No.2016-022 2016年8月23日 http://www.jri.co.jp 高まる川下からのデフレ圧力 ― 身近な商品の価格伸び悩みが家計の期待インフレ低下に作用 ― (1)消費者物価の下落・伸び悩みが持続。先日公表された2015年基準消費者物価指数によると、6月 のコアCPIは、前年比▲0.4%と4ヵ月連続の下落(図表1)。一方、上昇が続くコアコアC PIも同ゼロ%台半ばの伸びと勢いを欠く状況。 (2)CPI(持家の帰属家賃を除く総合)の前年比の内訳をみると、原油安によるエネルギー価格の 下振れが大きく影響(図表2)。もっとも、2016年入り後は、エネルギー関連以外に食料品や日 用品を中心とする購入頻度の高い商品で価格の伸びが鈍化し、下押しに作用(※)。背景に長引く 個人消費の低迷や円高などが指摘可能。 (※)購入頻度階級別指数の2015年基準は8月26日に公表予定のため、図表は2010年基準の指数に既に公表された 2015年基準のウェイトを加味して試算。ちなみに、持家の帰属家賃を除く総合ベースは、新旧基準の伸びの 差がおおむね▲0.1~+0.1%ポイントと小幅となっており、分析結果が大きく変わるものではないと判断。 (3)ヘッドラインの数字の低迷が続くなか、こうした消費者にとって身近な商品の価格下振れは、よ り家計のインフレ期待の押し下げに作用する公算。実際に家計の1年後の物価見通しをみると、 足許の分布は低インフレ側にシフトし、アベノミクス開始前に近づきつつある状況(図表3)。 (4)家計の物価見通しの低下は、家計に近い消費関連企業の販売価格判断に対して重石となる可能 性(図表4)。企業は当面販売価格の引き上げに慎重になるとみられ、これがさらに消費者のイ ンフレ期待を低下させた場合、川下からのデフレ圧力が強まる懸念。デフレからの完全な脱却に 向けて、政策効果が不透明な金融緩和に過度に頼ることなく、賃金の持続的な増加や将来不安の 払しょくによる消費拡大を通じた需給バランスの改善が求められる状況。 (図表1)消費者物価指数(前年比) (%) 2.5 (図表2)購入頻度別消費者物価指数(前年比) (%) 3.0 コアCPI(生鮮食品除く総合) コアコアCPI (食料(酒類除く)及びエネルギー除く総合) 2.0 エネルギー <5/784> 2.5 1年に1回程度以下 <291/3,235> 2.0 1.5 1.5 2ヵ月~半年に1回程 度 <211/2,861> 1.0 0.5 1.0 1ヵ月に1回程度以上 <78/1,621> 0.0 ▲0.5 0.5 持家の帰属家賃を除 く総合 <585/8,501> ▲1.0 0.0 ▲1.5 ▲0.5 2015 16 (年/月) (資料)総務省「消費者物価指数」 2015 16 (年/期) (資料)総務省「消費者物価指数」を基に日本総研作成 (注)2010年基準の指数を使用。< >内は左から順に2015年基準における 品目数/CPI総合1万分比ウェイト。 (図表4)消費関連企業の販売価格判断と 家計の物価見通し (図表3)家計の1年後の物価見通し (%) 40 35 30 25 20 15 10 5 0 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年1~3月期 (%ポイント) 「上昇」超 2.0 短観販売価格判断DI (消費関連企業、左目盛) 10 0 1.6 1.2 (%ポイント) 0.8 ▲10 ▲20 ▲30 0.4 ▲40 0.0 (資料)内閣府「消費動向調査」 (注)2016年4月以降は消費増税の影響が含まれるため除外した。 家計の物価見通し (前期比、2期先行、右目盛) ▲60 +5≦P +2≦P<+5 0<P<+2 0程度 ▲2<P<0 ▲5<P≦▲2 P≦▲5 ▲50 ▲70 ▲0.8 ▲1.2 16 (年/期) (資料)日本銀行「短観」、内閣府「消費動向調査」を基に日本総研作成 (注)消費関連企業は、小売、対個人サービス、飲食・宿泊サービス。回答 企業数でDIを加重平均。家計の物価見通しは回答を基に加重平均。 2005 06 (%) ▲0.4 07 08 09 10 11 12 13 14 15 【ご照会先】調査部 副主任研究員 下田裕介([email protected] , 03-6833-0914)
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