X 線光電子分光 X-ray Photon Spectroscopy (XPS) ●物質表面に含まれる元素の定性、定量分析および化学状態の分析 ●水素、ヘリウムを除くすべての元素を分析対象とすることができる ●エッチング装置と併用することで深さ方向の元素分布イメージングが可能 測定原理 物質表面に X 線を入射すると、光電効 果によって表面から外部に光電子が放出される。 光電子は、元素に固有の電子軌道エネルギーを持 ち、さらにそのエネルギー値は元素の化学状態の 違いにより若干の違いを生じるため、放出される 光電子の数およびエネルギー値を測定すること により、物質表面に含まれる元素の定性、定量分 析および化学状態の分析を行なうことができる。 得られる情報 放出される光電子のエネルギ ースペクトルのピーク位置から定性分析(元素 図 1. 角度分解光電子分光装置 (KEK, BL-28A)*1 の特定)、ピークの積分値から定量分析が可能で ある。ピークシフトから外殻電子の状態(価数、化学結合)に関する情報が得られる。これらの情 報は、物質表面から数 [nm] 程度の深さに渡って得られる。 特徴 水素、ヘリウムを除くすべての元素を分析対象とすることができる。化学状態に関する情 報を得ることができる。得られる情報は資料の極表面(数 nm 程度)であるが、エッチング装置 と併用することで深さ方向分析が可能。 応用例 GaN 系半導体の電子状態の ARPES (角度分解光電子分光)による評価 (KEK) : ハライ ド気相成長法にて形成した GaN バルク結晶試料の劈開断面おける電子エネルギー帯分散構造 の観察に成功 http://pfwww.kek.jp/innovationPF/10_PUBLICATION_ARCHIVES/2014FY_USER_REPORT/2014I010.pdf 図 2. X 線の照射による光電子の放出*2 図 3. (a)ステンレス腐食細孔の(b)XPS スペクトルによる元素分析*3 東北放射光施設における展開 高輝度の軟 X 線を使用することにより、試料表面近傍の軽元 素に関する情報を短時間で効率よく調査することが可能である。マイクロビームの利用による、 マッピング時の位置分解向上が期待できる。 既存ビームラインとの基本スペック比較 XPS (軟X線) SPring-8 SLiT-J BL-06 BL15XU BL46XU アンジュレータ アンジュレータ アンジュレータ エネルギー範囲[keV] 3~30 2.2~10 6~35 エネルギー分解能 ΔE/E ~10-4 ~10-4 ~10-4 光源 ビームサイズ [μm] <0.1 30 500~500 光子数(集光位置) [photons/sec] ~1010 ~1012 ~1013 XPS (軟X線) SPring-8 SLiT-J KEK (PF ring) BL-02 BL17SU/Ac BL25SU/A BL-7A BL-13A 光源 アンジュレータ アンジュレータ アンジュレータ 偏向電磁石 アンジュレータ エネルギー範囲[keV] 0.1~3 0.3~1.8 0.12~2.0 0.05~1.3 0.03~1.6 エネルギー分解能 ΔE/E ~10-4 ~10-4 ~10-4 10-2~10-3 10-3~10-4 ビームサイズ [μm] ~1 100×100 0.1~数100 300×3000 630×120 光子数(集光位置) [photons/sec] ~1013 ~1011 ~1011 ~1011 108~1012 *1 : https://www.kek.jp/ja/Facility/IMSS/PF/PFRing/XPS/ *2 : http://www.nanoanalysis.co.jp/business/device_11.html *3 : https://www.nsst.nssmc.com/research_support/pdfdata/buturi_xps_example.pdf
© Copyright 2024 ExpyDoc