ほうれんそう収穫時の草丈分布の特徴と一斉収穫の可能性

平成17年度試験研究成果書
区 分
研究
題
名 ほうれんそう収穫時の草丈分布の特徴と一斉収穫の可能性
[要約]ほうれんそうの収穫時の草丈の分布は、正規分布より左に歪み、尖っている。代表値
には相加平均ではなく中央値を用い、ばらつきも四分位偏差を用いることにより一斉収
穫率向上のための条件を整理することができる。
キーワード
1
ホウレンソウ 生育斉一化
播種
県北農業研究所
営農技術研究室
背景とねらい
雨よけほうれんそうは草丈の系統出荷規格幅が3 cm であることから、2∼3回の選択収
穫をしている現状である。これを改善するため、生育斉一化のための対応策を検討している
が画期的な技術は開発されていない。そのため、現状の生育のばらつきを前提とした場合の
一斉収穫率向上のための草丈条件を整理した。
2 成果の内容
(1) ほうれんそう収穫時の草丈は正規分布を基準とすると、歪度が負で、尖度が正の分布をす
る。そのため、草丈の代表値としては相加平均値ではなく、中央値を用いる方がふさわしい
(図1−1∼1−3、図2)。
(2) 中央値は相加平均値より高くなり、四分位偏差は約 3 ∼ 5cm で、この範囲に全体の 50%
が分布している。分布範囲は「中央値−(約 2 ∼ 3cm)」から「中央値+(約 1 ∼ 2cm)」の
ところである(図2)。
(3) 一斉収穫率を 70%以上にする場合、草丈を6∼8 cm の幅(下限値 22 ∼ 24cm、上限値 28
∼ 32cm)に設定すると可能となるが、収量は慣行(選択収穫、25 ∼ 28cm で収穫率 90%)
の 70 ∼ 87 %となる。また、一斉収穫率を 80%以上にする場合は、草丈7∼ 10cm の幅(下
限値 22 ∼ 23cm、上限値 29 ∼ 33cm)の設定で可能となり、収量は慣行の 79 ∼ 99%とな
る(表1)。
(4) 草丈の幅を3 cm(25 ∼ 28cm)のまま変えずに、26 ∼ 29cm、27 ∼ 30cm と長い方に移行
していくだけで収量は増加する(表2)。
3 成果活用上の留意事項
(1) 本成果は、実質3品種の7月下旬穫り作型で、それぞれの一調査時期の結果をまとめたも
のであるが、作型、品種に関わらず同様の分布をしているものと思われる。
4 成果の活用方法等
(1) 適用地帯又は対象者等
(2)
5
期待する活用効果
一斉収穫率向上に向けた出荷規格の見直し等の参考に資する。
当該事項に係る試験研究課題
(836)ホウレンソウの機械収穫に適した品種の選定(平成 14 ∼ 17 年度、委託)
(1000)機械収穫に適したホウレンソウの形態・形質の解明(平成 14 ∼ 17 年度、委託)
6 参考資料・文献
(1)平成 15 ∼ 16 年度 試験成績書 県北農業研究所 営農技術研究室
(2)平成 17 年度 試験成績書 県北農業研究所 営農技術研究室(未定稿)
試験成績の概要(具体的なデータ)
40
35
30
25
20
15
10
5
0
正規分布
下ヒンジ
下内境界点
中央値
上内境界点
上ヒンジ
最大値
最小値
4.0
∼
7.0 7.0
∼
10 10
.0∼ .0
13 13
.0∼ .0
16 16
.0∼ .0
19 19
.0∼ .0
22 22
.0∼ .0
25 25
.0∼ .0
28 28
.0∼ .0
31 31
.0∼ .0
34 34
.0∼ .0
37 37
.0∼ .0
40 40
.0∼ .0
43 43
.0∼ .0
46 46
.0∼ .0
49
.0
相対度数(%)
7
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
正規分布
4.0
∼
7.0 7.0
∼
10 10.
