スキルミオニクス 新しい磁気構造とそのダイナミクス 理化学研究所 東京大学 創発物性科学研究センター 副センター長 工学系研究科 物理工学専攻 永長 教授 直人 1 従来技術とその問題点 1970、80年代に精力的に研究された磁気バブルはメモリー への応用が検討されたが、 サイズがミクロンオーダーで記憶密度が小さい 磁場による操作が必要、 ピン止めによって運動が阻害 等の問題があり、広く利用されるまでには至っていない。 2 スキルミオンとは ある種の磁性体に現れる渦状の磁気構造 一度できると「巻付き数」のために安定に存在 MnSi, (Fe,Co)Si, MnGe, など反転対称性を 持たない磁性体でスピン軌道相互作用が働く 場合 サイズ 約3-100ナノメートル 磁気双極子相互作用によっても実現 しかしサイズは大きくなる。 3 スキルミオンの発見 3次元結晶に おける相図と 中性子散乱に よる観測 2次元薄膜に 於ける相図と 電子顕微鏡に よる観測 4 スキルミオンの運動 スキルミオンと創発 電磁場のもたらす 種々の現象 不純物を「回転運動」によって 避けて運動するスキルミオン 5 スキルミオンの運動 jcritical ≈ 106 A / m 2 10 12 2 j ≈ 10 − 10 A / m c.f. critical 磁壁の場合 電気的にスキルミオン の運動を検出 磁壁の電流駆動に比べ て10万分の1の電流密 度で駆動できる 6 スキルミオンの生成 ノッチ構造に電流を印加 レーザー照射 7 新技術の特徴・従来技術との比較 • スピン軌道相互作用を使うことでナノスケールのスキルミオ ンが生成できることを発見。 • 従来の磁場による制御ではなく、電流による制御が可能と なった。しかも磁壁の電流制御と比べて、5ケタ以上小さい電 流密度(~105 A/m2)で駆動が可能。 • 本技術の適用により、バブルメモリーよりも記憶密度が104倍 に、消費電力が情報量あたり105分の1に削減できることが 期待される。 • スキルミオンの生成、消滅を電流や光で高速・簡便に行うこ とができる。 8 想定される用途 • ナノスケールの加工技術を適用することで高密度・高速メモ リーへの応用が開けると考えられる。 • 上記以外に、スキルミオンを用いた論理回路が実現されるこ とも期待される。 9 実用化に向けた課題 • 現在、スキルミオンを実現できる温度が絶対温度で300K以 下でまだ室温に至っていない点が解決すべき課題の一つで ある。 • ナノサイズの加工技術の開発、電子顕微鏡以外の観測技術 (電気的、光学的測定)の開発を行っていく。 • 実用化に向けて、スキルミオンをナノ秒の間に、数十から数 百ナノメートルの距離を正確に動かす技術を確立する必要も あり。 10 企業への期待 • 未解決のナノ加工技術については、金属・半導体技術により 克服できると考えている。 • 磁性体に経験を持つ企業との共同研究を希望。 • 研究者を創発物性科学研究センターへ派遣し、協働で研究 開発を行ってくれる企業を募りたい。 11 本技術に関する知的財産権 ① 発明の名称: スキルミオン駆動方法およびマイクロ素子 出願番号 :特願2012-232324 出願人 :独立行政法人理化学研究所 発明者 :于秀珍 十倉好紀 金澤直也 小野瀬佳文 ② 発明の名称: 出願番号 出願人 発明者 ③ 絶縁材料およびその製造方法 :特願2012-224294 :独立行政法人理化学研究所 :于秀珍 十倉好紀 関真一郎 石渡晋太郎 発明の名称:スキルミオンの生成、消去方法および磁気素子 出願番号 :特願2013-045860 出願人 :独立行政法人理化学研究所 発明者 :永長直人 望月維人 岩崎惇一 12 お問い合わせ先(必須) 理化学研究所 連携推進部知財創出・活用課 井門、今井 TEL 048-467-9762 FAX 048-467-9962 e-mail [email protected] [email protected] 13
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