原油輸入価格の急騰が消費者物価に波及へ

景気循環研究所レポート
原油輸入価格の急騰が消費者物価に波及へ
2017 年 2 月 20 日
1 月の原油輸入価格は前
年比 40.5%上昇
原油の輸入価格が急騰している。財務省が 20 日に発表した 17 年 1 月の
貿易統計(速報)によると、同月の原油輸入価格(通関ベース、1 キロリ
ットル当たり)は 39,021 円となり、前年同月の水準(27,779 円)を 40.5%
上回った。原油価格の前年比プラスは 28 ヵ月振りであり、かつプラス幅
は 2010 年 5 月(54.6%)以来の大きさである(図 1)。原油輸入価格の急
騰を反映して、1 月の輸入金額は 25 ヵ月振りに前年同月を上回り、同月
の通関貿易収支は 5 ヵ月振りの赤字(輸入超過)となった。なお、例年 1
月は営業日数等の関係上、通関貿易収支が赤字になりやすい。月ごとの季
節性や祝日・曜日等の変動要因を除去した季節調整値をみると、17 年 1
月の通関貿易収支は引き続き黒字だったが、黒字幅は 16 年 12 月の 3,275
億円から 17 年 1 月に 1,555 億円へと大幅に縮小している。
消費財・国内品に続き、
原油輸入価格の上昇は、エネルギーや原材料の調達コストの上昇を通じ
消費者物価も前年比プラ
て、様々な財・サービス価格の押し上げ要因となる。既に、国内で生産さ
スに転換へ
れた消費財の価格は、エネルギー・原材料コストの上昇に足並みを揃える
形で前年比上昇に転じている。消費財・国内品の値上がりは、タイムラグ
を伴いながら、消費者物価の財価格に直接波及するうえ、エネルギーコス
嶋中 雄二
景気循環研究所長
鹿野 達史
景気循環研究所副所長
トの上昇は財価格のみならずサービス価格の押し上げ要因にもなりうる。
商品市況全般が上昇傾向を辿り、為替レートも円安基調で推移する中、足
元で水面下にある消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は早晩、前年比
プラス圏に転じ、その後は上昇ペースが加速する可能性が高い。
シニアエコノミスト
図 1. 原油輸入価格と消費財、消費者物価の推移
(前年比、%)
宮嵜
浩
60
シニアエコノミスト
03-6627-5132
miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp
原油輸入価格(左目盛)
30
圭亮
シニアエコノミスト
03-6627-5133
fukuda-keisuke@sc.mufg.jp
40.5
消費財・国内品(右目盛①)
景気循環研究所
東京都千代田区大手町 1-9-2
大手町フィナンシャルシティ
(17/1)
0.5
-60
-90
-120
-150
本レポートは、嶋中雄二の見方に基づ
き、宮嵜・福田が執筆を担当しています。
(17/1)
6
4
0
-30
福田
①
(前年比、%)
10
11
12
13
14
15
16
0
(16/12)
-2
-0.2
-4
コアCPI(右目盛②)
-180
②
(前年比、%)
2
-6
17(年、月次)
3
2
1
0
-1
-2
(注)原油輸入価格=通関輸入金額(原油及び粗油)÷同数量(同)。消費財・国内品は企業物価指数の
需要段階別・用途別指数。コアCPIは消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、消費税率の影響を除く)。
(資料)財務省「貿易統計」、日本銀行「企業物価指数」、総務省「消費者物価指数」をもとに三菱UFJ
モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
(以 上)
みやざき
グランキューブ
(17.2.20 宮嵜
1
ひろし
浩)
2017 年 2 月 20 日
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