.0∼ 0
13 13.
.0∼ 0
16 16.
.0∼ 0
19 19.
.0∼ 0
22 22.
.0∼ 0
25 25.
.0∼ 0
28 28.
.0∼ 0
31 31.
.0∼ 0
34 34.
.0∼ 0
37 37.
.0∼ 0
40 40.
.0∼ 0
43 43.
.0∼ 0
46
.0
相対度数(%)
図1−1 品種A-1における草丈の度数分布図
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
正規分布
4.0
∼
7.0 7.0
∼
10 10.0
.0∼
13 13.0
.0∼
16 16.0
.0∼
19 19.0
.0∼
22 22.0
.0∼
25 25.0
.0∼
28 28.0
.0∼
31 31.0
.0∼
34 34.0
.0∼
37 37.0
.0∼
40 40.0
.0∼
43
.0
相対度数(%)
図1−2 品種B−2における草丈の度数分布図
図1−3 品種Cにおける草丈の度数分布図
40
38
36
34
32
30
28
26
24
22
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
28.5
品種A-1
254
27.2
4.9
34.8
34.8
30.3
28.5
25.4
18.0
6.6
パ-センタイル(15.0% 23.1
パ-センタイル(20.0% 24.6
パ-センタイル(90.0% 32.0
パ-センタイル(95.0% 32.6
四分位偏差
4.9
尖度(とがり)
3.76
歪度(ゆがみ)
-1.72
件数
平均
標準偏差(n)
最大値
上内境界点
上ヒンジ
中央値
下ヒンジ
下内境界点
最小値
26.2
27.0
27.0
品種A-2 品種B-1 品種B-2
116
159
210
25.4
26.1
25.7
3.4
4.0
4.4
30.6
31.6
32.2
30.6
31.6
32.2
28.0
28.8
28.2
26.2
27.0
27.0
23.5
25.2
25.0
16.7
19.8
20.2
13.2
7.6
7.0
21.8
23.0
22.3
22.5
24.0
24.2
29.5
29.8
29.8
30.0
30.2
30.1
4.5
3.6
3.2
0.70
3.65
3.87
-0.90 -1.75 -1.91
25.0
品種C
255
24.3
3.2
30.2
30.2
26.4
25.0
23.2
18.4
9.0
21.6
22.2
27.7
28.6
3.2
2.81
-1.29
図2 各品種のボックスプロットと基本統計量
表1 一斉収量率向上のための草丈条件
25∼28cmで 草 丈 の
一斉収穫率向上のための適正草丈幅
一斉収穫率70%以上
一斉収穫率80%以上
の収穫率*1 中央値
(%)
(cm)
下限(cm)
上限(cm) 幅(cm) 収量慣行対比率*2 下限(cm)
上限(cm) 幅(cm) 収量慣行対比率*2
品種A-1
43
28.5
24
∼
32
8
87
23
∼
33
10
99
品種A-2
24
26.2
22
∼
30
8
77
21
∼
30
9
89
品種B-1
40
27.0
24
∼
30
6
81
23
∼
31
8
93
品種B-2
49
27.0
24
∼
30
6
83
22
∼
31
9
93
品種C
43
25.0
22
∼
28
6
70
21
∼
29
8
79
*1)調査日における収穫率
*2)慣行収量:選択収穫により25∼28cm規格で収穫率を90%(出芽した全体を100%としている)として試算。
表2 草丈レンジ変更による収量増加シミュレーション
*
変更草丈レンジによる収量慣行対比率
26∼29cm 27∼30cm 28∼32cm 25∼30cm 30∼35cm
品種A-1
107
111
120
107
133
品種A-2
107
117
108
品種B-1
112
117
123
109
品種B-2
109
118
129
109
品種C
106
119
104
平均
108
116
124
107
*)25∼28cmでの平均調製重を慣行とした。