ご参考資料 2016年10月5日 マーケットレポート J-REITの投資環境:基準地価と日銀の新たな金融緩和策の枠組みについて 9月後半にかけて、J-REITの投資環境に関わる重要なイベントとして、基準地価の発表と日銀の金融政策の 総括検証がありました。それぞれのイベントにおける注目ポイントとJ-REIT市場への影響について整理します。 また9月はJ-REIT誕生から15周年の節目を迎えたこともあり、今後のJ-REIT市場の成長を展望し、さらに当面 のJ-REIT投資におけるポイントについてもまとめます。 ■ マイナス金利導入以降、地価上昇トレンドと全国へ地価上昇の広がりを確認 国土交通省は9月20日、2016年7月1日時点の都道 府県地価調査を発表しました。 三大都市圏(東京、大阪、名古屋)の前年比変動率 は、住宅地が3年連続、商業地が4年連続の上昇とな り(図1、図2参照)、特に商業地は外国人観光客の増 加などによる店舗、ホテル需要の高まりや主要都市 中心部での堅調なオフィス需要を背景に上昇基調を 強めています。 (図1)基準地価(住宅地、商業地)の変動率の推移 変動率 ⾒⽅ ▲0.9%〜▲0.1% 2.5%〜4.9% 住宅地 5%〜 商業地 26年調査 27年調査 28年調査 26年調査 27年調査 28年調査 ▲1.2% ▲1.0% ▲0.8% ▲1.1% ▲0.5% 全国 0.0% 0.5% 0.4% 0.4% 1.7% 2.3% 2.9% 東京圏 0.6% 0.5% 0.5% 1.9% 2.3% 2.7% ⼤阪圏 0.1% 0.0% 0.0% 1.5% 2.5% 3.7% 名古屋圏 0.9% 0.7% 0.5% 1.5% 2.2% 2.5% 三⼤都市圏 また札幌、仙台、広島、福岡の地方四市は、住宅 地・商業地ともに三大都市圏を上回る上昇を示してお り、地価上昇の全国への広がりが確認できました(図 1参照)。 さらに公示地価との比較による半年毎の動向をみ ると、東京圏、大阪圏の商業地では上昇幅が拡大、 地方四市も高水準を維持しており(図3参照)、2016年 2月のマイナス金利導入が追い風になっているとみら れます。 〜▲1.0% ▲1.8% ▲1.5% ▲1.2% ▲2.2% ▲1.6% ▲1.1% 地⽅圏 地⽅四市* その他 1.3% 1.7% 2.5% 2.6% 3.8% 6.7% ▲1.9% ▲1.6% ▲1.4% ▲2.5% ▲1.9% ▲1.5% *地方四市:札幌、仙台、広島、福岡 J-REITの主要投資対象地域である大都市周辺の地価上昇トレンドは継続しており、堅調な不動産需要を背 景とした賃貸料収入の増加と保有不動産の含み益拡大が見込まれることは、J-REIT市場にプラスに働くと考 えられます。 (図3)半年毎の地価変動率の推移(商業地) (図2)三大都市圏の基準地価対前年平均変動率の推移 (2005年~2016年、年次) (%) 5 15 10.4 三大都市圏平均 住宅地 三大都市圏平均 商業地 10 3.6 5 0 -2.1 3.3 4.0 1.4 0.4 -5 -2.8 -10 0.6 1.72.3 (%) 28年調査 前半 28年調査 後半 4 2.9 -0.8 -1.7 0.5 0.4 0.4 -2.9 -0.9 -0.1 -5.6 -2.2 -4.2 -8.2 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) 3.5 3 2 4.3 1.7 2.0 2.4 1.9 1.5 1.5 1 0 東京圏 大阪圏 名古屋圏 地方四市 ※公示地価(毎年1月1日時点)との共通点での集計。28年調査前半: 平成27年7月1日~平成27年12月31日、28年調査後半:平成28年1月 1日~平成28年6月30日の変動率 (出所)国土交通省のデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成 ※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。 当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、 証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。 1/4 ご参考資料 ■ 日銀による新たな金融政策の枠組みは、J-REIT市場の支援材料 日銀は、9月20日~21日開催の金融政策決定会合で金融政策の効果について総括的な検証を行い、新たな金 融政策の枠組みとして「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入を決定しました(図4参照)。長短金利操 作(イールドカーブ・コントロール)では、10年国債利回りを概ね現状(ゼロ%程度)で推移するよう調整するとして います。これは、物価上昇が安定的に目標の2%を超えるまで、この金融政策を継続するオーバーシュート型コ ミットメントにより、将来にわたって金融緩和の効果浸透を図るものです。一般的にJ-REIT投資において最も心配 されるリスクとして、不動産賃料等を含む物価上昇を伴わない金利上昇が挙げられますが、日銀が長期金利が 上がらないようコントロールし、また金融緩和姿勢を長期間続ける姿勢を示したことは、J-REIT投資に安心感を 与えるものと考えられます。 (図4)日銀による新たな金融政策(長短金利操作付き量的・質的金融緩和)の枠組み J-REITにとっての プラス要因 (1) 長短金利操作 (イールドカーブ・コントロール) ●短期金利 従来どおり、日銀当座預金の一部に▲0.1%のマイナス金利を適用 ●長期金利 10年国債利回りが概ね現状(ゼロ%程度)で推移するよう長期国債を 買い入れ ●国債購入額 概ね現状の買い入れペースを目処(保有残高増加額:年間約80兆円) 買い入れ国債の平均残存期間の定め(7~12年程度)は廃止 ●操作を円滑化する手段として、日銀が指定する利回りでの国債買い入れ(指値オペ) を新設、固定金利の資金供給の期間を従来の1年から最長10年まで延長 借り入れ金利低下によ る業績へのプラス要因 J-REITと国債との利回 り差拡大によるJ-REIT の魅力向上期待 年間900億円の買い入 れ継続によるJ-REIT価 格の下支え効果 (2)資産買い入れ方針 ●長期国債以外の資産については、現状どおり (3)オーバーシュート型コミットメント ●日銀は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するため 不動産購入誘発の可 能性による不動産価格 上昇期待 に、必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続。 ■ 今後のJ-REIT市場のさらなる成長余地について 本年9月に15周年を迎えたJ-REIT市場は米国に次ぐ世界第2位の市場規模まで成長しました。