楽読 (ラクヨミ) 2016年7月19日 Vol. 1,120 トルコのクーデター未遂で注目が高まる、 大統領権限の強化に関する意識の変化 トルコで7月15日夜、エルドアン大統領が実質的に率いる与党AKP(公正発展党)政権に不満を持つ軍の 一部勢力が、クーデターによる国の権限掌握を試みました。同日のニューヨーク市場では、トルコ・リラが一 時、1米ドル=3.04リラ前後と、前日比5%を超える下落となったほか、円相場が1米ドル=104円台に上昇し ました。しかし、その後、エルドアン大統領からの呼びかけを契機に、軍への抗議が国民の間で拡がったこ となどから、クーデターは結局、未遂に終わり、そして、週明け18日に、円相場は1米ドル=106円台に軟化 しました。しかし、トルコ・リラは1米ドル=2.9リラ台と、下げ幅を縮めるにとどまったほか、同国の主要株価指 数は前週末比約7%の下落、国債利回りは上昇(債券価格は下落)しました。 今後しばらくは、今回の事件に関与した勢力などへの徹底した弾圧が見込まれます。また、エルドアン大 統領が今回の事件を受けて、首相が実権を持ち、大統領は儀礼的な役割にとどまる現行のトルコの体制は 望ましくなく、実権大統領制の実現を急ぐべきだとの思いを強くする可能性があります。なお、与党AKPは、 大統領権限の強化に必要な憲法改正を国民投票無しで行なえる、議会の3分の2の議席を有していません。 また、今回の事件が起きる前の段階では、憲法改正に必要な国民投票での過半数の支持が得られるかど うか、定かでない状況でした。こうしたことから、政治面では、今回のクーデター未遂を受けて、大統領権限 の強化について国民の意見がどのように変化するかに注目すべきと考えられます。 トルコ・リラは、トルコの経常赤字の縮小に伴ない、このところ安定感を見せ始めていました。しかし、クー デターは未遂にとどまったものの、市場では同国の政治面でのリスクが上昇したと捉えられたことなどから、 18日のリラの戻りが限定的となったほか、株式や国債の売りにつながった模様です。経常赤字の縮小は、 今後もリラを支える重要な要因の一つと考えられます。このため、エルドアン大統領やAKP政権にとって、 経済面で最も重要なポイントは、治安を少しでも早く回復・改善させ、観光や企業・家計の心理などを支える ことに加え、海外からの投資の流入を促すことだと考えられます。 トルコのGDPおよび経常収支の推移 トルコ・リラの推移 55 (円) (2015年1月1日~2016年7月18日) (リラ) 2.2 6 (%) (2012年1-3月期~2016年10-12月期予想)(%) 0 GDP(前年同期比、左軸) リラ高 50 経常収支(対GDP比、右軸) 2.4 5 リラ安 4 45 対円(左軸) 40 -2 市場 予想* -4 2.6 3 -6 2 -8 1 -10 2.8 35 3.0 対米ドル(右軸) 30 15年1月 15年7月 3.2 0 -12 12年 13年 14年 15年 16年 16年1月 16年7月 *経常収支の予想は年ベース 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成 ※上記は過去のものおよび予想であり、将来を約束するものではありません。 ■当資料は、日興アセットマネジメントが市況等についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘 資料ではありません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料 作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。■投資信託は、値動きのある資産(外貨建 資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことが あります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付 目論見書)をご覧ください。 1/1
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