K2BS/北九州市立大学大学院 マネジメント研究科

北九州市における就労継続支援 B 型事業所の工賃向上と
仕事の確保に向けた共同受注の在り方
氏 名
指導教員
安部
松永
千秋
裕己
要旨
障害者の働く場には、一般就労と福祉的就労とがある。この内、福祉的就労、中でも
事業所数と利用者の多い「就労継続支援 B 型事業所(以下、B 型事業所)」によって得
られる報酬(以下、工賃)は、一般就労と比べ非常に低い。筆者は、病気や事故によっ
て障害者となった方々の社会復帰に向けた支援を行う中で、この福祉的就労と一般就労
での仕事内容や報酬の“ギャップ”に苦しむ方々を何度も目の当たりにしてきた。そこ
で、B 型事業所での仕事の確保と工賃向上が期待されている共同受注にスポットを当て
た調査研究を行った。
まず 1 章では問題提起と分析の対象等を設定した。
2 章では、障害者の就労についての実態を先行研究等より整理し、障害者の就労状況
やそれに伴う収入の状況が未だ低水準であることが明らかとなった。
3 章では、B 型事業所へのヒアリングや先行研究等から、B 型事業所における工賃向
上への課題を抽出し、その対策として、これまで国の施策として行われてきた事業所
個々に対する支援に加え、事業所同士が連携していくことも必要であることが明らかと
なった。
4 章では、まずは 共同受注を行っている他県へのヒアリングを基に、B 型事業所で
の共同受注の中心である「共同受注窓口組織」の実態を明らかとし、次いで先行研究等
により中小企業における共同受注や連携組織の効果・課題を抽出した。そしてこれらか
ら、福祉の分野における連携と中小企業における連携における仕組みや課題の共通点、
相違点を見出し、中小企業間での取り組みが B 型事業所間においても活用できること
が分かった。
そして 5 章では、これまでの内容を踏まえ、今後北九州市で取り組みが予定されてい
る「共同受注」についての実態を整理し、その課題と対策を提案した(図表 1)
。
図表 1 北九州市における課題とその対策
【課題】
事業所のビジネスに関する意識・能力不足
事業所の意識・目的・能力等の差が大きい
共同受注における知識・経験不足
事業所が多忙
ビジネス視点が不足している
【計画以外の対策】
・OJT として、受発注における企業とのやりとりを窓
口ではなく事業所が行う
・事業所見学会を開催する
・対象を参画の意志を表している事業所に絞る
・活動における効果を可視化する
・中小企業の例も参考にする
・業務改善を図るビジネスの知識を得る
・民間企業向けセミナー等も用いた人材育成を図る
・市場調査を行う
出典:筆者にて作成