講義概要(数理科学特別講義Ⅱ) 担当:藤原英徳 ・講義題目:指数型可解リー群上の調和解析 ・授業の目標:可解リー群の表現論において基本的な軌道の方法を理解し、具 体的な問題の研究能力を拡げる。 ・講義概要:可解リー群の表現論は半単純リー群に対する膨大な研究と趣を異 にしている。コンパクト部分群やルート系などの道具立てに欠ける可解リー群 の研究においては数学的帰納法が唯一の手法である。この手法はある種の問題 に対してはとてもに有効であり美しい結果を提供してくれるが、その結果に至 る過程は闇の中である。構成的な議論をするには材料不足なのが現状である。 いずれにしても可解リー群の表現論においては A. A. Kirillov 創始の軌道の 方法が欠かせない。既約ユニタリ表現の同値類と余随伴表現の軌道とを1対1 に対応させるというものであるが、その根幹をなすのは群の半直積の誘導表現 に対する Mackey 理論である。誘導表現の理論は有限群に対する Frobenius の 研究に始まるが、Rから出発して半直積を繰り返して得られる連結・単連結な 可解リー群の表現論にとって Mackey 理論は基本である。 可換リー群、冪零リー群、可解リー群と世界が広がるとき、それぞれのカ テゴリー間のギャップは大きい。我々は冪零リー群と可解リー群の間に指数型 可解リー群のクラスを定義しよう。次に局所コンパクトな位相群に対し閉部分 群のユニタリ表現からの誘導表現を定義し、その基本的性質を述べる。更に、 群のユニタリ表現が閉部分群のユニタリ表現からの誘導表現に同値であるため の条件を Mackey に従って論じよう。ある閉部分群の1次元ユニタリ表現から 誘導された表現を単項表現といい、任意の既約ユニタリ表現が単項表現に同値 であるとき、その群は単項であるという。実は、指数型可解リー群は単項であ るが、一般の可解リー群は単項ではなく、それに応じて Auslander-Kostant や Pukanszky により軌道の方法は一般化されている。 最後に次元の低い典型例として、Heisenberg 群(冪零リー群)、ax+b 群 (完全可解リー群)、Grélaud 群(指数型可解リー群)を取り上げ、具体的な 解析を行い、それぞれの段階で生じる現象を確認するとともに、これらの群の ユニタリ双対を決定する。 ・成績評価方法:レポート提出による。
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