元勇者だが、今はモブです(白目) ID:94332

元勇者だが、今はモブ
です(白目)
ジャック・ザ・リッパー
︻注意事項︼
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので
す。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を
超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。
︻あらすじ︼
異世界なんか、糞食らえ
何で俺が大嫌いな異世界に転生してるんだ
あ、でももう勇者がいるのか
な
?
彼は転生した。
えっ
ら、平和に暮らそう
!?
この大陸レグルスでは、人間と魔族との戦争が長きに渡り続いていた。そんな世界に
!
そんな世界に転生してきた元勇者が主人公の物語、今開幕
!
!
?
モブの伝説︵白目︶ ││││││
目 次 モブの2話 ││││││││││
1
モブの3話 ││││││││││
8
14
頭のおかしなやつと思われるのには慣れている。しかし、これは事実だ。俺は昔、た
勇者だったりする。
俺の名前はクレム、ただのクレムだ。苗字はない。実は、俺は前世の記憶持ちで、元
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
はなかった。
しかし、その時代の影にもう一人の英雄が存在していることに殆どの者が気付くこと
うとしていた。
しかし、始まりの国ネオンに勇者が誕生したことにより、新たなる時代が幕を開けよ
いた。
ここは始まりの大陸レグルス、ここでは長きに渡り人間と魔族との戦争が続けられて
モブの伝説︵白目︶
1
モブの伝説(白目)
2
だの学生をしていたのだが、異世界に召喚され勇者として世界を救うべく魔物たちと戦
い魔王を倒したのだ。
しかし、その後に王族と教会が俺がどちらの勢力につくのかと聞かれ、
﹃どちらの側に
元の世界に戻り、過ごすがいい ﹄と言われ強制的に元の世界に
もつくつもりはない﹄と答えたのだが、二つの勢力は﹃我々につかないのならば、貴様
の存在は最早邪魔だ
戻った。
!
れていることがわかった。そして、占い師の予言により勇者と呼ばれる存在が俺と同じ
調べた結果、ここは俺がいた異世界ではなく別の世界であり、魔族との戦争が続けら
われた。
せたい﹄と嘘を言ったら、
﹃お前はまだ子供だから、そんなこと考えなくていいよ﹄と言
俺は、この世界の事を学ぼうとした。両親には、
﹃早く多くの事を学んで家族に楽をさ
名付けられ、そんな両親に育てられた。
俺の転生した家は、貧しいながらも笑顔の絶えない優しい家族だった。俺はクレムと
そして、目が覚めると俺は自分が大嫌いな異世界に転生していたのだ。
俺は、俺の人生を滅茶苦茶にした異世界を呪いながら寿命を終えた。
卒扱いとなり世間から白い目で見られ、親からは勘当された。
戻った俺の世界は、俺が召喚されてから時が過ぎ、俺は行方不明扱いとなり退学、中
!
3
時期に生まれたそうだ。
勇者の名前は、セイヴァー・レグルス。レグルス大陸最大の都市、ネオン帝国の皇子
である。レグルス家は、古くから続く勇者の血筋で、数々の偉業を成し遂げてきた。
勇者が存在する。俺は、この瞬間とても良い気分になった。今の俺は普通の人間で、
自由に生きられる。俺は決意した、自由に生きようと。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今日の俺は、家の近くの探索をすることにした。
俺の住む村、ファウストは回りは森に囲まれ、町の中心部に湖のあるそこそこ大きな
村だ。
俺は、その湖のほとりに沿って歩いていると、同じくらいの歳の子供が群がっていた。
その中心には、灰でも被ったような灰色の髪の短髪に、眼帯をつけた少年が虐められて
いた。
俺は、一応止めに入った。
誰だお前
﹂
﹁おい、お前ら何やってるんだ
﹁ん
﹂
?
返してよ
﹂
﹂
こいつが、人族じゃないからに決まってるだろ
れていた瞳は、片方の瞳とは違う金色だった。
﹁やめてよ
!
!
!
お前みたいな﹃忌み子﹄の化け物の言うことなんか聞くかよ
!
たことで神様から罰を与えられたのだと信じられているのだ。
﹂
!
虐めっ子Bが、俺の肩をつかんで命令してきた。
仲間にいれてやるよ
!
