1細胞の機能や構造を 計測するためのマイクロチップ技術 中央大学 理工学部 精密機械工学科 教授 鈴木 宏明 1 開発① 1細胞に対する薬剤応答検出, 遺伝子解析用マイクロチップ 2 背景 集団中の個々の細胞は「ヘテロ」である 細胞の多様性が,がん,免疫,発生・分化など において重要 Burrell et al., The causes and consequences of genetic heterogeneity in cancer evolution, Nature, 2013. 3 従来技術とその問題点 1細胞(シングルセル)解析 1) 細胞を個々に「分ける」 2) 試薬を加えて反応させ,その結果を 「解析する」(場合によっては反応産物を取り出す) マイクロ流体技術が多く使われている ドロップレット マイクロウェル マイクロ流体回路 Fluidigm社 C1 IFC Rettig & Folch, Anal. Chem., 2005 Klein et al., Cell, 2015. 大量の液滴を生成可能 ポンプやチュービングの煩雑さ 液滴生成の不安定性 拡大 Tokimitsu et al., Cytometry A, 2007. 細胞と同程度の大きさの穴 簡便に高密度封入可能 1細胞に対する溶液量が少ない ナノリットルの微量流体を電子 回路のように精密制御可能 チップや制御系が複雑,高価 4 新技術の特徴 シンプルなマイクロウェルを三次元形状に変更 細胞サイズのウェルにより高封入率を確保しつつ, ナノリットルの反応試薬容積を確保 シリコーンゴム一括転写により,製造コストはシンプルなマイ クロウェルと同程度 細胞 ピコリットル細胞捕獲サイト ナノリットル反応場 5 製造方法 シンプルなマイクロウェルを三次元形状に変更 細胞サイズのウェルにより高封入率を確保しつつ, ナノリットルの反応試薬容積を確保 シリコーンゴム一括転写により,製造コストはシンプルな マイクロウェルと同程度 PDMS Stereolithography Master Glass substrate Simple peeling 光造形鋳型 10mm Cell Trap 3D Microchambers 転写したPDMS Reagent Reservoir 10mm 6 実際の鋳型と造形物 7 従来技術との比較 シンプルなマイクロウェルに対し数百倍もの 反応容積を確保 マイクロ流体回路技術に対し,構造,製造方法, 操作・制御方法がシンプル,ローコスト シンプル・低機能 シンプル・中機能 複雑・高機能 5mm 8 実施例と想定される用途 • 1細胞の封入(分離),酵素反応や薬剤応答試験 • 1細胞遺伝子解析に向けたゲノム増幅反応,RT-PCRの 実証試験中 Microchannel inlet bonding 50 μm in height Microchamber Cell Suspension +Reagent PDMS Oil PDMS 9 実施例と想定される用途 明視野 蛍光視野 (細胞を染色) 1細胞アッセイ (アポトーシスの検出) 300μm 1細胞封入効率 300 μm 1細胞のカスパーゼ活性の分布 10 実用化に向けた課題 • 1細胞のトラップ(反応場への封入)とアッセイ は安定してできている. • 現在,量産化に向けた製造技術の改良を行っ ている.鋳型を樹脂製から金属製に変更. • 用途として,1細胞ゲノム増幅やPCRの検証 を行っており,これに成功すれば1細胞解析の アプリケーションが増える. 11 企業への期待 • 細胞のアッセイや解析に用いる試薬メーカー 等の企業との共同研究を希望 • マイクロ三次元構造転写のノウハウは,他の 用途にも応用可能か? 12 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :マイクロウェルプレート,マイクロ ウェル装置,細胞解析方法及びマイクロウェルプ レートの製造方法 • 出願番号 :特願2015-44934 • 出願人 :学校法人中央大学 国立研究法人理化学研究所 • 発明者 :鈴木宏明,岡野太治,城口克之 13 開発② 上皮細胞等の培養細胞を 垂直断面で観察できる 蛍光顕微鏡観察用マイクロチップ 14 背景 培養細胞のイメージングは,細胞がディッシュ の底面に広がった状態で行われる→2次元像 上皮細胞の極性輸送など,細胞培養面垂直 方向の構造や動態が重要なケースがある. 15 従来技術とその問題点 細胞構造の三次元情報は今日焦点顕微鏡で 取得したスライス像をPC上で再構築して得る →高さ方向の時間・空間解像度が不十分 カールツァイス製 LSM (レーザー共焦点顕微鏡) 16 新技術の特徴 • 簡単なサブミリスケールの流路側面に 接着細胞を培養 • 流路チップを水平に戻して倒立顕微鏡観察 17 プロトタイプ 微分干渉像 蛍光像 3D光造型機で試作した 縦方向培養容器 取得画像例(1スキャン) 10 μm (比較)共焦点再構築像 (約40スキャン+画像処理) 18 従来技術との比較 • 接着性培養細胞の断面を,高価な顕微鏡設備 を使わず,簡便に,より高解像度で取得可能 • 取得時間は数十分の1 • 細胞培養面垂直方向の動態の ライブイメージングが可能に 19 想定される用途 • 細胞生物学の基礎研究 • 創薬,医療の基礎研究 20 実用化に向けた課題 • 基本的なデバイスおよびプロトコルは 開発・実証済み • 細胞種によって最適な培養条件が異なるため, 様々な細胞種を使ったイメージング事例を重 ねる 21 企業への期待 • 細胞イメージング試薬メーカー等の企業との 共同研究を希望 22 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :細胞縦断面観察用の顕微鏡観察 用部材及び細胞観察方法 • 出願番号 :特願2015-6085 • 出願人 :学校法人中央大学 • 発明者 :鈴木宏明,津金麻実子 23 お問い合わせ先 中央大学 研究支援室 加藤 裕幹 TEL 03−3817 − 1603 FAX 03−3817 − 1677 e-mail [email protected] 24
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