統計を受けて米金上昇とUSD買いの展開。USD/JPYは114後半まで 上伸、EUR/USDは1.05前半へと水準を切り下げた。新興国通貨も軟調だった。 ・前日の米10年金利は2.560%(+4.2bp)で引け。3月FOMCにおける追加利上げが意識されるなか、ADP雇用 統計を受けて金利上昇。欧州債市場(10年)は米債市場に追随してドイツ(0.370%、+5.1bp)、フラン ス(1.022%、+5.9bp)、イタリア(2.254%、+6.2bp)、スペイン(1.811%、+7.3bp)が金利上昇。 【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】 ・日本株は米国株上昇に追随して小高く寄り付いた後、USD/JPYを横目に上げ幅縮小(11:00)。 ・1月毎月勤労統計によると現金給与総額は前年比+0.5%と市場予想(+0.4%)を上回った。最重要項目 の所定内給与が+0.8%と大幅に加速したほか、所定外給与(≒残業代)が+0.2%と増加に転じ、特別給 与(≒ボーナス)の減少(▲3.7%)を補った。なお、所定内給与の上昇加速を牽引したのはパートの時間 当たり賃金上昇で、その上昇率は+2.5%に達している。人手不足を主背景とした賃金上昇圧力が生じてい る様子が見て取れる。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 ・昨日発表された中国の2月貿易統計によるとUSD建て輸出金額は前年比▲1.3%と市場予想(14.0%)を大 幅に下回った一方、輸入金額は+38.1%と市場予想(+20.0%)を大幅に上回った。この結果、貿易収支 は91.5億㌦の赤字を記録。春節に絡んだ経済活動の大幅な変動によって統計が撹乱されており、基調が把 握しにくいが、PMIを重視する限りにおいて輸出は堅調に推移していると判断される。3月データを入 手するまで基調判断は控えたいが、昨年来の回復基調が急変している訳ではないだろう。 (前年比、%) 50 財新PMI・輸出 (PMI) 中国 貿易総額 (前年比、%) 60 60 PMI新規輸出受注 40 40 55 30 20 20 50 10 0 0 45 -10 -20 -20 輸出(右) -30 11 13 (備考)Thomson Reutersにより作成 15 40 17 -40 05 07 09 11 (備考)Thomson Reutersにより作成 13 15 17 ・昨日発表された2月景気ウォッチャー調査によると現況判断DI(季節調整済)は48.6と市場予想(50.0) を下回り、1月から1.2pt軟化。他方、より重要な先行き判断DIは50.6へと1.2pt改善して市場予想 (50.5)を上回った。先行き判断DIは、類似指標の消費者態度指数の改善と概ね整合的で、消費に身近 な業態での景況感改善が窺える。コメントでは、日米首脳会談を無事に通過したことを安堵したものが散 見された。 景気ウォッチャー調査 60 55 先行き 50 45 現状 40 35 30 10 12 14 (備考)Thomson Reutersにより作成 季節調整値 <#思いのほか簡単に上方シフト 16 #3・6・9・12月4回シナリオ > ・筆者は7日付け当レポートで年3回の利上げを前提に3、7、9月FOMCという利上げシナリオを示したが、 3月FOMCで有り得るサプライズとして年4回の利上げ計画が復活する可能性を検討しておきたい。現時点で その可能性を20%未満と低めに見積もっているが、最近のFED高官の強気発言を素直に受け止めると、3回の 利上げ計画に対するリスクは上方に偏っているように思える。 ・2月27日から3月3日にかけて開催されたFEDの利上げキャンペーンを受けて、金利先物が織り込む利上げ確 率が急上昇。今や3月FOMCの利上げがほぼ完全に織り込まれ、17年の利上げ回数は2.7回程度まで高まって いる。そうした引き締め的な状況を織り込んでいるにもかかわらず、金融市場では株価が大きく崩れず、新興国、 コモディティ市場も平静を保っていることからすれば、利上げへの耐性は相当増していると判断される。FOM Cメンバーがこうした状況をみて、自らの利上げパスを引き上げる可能性は排除すべきではないだろう。 ・そしてマクロファンダメンタルズの改善を裏付ける指標が相次いでいることも大きい。直近発表されたISM製 造業、物価指標(PCE、CPI)、新規失業保険申請件数、ADP雇用統計は何れも複数回かつ断続的な利上 げを正当化する領域に達している。10日発表のBLS雇用統計で平均時給の回復が明確になれば、数人のメンバ 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2 ーが利上げ見通しを上方修正しても不思議ではない。その場合、ドットチャートで示される2017年末のFFレー ト中央値は思いのほか簡単に上方シフトすることになる。 市場が織り込む2017年の利上げ (%) (回) 1.4 2016年12月FOMC (%) 5 3.0 FF先物18年1月限 4.5 1.2 中央値 4 2.5 3.5 1.0 中央値 中央値 3 0.8 2.0 2.5 17年の利上げ回数(右) 1.5 1.5 0.4 0.2 16/06 中央値 2 0.6 1 0.5 1.0 16/08 16/10 16/12 17/02 0 2017 (備考)Bloomberg 2018 2019 Longer Run (備考)FRBより筆者作成 Longer run以外は全ての数値に0.125を足すことで誘導目標の上限となるよう調整 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 3
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