Weekly Market Focus 2017年02月27日号 (PDF 922KB)

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ソニーフィナンシャルホールディングス調査レポート
2017/02/27
尾河眞樹
トランプ大統領は何を語るのか
石川久美子
ユーロ:下振れリスクにより反応しやすい相場に
トランプ大統領は何を語るのか
ソニーフィナンシャルホールディングス 金融市場調査部長
今週のドル円予想レンジ
111.00-113.50
尾河 眞樹
今週はトランプ大統領の施政方針演説に注目が集まる。市場参加者が期待する「財政政策」
の詳細は語らない可能性が高いとみているが、景気対策において一部数値目標等を示す可能
性もあるため注目したいところ。内容次第では一時的な円高リスクも。
先週のドル円相場は軟調に推移し、一時112円ちょうどを割り込む
今週の注目材料(いずれも現地時間)
場面もみられた。ムニューシン米財務長官が23日、「新政策は
【米】2月27日:1月耐久財受注
2017年中(の米国経済)に及ぼす影響は限定的」「歴史的低金利
【米】2月28日:10-12月期GDP(改定値)
長期化の見込みから、長期債の発行を真剣に検討すべきだ」との見
2月シカゴPMI
解を示したことが背景。また、トランプ大統領がロイター通信のイ
トランプ大統領演説
ンタビューで、「中国は為替操作でグランドチャンピオンだ」など
【豪】3月1日:10-12月期GDP
と述べたことも間接的にドル円の重しとなった。同財務長官の発言
【中】3月1日:2月製造業PMI
は、大統領が2月9日に「驚異的な税制改革案を約束する」と発言し
【加】3月1日:政策金利発表
たことで高まっていた、減税など景気刺激策への期待に冷や水を浴
【日】3月3日:1月消費者物価指数
びせた格好。事前の期待が高すぎることで、政策発表直後に米株価
が「失望売り」となるリスクを防ぐ目的もあったかもしれない。
■図表1:オバマ前大統領・施政方針演説
(2009年)の「景気対策」
こうしたなか、今週は28日にトランプ大統領が上下両院合同会議で
演説を行う。例年の大統領による「一般教書演説」に相当するもの
だが、就任直後の大統領の場合これに代わって「施政方針演説」を
行うのが慣例となっている。通常「一般教書演説」で示される「前
年までの政策実績」の代わりに、トランプ大統領は足下の米株価上
昇や、企業のメキシコへの工場移転を未然に防いだことなどを「就
任後のこれまでの実績」として強調するのではないか。また、今後
の政策については、財政政策の具体策は3月13日に提出される「予
1 2年間で350 万人の雇用を創出する、
2
国民の95%にあたる勤労者世帯に対して、1 人400ドル、夫婦で800ドルの減
税を実施し恒久化する
3 子供への税控除を拡大し恒久化する
4 競争力のある自動車産業を作る
5 金融システム安定化のために、2500 億ドルの緊急準備金を用意する、
算教書」に盛り込むため、今回は詳細は示されないと予想する。た
だ、例えば2009年のオバマ大統領就任直後の施政方針演説では景
出所:Bloomberg
気対策として①2年間で350 万人の雇用を創出する、②国民の95%
にあたる勤労者世帯に対して、1 人400ドル、夫婦で800ドルの減
税を実施し恒久化する、といった目標も掲げられており、トランプ
■図表2:ドル円(日足)
大統領の場合も部分的には数値目標等が示される可能性はあるだろ
う(図表1)。景気対策が十分でないと市場参加者に判断された場
合、或は、メキシコとの国境問題や通商問題など、保護主義的な政
策が強調される場合には、いったんドル安・円高に振れる可能性も。
もっとも、これらは大統領による「提案」に過ぎず、実行について
は議会が主役であること、また、前述したムニューシン財務長官の
発言によって、減税への過度な期待は薄まっている可能性が高いこ
とを踏まえれば、今回の演説が市場に影響を与えたとしても一時的
だろう。ドル円は過去1カ月間日足一目均衡表の雲(直近は112円
17銭~115円10銭)の中で推移してきたが、NY引け値ベースで仮
に下限を割れば、昨年6月安値99円02銭から12月高値118円66銭
までの38.2%戻し(フィボナッチポイント)111円16銭や、110円
の大台が短期的な下値メドとして浮上しよう(図表2)。
出所:Bloomberg
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ソニーフィナンシャルホールディングス調査レポート
【今週の注目通貨:ユーロ】
下振れリスクにより反応しやすい相場に
ソニーフィナンシャルホールディングス 金融市場調査部 為替アナリスト
今週のユーロ円予想レンジ
石川 久美子
116.50-119.80
ユーロは2月に入ってから仏大統領選の候補者の支持率動向に一喜一憂する展開。極右・国
民戦線のルペン党首が当選する可能性は、現時点では低いとみられているものの、大統領選
まで2カ月ほどあるなかでは不安が強く、当面のユーロには下向きの圧力が掛かり続けそうだ。
ユーロは2月に入ってから軟調な推移となっている。1月下旬、仏
大統領選の最有力候補であったフィヨン元首相による、家族に対す
■図表1:賭け屋算出の当選確率
る給与不正受給問題が浮上。フィヨン氏の支持率が一気に低下した
ことで、仏大統領選の先行き不透明感が強まった。同じく仏大統領
選候補のマクロン前経済・産業・デジタル相の支持率は、フィヨン