一方、2016年 3月に国土交通省から公表された不動産投資市場の拡大に向けた成長戦略で、2020年頃に現在から倍増とな る30兆円の市場規模とする目標が掲げられており(図5参照)、日本のGDPに対する市場規模の観点からもい まだ成長余地は大きいものと考えられます(図6参照)。 (図5)日本の不動産に占めるJ-REIT等の資産総額 (図6)各REIT市場時価総額の名目GDPに対する比率 (%) 日本の不動産 約2,400兆円 法人所有不動産 約470兆円 収益不動産 約208兆円 10 【成長目標】 2020年頃にREIT等 の資産規模を 約30兆円に倍増 8 7.7 6 4.6 4 J-REIT等の保有不動産 約16兆円 0 (出所)国土交通省「不動産投資市場の成長に向けた課題について(平成27年 11月26日)」の資料を基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成 2.6 2.0 2.0 日本 フランス 英国 2 オースト ラリア 米国 ※S&Pの各国REIT市場時価総額(2016年8月末)と名目GDP(2015年)を基に算出 (出所))S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスおよびIMF(国際通貨基金)「世界経済見 通し2016年4月」のデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成 ※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。 当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、 証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。 2/4 ご参考資料 ■ 好調な業績動向と割安感が続くJ-REIT J-REITは、これまでも堅調な業績を背景とした増配基調の継続(図7参照)や10年国債利回りとの利回り差比 較では、主要先進国のREITと比べ相対的に割安な水準にある(図8参照)など、投資対象としてプラスの側面が 多くの投資家に認識されていますが、今後も円建てで、相対的に利回りの高いJ-REITの魅力は継続するものと 考えられます。 (図7)1口当たり配当金の推移 (円) (図8)主要国のREITと国債の利回り比較 (2011年8月~2016年8月、月次) (%) 6 2017年末予測 2016年末予測 5 65 60 4 (2016年8月末現在) REIT配当利回り 10年国債利回り 4.2 4.3 3.6 3.6 3.3 3 55 1.6 2 1 50 0 45 11/8 -1 12/8 13/8 14/8 15/8 16/8 17/8 1.8 0.6 0.2 利回り差 利回り差 利回り差 利回り差 利回り差 3.4% 2.1% 2.5% 3.0% 4.0% 米国 オーストラリア 英国 フランス -0.1 日本 (年/月) ※1口当たり配当金は東証REIT指数の1口当たり実績配当金の直近 12ヵ月合計、2016年末以降はBloomberg予測 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント 作成 ※日本は東証REIT指数、その他はS&PグローバルREIT指数の各国イン デックスの実績配当利回り、小数点以下第2位を四捨五入 (出所)S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスおよびBloombergのデータを基に 三井住友トラスト・アセットマネジメント作成 ■ 今後のJ-REIT投資のポイント 日銀による「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、前述の通りJ-REITにとってはプラスに働いていくと考 えられます。今回の日銀の金融政策はさらなる支援材料となり、今後もJ-REIT市場に対する期待はより一層高 まるものと期待されます。 Point ⾦融政策 Point 「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」で金融緩和を継続。 10年国債利回りをゼロ%程度で推移するよう長期国債を買い入れ。 2017年は増配基調が続く見通し。 業績 Point 不動産価格 Point 割安度 都市部での不動産価格上昇が継続。さらに都市部への人口流入増 加による実需の要因も期待。 J-REITと10年国債利回りとの利回り差比較では、他の先進国REIT と比べて割安な水準。 ※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。 当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、 証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。 3/4 ご参考資料 【 ご留意事項 】 ●当資料は三井住友トラスト・アセットマネジメントが投資判断の参考となる情報提供を目的として作成したもので あり、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。 ●ご購入のお申込みの際は最新の投資信託説明書(交付目論見書)の内容を必ずご確認のうえ、ご自身でご判断 ください。 ●投資信託は値動きのある有価証券等(外貨建資産には為替変動リスクを伴います。)に投資しますので基準価 額は変動します。したがって、投資元本や利回りが保証されるものではありません。ファンドの運用による損益は 全て投資者の皆様に帰属します。 ●投資信託は預貯金や保険契約とは異なり預金保険機構および保険契約者保護機構等の保護の対象ではあり ません。また、証券会社以外でご購入いただいた場合は、投資者保護基金の保護の対象ではありません。 ●当資料は信頼できると判断した各種情報等に基づき作成していますが、その正確性、完全性を保証するもので はありません。また、今後予告なく変更される場合があります。 ●当資料中の図表、数値、その他データについては、過去のデータに基づき作成したものであり、将来の成果を示 唆あるいは保証するものではありません。 ●当資料で使用している各指数に関する著作権等の知的財産権、その他の一切の権利はそれぞれの指数の開発 元もしくは公表元に帰属します。 当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、 証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。 4/4
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