それに│﹂
そうしたら俺の
この世界では神の存在が信じられていて、障害を持つものは前世で多くの罪を背負っ
ある。
﹃忌み子﹄、それは普通の人とは違い生まれたときに障害を持つものにつけられる名称で
﹁嫌だね
﹂
虐められている少年が、必死に眼帯を取り替えそうとしている。その少年の眼帯に隠さ
虐めっ子の一人︵もう虐めっ子Aでいいや︶が虐められている少年の眼帯を取った。
!
俺の質問に、虐めっ子の一人が少年の耳を指差す。
﹁クレムだ。で、何でそいつを虐めてるんだ
?
﹁こいつの耳を見てみろよ
!
?
?
﹁クレム、お前もこの﹃忌み子﹄を神様に代わって罰を与えてやろうぜ
モブの伝説(白目)
4
その言葉を聞いた虐められている少年は、俺たちを見て怯えその二色の瞳から涙を流
していた。
人は、自分達を守るために自分とは違うものを排除しようとする生き物だ。全く、こ
いつらを見ていると嫌になる。まるで、異世界で経験した事を繰り返しているようだ。
俺は、少年に近付いて振り返り、虐めっ子達に向かって言い放った。
﹁なんだと
お前ら、こいつも一緒にやっちまえ
﹂
!
﹂
﹁お前の顔は覚えたからな
てやがれよ、クレム
次に会ったら、ギッタンギッタンにしてやるからな
覚え
!
﹁た、助けてくれてありがとうございます。君って、強いんですね。﹂
れていた少年を見ると、少年は俺をキラキラした目で俺の事を見ていた。
虐めっ子は、びしょ濡れになりながら捨て台詞を吐いて逃げていった。俺は、虐めら
!
!
腕をつかんで捻り上げて背中を蹴った。二人は、勢いよく頭から湖に突っ込んだ。
今度は二人で殴りかかってきたが、一人は避けて足を引っ掻けて転ばせ、もう一人は
一人の腕をつかんでその勢いに合わせて後ろに投げ飛ばし、そのまま湖に突っ込んだ。
俺の言葉を聞いた虐めっ子が怒りだし、殴りかかってきた。俺は、殴りかかってきた
!
るだけの嫌な奴になるつもりはない。それに、仲間くらい自分で決められる。﹂
﹁別に、お前たちの仲間にならなくても良いよ。こんな風にこいつを虐めて満足してい
5
当たり前だ、これでも魔王を倒した元勇者だぞ。いくら俺より体格がよくても前世に
比べれば、酔っぱらいの相手よりも楽だ。俺はそのまま家に帰ろうとした。
﹂
だが、何故か虐められていた少年が俺の後ろをついてきた。
﹁......何でついてくるの
﹂
﹁......君の名前なんて聞いてないよ。俺は、何でついてくるのかを聞いてるんだけど
﹁えっ、いや...その...。ぼ、僕の名前は、クルスです。﹂
?
﹁う、ううぅ。ごご、ごめんなさい。助けてくれたから、お礼がしたくて...。﹂
?
それにしても泥だらけの顔だが、こいつよ
俺 は、お 前 を 助 け る つ も り も お 友 だ ち に な る つ も り も な い。
さっさと何処かに行ってくれないだろうか
?
おこぼれで美人と仲良くなれる
?
かもしれないし。俺はそう思い、クルス少年とそれなりに仲良くなることにした。
なら、こいつを使って美人をナンパでもしようかな
く見ると美形だな。それなりに年を取れば美少年になるだろう。
?
何 故 つ い て く る ん だ
るなと睨むが、少年は一定の距離をおいて俺の後をついてきた。
そう言って家に帰ろうとしたが、また少年が俺の後ろについてくる。俺は、ついてく
倒しただけだ。﹂
﹁別に、お前にお礼させるために助けたんじゃない。俺は、あいつらが気に入らないから
モブの伝説(白目)
6
﹁ついてこい。お前、汚いから洗うぞ。﹂
うん、わかった。﹂
転生者クレム、七歳の物語の始まりだった。
﹁えっ
?
