Market Flash 「予告」に注意 記者会見なしFOMCで利上げしたい? 2017年2月20日(月) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【海外経済指標他】 ・1月米CB景気先行指数は+0.6%と5ヶ月連続の改善。6ヶ月前比年率では+2.3%へと伸びを高め、16 年3Qをボトムに改善を続けている。 ・1月英小売売上高(除くガソリン)は前月比▲0.2%と市場予想(+0.7%)に反して減少。前年比でも+ 2.6%へと12月から2.1%pt減速した。輸入物価上昇に起因する食料品価格上昇が重荷となり、非食料品が 弱かった。もっとも過去2ヶ月の実績は不可解なほど弱い。統計ノイズの可能性は排除できない。 (%) 15 CB景気先行指数(6ヶ月前比年率) 12 10 英 小売売上高 (3ヶ月前比年率、%) 8 5 0 4 -5 0 -10 -15 -4 -20 -8 -25 -30 05 07 09 11 (備考)Thomson Reutersにより作成 13 15 -12 17 10 12 14 16 (備考)Thomson Reutersにより作成 細線:除くガソリン 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】 ・前日の米国株は横ばい。NYダウは小幅ながら7日続伸となったが、上昇率は0.02%に留まった。新規の 材料に乏しいなか、好調な企業業績を後ろ盾に買いが入る一方、高値警戒感もあって上値追いは慎重。欧 州株はまちまち。WTI原油は53.40㌦(+0.04㌦)で引け。ベーカー・ヒューズ公表の稼動リグ数が前週 に比べて10基増加。用途別では、ガスが153へと4基増加し、石油が597へと6基増加した。後者は2015年 10月以来の水準に到達。原油需給の緩みが意識された。もっとも米国の3連休を控えて様子見姿勢が強く、 売りの勢いは限られた。 ・前日のG10 通貨はJPYが最強でそれにUSDが続いた一方、その他通貨が軒並み軟調。欧米株の上昇が一服す るなどリスク選好度が幾分低下するなかでJPYが買い戻され、USD/JPYは113を割れて越週。他方、EUR/USD は16日に上昇した反動もあり17日は下落に転じ1.06前半で越週。 ・前日の米10年金利は2.415%(▲3.2bp)で引け。株式市場の上昇が一服するなか、米債市場は買い戻し優 勢。欧州債市場(10年)はコア堅調、周縁国軟調。米債ラリーに追随する格好でドイツ(0.302%、▲ 4.7bp)が金利低下となった反面、フランス(1.038%、+2.2bp)、イタリア(2.190%、+3.4bp)、スペ イン(1.636%、+3.3bp)が金利上昇。周縁国の対独スプレッドはワイドニング。 【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】 ・日本株はUSD/JPY下落が重荷となり小幅安で寄り付いた後、下落幅縮小(10:00)。 ・1月貿易統計によると輸出金額は前年比+1.3%、輸入金額は+8.5%、貿易収支は1.087兆円の赤字。季節 調整値では輸出金額が前月比+0.7%、輸入金額が+3.7%、貿易収支は1555億円の黒字であった。原数値 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 の貿易赤字は中華圏の春節等の影響を受けた季節的なものであり基調変化を示すものではない。年間の中 でも特に1-3月期は季節調整値に着目する必要がある。輸出を為替・物価変動を取り除いた実質輸出(当 社作成)でみると前月比+0.6%と2ヶ月ぶりに増加し、水準は震災前を凌駕した。3ヶ月前比年率では+ 5.8%と好調なモメンタムが示されている。 千 (兆円) 2 貿易収支 実質輸出 (2010=100) 110 1.5 1 100 0.5 0 90 -0.5 80 -1 -1.5 70 -2 60 -2.5 05 07 09 11 13 15 (備考)貿易統計により当社作成 太線3ヶ月平均 95 00 05 10 15 (備考)Thomson Reutersにより作成 季節調整値(SA) <#3月FOMC #5月の予告 17 #会見なしでも動く前例つくりたい> ・3月FOMC(3/15)まで残り4週間を切った。2月雇用統計発表前の現時点では、追加利上げ見送りがコン センサス。市場関係者の注目は次回の追加利上げ時期に集中している。市場関係者の(恐らく多く)は6月FO MCと12月FOMCの2回を想定しているが、次回の追加利上げが5月FOMCとなる可能性も否定できず、そ の点において3月FOMCは非常に重要なイベントである。筆者個人の予想は「追加利上げ見送り+次回利上げ の明確な示唆」であるが、その“次回”が5月となるか6月となるかは悩ましい。2月雇用統計で平均時給が回 復すれば、5月の追加利上げをメインシナリオに考えたい。 ・2月17日時点で金利先物が織り込む3月FOMCの利上げ確率は34.0%、5月FOMCのそれは55.9%、6月F OMCのそれは74.8%。織り込み度合いから判断すると、サプライズを嫌うFEDが3月FOMCで追加利上げ を断行するとは考えにくいが、一方で6月の追加利上げに関しては十分過ぎるほど織り込みが進んでおり、逆に “動かない”ことが市場とのコミュニケーションを難しくさせる可能性すらある。ここで悩ましいのは5月シナ リオ。現時点で既にまずまずの織り込みが進んでいるので、FEDとしてはこの好機を利用して追加利上げをし たいところだろう。しかしながら、5月FOMCは記者会見が予定されていないことがネックとなる。 ・そこで浮かび上がるのが3月FOMCにおいて5月FOMCの追加利上げを明確に示唆することで追加利上げを 既成事実化させるシナリオ。これであれば記者会見なしの会合でも政策変更が実施できる。3月FOMC(3 /15)から5月FOMC(5/3)までには1ヶ月半の時間的余裕があるので、市場にショックを与えないという 意味においても最適な戦略と言えるだろう。また、記者会見なしの会合で政策変更をするという前例をつくるこ とも重要な意味を持つ。FEDがこうした戦略を採用してくる可能性に注意したい。 (%) FOMC毎の利上げ織り込み度合い 2016年12月FOMC (%) 5 100 4.5 80 中央値 4 60 中央値 中央値 3.5 3 2.5 40 中央値 2 1.5 20 1 0.5 0 3 5 6 7 (備考)Bloombergにより作成(WIRP) 9 11 0 12 (月) 2017 2018 2019 Longer Run (備考)FRBより筆者作成 Longer run以外は全ての数値に0.125を足すことで上限となるよう調整した。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2
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