加工時に黄変しないダイコンの開発: 加工食品への応用例と生理機能 お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科 准教授 森光康次郎 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 研究員 石田正彦、他 1 背景 なぜ、たくあん漬の需要が減少したのか? 1.一般消費者の嗜好性の変化 においや色調に対する嗜好の変化 → フレッシュ感・白色系を好む傾向 食品添加物に対する敬遠感 2.貯蔵・保管時にに発生する特有の硫黄臭 加工・保存・流通・販売時に黄変せず 硫黄臭が発生しない加工法/新しい素材 2 研究目的 大根加工品が抱える課題 浅漬け(糖絞り等) 切干大根 大根おろし 長期保存により 黄色くなる! 目的1:大根加工品の黄変問題の解決 3 4MTB−GSL欠失変異体の発見 4 「だいこん中間母本農5号」の育成 5 研究目的 従来大根 S 新形質大根 S Glucose S C S Glucose N O C N O 4MTB‐GSL (Glucoraphasatin) SO3- SO3- Glucoerucin (4‐methylthio‐3‐butenyl glucosinolate) (4‐methylthiobutyl glucosinolate) Myrosinase Myrosinase S S N C S N 4MTBI (Raphasatin) (4‐methylthio‐3‐butenyl isothiocyanate) S Erucin (4‐methylthiobutyl isothiocyanate) 分解 TPMT 等 C 残存 黄変 黄変 辛味 + 生理機能 目的2:新形質大根の業務加工特性の評価 6 糖絞り(浅漬けタイプのたくあん) 糖絞りの製造 大根 → 塩押し(8 %食塩水) → 糖液に漬ける → 出荷 1カ月 従来 6カ月 新形質 従来 新形質 従来品種では、白い糖絞りは2カ月が限度 → 新形質大根は、6カ月間も白さを維持 7 糖絞りたくあんの官能評価 8 新形質ダイコンによるたくあん漬の優位性 9 新形質ダイコンによるたくあん漬の優位性 10 大根おろし(色) 11 新形質ダイコンによる大根おろしの優位性 12 新形質ダイコンによる大根おろしの優位性 3.業務用大根おろしにおける残存辛味量の変化 PL農5号のITCは残存する=安定 ITCが分解しにくいので、においの発生も低い 13 切り干し大根(におい) 新形質ダイコンによる切り干し大根の優位性 14 研究目的 目的3:PL農5号による加工の生理機能性 15 新形質ダイコンによる生理機能性 糖絞りたくあん漬(抽出物)による第二相解毒酵素誘導 能(肝臓、in vivo)あり 16 派生した研究目的 新形質ダイコン育成系統の新たな利用性 目的4:新形質かいわれ大根の成分と機能性 17 新形質ダイコン育成系統の新たな利用性 成熟体においてグルコエルシンを多く含むだいこん種子を用いて かいわれ大根を生育すると、ブロッコリースプラウトと同じグル コラファニンのみが多く含まれていた。 「造語:ブロッコリーのような(broccolly)」かいわれ大根の誕 生! 18 まとめ 19 想定される用途 1)克服した「黄変しない」を生かした利用 ドレッシング、他 2)辛味と硫黄臭が発生しない特性の利用 総菜メニュー、大量調理用素材、他 3)生理機能性の利用 健食用素材、他 4)種苗業界への波及 新品種開発、他 20 活用が期待される企業 • 中間母本を利用されて新たな栽培品種を開発さ れる種苗会社(→野茶研へ) • 栽培用大根種子は数年内に(試験栽培中)、ス プラウト用種子は商業用種子の完成までこぎ着 けている。これらを付加価値のある加工食品等 へ商品開発する食品企業、他 • 野菜飲料に代表される健食開発などの企業 • その他 21 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称:黄変および硫黄臭が発生しない ダイコン加工食品の製造方法 • 出願番号 :特願2012-068981 • 出願人 :独)農業・食品産業技術総合研 究機構、お茶の水女子大学、 山義食品、インデアン食品 • 発明者 :森光康次郎、石田正彦、他 22 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :グルコラファニンを高含有する ダイコン系統の作出方法 • 出願番号 :特願2010-259297 • 出願人 :独)農業・食品産業技術総合研 究機構、お茶の水女子大学、中 原採種場株式会社 • 発明者 :森光康次郎、石田正彦、 内村清剛、他 23 お問い合わせ先 お茶の水女子大学 研究協力・社会連携チーム 河野 TEL 03-5978-5162 FAX 03-5978-2732 e-mail [email protected] 24
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