ウィークリーレポート 2016/08/01-2016/08/05

ウィークリーレポート 2016/08/01-2016/08/05
提供:新生銀行 市場金融部
日銀追加緩和も小幅にとどまり円高圧力消えず。焦点は再び海外の景気動向と金利見通しへ。
日銀追加緩和が小幅にとどまり円高圧力が払拭されたとは言えず。米国の 4~6 月期の GDP 成長率が大幅下振れしたこと
で市場の焦点は再び米国の景気動向と利上げ時期を巡る思惑に移る。豪州、英国の金融政策決定会合にも注目。
(先週の振り返り)
日米の金融政策会合が開かれ政策決定への思惑で、日本市場は大きく上下する展開となった週でした。特に日銀の政策
会合は追加緩和が強く織り込まれた状態であったため、その注目度は為替市場のみならずすべての商品市場で高まりまし
た。事前にあった「ヘリコプターマネー」のような極端な金融政策への思惑はすでに消えていましたが、政府が取りまとめる
補正予算における経済対策の規模拡大が報道される度に日銀が連携して大幅な追加緩和を決めるのではないかという連
想が高まり、相場は円安に振れたり、またそれが実際の財政出動(真水)は大した額ではないと捉えられると大きく円高に
振れたりと方向感なく値幅だけが拡大していく不安定な状態が続きました。結局、発表された主な緩和手段は株 ETF の買
い入れ増額(3.3 兆円⇒6 兆円)のみにとどまり、失望感から為替相場は 1 米ドル=105 円台から 102 円 70 銭近辺まで円高
に振れましたが、声明文で「次回 9 月会合で金融政策の包括的な検証を行い結果に応じて必要な措置を取る」と言及したこ
とから緩和期待を残すこととなり、懸念されていたほど大幅に円高は進みませんでした。またマイナス金利のマイナス幅拡
大が見送られたことで銀行株などには買戻しが入ったため、日経平均株価が小幅に上昇して終わったことも円高がさほど
進まなかった要因と考えられます。
その後発表された米国の 4~6 月期の GDP 成長率の伸びが市場予想の半分にも届かず、週末の海外市場ではドル安がす
べての通貨に対して進展する形でドル円も 102 円を一旦割り込むまで下落し、ドル安傾向で週を終えています。
豪ドル/NZ ドルなどは消費者物価の低迷を政府・中央銀行が問題としていることから追加緩和観測が消えず、ドル安の局
面でも総じて横ばいの動きが続くこととなりました。また同じく追加緩和が来週にも強く意識されるイギリスポンドも他通貨に
比べて買戻しの動きが鈍く相対的に出遅れる状態が続いています。
(今週の見通し)
日銀が小幅ながらも追加緩和を決め、政府の経済対策と歩調を合わせる姿勢を示したことや次回会合での包括検証を約
束し、さらなる追加緩和に含みを持たせたことで日銀の金融政策を巡るドタバタは一旦収束しそうです。ただ、次回の検証
後に日銀がどのような措置をとってくるかは全く不透明で、再び 9 月 20・21 日の日銀政策会合直前は今回以上の混乱が予
想されます。
今週は先週末に起こった日銀の追加緩和後の値動きを消化しながらも、米国 GDP の予想比大幅下振れで結局はドル安・
円高の地合いを色濃くして始まりそうです。注目の米国経済指標も多く、英国が国民投票で EU 離脱を決めた後のものであ
るだけに、市場参加者が重要視する度合いは過去 1 か月間のものとは異なり、市場の反応は経済統計に大きく左右されそ
うです。米国 ISM 指数や中国 PMI 指数、米国 7 月雇用統計や週末発表の中国の外貨準備高などに関心が集まりそうです。
次回の日銀会合まで 1 か月半の時間があり、緩和期待が持続するといってもリスクオフの地合いでは円高が確実に進み易
くなったとも考えられ、米国の指標次第では再びドル安主導で円相場も 100 円に迫ることも予想されます。また 8 月 2 日に
豪州、8 月 4 日には英国で金融政策決定会合が開かれ、どちらも追加緩和が予想されるだけにそれぞれの通貨に対して円
高が進む展開となればその点でも円高方向への圧力がかかることになります。経済指標次第ではありますが、週を通じて
円高方向への値動きを警戒することとなりそうです。
なお、欧州銀行に対するストレステストの結果が週末に公表されましたが結果を受けての欧州銀行株の値動きには注目で
す。今のところ問題行とみられるのはイタリア大手のモンテ・パスキのみであり、同行が計画している増資計画が実現され
れば欧州発のリスクオフといった展開は回避されそうです。