2016年7月26日 J-REIT市場の動向と今後の⾒通し (2016年4⽉〜2016年6⽉) J-REIT市場の振り返り (図1)東証REIT指数とTOPIXの推移 (2016年1月4日~2016年6月30日、日次) 2,000 東証REIT指数(左軸) TOPIX(東証株価指数)(右軸) 1,800 2016年に入ってから、1月29日の日銀によるマイナス 2,200 金利政策導入の発表もあって、J-REIT市場は株式市 場と比較して堅調な展開となりましたが、4-6月につい 2,000 ても概ねその傾向が続きました。 6月の英国民投票で大方の予想に反してEU(欧州連 合)離脱派が勝利したことを受けて投資家のリスク回 避の動きが強まり、6月後半に大きく下落したもののそ の後は回復しています(図1参照)。 1,800 1,600 1,600 1,400 足もとでは国債利回りがさらに低下(マイナス幅の拡 大)したこともあり、相対的に高い利回りが期待できる J-REITへの注目がさらに高まっていると考えられま す。 1,400 1,200 英国EU離脱を受け各国REIT指数に動き 6月の英国EU離脱派の勝利を受け、各国のREIT指 数の動きに顕著な違いが見られました。6月23日から6 月30日にかけての各国REIT指数の騰落率は、英国が ▲12.9%、フランスが▲3.7%と大きく下落する一方、シ ンガポールが+3.9%、米国が+3.7%と上昇していま す。日本やオーストラリアも上昇していることから、英 国のEU離脱が欧州REITにとってマイナスに働くという 見方を反映した動きと考えることができます(図2参 照)。 今後の英国のEU離脱が実際にどのような形で実施 されるのかにもよりますが、世界的に不動産マネーが シフトする可能性も出てきました。 この状況下、J-REITの魅力的なポイントを下記の通 り整理しました。 J-REITの魅⼒3つのポイント 堅調な業績 1,200 16/1 16/2 16/3 16/4 16/5 1,000 16/6 (年/月) (出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント 作成 (図2)英国EU離脱決定後の指数の動き (%) 8.0 3.9 4.0 3.7 1.7 1.6 0.0 -4.0 -3.7 -8.0 -12.0 -12.9 -16.0 シンガ ポール 米国 日本 オースト ラリア フランス 英国 ※2016年6月23日と2016年6月30日の比較 ※日本は東証REIT指数(配当込み)、その他はS&PグローバルREIT 指数の各国インデックス(現地通貨ベース、配当込み) (出所)S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスおよびBloombergのデータを基 に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成 〜空室率、平均賃料、⼀⼝当たり配当⾦〜 良好な不動産ファンダメンタルズ 割安感が続くJ-REIT 〜路線価、含み益の拡⼤〜 〜海外REITとの⽐較、過去のインフレ期との⽐較〜 ※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。 当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、 証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。 1/6 ご参考資料 堅調な業績 ~空室率、平均賃料、一口当たり配当金~ オフィス空室率が低位で推移する中、賃料⽔準は上昇基調 東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス空室率(三鬼商事発表)は、2015年7月以降、 5%を 下回る水準で推移しています。不動産賃貸市場では一般に空室率が5%を下回ると貸し手側が価格交渉で優位 になるとされ、足もとの賃料水準は着実に上昇しています(図3参照)。 底堅いオフィス需要を背景に、既存ビルに加え建設中ビルの成約も増加しており、2016年以降もしばらく堅調 なオフィス需要が続くものと思われます。 (図3)東京都心5区のオフィス空室率と賃料の推移 (2002年1月~2016年6月、月次) (%) 10 (円/坪) 25,000 賃料(左軸) 空室率(右軸) 23,000 8 21,000 6 19,000 4 17,000 2 (2016年6⽉現在) 15,000 02/1 04/1 06/1 08/1 10/1 12/1 14/1 空室率 4.1% 賃料 18,179円 0 16/1 (年/月) (出所)三鬼商事のデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成 J-REITの増益基調は今後も続く⾒込み (図4)一口当たり配当金の推移 (2011年6月~2016年6月、月次) (円) J-REITが手がける不動産賃貸ビジネスは、通常、数 年単位で契約を結ぶため、一般企業に比べて売上の 変動が小さくなる傾向があります。