血小板の 4℃と 22℃保存下における血小板膜糖蛋白の変化

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血小板の 4℃と 22℃保存下における血小板膜糖蛋白の変化
グリチルリチン酸(GDP)+ビタミン E(VE)の添加効果
◎河野 克海 1)、福島 摩紀 1)、大館 拓真 1)、立木 里奈 1)、菊池 亮 2)
熊本保健科学大学保健科学部医学検査学科 4 年生 1)、熊本保健科学大学 2)
【目的】
の抗原量(平均蛍光強度)をフローサイトメ
我々の血小板濃厚液(PC)の長期保存に関
ーター(FCM)で測定した。
するこれまでの研究で(1)保存経過に伴い
【結果および考察】
血小板細胞膜のスポンジ状変化と細胞内顆粒
22℃48 時間保存後では無添加と GDP+VE 添
の脱顆粒などの変性が起こることを電顕像で
加の両群とも CD42b 抗原量が有意に低下する
観察、(2)4℃振盪保存 PC は 22℃振盪保存
血小板と低下しない血小板の二相性となった。
に比べて血小板凝集能が高く保持されている
一方、4℃保存では二相性にならず、
こと、(3)細胞膜保護作用とアラキドン酸
CD42b 抗原量は軽度の低下であった。4℃
代謝抑制作用を併せ持つグリチルリチン酸二
GDP+VE 添加群では抗原量は低下せず二相性
カリウム(GDP)を 22℃振盪保存 PC に添加す
もみられなかった。CD61 抗原量は有意な変化
ると、血小板凝集能が高く保持される PC 例が
はみられなかった。GPⅠbα(CD42b)は
あることなどを明らかにしてきた。一方、日
vW 因子受容体として機能しており、血小板の
赤中央研究所の一杉らは、第 63 回輸血細胞治
コラーゲンへの粘着に関与するため、22℃保存
療学会総会(平成 27 年)で、『細菌汚染防止
血小板はコラーゲン粘着に何らかの影響があ
の観点からは低温保存が望ましいが、冷蔵保
るのかも知れない。
存血小板は輸血後の生体内寿命が短いとの報
【連絡先】
告があり、冷蔵保存血小板の質的変化の可能
[email protected]
性がある』として、PC をポリプロピレンチュ
TEL:096-275-2137
ーブ(PPチューブ)に入れて 4℃で 48 時間静置保
存した後に 37℃に加温すると、血小板細胞膜
糖蛋白 GPⅠb 複合体の一部が切断を受けてい
ることが考えられ、冷蔵血小板の細胞膜成分
の質的変化が生体内寿命に影響を与えている
可能性が指摘された。我々の研究で用いてき
た譲渡 PC は、献血者の血清 ALT 値が 61 以上
の「ALT 落ち PC」であったが、平成 28 年
4 月から 101 以上への見直しがあり、譲渡が困
難となった。よって、今回の検討では健常者
から ACD-A 加採血した多血小板血漿(PRP)
を PPチューブ4 本に分注し、無添加対照(PBS 添
加)、GDP(3mM )+ ビタミン
E(0.4mg/mL)添加で 4℃と 22℃で 48 時間振
盪保存した後 37℃にて 30 分間加温し、血小板
膜糖蛋白 GPⅠbα(CD42b)と GPⅢa(CD61)