7
モブの2話
俺は、クルス少年を連れて自宅まで帰ってきた。
俺がクルスを連れて帰ってきた時に母が出迎えてくれた。母はクルスを見ると、少し
﹂
不振な顔をしたがすぐに笑顔で接してくれた。まぁ、仕方ないとは思う。息子がいきな
﹂
りはっきり言って汚い少年を連れて帰ってくれば、何事かと思うだろう。
﹂
ごめんなさい、クレムは口が悪いの。えっと
﹁母さん、こいつ汚いから洗っていい
よ、よろしくお願いします
﹁あら、きちんと挨拶ができるのね。うちのクレムとは大違いね。﹂
﹁ク、クルスです。クレムさんに助けてもらいました
﹁こら
?
にならない。
一応、温泉というものはあるらしいが、そこまで風呂が好きではないので俺的には気
文化はない。
る。この世界では、シャワーというものはなく、それどころか湯船にお湯を張るような
俺はそう言って、クルスを風呂場まで連れていった。風呂場の桶にはお湯が張ってあ
!
?
!
!
﹁母さん、一言多い。こいつ、風呂に入れてくる。﹂
モブの2話
8
﹁ん
どうかしたか
﹂
?
早く脱げよ、風邪引くぞ。﹂
う、うん......﹂
﹁どうした
﹁え
しょうがないな、俺と同じ年のくせして。
俺の問に、クルスは答えるも動かない。人前で脱ぐのが恥ずかしいのか
一人では脱げないのか
もしかして、見られるのが恥ずかしいのか
﹁や、やだよ......やめてよぉ...。﹂
だが、俺の腕を掴むクルスの手はとても冷たくなっている。早くしないと本当に風邪
うにしていたな。
り大きかったりすると、よくからかわれてかわいそうな奴もいた。本当に、恥ずかしそ
まぁ、昔は俺も水泳の時間で、男同しで相棒の大きさ比べをしたものだ。小さかった
?
下も脱がせようとすると、クルスに腕を捕まれた。
た。上着の下から、筋肉のついていない雪のように白い肌が露となった。
俺は、クルスに両手をあげさせて、泥だらけでグショグショになった上着を引き抜い
﹁えっと......う、うん。﹂
それとも、
俺が服を脱いで全裸になったのだが、クルスは顔を赤くしながらモジモジしていた。
?
?
﹁おい、両手を上げろ。引き抜いてやる。﹂
?
?
?
9
を引く。そう思い、俺はクルスのズボンを強引に脱がせた。
﹁やめてよぉ......お願いだから...。﹂
残りのクルスのカボチャパンツを脱がせようとすると、クルスに頭を殴られた。俺
は、クルスの顔を見ると、クルスは俺を涙目になって睨んでいた。なんだ、そんな反抗
的な顔ができるじゃないか。何故虐められているときにその顔ができないんだ
?
クルスの種族は他人に肌を見せて
﹁別に、からかったりしねぇよ。あいつらじゃあるまいし。﹂
﹁そ、そうじゃない......や、やだぁ...。﹂
クルスは泣きながら俺を拒絶していた。あれか
はいけないとか言う掟でもあるのか
?
た。
クルス少年よ、さっさと洗われろ。
?
俺はそう言って、クルスのカボチャパンツから手を離した。クルスは泣きながら頷い
体を冷やして風邪を引くんだからな。﹂
﹁わかったよ。だけど、後できちんと着替えろよ。濡れた服を着ていると気持ち悪いし、
?
クックックッ、馬鹿め。この俺が、そんな簡単に諦めるわけがないだろ
﹂
!
俺は、クルスのパンツをつかんで一気にずり下ろした。
﹁かかったなアホが
モブの2話
10
﹂
﹁えっ......ぃゃあー
えっ
!?
﹂
!
なった。
﹂
もしかして俺、とんでもないことをしでかしたのでは 頭の中が真っ白に
俺の後ろから、母の声が聞こえた。
﹁クレム......何をしているのかしら
?
いた音が聞こえた。
俺の手から力が抜け、クルスのパンツを離した。クルスのパンツがパサリと落ちる乾
も、犯罪的な絵面だった。
今の俺はクルスのパンツを握りしめ、クルスはしゃがみこんで泣いている。どう見て
?