また保有物件の大 半が国内に所在するため、海外経済の影響を受けづ らいという特性があります。 65 2017年末予測 2016年末予測 60 55 足もと、賃貸料収入の増加や金利低下に伴う資金調 達コストの減少から、J-REITの業績は堅調です。 英国のEU離脱などもJ-REITの業績に直接影響を及 ぼすことはなく、 2016年、2017年も増益(増配)基調が 継続すると見込まれます(図4参照)。 50 45 11/6 12/6 13/6 14/6 15/6 16/6 17/6 (年/月) ※一口当たり配当金は東証REIT指数の一口当たり実績配当金の直近 12ヵ月合計、2016年末以降はBloomberg予測 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント 作成 ※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。 当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、 証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。 2/6 ご参考資料 良好な不動産ファンダメンタルズ ~路線価、含み益の拡大~ 路線価では全国平均で8年ぶり上昇 (図5)全国主要都市における最高路線価変動率 2016年7月1日に国税庁は平成28年1月1日現 在の路線価を発表しました(図5参照)。 都市名 全国約32万8,000地点(標準宅地)の対前年の 平均変動率は、リーマン・ショック前の2008年以 来、8年ぶりに前年比0.2%の上昇に転じました。 また、東京、大阪、名古屋の3大都市圏について は、昨年から上昇幅が拡大しています。 名古屋 三大都市圏を中心に地価の回復傾向が確認さ れたことは、J-REITの保有不動産の価値上昇 期待を強め、J-REIT市場にとってプラス要因と 考えられます。 J-REIT含み益が過去最⾼の 約1.5兆円に 最⾼路線価の所在地 平成28年 中央区銀座5丁目 銀座中央通り 18.7% 中村区名駅1丁目 名駅通り 14.1% 大阪 北区角田町 御堂筋 22.1% 札幌 中央区北5条西3丁目 札幌停車場線通り 11.8% 仙台 青葉区中央1丁目 青葉通り 12.5% 東京 さいたま 大宮区桜木町2丁目 大宮駅西口駅前ロータリー 7.0% 9.5% 横浜 西区南幸1丁目 横浜駅西口バスターミナル前通り 京都 下京区四条通寺町東入2丁目御旅町 四条通 16.9% 広島 中区胡町 相生通り 12.2% 福岡 中央区天神2丁目 渡辺通り 12.0% ※上記は全国主要都市の最高路線価の対前年比変動率 (出所)国税庁のデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成 (図6)J-REIT保有不動産の含み損益(率)の推移 この地価上昇の動きは、J-REITの保有資産の含 み益を増加させています。三井住友トラスト基礎研 (兆円) 究所が2016年6月に発表した2016年4月期*の含み 1.6 益は過去最高の1兆5,166億円となりました(図6参 照)。 1.2 (2002年8月期~2016年4月期、月次) (%) 20 含み損益(左軸) 含み損益率(右軸) 過去最⾼の 1.5兆円に 15 人口が増加し利便性が高く、不動産の需要が旺 盛な東京の物件を中心に不動産鑑定評価額が上 0.8 昇を続けており、賃料の上昇やホテル宿泊料の上 昇といった不動産市場の改善が続いていることも、 背景の一つとなっています。 0.4 10 5 一方、含み損益率は11.3%と、過去最高であった 2008年2月期の15.7%を下回っています。不動産価 0.0 格は引き続き上昇トレンドにあることから、J-REIT の含み益のさらなる増加が期待できます。 保有不動産の価値向上によるJ-REITの含み益の 増加は、NAV(Net Asset Value:純資産価値)の上 昇期待につながり、今後のJ-REIT市場の上昇を中 長期的に下支えしていくものと期待されます。 *2015年11月期から2016年4月期までの合計 -0.4 2002年8月期 0 2005年10月期 2008年12月期 2012年2月期 2015年4月期 -5 ※過去6ヵ月間に決算発表した銘柄の含み損益の合計値の推移を示しています。 ※含み損益=不動産鑑定評価額-不動産帳簿価額、含み損益率=含み損益÷ 不動産帳簿価額 (出所)三井住友トラスト基礎研究所のデータを基に三井住友トラスト・アセット マネジメント作成 ※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。 当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、 証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。 3/6 ご参考資料 割安感が続くJ-REIT ~海外REITとの比較、過去のインフレ期との比較~ 海外REITとの⽐較 J-REITの価格水準の割安・割高評価を行う際の 尺度の1つに「国債との利回り差=リスクプレミア ム」があります。 これはJ-REITの配当利回りから10年国債の利 回りを差引いたもので、J-REITは国債に比べて価 格変動リスクが大きい分、高い利回り、すなわちリ スクプレミアムが求められるという考え方に基づく 指標です。 このリスクプレミアムが大きければ割安、小さけ れば割高と判断されますが、この方法で海外REIT との比較を行うと主要5ヵ国で見てもJ-REITは相対 的に割安であると考えられます(図7参照)。 (図7)主要国のREITと国債の利回り比較 6 (2016年6月末現在) (%) REIT配当利回り 10年国債利回り 5 4.4 4.2 4.0 3.6 4 3.2 3 2.0 2 1 0 -1 1.5 0.9 0.2 利回り差 利回り差 利回り差 利回り差 利回り差 3.4% 2.2% 2.4% 3.1% 4.0% 米国 オーストラリア 英国 フランス -0.2 日本 ※日本は東証REIT指数、その他はS&PグローバルREIT指数の各国イン デックスの実績配当利回り、小数点以下第2位を四捨五入 (出所)S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスおよびBloombergのデータを基に 三井住友トラスト・アセットマネジメント作成 過去のインフレ期との⽐較 国債との利回り差(リスクプレミアム)に関して、現在の水準(6月末3.4%)を過去の実績と比較すると、インフレ 傾向であった2005年から2007年の平均1.7%と比べて相対的に割安感があるといえます(図8参照)。 また、デフレ脱却への期待感が膨らんだ2012年12月以降のリスクプレミアムの平均値2.9%と比較しても、現在 の価格水準は「割安感が強い」と考えられます。 (図8)J-REIT配当利回りと10年国債利回りの格差(リスクプレミアム)の推移 12 (2005年1月末~2016年6月末、月次) (%) J-REIT配当利回り リスクプレミアム 10 10年国債利回り (2016年6⽉末現在) 8 6 リスクプレミアム 3.4% デフレ脱却期待 (アベノミクス)以降 平均 2.9% インフレ時 リスクプレミアム 平均 1.7% J-REIT 配当利回り 3.2% 4 2 10年国債利回り ▲0.2% 0 -2 05/1 06/1 07/1 08/1 09/1 10/1 11/1 12/1 13/1 14/1 15/1 16/1 (年/月) ※J-REIT配当利回り:東証REIT指数の実績配当利回り ※本ページにおけるインフレ時とは、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、全国、年平均)が対前年比でマイナスを記録しなかった2005年~2007年 の期間を三井住友トラスト・アセットマネジメントが独自に定義するもので、一般的なインフレ時の定義とは異なります。デフレ脱却期待(アベノミクス) 以降は2012年12月末以降。 ※データは小数点以下第2位を四捨五入 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成 ※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。 当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、 証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。 4/6 ご参考資料 <コラム> 2020年東京五輪とJ-REIT 8月にはブラジルのリオデジャネイロで五輪が開 催されますが、次回はいよいよ東京での開催とな ります。そこで改めて東京五輪とJ-REITの投資環 境について整理しておきましょう。 (図9)ロンドンとシドニーの住宅価格指数の推移 ロンドン(英国) (2005年4-6月期~2016年1-3月期、四半期) 220 ※2005年4-6月期を100として指数化 180 過去開催都市の不動産価格は上昇 近年の先進国での夏季五輪開催都市の例を見 ると、2012年のロンドン五輪のケースでは、リーマ ン・ショックを経験しながらもロンドンの住宅価格 指数は、開催決定後から開催までの期間で約1.4 倍となり、2000年のシドニー五輪のケースでもシ ドニーの住宅価格指数は約1.5倍となりました。ま た、開催後においても、ロンドン・シドニーともに、 一層上昇していることが確認できます(図9参 照)。 東京に関しても、五輪招致決定後、住宅価格は +11.8%上昇(2013年8月-2016年3月)しており、 今後の住宅価格の上昇が期待されます。 J-REITにとって⻑期的にプラス 東京では五輪開催に向けて様々なインフラ整備 が進められています。交通インフラの例では、昨 年に首都高速中央環状品川線が開通し、利便性 がさらに向上しました(図10参照)。 開催後 上昇率 リーマンショック (2008年9⽉) +47.7% 140 100 上昇率 +38.8% ⼤会開催 2012年7⽉ 開催決定 2005年7⽉ 60 05/6 07/6 09/6 11/6 15/6 (年/月) 13/6 シドニー(オーストラリア) (1993年4-6月期~2004年1-3月期、四半期) 300 ※1993年4-6月期を100として指数化 250 開催後 上昇率 200 +69.6% 150 100 50 93/6 上昇率 +52.7% 開催決定 1993年9⽉ 95/6 ⼤会開催 2000年9⽉ 97/6 99/6 01/6 03/6 (年/月) (出所)Bloombregのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成 (図10)道路輸送インフラの整備予定 また、2017年後半には次世代都市交通システ ム(ART:Advanced Rapid Transit)が実証実験を 開始し、都心と臨海副都心とを結ぶ公共交通とし て、2019年開業に向けて準備が進められていま す。 こうしたインフラの整備・拡充は、東京の都市機 能の向上をもたらし、五輪後も世界の人々やビジ ネスをひきつける魅力ある都市となることにつな がります。したがって東京五輪はJ-REIT市場に とって、開催後まで続く長期的なプラス要因にな ると期待されます。 ※五輪レーン(紫網掛部分) (出所)内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本 部事務局「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会 に向けた政府の取組」資料集 ※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。 当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、 証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。 5/6 【 ご留意事項 】 ● 当資料は三井住友トラスト・アセットマネジメントが投資判断の参考となる情報提供を目的として作成したもので あり、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。 ● ご購入のお申込みの際は最新の投資信託説明書(交付目論見書)の内容を必ずご確認のうえ、ご自身でご判 断ください。 ● 投資信託は値動きのある有価証券等(外貨建資産には為替変動リスクを伴います。)に投資しますので基準価 額は変動します。したがって、投資元本や利回りが保証されるものではありません。ファンドの運用による損益 は全て投資者の皆様に帰属します。 ● 投資信託は預貯金や保険契約とは異なり預金保険機構および保険契約者保護機構等の保護の対象ではあり ません。また、証券会社以外でご購入いただいた場合は、投資者保護基金の保護の対象ではありません。 ● 当資料は信頼できると判断した各種情報等に基づき作成していますが、その正確性、完全性を保証するもので はありません。また、今後予告なく変更される場合があります。 ● 当資料中の図表、数値、その他データについては、過去のデータに基づき作成したものであり、将来の成果を 示唆あるいは保証するものではありません。 ● 当資料で使用している各指数に関する著作権等の知的財産権、その他の一切の権利はそれぞれの指数の開 発元もしくは公表元に帰属します。 当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、証券取引の 勧誘を目的としたものでもありません。 6/6
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