これは何を意味しているのだろうか? 2018年末でも 2.375

Market Flash
これは何を意味しているのだろうか?
2018年末でも 2.375%
2016年6月16日(木)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・FOMCでは予想どおり、政策金利の据え置きが決定された(詳細は後述)。
・5月米鉱工業生産は前月比▲0.4%と市場予想(▲0.2%)を下回ったうえ、4月分も下方修正された(+
0.7%→+0.6%)。鉱業が+0.2%の増産を確保した反面、公益が▲1.0%と弱く、製造業生産も▲0.4%の
減産。製造業の減産は直近12ヵ月で8回目と基調的な弱さが続いており、最近は自動車生産にも翳りがみ
られている(5月は▲4.2%)。なお、今回の結果はPMIの悪化傾向と整合的。
・6月NY連銀製造業景況指数は+6.01と5月(▲9.02)の落ち込みから反発。ISM換算では50.3と2ヶ
月ぶりに50を回復。内訳は、出荷(▲1.94→+9.32)、新規受注(▲5.54→+10.9)が改善した一方、雇
用(+2.08→±0.0)が軟化、出荷遅延(▲6.25→▲2.04)が押し上げに寄与、在庫(▲7.29→▲15.31)
は下押しに寄与。一先ず、連銀サーベイ第一弾は順調な滑り出しとなった。
10
(%)
米製造業生産・PMI
40
70
PMI(右)
70
30
65
5
NY連銀指数
ISM(右)
20
60
60
10
0
55
50
-10
0
50
45
-40
40
10
11
12
13
14
15
(備考)Thomson Reutersにより作成 生産は3ヶ月前比年率
ISM換算(右) 40
-30
製造業生産
-5
NY連銀指数
-20
30
07
08
09
10
11
12
13
(備考)Thomson Reutersにより作成
16
14
15
16
・4月英雇用統計によると失業率(ILO基準、3ヶ月)は5.0%となり、今次サイクルの最低を更新。就業
者数は5.6万人の増加に留まったが、やや長い目でみれば安定的な回復経路を辿っている。注目の平均賃金
は除く賞与ベースで前年比+2.3%へと加速(単月では+2.5%)。CPIで確認されているサービス物価
の上昇加速をサポートする結果だ。
9 (%)
英 雇用統計
(千人)
200
8
7
失業率
失業保険基準
4
3
2
8
150
6
100
4
50
2
0
0
英
週平均賃金
ILO基準
6
5
(%)
失業保険受給件数(前月差、右)
05 06 07 08 09 10 11 12
(備考)Thomson Reutersにより作成
13
14
15
-50
-2
-100
-4
16
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(備考)Thomson Reutersにより作成 太線:除く賞与
16
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は小幅ながら5日続落。FOMC通過後に上下したものの、大きな動きは観察されず。WTI原
油も5日続落となり48.01㌦(▲0.48㌦)で引け。
・前日のG10 通貨はUSDがやや弱めの動き。FOMC後に一時USD売りが広がったが、総じてみれば小動きで方向
感はなかった。USD/JPYは106を挟み一進一退、EUR/USDは1.12前半から後半へ水準を切り上げた。
・前日の米10年金利は1.572%(▲4.1bp)で引け。FOMC前から堅調に推移していた米債市場はドット・チャ
ートの下方シフトを受けて一段とラリー。他方、欧州債はまちまち。ドイツ10年金利が▲0.010%(▲
0.6bp)で引けて連日のマイナス圏推移。イタリア(1.498%、▲0.9bp)、スペイン(1.561%、▲0.2bp)
は横ばいでポルトガル(3.350%、▲3.8bp)は金利低下。3ヶ国加重平均の対独スプレッドは横ばい。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は、USD/JPY下落が嫌気されるなか、米株安に追随して安寄り。
・6月FOMCでは予想どおりFFレート上限が+0.5%で据え置かれた。声明文は「労働市場の改善ペース
が鈍った」(the pase of improvement in the labor market has slowed)として5月雇用統計の弱さが
反映された一方、「経済活動の拡大は加速しているように見える」(growth in economic activity
appears to have picked up)として、消費や住宅市場の強さを評価。一方、インフレ率見通しについては
「将来のインフレを示す市場ベースの指標は低下」(declined)としてBEIの低下基調に言及。最重要
項目の利上げパスについては「経済状況はFF金利の緩やかな引き上げしか正当化しない形で進むと予測
する」として利上げ方向にバイアスをかけた文言を挿入したのみで、具体的な時期の言及はなかった。ま
た「FF金利は当面、長期的に到達すると見込まれる水準を下回るレベルで推移する可能性がある」とし
て、利上げペースが緩やかになることを再強調。
・もう一つの注目点であったドット・チャートは、2016年末の中央値こそ0.875%(年内2回の利上げを予想)
で変わらなかったが、0.625%(1回の利上げ)に6票が投じられ、3月時点の1票から増加。5月雇用統
計のネガティブサプライズを受けて、見通しを変更した参加者が複数名いたのだろう。ここにFED中枢
でハト派のイエレン議長、ダドリーNY連銀総裁のどちらかが含まれている可能性が濃厚。
・今回のドット・チャートで注目すべきは、2017年以降の下方シフト。17年末の中央値は1.625%へと0.25%
下方シフト、18年末に至っては2.375%へと0.625%も下方シフトし、longer runも3.0%へと2回連続で引
き下げられた。現時点のドット中央値から予測される利上げパスは18年末までの約2年半で僅か(?)8
回(16年2回、17年3回、18年3回)ということになる(従来は10-11回)。失業率が4.7%まで低下する
など経済の伸びシロが小さい現状において、2年半も先の18年末の政策金利見通しが下方修正されたこと
は、FFレートがlonger runの3.0%に届く前に景気後退を向かえることを物語っている。今回、市場の関
心は16年のドットに集中したようだが、中長期的な利上げパスが大きく変更されたことを認識しておくべ
きだろう。
2016年3月FOMC
2016年6月FOMC
5
5
4.5
4.5
4
4
中央値
3.5
3.5
3
中央値
3
中央値
2.5
2.5
2
中央値
中央値
2
中央値
1.5
中央値
中央値
1.5
1
1
0.5
0.5
0
0
2016
2017
2018
2016
Longer
Run
(備考)FRBより筆者作成
One participant did not submit longer-run projections.
2017
2018
Longer
Run
(備考)FRBより筆者作成
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
2