あ、あれ
彼ではなく......彼女だった。
そう、クルス少年は、
アヴァロンの方が付いていた。
無い筈のものがあった。fate的に言うと、クルスにはエクスカリバーではなく、
そう......無かったのである。
は、俺と同じような相棒ではなかった。
クルスは悲鳴を上げて、一瞬でしゃがみこんで体を隠した。俺の目に写り込んだの
﹁......ん
?
?
11
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
﹁クルスさん、誠に申し訳ございませんでした
﹂
クルスは、目元に涙の後をつけて帰ろうとした。
﹁もう、いいよ。僕は、もう帰るよ。﹂
髪を切り、ズボンを履いていたのだ。
れば掴まれる、スカートだと走りづらいので逃げられない。そういった理由で、彼女は
しかし、これも仕方がないことだとも思う。彼女は虐められていた。髪を長くしてい
しくなく、髪は男のように短髪でズボンを履いているのだ。女の子には見えない。
だが、俺も問題があったがクルスの方にも問題があると思うのだ。クルスは女の子ら
美しい金色の髪だった。クルスの正体はエルフだったのだ。
今のクルスは、灰色の髪は本当に灰を被っていたようで洗われたクルスの髪は、とても
本当に、クルスには大変なことをしてしまった。あの後、クルスには母が体を洗った。
俺は、クルスに向かって土下座をして謝った。
!
......虐めないで...くださいっ
!
﹂
俺は、無意識にクルスの手を掴んだが、振り払われてしまった。
﹁ご、ごめんなさい
!
モブの2話
12
クルスは、俺を見て怯えていた。彼女の目は、虐めっ子達が俺を虐めさせようとして
いた時にしていたあの時の目だった。
彼女は、俺が助けるまでずっと一人で虐められ続けていたのだろう。俺の手を振り
﹂
払ったことで、自分はまた虐められてしまうのでは、そう思って必死なのだろう。俺は、
クルスの手を握った。
﹂
﹁クルス、俺と友達になってくれないか
ない。
なら、なってやろうじゃないか
彼女の、クルスの希望に
これが転生者クレム七歳の、責任の取り方だった。
﹁......う、うん。よろしくお願いします。﹂
﹁俺を、クルスの友達にしてくれ。﹂
!
!
をまるで希望のように見ていた。それに、今回のことで彼女への責任をとらないといけ
クルスは、俺が守ってやらなきゃいけない。虐められていた彼女は、助けてくれた俺
﹁......えっ
?
?
13
レベルカードは、12才から発行され学校で初めて手に入れることができるのだ。発
さんが一番強いことが判明した。
カードを見せてもらった。父さんはレベル28、母さんはレベル52というこの中で母
俺の方はと言うと、この世界にレベルの概念があることを学んだ。父さん達にレベル
だった。
いて女の子らしくなっていた。相変わらず眼帯だが、今では村一番の美少女として有名
そして、彼女は可愛くなっていた。短かった髪は長くなり、ズボンからスカートを履
に水の玉を撃ち放つ位に強くなった。もう俺が守らなくても良さそうだ。
めに魔法を学んでいたのだ。最初はシャボン玉しか出せなかったが、今では虐めっ子達
次に、クルスは虐めっ子達に抵抗する力を手にいれた。エルフである彼女は、戦うた
が、自然と笑うクルスは笑うと結構可愛いのだ。
まず、一番始めにクルスは明るくなった。初めのうちは、ぎこちなく笑っていたのだ
スは俺が友達になってから変わっていった。
クルスと友達になってから3年、俺は10才になった。意外と充実した3年で、クル
モブの3話
モブの3話
14
行されたレベルカードは、本人の素質によって最初のレベルは異なり、強さのランクが
決まるのだ。レベル15が平均とすると、30が一般兵、50が上級兵、75以上は歴
戦の猛者とされる。勇者に至っては、歴代で最も弱いものでも150を越えるらしい。
母さんは元々、ネオン帝国の王宮魔導士だったのだが、父さんに求婚され、咄嗟に
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
に。
だが、俺はまだ知らない。自分の心配をしている間に、別れの日が近づいていること
が、きっと大丈夫だと思いたい。
おかしな能力を持っているせいで、勇者のパーティーに加えられないかが心配になる
多分、今の俺の体は前世とは違う体だろう。
う呆け話も聞かされた。
母さんは、父さんがあまりにも必死で頑張っている姿に感動し、結婚したらしいとい
は死ぬ気でレベルを10以上上げたらしい。
﹃一ヶ月以内にレベルを10以上上げたら付き合ってあげる﹄と言われたそうで、父さん
15
﹂
その日、俺は本を読みながらクルスが家に来るのを待っていた。そんな俺に、珍しく
父さんが話しかけてきたのが始まりだった。
﹁クレム、今日もクルスちゃんと遊ぶのかい
﹁ああ。﹂
﹂
クルスと俺が結婚する
......無いな。俺の目
﹁勝手にいうのは構わないけど、俺はクルスとそういう仲になるつもり無いよ。告白さ
スちゃんが僕の娘になると思うと鼻が高いよ。﹂
﹁クレムは幸せ者だな、クルスちゃんに好かれていて。本当にお父さんは嬉しいよ、クル
?
