論文審査の要旨

論文審査の要旨
報告番号
甲第14号
氏 名
ルハガワスレン ウーガンスレン
(Lkhagvasuren Uugansuren)
〔論文題目〕
Development of C/C Composites with Bacterial Cellulose and Tribology Properties
(バクテリアセルロースを用いた C/C コンポジットの開発と摩擦・摩耗特性)
〔論文審査委員〕
主
査
小 沢
喜
仁
副
査
高 橋
隆
行
副
査
中 村
和
正
〔論文審査の要旨〕
本博士論文は、酢酸菌が生産する天然繊維であるバクテリアセルロース(BC)を取り上げ、
BC がセルロースファイバーでありながらナノ・オーダーの三次元編目状構造を有するため優れ
た機械的特性を示すことに注目して、独自に工夫した材料開発を行い、その特性を明らかにした
ものである。
論文の構成としては、第 1 章は総論であり、この論文の背景と研究の目的を述べるとともに、
章立てを示している。第 2 章では注目する BC についてその特性を解説し、これまでの研究や応
用例の調査結果、工業材料としての利用を目指す先行研究の概略を述べ、さらなる高度化の必要
性を示している。第 3 章では BC を用いた C/C コンポジットの成形法について、まず航空宇宙用
材料として用いられている C/C コンポジットについて解説し、BC の特性と分散性改善、および
フェノール樹脂の特性について述べ、直接含浸法による BC スラリーとフェノール樹脂との中間
成形材の作製、プレスと焼成の行程について説明している。第 4 章ではナノ C/C コンポジットの
機械的特性と摩擦摩耗特性に及ぼす焼成温度と昇温速度の影響を明らかにするとともに、摺動面
に関する SEM 観察および EDS 分析を行って材料特性や構造の変化について考察している。第 5
章では Si を含有する竹炭粉 BP を用いた Si-C/C コンポジットの開発とその機械的特性と摩擦摩
耗特性を評価している。分散性を改善した BC と微細化させた BP を用いることで材料開発に成
功し、焼成温度と BP 配合量が摩擦摩耗特性に及ぼす影響を明らかにし、第 4 章と同様の手法を
用いて、BC と BP との相互作用による摩擦摩耗特性の発現の様子を解明している。第 6 章では、
さらに、マトリックスであるフェノール樹脂を用いた焼結材と、フェノール樹脂に BP のみを含
有させた複合材料を作製して、自らの開発したナノ C/C コンポジットと Si-C/C コンポジットの
特性を総合的に比較することで、BC と BP の材料構成や相互作用、および複合材料としての材
料特性に関する影響について実験的評価をもとに明らかにし、まとめている。
申請者は、本博士論文において、BC 繊維がもつ、従来の炭素繊維強化炭素材料にて使用され
ている炭素繊維と比較して 1000 分の 1 の細かな構造を材料内に実現する成型手法を開発した。
さらに、自らの材料開発手法の工夫・改善を行って、その機械的特性や摩擦摩耗特性という機能
性に及ぼす成形条件の影響を明らかにし、第 3 成分としての Si を含有する BP 添加において材料
成型手法を開発し性能向上に成功している。摩擦摩耗特性における BC 繊維や第 3 成分 BP 添加
の相互作用による効果については、開発した材料を利用した実験の計画的実施、さらに微視的な
観察等に基づく周到な考察を系統的に行って、BC 繊維の効果や BP 配合には最適量が存在する
ことを明らかにするなど、天然繊維由来の複合材料が持つ特性を明らかにしている。天然繊維の
特性を生かした新規摺動材料の開発に成功していること、従来の軸受けやボールベアリングなど
が使用できないマイクロマシンや資材な部品における可動部分の摩擦特性を大きく向上させ、新
たな用途を生み出す可能性を示していることより、工学的にも工業的にも有用であり、独創的な
研究となっていると言える。
本論文は、公表論文として英文誌 2 編、和文誌 1 編(掲載決定・受理)
、国際学会発表 5 編(主
たる執筆 2 編、共著 3 編)、国内学会発表 5 編、その他の論文・学会発表 3 編(科学技術教育)
の内容を含み、これらを体系的にまとめたもので、博士号授与の条件(1)公表論文 3 報、内 1
報は、英文、査読あり、筆頭のもの、
(2)国際学会での発表 2 件、これらの条件項目を満足して
おり、学術的な価値が高いものと認められる。
これまでの予備審査における審査委員の指摘事項に対応して、研究の目的、開発材料の従来材
料との比較による優位性やさらなる応用の可能性、BC を用いる理由及びその使用用途の例示、
さらに本材料が機能を発揮するメカニズムなどについてていねいに検討が行われ,研究内容を高
めてきた。自然素材を扱った材料であることから統計的なデータ集積による実験結果の提示につ
いて議論があり、ばらつきの要因としての焼成温度や昇温速度の違いによる炭素化度合いの影響
を踏まえながら材料特性の把握ならびに界面の性質や強度変化の検討が必要であることや、開発
材料が摩擦・摩耗特性に優れることに対する考察を裏付けるための科学的な根拠付けが不可欠で
あることから、系統的な実験データの積み重ねが行われてきていることは評価された。最終審査
における質疑応答のように、今後の課題はあるもののおおむね的確な対応がなされており、博士
論文としての完成度に関わる問題はない。
これらのことから、申請者の博士論文は一定の水準に達しており、
「合格」と判断した。
備考:審査の要旨は、2,000字以内とする。