学習メモ

現代社会
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第 22 回
現代経済と国民福祉 [経済のしくみ]
国民所得と経済成長
学習のねらい
住んでいる地域の商店街がさびれたりすると、経済はきびしい
ことがわかります。では、日本全体のように経済全体の状態やそ
の変化は、どのようにすればわかるのでしょうか。経済全体の動
向を知るための方法を理解します。
講師
玄田有史
GDP と GNP
国内総生産(GDP)は、一年間に国内全体でどれだけの付加価値が生まれたかを示す指標です。
付加価値とは、生産額から原材料などの中間生産物を差し引いた額のことです。
それに対し、国民総生産(GNP)は、国民による生産活動をはかるもので、海外で働く日本
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人からの送金などを含み、日本に住む外国の人がつくった付加価値は除きます。経済の国際化
が進んだため、日本国内における経済を知るため、GDP に注目されることが多くなりました。
GDP には、生産面、所得面、支出面のいずれから見ても、総額は同じになる「三面等価の原則」
という関係があります。
GDP などの一定期間の経済活動を「フロー」というのに対し、過去から蓄積された資産など
は「ストック」とよばれます。国内の実物資産と外国にある純資産(負債を除く)のストックの
合計を「国富」と言います。
経済成長
GDP の増加率を名目経済成長率といいます。そこから物価(財・サービスの平均的な価格)
の変化率を差し引いたものを、実質経済成長率といいます。
1955 年ごろから 1973 年までの高度経済成長期には、実質経済成長率が 10 パーセントを
上回る年も多くみられました。一方、2000 年代から 2010 年代の実質経済成長率は、数パー
セントのプラスの年も多くありましたが、マイナスとなる年もみられました。日本経済は成熟の
時代に移っています。
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22 国民所得と経済成長
景気変動と物価
実質経済成長率の動きをみると、経済の動きには規則的な周期(サイクル)である「景気変動」
があります。景気変動は、「好況」「後退」「不況」「回復」という周期に分けられます。好況から
急速に景気が後退して不況になることを「恐慌」と言います。
好況期に物価が持続的に上昇する状態は「インフレーション(インフレ)」といい、所得の低
い人々ほど、生活が困難になったり、将来の計画が立てにくくなります。一方、不況期に物価が
持続的に下落することを「デフレーション(デフレ)」と言います。デフレになると、消費者が
モノを買わないために企業の売り上げが減り、賃金が減ったり、採用も少なくなって経済が停滞
していくことになります。物価が、らせん階段を降りるように下がり続ける状態はデフレスパイ
ラルと呼ばれます。経済成長と物価安定のバランスが、経済全体の目標になっています。
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