れたとしても、嫌いだって言うつもりだし。﹂
﹁え
﹂
﹁ん
父さんは何を言っているのだろう
?
?
だが、クルスはエルフである。普通の人間よりも若くいられ、長く生きる存在だ。結
最大目標なのだ。
らしをすることだ。そして二人で年を取りながら、孫に囲まれて見送られることが俺の
標は、強くて優しく、家事や料理ができるそこそこ美人の人間の奥さんを貰って隠居暮
?
?
モブの3話
16
婚しても、同じように老いていくわけでもない。先に死ぬのは絶対に俺であろう。彼女
が幸せになるとすれば、同じエルフや長く生きることのできる種族と結婚する方が現実
的だ。俺と結婚しても、俺は寿命で亡くなりもしかすると後を追う形で自殺も考えられ
る。愛する人にそんな死に方をしてほしくないのだ。
俺の説明を聞いて、父さんが俺に聞いてくる。
﹂
?
今日俺は、まだクルスに会ってないけど
﹂
﹁クレム、さっきクルスちゃんが泣きながら出ていったけど、喧嘩でもしたの
﹁えっ
?
?
﹂
?
さんが部屋に入ってきた。
優しかった父さんは、初めて俺をゴミを見る目で見てきた。そんな悪い空気の中、母
あることが恥ずかしいと思ったのは、これが初めてだ。﹂
﹁......自分の息子に言いたくはなかったが、クレム、お前は最低だな。お前が息子で
いだと言うことだ。﹂
好きになるよ。俺の役目は、その日が来るまで友達をして、クルスに君のことなんて嫌
てほしいけど、幸せにするのは俺じゃない別の奴だ。多分、そのうちクルスは別の人を
﹁知ってるよ、だから俺は彼女と友達以上の関係にならないんだ。彼女には幸せになっ
言ってるのか
﹁クレム......お前、もしかしてクルスちゃんがお前のことを好きなことを知ってて
17
クルスちゃんを追いかけろ
!
きっと、さっきの話を聞かれたんだろう
!
﹂
!
多くの荷物を積んだ馬車の荷台で、一人の女の子が泣いていた。それをあやすよう
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
転生者クルス、10才の初めての別れだった。
た。
スはあの日、別れを言いに来たのだと知ると俺の中にモヤモヤしたものが残ってしまっ
クルスは、俺の家に来た日にネオン帝国に引っ越したと村の人から聞かされた。クル
したが、その日以来クルスは俺の家に来なかった。
んが、恋は理屈じゃない等言ってきたが、一応俺が明日クルスに謝るということで解決
家に帰ると、母さんに叩かれた。そして家族会議をすることになった。母さんや父さ
できなかった。
く、俺はクルスと遊んでいた場所を虱潰しに探した。しかし、クルスを見つけることは
父さんに言われ、俺は出ていったクルスを追いかけた。外に出るとクルスの姿はな
﹁クレム
モブの3話
18
に、女の子の母親が女の子に寄り添っていた。
﹂
!
彼の知らない所で、一人の少女が動き出そうとしていた。
﹁......教えて、お母さん。﹂
﹁そう......クー、どうにかする方法があるわよ。﹂
て......うわぁぁぁん
﹁だって......クレム君は、私が好きだって知ってて......でも、私のこと嫌いだっ
﹁クー、泣かないで。クレム君とは、もう会えない訳じゃないんだから。﹂
﹁ひっぐ...ぐすっ......﹂
19