テキスト: 河野俊丈 著 「結晶群」(共立出版) 担当: 田中 守 (東北大学) 目標: 平面結晶群の分類をオービフォールドを通して理解する。 内容: 本書では、物質科学の分野で重要な役割を果たしている結晶群の分類について紹介され ています。まず、第 1 章で平面(2 次元ユークリッド空間)における合同変換群の基礎が書か れており、図形の対称性と群との関係について直観的な理解が得られると思います。第 2 章で は、平面結晶群の基本的な定義と性質が述べられており、平面結晶群の分類が与えられていま す。(平面結晶群の分類は、第 3 章で証明されます。)第 1 章、第 2 章を読み進めるのに必要な 知識は、ほとんど学部 2 年までで習うもので、一人でも読み進められると思います。 第 3 章では、被覆変換群や曲面のオイラー数などが書かれています。証明は直観的に書かれ ている部分もあるので、しっかり理解するためには [1], [2] などを参考に読み進めるむことが必 要です。しかし、このセミナーではそこに深入りせずに、3 章 4 節の平面結晶群の分類の証明 を理解することを目標にしたいと思います。その分類に用いるオービフォールドは、サースト ン幾何化予想(ポアンカレ予想の一般化)におけるザイフェルトファイバー空間の構成にも用 いられる重要な幾何学的対象ですが、被覆空間論と曲面論が分かれば理解するのは容易です。 第 4 章では、物質科学の分野で結晶構造の分類に用いられている空間結晶群についての分類 と関連する話題について書かれています。第 5 章では、双曲空間の商空間であるオービフォー ルドと、より高次元の結晶群、準結晶などと呼ばれるペンローズタイリングの 3 つについて簡 単に述べられています。 セミナーの進め方: 参加希望者は、事前に 1 章、2 章、3 章を読んできてもらいます(もちろん 完全に理解できていなくても良いです)。ところどころ誤植があるので気を付けて読んでくだ さい。セミナーは、最初は 3 章 4 節の前までで理解できていない部分があれば互いに発表しな がら、みんなで解決していくことにします。最終的に、3 章 4 節の平面結晶群の分類の証明の 部分を分担して読み進め、理解を深めていくことを目標とします。さらに時間が余るようであ れば、第 4 章を読み進めることとします。 参考文献 [1] 加藤十吉, 位相幾何学, 裳華房, 1988 [2] I.M. シンガー, J.A. ソープ 著, 赤攝也 監訳, 松江広文, 一楽重雄 共訳, トポロジーと幾何 学入門, 培風館
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