ウィークリーレポート 2017/01/23-2017/01/27 トランプ大統領就任後の経済政策の実行性に注目が向かう トランプ大統領の就任演説を終えたことから、経済政策の実行性に焦点が向かう。一旦の材料の出尽くしから、米金利低下 によりドルはやや伸び悩みの展開も。英国では EU 離脱に関する最高裁判決をひかえ過度な警戒は後退か。 (先週の振り返り) 週明けの市場は、週末に英紙による「メイ英首相がスピーチで EU 単一市場からの撤退計画を示唆」との報道がハードブ レグジットによる英経済への悪影響懸念を引き起こし、ポンド円はギャップダウンオープン(前日の終値より当日の始値が安 値で寄り付いてのオープン)となりました。更に、トランプ大統領の保護主義的なインタビュー内容(「中国が人民元を押し下 げているためドルが既に強すぎる」)が嫌気され、ドル売りとなりドル円相場は下落基調のスタートでした。米国市場が休場 だったため、一旦は落ち着きましたが、その後も下げ止まらずストップロスオーダー(損切り注文)を巻き込みながら、112 円 台半ばまで下落しました。その後、メイ英首相のスピーチは事前に報じられた内容通りとの見方から、材料出尽くしのポンド 円の買いにつられる形でドル円も 113 円台半ばまで反発するものの、再びドル売りの展開になりました。 18 日は、ドル円は 112 円台半ばで東京時間を迎えると、本邦の実需や機関投資家からの旺盛な買い需要から大幅に反 発。NY 時間にイエレン FRB 議長の「物価の安定と雇用の最大化という二大責務にほぼ近づく」、「19 年末まで年数回の利 上げを想定」との発言を受け、ドル円は一段高となりました。ECB 理事会も予想通り政策を据え置きしたものの、ドラギ総裁 の「基調的なインフレの確固たる上昇トレンドは見えず」とのハト派な発言を受け、ユーロ売り・ドル高の材料となりました。 次期財務長官候補ムニューチン氏が公聴会で「ドルの長期的な強さは重要」との発言を受けドル円 115 円台半ばまで上伸 しましたが、「ドルは非常に、非常に強い」とも発言するとすぐに反落しました。トランプ大統領就任演説前にはトランプ政権 への期待感からドルが買われる場面がありましたが、演説内容に関してサプライズはなく、失望のドル売りから「往って来 い」の展開となり、114 円台半ばで週を終えました。 (今週の見通し) 今週は、引き続きトランプ政権の動向、24 日(火)の EU 離脱に関する最高裁判決、27 日(金)の 10-12 月期米 GDP が注目 材料となりそうです。トランプ大統領の就任演説を終えたことから、インフラ投資、税制改革、規制緩和といった経済政策の 実行性に焦点が当たりそうです。現状、市場は既にトランポノミクスの好材料を織り込んでおり、投機筋を中心に米国債と 金利先物の売り越しポジションが膨らんでいます。トランプ政権の動向は依然不透明ではありますが一旦の材料の出尽くし から、米金利低下によりドルはやや伸び悩みの展開が想定されます。 EU 離脱に関する最高裁判決では、リスボン条約 50 条の申請には議会の承認が必要との判決を下した英国の高裁判決 が支持される公算が大きいため、ハードブレグジット懸念の払しょくからポンド円には上昇圧力がかかると考えています。先 週の動きを振り返るとポンド円に買い戻しが入り、つられてドル円にも買いが入りそうです。米 GDP に関しては、市場予想 の前期比年率+2.1%になっているものの、前述の米金利先物のポジションの偏りから市場予想を下回ると米金利低下・ドル 売りのリスクが高そうです。ただ、先週の動きを見ても、ドル円相場は下押しした水準では本邦からの旺盛な買い需要が見 られており、売り一巡後はレンジの中でもみ合う相場展開は予想しています。 中長期的にはドル円相場は上昇トレンドにあるとの見方が多くなっていますが、今週は値固めをする時期、地合いだろう と見ています。ドル円通貨オプション市場でもトランプ大統領の就任演説までは警戒感から大きな値幅を示唆していました が、警戒感が薄れ徐々に値幅も小さくなりそうです。ドル円の想定レンジは、112 円半ばから 117 円程度とみています。
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