氏の支持層がマクロン氏支持に流れたことで相対的に上昇したが、
当のマクロン氏も不倫スキャンダルや植民地政策に関する発言が批
判を浴び、その火消しに追われるなどによって支持が離れる様子も
散見される。一方で反移民・反EUの極右政党・国民戦線のルペン
党首がジワジワと支持率を伸ばし、フランスのEU離脱‟FREXIT“が
急速に意識されるなかでユーロは売りが強まった(図表1)。
現段階で仏大統領選が行われる場合、4月23日の第一回投票ではル
ペン氏が最も得票数を集めるとみられているが、第一回投票の上位
2名で争われる決選投票では、ルペン氏の相手がフィヨン氏の場合
でもマクロン氏の場合でも、ルペン氏が敗退するとみられている。
第一回投票で敗退した候補者の支持層は「アンチ・ルペン」のため、
ルペン氏の対立候補に投票すると考えられるためだ。ただし、昨年、
英国の国民投票でEU離脱が決定されたこと、米国でトランプ氏が
大統領選挙で当選したことなど、各国の政治イベントで「まさか」
が続いており、市場参加者としては「ルペン大統領リスク」を意識
しないではいられない状態にある。第一回投票まで時間が2カ月も
あることから、この間にルペン氏の支持率上昇を伝える報道や、対
立候補の失点を伝える報道などがあった場合には、可能性は低いと
はいえ「ルペン大統領勝利⇒仏のEU離脱」という「お化け」への
恐怖が高まり、その都度ユーロが売られる公算は大きい。逆に、他
の候補(たとえばフィヨン氏やマクロン氏)が有利なことを伝える
出所:Oddschecker、Bloomberg
■図表2:国民戦線ルペン党首の主張
・EU離脱
・ユーロ廃止、新フラン採用
・移民の極端な制限
・仏中銀の財政ファイナンス
を認める
・輸入品および外国人労働者
に課税
・海外からの投資を厳しい統
制下に置く
マリーヌ・ルペン氏
・軍事支出拡大
2011年から同党党
・退職年齢60歳へ引き下げ
首。2012年大統領
・所得税の大幅減税
選の第1回投票では
・警察と刑務所増設
など
10人中3位。
出所:各種報道よりSonyFH金融市場調査部
■図表3:ユーロ円(日足)
報道があっても、それはもはや規定路線であり、この後に急速に高
まるかもしれない「ルペン大統領リスク」への不安を払しょくする
材料としては弱い。従って、そうした報道でユーロが買い戻された
としても、値幅は限定されるとみられる。また、ユーロ円について
は、28日に行われる米国のトランプ大統領の議会演説なども波乱
材料になり得る。発表される財政刺激策が市場の失望を買えば、リ
スクオフの円買い主導で下落しよう。なお、足元のユーロ円は90
日移動平均を下回り、テクニカル面でも下向きの圧力が強まってい
る。目先は200日移動平均線が下値支持として意識されるが、同水
準を割り込めば、昨年10月上旬から11月前半の上値抵抗となった
116円台半ばまで下げ余地が拡大しよう。(図表3)
出所:Bloomberg
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ソニーフィナンシャルホールディングス調査レポート
ソニーフィナンシルホールディングス
金融市場調査部・研究員紹介
尾河 眞樹(おがわ まき)
ソニーフィナンシャルホールディングス
執行役員
兼
金融市場調査部長
チーフアナリスト
ファースト・シカゴ銀行、JPモルガン証券などの為替ディーラーを経て、ソニー財務部にて為
替リスクヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部
門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析、および個人投資家向け情報提供を担当。
2016年8月より現職。 テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、日経CNBCなどにレギュ
ラー出演し、金融市場の解説を行っている。著書に『為替がわかればビジネスが変わる(2014
年日経BP社)』、『富裕層に学ぶ外貨投資術(2015年日経新聞出版社)』、『〈新版〉本当に
わかる為替相場(2016年日本実業出版社)』などがある。
渡辺 浩志(わたなべ ひろし)
ソニーフィナンシャルホールディングス
金融市場調査部
エコノミスト
1999年に大和総研に入社し、経済調査部にてエコノミストとしてのキャリアをスタート。
2006年~2008年は内閣府政策統括官室(経済財政分析・総括担当)へ出向し、『経済財政白
書』等の執筆を行う。2011年からはSMBC日興証券金融経済調査部および株式調査部にて機関
投資家向けの経済分析・情報発信に従事。2017年1月より現職。内外のマクロ経済についての
調査・分析業務を担当。ロジカルかつデータの裏付けを重視した分析を行っている。
石川 久美子(いしかわ くみこ)
ソニーフィナンシャルホールディングス
金融市場調査部
為替アナリスト
商品先物専門紙での貴金属および外国為替担当の編集記者を経て、2009年4月に外為どっとコ
ムに入社し、外為どっとコム総合研究所の立ち上げに参画。同年6月から研究員として、外国為
替相場について調査・分析、レポートや書籍、ブログ、Twitterなどの執筆、セミナー講師、テ
レビやラジオなどのコメンテーターとして活動。2016年11月より現職。外国為替市場の調査・
分析業務を担当。
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