Weekly Market Focus 2016年12月05日号 (PDF 633KB)

ソニーフィナンシャルホールディングス調査レポート
ソニーフィナンシャルホールディングス 金融市場調査部長 尾河 眞樹
issue date 2016/12/05
イベント後の為替相場 今週のドル円予想レンジ 111.50-114.50
イタリア国民投票は「改憲反対派」が勝利し、レンツィ首相は辞意を表明。この結果は既に織り込
まれていたため、市場が混乱に陥ることはなさそうだ。ただ、将来欧州(EU)における政治的な不
透明感は増すことになるだろう。ドル円は上昇の勢いが一服。ただ下値も堅く、高値圏で横ばいか。
11月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比17万8000人増、
失業率は4.6%に改善した。労働参加率の低下や、平均自給の伸び
今週の注目材料
悩みが気がかりではあるものの、全体としてはまずまずの内容。今
【米】12月5日:11月ISM非製造業景況指数
月13、14日に行なわれる米連邦公開市場委員会(FOMC)で2度目
【豪】12月6日:RBA政策金利発表
の利上げを決定するにあたり、妨げとはならないだろう(図表1)。
【豪】12月7日:7-9月期GDP成長率
【中】12月8日:11月貿易収支
トランプ次期大統領は先週、次期財務長官に元ゴールドマン・サッ
【欧】12月8日:ECB理事会
クスのパートナーで、大統領選でトランプ陣営の全米財務責任者を
【米】12月9日:12月ミシガン大消費者信頼感
務めたスティーブン・ムニューチン氏を指名。商務長官には資産家
で著名投資家のウィルバー・ロス氏を指名した。早速、31日にこ
の両者が揃って米経済番組CNBCにゲスト出演し、ムニューチン氏
■図表1:米雇用統計
からは以下の通り、いくつか注目すべき発言があった。「成長率を
高めるのに最も重要なのは減税」「中国製品への関税引き上げばか
り話題になるが、重要なのは関税よりも米国の輸出を増やすこと
だ」「ドット・フランク法は複雑すぎて銀行の融資を阻害している
が、銀行融資は中小企業の成長のエンジンであり、修正が必要」
「今回指名を受けたのは『賭け』ではない。トランプ氏と彼の政策
を信頼している」「米国に資本が流入しているからこそドルが上昇
している。最も重要なのは経済成長と雇用の創出だ」「必要となれ
ば中国を『為替操作国』に認定することもあり得る」などである。
選挙中、トランプ氏が強い口調で主張していた政策の意図するとこ
出所:米商務省
ろが、次期政権の担い手によって徐々に明らかになるに従い、市場
の不透明感も少しずつ後退するのではないだろうか。これまでの米
長期金利上昇とドル高は、やや期待先行でオーバーシュート気味
■図表2:ユーロ/円(日足)
だったため、目先スピード調整はありそうだが、その期待が少なく
とも維持されている間は、ドル円は下がりにくいとみている。した
がって今週のドル円は、高値圏で振幅を繰り返す展開を予想する。
イタリア国民投票は「改憲反対派」が勝利し、レンツィ首相は辞意
を表明。この結果は既に織り込まれていたため、市場が混乱に陥る
ことはなさそうだ。ただ、英国民投票、米大統領選に続いて「反体
制」「保護主義の台頭」がイタリアでも示されたことは、来年欧州
で予定されている各国の選挙へ連鎖的に影響を及ぼす可能性がある。
また、これをきっかけに5つ星運動はじめ野党が勢力を伸ばせば、
彼らが主張するイタリアのユーロ圏からの離脱が将来的な可能性と
し現実味を帯びることになるだろう。ユーロ円は週末の引け121円
台から118円台へ急落。今週は軟調地合いが続きそうだ(図表2)。
出所:Bloomberg
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